作品一覧
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第十二章
私は煙草を1本取り出し火を点けた。彼と煙草を吸いながら、他愛もない話をした。…大体がこの先の事だったが…。…「肇さんは、元彼さんとは鉢合わせる事は無い?」とずっと気掛かりだった事を尋ねてみた。ほんの数分彼は考える様に少しばかり沈黙を置き、…「…うん、あの人夜職の人で、僕は昼のバ...最期の夜月
sizuki-kurone522
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「ハァ、ハァ、ハァ…。」
なぜ…私は一人でこんな事をしているのだろうか?
カノンはその日、晴天の太陽の元で息を切らしながら道路の真ん中を孤独にひた走っていた。
その姿はスポーツ用のタンクトップに短パンを穿き、いつもとは少し違うポニーテールの髪型にサンバイザーを着けている。
彼女の前には医療班を乗せ...#13:愛は地球を救う!
めいくう
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「ロボター?どこ行ったの?ロボター!」
サイドテールの女の子はそう何度も似たような文句を口にしながら家の中を探し回っている。
「メロディ、ロボタ知らない?」
彼女は通り掛かった末の妹におもむろに尋ねた。
「さぁ?今日は見てないニョ。」
おさげ髪の妹は風変わりな語尾と共にそっけなく返す。
「ただいま...#12:秀才VS奇才
めいくう
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カタカタカタ…
カノンは研究室でなにやらパソコンを操作している。
すると少し離れた場所から、姉と男の会話が聞こえて来た。
「あんたなかなか話が分かるニョロね。」
なんだか楽しそうに話し込む二人に私は作業の傍らついつい耳を傾けてしまう。
「いやいや、妹さんだって優秀な人でしょう?」
他愛のない談笑…...#11:起動!ジャイアント・ロボタ
めいくう
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計画の要『闇の魔法使い』を探せ。
月を喰らい蝕を起こす、天体の陰の存在。
暗黒彗星の魔法が発動する時、現実と虚構の境は揺らぎ、
その果てに勇者は生まれるだろう。
(鼓リズムの㊙ノートより.)
暗い門を抜けると、カノンは足元にあるベンチの上に器用に着地した。
「おっとっと…。」
バランスを取るよう...#10:それは恐らく2772回目の異世界転移
めいくう
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「ロボタ、この赤ちゃんがA彦くんだよ。」
ある日の昼下がり、カノンはそう言ってスマホの画面を目の前の小さなロボットに見せていた。
そこにはツインテールの小柄な女性と、彼女に抱き抱えられた玉のような赤ん坊が写っている。
「ガガガ!」
ロボタと呼ばれた機械人形はそれをカメラアイで捉えると、嬉しそうに返...#9:ロボタとカノンの二人言
めいくう
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その日、カノンはなんだか難しそうな顔をしながら勉強机の前に座り込んで、
作りかけの魔法少女の衣装を眺めていた。
「なんでおねぇちゃんってあんなにハートマークが好きなんだろ…?」
何やらブツブツと文句を垂れながら彼女はとある2着のコスチュームを思い浮かべる。
1つは定番の魔法少女風の衣装で胸に大きな...#8:ライオン・ハート~魔法少女の衣装考察~
めいくう
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第十一章
悲しい笑顔をさせてしまった…と少々後悔の念を持ちつつ、彼の提案してくれた事への返答を考えていた。…肇さんに家事して貰う、か…また私は煙草へと火を点けながら、…「肇さんの体調とか、良くなってきたら少しづつ家事も手伝って貰おうかな、お言葉に甘えさせて貰って…それで良いかな?」と彼へ...最期の夜月
sizuki-kurone522
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「愛と正義の魔法少女、マジカル・リズム!ご近所の平和を守る為、ただいま推参!!」
