KAITOful☆days #13【KAITOの種】

投稿日:2010/09/30 18:33:22 | 文字数:2,536文字 | 閲覧数:149 | カテゴリ:小説

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第2部セカンドエピソードは、前後編でお送りします。ちょっと今回短くなりましたが、キリがいい場所で切ったので…。

前回で学習したので、サイトメイン(むしろオンリー?)だけど一人称にするのは止めておきましたw
ずっと一人称で書いてたので、何か若干の違和感がありますが。

 * * * * *
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TEXT
 

8月も半ばを過ぎて、酷暑もようやく幾らか落ち着き始めた。日差しはまだまだ痛いが風は爽やかで、夕方には随分涼しい。
カイトはそうして過ごし易くなる頃を見計らい、バルコニーに出てハーブに水を遣る。サイトも花や植物が好きらしく、一緒にプランターを覗いたりしている。
もっともそれも、『おともだち』が来るまでだけれど。

「ねこさん ねこさん、もふもふですー♪」
このバルコニーを散歩コースにしている猫は毛並みが素晴らしく、蕩ける手触りでサイトのお気に入りだ。猫の方でもサイトを気に入ったらしく抵抗が無いのをいい事に、こうして大喜びでくっついている。
「暑くないかい、サイト? あんまりくっついてると、また倒れるよ」
「へーきですー」
サイトが猛暑に負けて高熱に苦しんだのは記憶に新しく、カイトは時々注意する。当のサイトは喉元過ぎれば何とやらで、涼しい顔で聞き流していたが。
まったくもう、と思いつつ、カイトもあまりしつこくは言わない。そこまで暑くなる前に、猫の方で耐えかねて離れるだろう。そんな風に考えながら、水遣りに意識を戻した。

事件はそこへ涌いて出た。

チリリンッ。
軽やかに跳ねる鈴の音に目をやると、猫がバルコニーから出て行くところだった。
その背にサイトを乗せたままで!
「え?」
一瞬理解が追いつかず、カイトの口から間の抜けた声が漏れる。空いて一拍、
「うわーーー!?」
ボーカロイドの声量を余す事無く発揮した驚きの叫びは、通りの向こうまで響き渡った。

「ちょ、サイト! 乗ってたら駄目だろ、跳び降りてっ!」
焦りまくったカイトの声に、サイトの悪戯心がくすぐられる。困らせたいと思うわけではないが、何だか――ほんのちょっと、楽しくなってしまったのだ。
それに冒険心も大いに刺激されていた。何しろ自分は今、猫の背に乗って外の世界を見ている。外出そのものは毎日しているけれど、カイトの肩に乗って見ていたのとこれとは、まったくの別世界だ。地面が近く、その分だけ、いつも以上に全てが大きく映る。はっきり言って、これは――
「たのしー、ですー!」
思わず口に出さずにはいられない高揚感。きゃらきゃら笑って、サイトは猫任せの『冒険』に没頭した。



猫はサイトを乗せたまま、いつも通りの道を往く。塀を渡り植え込みをくぐって、小さきもの以外には通れない『道』を往く。
初めは面白がっていたサイトも、こうなると不安になってきた。この『世界』に対して、自分があまりに小さい事は理解している。カイトが追いかけて、連れ帰ってくれなかったら、自力で帰る事なんかできるのだろうか――?
「ね、ねこさん……さいと、帰れなくなるですよ……」
ついつい弱気な声が出る。猫が耳をぴくりと動かし、応じてくれたかと希望を抱きかけた、その時!
バサバサッ!
空を叩く羽音が響き、振り返ろうとしたサイトはそのまま猫にしがみつく事になった。驚いた猫が、全力で逃げ出したからである。

「ミギャアーッ!」
「わ、わっ! ねこさん、待つでs」
止めようとした声もぶつりと切れる。禍々しいほど黒い羽根が、恐ろしい羽音と共に振ってくるのだ。必死で視線を上に向けると、数羽の烏が競い合うように追ってきていた。ギャアギャアとせわしく声を上げ、時折ザッと降下して襲い掛かる。巨大な嘴や鋭い爪に掠められ、猫はますます半狂乱になり、サイトの目にも涙が浮かんだ。
「ひぅ――ますた、ますたぁっ」
口走ったのは、この場にはいない人の名。だがその名が、サイトの胸の勇気を奮わせた。
暴れ馬の如く駆ける猫の毛をしっかりと片手で掴み、空いた手は自らが持つ唯一の武器を探る。キッと空を睨み、襲い来る暴君との距離を見て、
「これでも喰らうですっ!!」
大きく開けられた嘴の中、或いはその上を狙って、力いっぱい『キャンディ』を投げ付けた!
パチパチ、パシィッ!
「「ギャアァッ!」」
野太い悲鳴の不協和音。ぶつかって弾ける正体不明の攻撃に烏達が恐慌に陥った隙に、サイトを乗せたままの猫はその場を離れていった。



「ねこさん、止まるです、もぅだいじょーぶです」
騒々しい声が遠のいて、サイトは猫に声をかける。だが猫はすっかりパニックを起こし、最早周りなど目にも耳にも入らぬようだった。
「ねこさん……!」
いくらなんでも、全速力で走る猫の背から跳び降りるわけにはいかない。何度も呼びかけながらしがみついているしかないが、猫はサイトの存在を忘れて無茶苦茶に駆けずり回り、とうとう大きな樹に爪を立て、相当な高さの枝まで登ったところでようやく止まった。それとて、落ち着いたというよりは体力の限界がきただけのようだったが。

ともあれ何とか猫が止まって、サイトはずるりとその背から降りた。彼も猫も疲れ果て、息も絶え絶えな有様だったので、しばらくの間はゼェハァと荒れた呼吸の音だけが繰り返される。
やがて息が整い、ようやく落ち着いたところで、ぐるりと周囲を見渡してみた。どうも小さな公園の中にある樹の上らしいが、辺りに人の声はない。随分と遠くまで、たくさんの屋根が見えるという事は、今いるのがそれだけ高いところだという事だろう。
腰を落としてそっと枝の下を覗き、サイトの背中を冷たいものが伝った。ぐらりと眩暈がする。とても自力で降りられる高さではない。
「あ、ね、ねこさん。ねこさん、降りるです」
「ミャアア……」
縋る声に答えたのはサイトに負けず劣らずの、弱り怯えきった鳴き声で。どうやら、猫にも降りられなくなったようだった。

「降りれないです……?」
震える声で呟いて、それきり何も言えなくなった。頭が真っ白になって、何も考えられない。体までふらついて、はっとしてバランスを取り、慎重に座り込んだ。下を見ようとして、目を逸らす。
必死で戦って一度は引っ込んだ涙が、また両の瞳に盛り上がった。気付く間も無く、ぼろりと零れる。
「帰れない、です……?」
帰りたい。小さな体いっぱいに、張り裂けそうな痛みとも苦しみともつかないものが溢れかえった。
絶望、なんていう言葉は、まだサイトには難しくてわからないものだけれど。

状況は、絶望的だった。

【お知らせ】テキスト投稿が非常に使い辛いため、こちらでは歌詞や音源のUPとコラボ関係のみに縮小、以後の小説投稿はすぴばる&ピクシブへ移行します。

■小説メイン時々歌詞な字書き……だった筈が、動画編集やボカロ調声、作曲にまで手を出してます。どうしてこうなった。

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