魁! ボカロスピリッツ

投稿日:2010/10/25 23:23:54 | 文字数:3,944文字 | 閲覧数:4,614 | カテゴリ:小説 | 全2バージョン

ライセンス:


毎度の事ながら、タイトル付ける時、自分のネーミングセンスの無さに絶望させられる。

いま手元で書いてる小説が、シリアスなんですよ。
その息抜きに書いてたのがコレなんですが、息抜きの方が先に書き上がってしまいました。


……そうそう、あと言い忘れてましたが、この話は女子供が見るもんじゃありません。
いいね? 分かったね? 女の子やお子様は見ちゃダメだよ?
僕は忠告したからね?

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 



「よく分かんねえけど、お礼ならプレゼントとかすれば良いんじゃねーのか?」

いい加減に面倒になったので、適当に言ってみた。

「プレゼント。何をだ?」
「そこまで知るか。自分で考えろよ」
「役に立たない奴だな」
「何だとこの野郎」

カイ兄ぃに言われると腹が立つ。
俺は自分でも乏しい知識を総動員して、何とか役立ちそうな情報を検索してみた。

「……そういや何かの本で読んだけど、女ってやつは何か身につける物をもらうと、喜ぶらしいぞ」

どっかに書いてあった事を思い出す。
カイ兄ぃはキョトンとして首を傾けた。

「身につける物?」
「だから服とかアクセサリーとか、そういうやつ」
「でもミクは服もアクセサリーも、いっぱい持ってるぞ。ステージ用だけど。あんなにあって今さらなぁ。プレゼントしたは良いけど、ミクが同じの持ってたりしたら、目も当てられないし」
「いや、いっぱい持ってるとか関係ないらしい。『 男から身につける物をもらう 』って所がポイントなんだってさ。被ったら被ったで、替えができるだけだからOKなんだろ。何か似合いそうなのを見繕って、プレゼントしてやったら良いんじゃねえか?」

マジでこの情報、どこで読んだんだっけ、俺?

「なるほど。でも服はサイズの問題があるから、アクセサリーにしようかな」
「いいんじゃねえか? アクセの方が、使い回しも出来るしな」
「ミクに似合いそうなアクセサリー……う~む……」

カイ兄ぃは真剣な表情で、しばし考えていた。
そして真剣な表情のまま言った。

「……手錠?」
「それはアクセじゃねえ」

なんでそれがミク姉ぇに似合うと思った。
手錠で両手の自由を奪って、どうする気だコノヤロウ。

「というのは冗談だぞ」
「当たり前だ。本気だったら殺す」
「心配しなくても、本当は首輪にするつもりだから安心しろ」
「よし死んどこうか」

俺は再び殴りかかるが、今度はかわされた。
ソファーから立ち上がって俺のパンチをかわしたカイ兄ぃは、そのまま何事も無かったかの様にドアへと向かう。

「じゃ、そういうわけでミクの部屋に行ってくる」
「あん? 鍵閉まってるだろ」
「いやミクの部屋の合鍵はあるんだ」

あんのかよ!?

「どうやって手に入れた、そんなもん! どんな犯罪に手を染めた!?」
「失礼な、ちゃんとミク本人からもらったぞ。『 外で失くしたらいけないから、出かける時には兄さんに鍵を預けて行きなさい 』って言ったらくれた」

うぉい、ミク姉ぇーーー! ちったあ警戒心持ってくれ!!
カイ兄ぃはさっきのキーホルダーを取り出し、誇らしげに見せびらかす。

「ほら、この通り。悪い奴に悪用されないように、俺が責任を持って預かっている」
「お前がその悪い奴だろ!」

その鍵を奪おうと飛びかかるが、カイ兄ぃは素早い身のこなしで俺のタックルをかわす。

「どうしたレン、そんなに興奮して。……ハッ! さては俺から鍵を奪って、ミクの部屋であんな事やこんな事をするつもりだな!?」
「どんな事だ! その言葉、そっくりお返しするぞ!」
「何をワケの分からない事を! 俺はただ、ミクの匂いを胸いっぱいに吸い込んでくるだけだ!」
「自分はセーフみたいに言うな! この変態め!」

腰にタックル。かわされる。
足元にスライディング。かわされる。
俺の連続攻撃を、カイ兄ぃは驚異的な反射神経とボディバランスで鮮やかにかわして行く。
くそっ、変態のくせに何て身体能力だ!