姉はよく人前でそんな風に魔法少女ごっこをしていた。
自作の可愛らしい衣装に身を包み、ポーズを取りながら魔法のステッキを振り回す。
妹のカノンはそれをちょっと羨ましいと思いつつ、自分には無理だと傍から眺めているだけだっ...#7:トーフ・メンタリズム
めいくう
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カノンは姉のリズムの次にロボタの扱いに長けていた。
高校の時に姉が用務員室の一角に居座って作ったロボットがロボタだ。
リズムが大学の研究室に彼を持ち込んでから、そのメンテナンスは妹のカノンの役割だった。
といっても、毎日関節にオイルスプレーを吹き掛けたり、バッテリーが無くなりそうな時に充電器の側ま...#6:失われし世界と修身旅行3
めいくう
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その時カノンは誰かの腕の中に横たわっていた。
蓮の花が開き、その上に立った男に抱えられる彼女…。
身に纏った衣はボロボロで、弛緩した四肢は力なく大地に還ろうとしている。
お腹にぽっかりと空いた大きな穴は、その美しい恵体がもう二度と動き出す事はないと残酷に示していた。
そんな傷付いた姫の眠るような優...#5:失われし世界と修身旅行2
めいくう
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ある日A子は、瓦葺きの屋根の上に座りながら小さなメモ帳に目を通していた。
それは現在彼女が居候している鼓家の長女、リズムから渡された物であった。
「後は私に任せる、か…。とんだ食わせものですね、あの人。」
片手で手帳を閉じると、A子は細やかな声で意味深にそう呟く。
すると突然一階の玄関扉がガチャっ...#4:失われし世界と修身旅行
めいくう
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ロボタの電子頭脳の作りは割と単純なものだった。
製作当時ネットで公開されていたオープンソースのAIプログラムをベースに
独自の感情パラメーターを設け、メインコンピューターに幾つかの補助回路を繋げたオーソドックスな構造だ。
しかしそれでもロボタの心は、時として人間のそれを凌駕する。
ロボットが人間を...#3:シンギュラリティとこんにゃく問答
めいくう
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大学からの帰り道、哀愁の漂う背中に夕日を受けながらカノンが自転車を押していると、
下校途中であろう小学生達が手に持った携帯端末の画面を眺めつつ
なにやら話をしている様子が目に留まった。
(最近はあんな小さい子でもみんなスマホを持ってるんだ…。)
なんとなしにそんな思考を巡らせながらゆったりと歩くカ...#2:異世界のゲート
めいくう
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そこは学園の校内にあるコンピューター愛好会の部室、
彼女は休憩の為にバンドメンバーが飲む紅茶の準備をしていた。
お茶が灌がれたカップを、部員達が座る椅子の前に一つずつ配っていく。
「いつもありがとう、カノンちゃんはきっと良いお嫁さんになるよ。」
カップを手に取った長い金髪の女性にそう言われて、
カ...#1:月並みのモーニング・コール
めいくう
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暖かい日差しの注ぐポカポカした陽気の中、とある医院の一室で
赤ん坊をあやす小柄な姉と、その様子を見守る大柄な妹の姿がありました。
「よーしよしよし…。」
鼓家の長女リズムが、小さな愛息子をその両腕に抱えて頬擦りしています。
「おねぇちゃんったら…鼻の下伸ばして、ゾウさんみたい。」
そう言い終わった...プロローグ:はなまつり
めいくう
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ある日の放課後、jamバンド…もといコンピューター愛好会の部室に数名が屯し何やら話し込む姿があった。
そこにはいつものバンドメンバー、弦巻マキ・鼓リズム・鼓カノン。
そして偶然その場に居合わせて宮舞モカに加え、さらに見慣れない人影が2つほど。
一人は姉リズムに似た体格の小さな女の子で、もう一人は長...役行者の兄弟子?
