「はぁ・・・・」
そんなこんなで自宅を研究所内にされてしまって、なんだか激動の日々を送ってない。?
会社で出涸らしのお茶をすするひと時が一番のリラックスタイムだなんて、今まで考えられなかったな。
あ、ちなみに押し倒された後、アイツ私の上にのしかかったまま寝やがったんだよ、重いわ暑苦しいわ一睡もできなかった。
だ・か・ら、私は潔白なのよ、キレイなままなのよ・・・・・って、誰に言ってんだろ?。
独り気楽な日々を送っていた賃貸アパートは、確かに空室の張り紙が張ってあった。
とにかくもう逃げられそうにないな、家財を人質に取られているし。
家賃が要らないのは有難いけど、自分だけのスペースが無いって、こんなに落ち着かないんだな。
なんだか、どこまでも落ちていきそうで怖い。
あ、終業のチャイムが・・・。
さて、帰る・・・とこないんだっけ・・・・・・・戻るとするか。

「お帰りなさい、メイコ」
迎えてくれるMEIKOの言葉もなぜか聞こえてこない、いや聞こえてはいるんだけど・・。
真っ直ぐバーカウンターの冷蔵庫に向かいビールを取り出すと一気に呷った。
「メイコ、晩御飯は?、まだなら早くしないと食堂閉まっちゃうよ。」
「んーーー」
気のない返事をしてしまう。
「あーーーいいのよ、後でなんか作るから、それよか今日の報告しないとね。」
「メイコ、体の具合が悪いの?、何か変だよ。」
「そぉ?、別に普通だよ。」
やれやれ感の鋭いこと、確かにここに寝泊りするのは落ち着かない。
常に一挙手一投足、寝言まで観察され記録をとられているわけだから、無意識に緊張するしこの頃はイライラしどうしだ。
いくら口先で取り繕っても、それがMEIKOにも判るほど出てしまっているんだろう。
「さて、今日は散々だった、会議資料の数間違えたくらいで何であこまで嫌味言えるかねあの課長はほんとムカつく、そりゃ悪いのは・・・」
こんな感じでその日の出来事や気分を話すのも慣れてきた。
MEIKOも私でも判るくらい変わってきた。
事務的なですます調が減って話し言葉で話すようになったし(でも、めーちゃんと呼ぶのはまだ抵抗があるらしい)その言葉にも抑揚がついてきた。
こちらの話に相槌を打つようになったし、相手を気遣う言葉を吐くようになった。
二次元画面を見ていなければ、普通の人と話しているのと見分けがつかないんじゃないだろうか。
ただ、私には・・・・・・・。
それが、あまりに自分自身にそっくりで、まるで自分自身を吸い取られていくように、似通った反応をする画面の中の私に、なんと表現したものか解らない恐怖をいだいていた。
あぁ、ここにこうしているだけで吐き気が襲う、それを誤魔化すために酒を呷る。
「メイコ、わたしがここから出られたら何か作ってあげるのに・・・・」
「だからアンタはまだ半人前の子供なんだから、心配しなくていいの・・・。」
「いけない?、心配しちゃ、子供だって半人前だって・・・・・・、大切な人が苦しんでいたら、自分も辛いと思うのはおかしいの。?
まだまだだけど貴方の事はわたしが一番よくわかる、メイコ、あなたはわたしなんだから。」
「うるさいなぁ・・・」
「え?」
「うるさいって言ってるのよ。!!!」、言い終わって、はっとした。
「ごめんなさい・・・・メイコ。」
「う・・・・・うぅん、悪いのは私。
やっぱ変なのかもね、今日はもう寝るわおやすみMEIKO。」

携帯の呼び出し音が鳴ってる。
通勤ラッシュがひと段落した駅のプラットホームで、完全に遅刻なのに身じろぎひとつせずベンチに座りこんで走り去る電車たちを呆然と見送っている私。
ただあの部屋から逃げ出したくて始発電車の時間を待ちわびるように出かけてきた。
あ・・・会社からだ。
出なかった。
出られなかった。
あぁこういうのを鬱っていうのかなぁ。
何も考えられない、考えたくもない、考えようとすること自体を体が拒絶してる。
どこへ行くともなく立ち上がって、ふらふらと歩き始める。
特にあてがあるわけでもない、強いて言えば座っていることに飽きた。
そうだ、あれから何日経ったんだろ?
もう何年もこんな事を繰り返している気がする。

「はぁ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ふうっ」
足が重い。
体が重い
頭が重い。
何時からだろう、こんなになったの。
何時からだろう、あそこへ行くのが嫌になったの。
いつからだろう、何もかも、私も・・・・・・・・・・・・・壊してしまおう
・・・・・と思うようになったのは。
何時からだろう。
イツカラ・・・・。



2/3おわり




ライセンス

  • 非営利目的に限ります

VOCALOID MEIKO 第一部”メイコとMEIKO” 2/3

閲覧数:265

投稿日:2009/05/06 18:01:15

文字数:1,921文字

カテゴリ:小説

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