「やめるんだレン! 年上に憧れる気持ちは分かる、お前もそういう年頃だもんな! でもだからと言って、ミクのリップクリームを余すところなく舐め回すのはやめろ!」
「するかバカ!」
「ミクはお前の姉だぞ、越えてはいけない一線というものがあるんだ! ミクのベッドの枕カバーに、こっそり自分のブリーフを忍ばせておくなんてバカな真似はやめるんだ! 分かってくれレン!」
「自分の妄想を俺にすり替えんな! てか、よく思い付けるな、そんな最低な事!」

どすんばたん。
何とか鍵を奪いたかったが、長身のカイ兄ぃとチビの俺では、体格差はどうしようも無かった。俺は逆に、床に組み伏せられてしまう。

「悪く思うな。これも兄の務めだ」
「ちくしょー、離せー」
「ここで反省していろ。じゃ、俺は行ってくるからな」

なんで俺が悪いことになってんだ。
カイ兄ぃはマフラーを外し、俺の手足を縛る。
く、くそ、ここまでか。許せミク姉ぇ……!



「ただいまー」



その時だった。
何という天佑か、ちょうどミク姉ぇが帰ってきた。
玄関からパタパタと足音が近づいてきて、リビングにその華やかな笑顔を見せる。
そして俺達の姿を見て、目を丸くした。

「何してるの?」

まあ、驚くわな。
マフラーで手足を縛られて床に転がっている俺と、それを傲然と見下ろしているカイ兄ぃの姿を見たら。
俺は説明しようと口を開きかけたが、それよりも早くカイ兄ぃがもっともらしく言った。

「レンの奴があんまり聞き分けのないこと言うもんだからな。ちょっとお灸を据えてやってたんだ」
「そうなの? あんまりやんちゃしたらダメだよー? レン君」

おい、あっさり信じるのかよミク姉ぇ。ちくしょう理不尽だ。
一瞬だけそう思ったが、しかし俺はすぐに考えを切り替えた。
……ま、結果的にカイ兄ぃの魔手からミク姉ぇを守れたんだ、別に良いか。お手柄自慢なんて、男のやる事じゃねーぜ。結果オーライってことで。

「お兄ちゃん、着替えるから部屋の鍵、返して」
「あ、ああ……」

カイ兄ぃは渋々鍵を返す。
そしてガックリした様子で、リビングを出てどこかへ去って行った。ザマミロだ。
ミク姉ぇが俺の手足を縛るマフラーを解いてくれた。

「レン君、大丈夫?」
「ああ、サンキュ。言っとくがなミク姉ぇ、俺は別に何も悪いことなんてしてねーからな?」
「分かってるよ。また2人で何か、悪ふざけでもしてたんでしょ」

しょうがないなあ、と呑気そのものの顔で笑う。
ま、そう思ってんならそういう事にしとくか。平和が一番だ。

「ミク姉ぇ、悪いことは言わねぇ。鍵は自分で持っとけ」
「どうして?」
「どうしてってな……。その、誰かに悪用されたら大変だろ」
「あはは、嫌だなぁレン君。そうならないために、お兄ちゃんに預かってもらってるんだよ」

まったく疑問のカケラも抱いちゃいねえ。
その素直さは美徳なのかも知れないが、同時に問題でもある。
でも事情をそのまま説明したって、どうせ信じやしないだろう。やれやれ、手間だがここは1つ、別の方向からアプローチするか。