めいくう
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ある日、鼓カノンは自宅で不思議なダンスを舞っていた。
いや正確には踊っているのではない、彼女の両手にはバトン型の発信器が握りしめられ、地面にはなにやら位置情報を示したグラフィックが投影されている。
そして特定の空間でカノンがバトンを振るったりステップを踏むと、その度に背後のスピーカーからドラムやシ...ディフニション・オブ・インストゥルメント
めいくう
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それはとある公園の一角、青空の下ひっそりと楽器を鳴らしている一人の女の子がいた。
髪は短めで一見すると男の子に見えなくもない彼女。
その子の名前は御手師マリー。
左手でネックを支えながら指板を押さえ、右手につまんだピックでストリングを弾く。
人気のまばらなその場所で、どうやら彼女はギターの練習をし...御手師マリーの休日
めいくう
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「ノンちゃん、入学おめでとうニョロ!」
陽気な日和の中、リズムはそう言って妹に祝いの言葉を贈る。
「ありがとうお姉ちゃん。」
出迎えてくれた姉にカノンは少し照れながら返事をした。
私、鼓カノンは3年間の高校生活の後、無事に大学受験を乗り切り、
この春から姉の鼓リズムと同じ工学系の大学へと通う事になっ...天才×秀才
めいくう
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第十章
キッチンへと戻り、私も煙草でも吸おうと火を点け始めた頃、レンジから牛乳が温まった様子の音が鳴っていた。…あっという間に温まったのかと咥え煙草の私は、二人分のカフェオレを作り始めた。…私もコーヒーには砂糖入れないんだよな…と考えつつ、彼へと…「肇さん?コーヒーは何杯入れる?」と尋ね...最期の夜月
sizuki-kurone522
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第九章
彼のポケットから取り出した煙草を、…「どうぞ」と渡すと、…「吸っても…良いの?」と問いかけられた。私は、ここのマンションの一室を買おうか迷っていた為、…「大丈夫だよ」と笑い彼へと答えた。
…「一緒に吸おうか」と誘うと彼は笑いながら…「美月さんって優しいんだね」と言ってい...最期の夜月
sizuki-kurone522
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第八章
私は少し待ってといったポーズを取り、急いで歯磨きを終わらせ、肇さんに…「おはようございます、肇さん」と伝えた。彼はまだ体が温まっていないかのように、身体を摩りながら、ぼんやりと…「今日も少し冷えてますね…」とポツリと呟いた。…流石に長時間あの土砂降りの中で座り続けていたら身体も冷...最期の夜月
sizuki-kurone522
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第七章
鏡と対峙し、新たな私の発見をした後に、寝室を覗くとすっかりと眠りへと入っている様子の彼がいた。彼は右側に身体を縮めるかの様に小さく丸まって眠っていた様子に私は、ホッとし、左側へと向かい彼に背を向け身体が触れない距離感を取りつつ、ベッドへと静かに入って行った。…明日はどうす...最期の夜月
sizuki-kurone522
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第六章
服を選んで貰い、寝室で着替えて貰う様に私は促した。…「あ、でも…ここ寝室じゃ…」と少し戸惑っている彼に対し、…「私はキッチンで煙草でも吸ってます」と何故だか肇さんには笑顔で対応することが出来た。それも何故か自然と…私は寝室から出て、ドアを閉める様にし…「もし着替えている最中に眠く...最期の夜月
sizuki-kurone522
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**カダルシェフ・スケール(Kardashev Scale)**は、1964年にソビエト連邦の天文学者ニコライ・カダルシェフが提案した「文明の進化レベル」を測る物差しみたいなものやね。めっちゃシンプルに言うと、
1かダルシェフスケール
studio_omochi
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第五章
風呂から上がった彼は同じ服を着ていた。…あぁ、そうか…着替え…体の小さかった彼に私は、…「あの、もし良かったら、私の大きめの服着ますか?」と尋ねた。
彼は…「…あぁ…えっと…」と口籠る彼を見て、…「遠慮はなしにしましょ?…ね?」と私は初めて彼へと笑顔で接した様に思う。…「…あ、...最期の夜月
sizuki-kurone522
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第四章
肇さんは色んな事を話し続けてくれていた。私は、しっかりと頭に入れるかのように肇さんの一言一句を見逃さない様に話を聞き続けた。時刻はすっかり朝の5時を廻ろうとしている時間だ。…「肇さん、無理なされていませんか?…少し眠った方が良いかと思うんですが、眠れそうもありませんか...最期の夜月
sizuki-kurone522
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第三章
…あ、そうだ、と私は煙草を消し、…「ハジメさんは煙草の煙大丈夫ですか?」と少しばかり遅い確認になってしまった事を聞いていた。
彼は少しばかり考えに耽る様に目を伏せ、…「煙草の匂いには慣れているので、僕は大丈夫です」そう答えてくれた。…何かあったんだろうな…聞いた方が良いんだろうか…...最期の夜月
sizuki-kurone522
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第二章
「ハジメ」さんを部屋へと迎え入れた私は、…「大丈夫ですか」と声を掛けつつ、取り敢えずソファへと横になって貰う事にした。フラフラと歩く「ハジメ」さんを見ながら、…「ゆっくり歩いて下さいね」と、傍に寄り添いつつ、ソファへとゆっくりと座って貰った。…「横になれるなら横になって居て...最期の夜月
sizuki-kurone522