欠陥品の手で触れ合って・第二楽章 9 『Oliva』

投稿日:2009/06/30 01:39:59 | 文字数:2,259文字 | 閲覧数:189 | カテゴリ:小説

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欠陥品の手で触れ合って・第二楽章9話、『Oliva(オリーヴァ)』をお送りいたしました。
副題は、『オリーヴ』です。
凛歌の夜色の深淵によく似た、オリーヴ色の深淵。
さて、敵陣スーパードSタイム発動中ですが・・・。
書いてて、すんごく楽しかった。(←この変態め)
いや、うp主はSじゃないですよ?多分。

それでは、ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
次回も、お付き合いいただけると幸いです。

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TEXT
 

それは、僕が人気のない夜の中を彷徨い歩いていたときに現れた。

「いよぅ、兄弟。」

唐突に、目の前に現れた赤色。
赤色のあいつ、黒色の僕。
背の高いあいつ、あまり高い方ではない僕。
にやにや笑うあいつ、驚愕を貼り付けた僕。
奇妙な鏡を間に挟んだように、対峙する。
あるいは、言われたとおりの『兄弟』、か。

「頼みがあるんだよ、すげぇ簡単なお願い。」

こつ、と黒いブーツがアスファルトを叩いて間合いを詰めてくる。
にやにやとした笑みは、不吉な想像しか掻き立てない。
ちりん、と澄んだ音を立てて銀の指輪が足元に落とされた。

「なあ。」

あいつの手の中にあるのは、革をなめした黒い鞭。
びしり、と足元を打ち据える音が高々と響く。

「死んでくれよ。」

ぅゆんっ、と大気の唸り。
悪寒がしてほとんど転げるように避けると、シャツの裾がぱっくりと裂けた。
冗談じゃない。
あんなものをマトモに喰らったら、冗談抜きで肉が裂ける。
ちょっ、と舌打ちする音が聞こえた。

「うわ、避けやがったし。とっとと死んどけよ。凛歌ちゃん、やっと大人しくなったんだぜ?あとはさ、お前が死んでくれればパーフェクト。」

右顔面に鞭が迫って、慌てて回避。
眼帯で視界がさえぎられているせいだろう、反応が遅れる。
裂けて緩んだそれを、むしり取った。

「・・・・・・凛歌に、なにしたの。」

ポケットに押し込んでいたアイスピックを握る。
答えによっては生きて帰さない。
答えによらずとも誘拐の時点で半殺し決定。

「答えて。なにしたの。」

まあ、生きて帰さない場合も、凛歌の居場所を聞く前に殺しちゃったらいけないから、結局最初は半殺しにするけど。
どうも、凛歌がいないことでどこかの箍が外れかかっている気がする。
思考が、酷く凶暴な方向に流れていく。

「馴れ馴れしく呼ぶなよ、俺のペットを。」

ぶつり、と思考を司る回路のどこかが、今の一言で完全に焼き切れた。
握ったアイスピックを取り出し、刺突の構え、走る。
ただまっすぐ、歪な鏡像の心臓を狙って。
足に絡みつく何か、まるで蛇みたいに。
縺れ、無様に転ぶ。
びしり、背中に衝撃。
皮膚もろとも、肉を引き裂く苦痛。
目の前の歪んだ鏡像の鞭が足に絡み付いて転倒、そのままその鞭が勢いをつけて背中に振り下ろされたのだと、理解するのに瞬き2回ほどの時を要した。
そのまま、太腿の辺りを踏みつけられ、押さえつけられる。
びしり、再び衝撃。
びしり。
びしり。
衝撃。
衝撃。
衝撃。
目の前に転がっていた指輪を握りこんで、耐える。

「刀剣は『死』だが・・・。」

頭上から、くつくつと喉を鳴らす音と共に、声が降る。

「鞭は、『死んだほうがマシ』だ。『牛の腱』って呼ばれる鞭は、一見たいした威力があるようには見えないが・・・脊髄の基底んトコを軽く打っただけで死ぬか不具にしちまったらしいぜ?もっとも、コレはそんなに威力はない。その代わり、楽には死ねない。」

さらに、衝撃。
視界が赤く灼ける。

「さて、後何回くらいで貧相な『片目』は靴裏舐めながら『アカイト様、どうか殺してください』って懇願するだろうな?」

一際強い衝撃が、背中に叩き込まれた次の瞬間だった。

「おやめ、アカイト。」

一見穏やかな、男の声。
とりあえず、背中への衝撃は止んだ。

「まったく、隠れ家を飛び出していったと思ったら・・・勝手なことをしてくれたね?アカイト。その子には、まだ死んでもらっちゃ困るのだよ。とてもとても困る。」

黒い革靴が目の前でこつりと鳴り、その足がそのまましゃがんだ。
オリーヴのような黒緑の深淵と
眼が
合った。
僕の良く知っているあの夜色とよく似た、しかし、どこかに決定的なズレのある眼差しだった。

「はじめまして、に、なるのかな?わたしの可愛い『愛娘』の脆弱なる恋人にして、使い魔君。」

穏やかに微笑する男。
しかし、その微笑には、僅かに嘲笑が紛れ込んでいる。

「君は、自分が愛した存在が、どんなものか、知っているのかな?」

細められた黒緑の深淵。

「アレは、そもそも人間ですらない。」

どろりとして、得体が知れない。

「4、5世紀ほど前に、とある高名な女魔術師が存在していた。知っているかな?」

気持ち悪い。

「『東の黒き魔女』。」

「・・・・・・ッ!?」

聴いたこともないはずの単語に、心臓が跳ねた。

「『旧き神』と呼ばれ恐れられた存在を退けた、東洋人の魔術師。呪歌を不得手としながらもその古代の精霊に近い強大な魔力と粟粒に絵を書くような精緻な術式でもって、他者の使い魔の強固な契約を破棄し、手に入れた魔女。」

どくどくどく、と心臓が煩い。
跳ねて跳ねて、口から飛び出しそうだった。

「彼女の左腕は、『旧き神』を退けた際に失われた。・・・苦労したよ。とある国のとある教会が、ミイラになったその腕を『聖女の腕』として奉っているという噂を耳にしなければ、恐らく君たちは出逢っていない。」

胸の奥のナニカが、騒ぎ立てる。

「その腕から採取した情報を元に、この世に定着させるために彼女の血族に連なる女を母胎とし、その血と私の血を依代に、この世に再び生み出された魔女。私が作り上げたホムンクルス。」

これ以上は・・・。

「その魔女の名は、リンカ=ツゴモリ。月隠 凛歌、だ。わたしの『愛娘』だよ。帯人君・・・『赤眼の黒き獣』。」

右眼が、ずくりと疼いた。

日々妄想を文章にしています。

妄想・・・いえ、想像たくましいです。

甘やかされるよりは甘やかしたい人(だと自分では思っている)



(追記)
約一年ぶりに活動再会という名の復活を果たしました。
以前のような更新ペースは守れないかもしれませんが、見捨てないで下さると嬉しいです。
無言で消えて、申し訳ありませんでした。

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