「失くす失くさないの問題じゃねえ、自立心の問題だ。自分の部屋の鍵は自分で管理する、これって当然だろ?」
「う~ん、それはそうだけど……でも私、本当にすぐ失くすから……」
「だからって甘えてたら、いつまで経ってもそのまんまだ。リンだって自分の鍵は自分で持ってるんだぞ、妹に負けてていいのか?」

リンを引き合いに出すと、効き目があったみたいだ。
ミク姉ぇは口をへの字に曲げて、「むむむ」と考え始める。

「癖をつけてしまえば、何てこと無えって。習うより慣れろって言うだろ?」
「うん、そうだね。分かったよ、私やってみる!」

本当に素直だな、ミク姉ぇは。
俺は微笑ましい気持ちになる。カイ兄ぃがあんなに熱を上げる気持ちが、ちっとは分かる気も……いやいやいや、それは無いな。今のはナシだ、俺はあんな変態じゃねえし。

「じゃあ私、部屋で着替えてくるよ」
「ああ。お疲れ」

ミク姉ぇは立ち上がり、長いツインテールをなびかせて俺から離れる。
その時だった。





ふわっ


―――― あ、良い匂い。







……思った。
思ってしまった。
あまつさえ、いま無意識にミク姉ぇの匂いを追って、大きく息を吸い込んじまった!
しまった、何てことだ! 俺が! この俺がっ!

「ぐおお、そ、そんなバカなぁ~~~!」

頭を抱えて煩悶する。
いや違うんだ、これは何かの間違いだ。冷静になれ鏡音レン、相手はミク姉ぇだぞ?
ミク姉ぇなんて、いつも軽率で危なっかしくって、頭ん中がお花畑の残念姉で、俺に余計な気苦労ばかりさせて、目ぇ大きくて綺麗で、年上のくせに可愛くて、ホント放っとけないっつーか良い匂いで、とりあえず良い匂いで、何つーか今、すっげえ良い匂いがして……!

「ただいまー」

丁度その時、リンが帰って来た。
リビングに入ってきたリンの両肩を、ガシッと両手で掴む。

「リンッ!」
「きゃあ! な、何よっ!?」
「ミク姉ぇがすっげえ良い匂いだったんだ! だけど俺は変態じゃねえからなっ!」
「離せこの変態ッ!」

リンは俺に、まっすぐ右の正拳突きをプレゼントしてくれる。
そしてリビングを飛び出して行ってしまった。

「ミク姉ぇ、ミク姉ぇ! レンがトチ狂ったー!」

ち、違う、違うっ!
……ハッ、そうだアンタ! そう、そこのアンタだよ!
まず最初にこれだけは言っておきたい。それはな、俺はアンタなら分かってくれると信じてるって事だ。
俺は人を見る目には自信がある。アンタの目を見れば分かるんだ、きっとアンタなら分かってくれるってな。
そーゆーわけで、ひとつ頼むぜ。俺を失望させないでくれよ?
じゃあ、まずは落ち着いて俺の話を聞いてくれ。







 俺 は 変 態 じ ゃ ね え ! !








          『 魁! ボカロスピリッツ 』

               おしまい

10周年、本命はこっちです。→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8589791

本当にロクなこと呟いてませんが、ついったもやってます。
→ http://twitter.com/jikyu310

よろしければ是非に。m(_ _)m

もっと見る

作品へのコメント6

ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!

新規登録|ログイン
  • userIcon

    ご意見・感想

    全部読んでから忠告に気づきました。
    この兄弟に永遠の愛を誓います。(特に兄)
    もぅ本当に文章センスが只者じゃありませんv

    2012/03/26 04:27:14 From  夜羽

  • userIcon

    メッセージのお返し

    気付くの遅れました、申し訳ないです。
    お読み頂きありがとうございます! またおヒマな時にでもどうぞっ!

