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ラストバレット。エピローグ
エピローグ:
いつだったか、海人とこんな話をしたことがあった。
一緒に、劇団の劇を見に行った時のことだ。
「海人、天国とか地獄って、ほんとにあると思う?」
劇の内容から、そんな話に発展したのだった。
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ラストバレット。3-8
「グミちゃん……」
「か、海人!!」
そうだ、それよりも今は海人を助けなくては。
私は彼のもとに駆け寄る。
「……っ」
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ラストバレット。3-7
「うわさをすればなんとやら、ってやつだな」
「あー、8番目ぇ!!ご無沙汰してまさあ!」
私がその部屋に入るなり飛び込んできたのは、まずその男の姿だった。
次いで、部屋の奥のデスクに座っているサンタ野郎。
男は私に気づき、笑顔でこちらによって来る。
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ラストバレット。3-6
「はぁっ……はぁ……」
息も絶え絶えに、私は街の中を走り抜ける。夜なのに、気温が高い。
日中にたまった太陽の熱が逃げきれず、町の中を覆っているからだ。
おかげで街中はひどい熱帯夜と化し、その熱で私の体はすぐに汗で湿っていく。
おまけに喉も渇く、息も切れる。だがそれでも足は止まらない。止められない。
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ラストバレット。3-5
【グミサイド】
目の前には、目隠しをされた男が倒れている。否、倒れているというよりも転がされて放置されているといったほうが正しいだろうか。
黒い帯で手足を縛られ、目隠しをされ、言葉も発せられないように口も縛られていたので、どんな顔をした男なのかは知らない。
しかし、状況が状況だったので、男が不快感に顔をゆがめていたことを想像するのは難しくない。
仮に百歩譲って、彼がマゾヒストだとしても、この状況には喜んでもいられないのだろう。
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ラストバレット。3-4
「ぐっ……」
首筋の痛みを我慢しながら、目を開ける。
目の前に広がったのは、どこかの執務室のような部屋だった。
どこかはわからなかったが……少なくとも警視庁の内部ではないと理解した。
「ターゲットのお目覚めですぜ」
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ラストバレット。3-3
「課長」
自販機に向かう途中、レンが唐突に言い出した。
「世間話でもしませんか?」
「世間話?なんだ、改まって」
仕事を黙々と進めるレンにしては、珍しい言動だった。
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ラストバレット。3-2
【海人サイド】
夏祭りの日から、4日後。
「課長さん~、私もう疲れましたぁ~~寝たいですぅ…」
「こら、怠けるんじゃない。寝るなら仕事を終わらせてからな」
「課長さん厳しいですぅ~」
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ラストバレット。3-1
3章「ラストバレット」
「なぁ」
「はい、何ですメイさん?」
「ちっとこいつを見てくれないか。"8番目"の監視役が撮った写真なんだが」
「ほー、どれどれ。……あちゃ、こりゃーやばいですね。いやー、よろしくないですわ、こういうの」
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ラストバレット。2-5
【海人サイド】
「私には……、戸籍が、ないの」
彼女は確かにそういったのだった。
「へ……?」
自分でも思わず、間抜けな声を出す。戸籍って、あの?自分の身分や、出生を証明する、あの?
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ラストバレット。2-4
「あっち?」
「そ、あっち」
彼がそう言って指さしたのは、奥の雑木林だった。別に断る理由もなかったので、うんとうなずく。
本当は、私が彼のことを雑木林へと誘い出し、人目につかない真っ暗な林の中で、殺す予定だった。
周りを緑で囲まれたその場所は、夜になると全く人が通らなくなる。
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ラストバレット。2-3
ドーン、と一際大きな音が空に響く。今までのよりも、はるかに大きかった。
それを最後に、長い長い、夢の時間が終わりを告げる。
最後の花火が打ちあがった後も、私たちは動かなかった。ずっと、同じ場所に立っていた。
私がふと気づいてみると、周りの観客たちは、もうあまりいない。「虹色の綺麗だったねー」とか「最後のはやばかったぜ」とか、思い思いにそんな言葉を口にしながら帰って行く。
10分か20分くらいたって、私たちはついに、二人きりになった。
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ラストバレット。2-2
夏祭りということで、駅前はすごい数の人混みだった。
普段は駅前でさえ人通りも少ない、田舎なのに。
「あ、こんなとこにじゃがバターのお店が!買っちゃお。グミもどう?俺好きなんだ、これ」
ニカっと、彼は笑った。私はとりあえず、うんとうなずく。別に嫌いな食べ物ではなかったし、軽く小腹も減っていたから、何か食べたいと思っていたところだ。
「おじさーん、じゃがバタ二つお願いしまーす」
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ラストバレット。2-1
2章「夏祭り」
三か月後――。
【グミサイド】
私が暗殺すべきターゲットこと海人――とコーヒーショップで出会ってから、三か月が経った。
私は彼に夏祭りを誘われてからというもの、彼にコンタクトを取り続けた。
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ラストバレット。1-6
【海人サイド】
仕事場に戻ったのは、夜の11時を過ぎてからだった。
あの子と話をしていたら、すっかり遅くなってしまった。
やれやれ、最近は時間が経つのも早く感じる。時間の有限性というのを、ひしと感じる今日この頃。
予定より遅くなってしまったから、課員たちも怒っているだろう。いや、もしかしたら心配してくれているだろうか?
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ラストバレット。1-5
「な、夏祭りィ!?」
「そ、夏祭り」
彼は軽快な口調で誘ってきた。
口調が軽快な割には、その内容が軽快なものではなかったので、私は声を大きくして聞き返してしまった。
「今度の夏さ、一緒に夏祭り行かないか?」