    2012/03/27 23:05:53 時給310円

  • userIcon

    ご意見・感想

    こんばんは、もはや遅刻がデフォルトになりつつあるスコっちです。

    女子供が見るもんじゃないって…前のバージョンの方に書いてるのは確信犯なんですよね?
    KAITOとレンの変態なんだかセーフなんだか微妙なやり取りが読んでいておかしかったです。

    まあでも、あれですね。男というのは皆大なり小なり変態な部分を持ってる生き物ですよね。
    …と、中学時代の同級生がそのようなことを言ってました(笑)

    真面目な本編より息抜きのつもりのちょっとした短編の方が筆が進むというのは、自分もよくわかります。
    というより、今現在まさに自分がそんな感じです。
    お互い頑張りましょう。

    では、この辺で。

    2010/10/29 02:51:54 From  スコっち

  • userIcon

    メッセージのお返し

    >確信犯なんですよね?
    ええ。 ←

    こんばんはスコっちさん、お読み頂きありがとうございます!
    ご立派な友人をお持ちですね。世の中の真理を見事に言い当てておられる。見上げたものです。

    いや?、息抜きの小説ほど早く進むって、あれですね。
    テスト前になると無性に部屋の掃除をしたくなる心理に似てますよねw
    かくいうスコっちさんも、短編を上げられているご様子。コメしに行きますね?。
    本当に、お互い頑張りましょう!

    2010/10/29 21:16:44 時給310円

  • userIcon

    ご意見・感想

    こんにちは、sunny_mです。
    面白すぎて、どうしようかと思いましたwwwww
    カイトさんの妄言が妙にリアルな変態さで素晴らしいですwww
    そして、読んじゃったし!
    だけどもう女の子なんて言えるほど可愛い年齢でもないから大丈夫!

    大丈夫レン君。良い匂いのする綺麗なお姉さんがいたら、誰でもその空気を胸いっぱいに吸い込みたくなるものだよ。
    と、生温かい眼差しで慰めたくなりました(笑)

    男兄弟は、きっとこんな感じのじゃれあい(?)をするのだろうなぁ。
    とりあえずカイトさんは、変態だからこそ身体能力が高いのでしょうね。

    それでは!

    2010/10/27 20:20:08 From  sunny_m

  • userIcon

    メッセージのお返し

    あ?……読んじゃったんですか、sunny_mさん。あんなに忠告しといたのに。 (・ω・`)

    ウソです、読んで頂いてありがとうございます!
    今回の一番の萌えキャラは、実はレンだと思っております。年上のお姉さんの香りに大慌てする様が、我ながらイイカンジに書けたのではないかと。サブタイトルは「思春期の戸惑い」でお願いしますw

    やっぱ僕は、男同士のアホ話が一番書きやすいですねー。
    いま手元で書いてる本命の小説はサッパリ進まないのに、コレはほんの数時間で書けてしまいました。
    負け戦ムード濃厚ですが、がんばって書いてますので、よろしければ本命の方もよろしくお願いします!

    2010/10/27 22:05:17 時給310円

  • userIcon

    ご意見・感想

    時給310円氏の作品はいつも憧れますなぁ。

    やはり、ふとした女子の仕草などに萌えてしまうのは男の本能みたいなもの何ですかね?
    レンは頑張って常識人の立ち位置をキープしようとしておりますがw

    やはりこの世の中に本当の常識人というのはいないのでしょうかw?

    2010/10/27 00:03:40 From  †B†

  • userIcon

    メッセージのお返し

    おー、お久しぶりです†B†さん!
    お久しぶりなのに言うのも難ですが、憧れる対象、間違ってますよw
    ご質問にマジレスしますと、もし仮に「本当の常識人」なるものが実在するとして。
    そんなツマンネ―奴とは友達になりたくないですなぁw

    2010/10/27 22:03:24 時給310円

もっとみる(6)

もっと見る

▲TOP