「夏空」小説/第五話

投稿者: usericonルナリーさん

投稿日:2020/08/02 13:51:24 | 文字数:4,225文字 | 閲覧数:77 | カテゴリ:小説

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色々面倒くさい話になってきた。

この物語で、本当の作曲のいろはが分かるとは、

絶対に思わないで下さい。

読者様の未来が死滅しますよ。

と、ちゃんと断ったから、まだ続きます。

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TEXT
 

 イベント最後に、参加アーティスト全員がステージに集まった。
 MCさんの「ビバー!」と言う声に合わせ、ステージもオーディエンスも、参加者全員で、「ラウド・アラウンドー!」と、叫ぶ。
 会場中の仕掛けから銀テープが飛び出し、拍手が起こる。銀テープを手にくるくる撒いて居る人は、一人や二人ではない。
 ステージの集団の外側に居た私も、近くに落ちて来た銀テープをふざけて手にまいて、ぶんぶん振るって見せた。それから、そのテープを手から外し、近くの客席に放った。
 何の変哲もない銀テープなのだが、何人かがよってたかってその銀テープの取り合いをしていた。
 「ミュージシャンが触った物」と言う、よく分からない特典がついて居るんだろう。
 この後は打ち上げが予定されていたが、私は参加を断って、帰る支度をしていた。何せ、これから深々と謝らなければならない人物を、故郷に残してきている。
 テットさんは、他のアーティストさん達に混じって、打ち上げ会場に行ってしまっていた。あれだけ自分達の古今を語り合った人が、帰り際に居ないのは、少し寂しい気もした。
 控室の扉が少し開いた。誰だろうと思って目を向けると、ミユゥさんが様子を見るように控室の中を覗いている。
「どうしたんですか?」と聞くと、「今、グミーさんだけ?」と聞いてくる。
「そうですよ」と答えると、ミユゥさんは、後ろから誰もついてきていないことを確認してから、控室に入ってきた。
「あの…さっき、ほんとのこと言えなかったんだけど、実は、一曲だけ聞きに行ったの」と、ミユゥさんは打ち明けてくれた。「『ローラーロージー』。私も、あの曲に救われた一人だから」
 突然の告白に、私は頭が真っ白になり、「あー、はい。それは…」と、気の抜けた声で訳の分からないことをブツブツ言ってから、我に返って姿勢を正し、「ありがとうごさいます!」と言って、一礼した。
「お礼が言いたいのは私のほうよ。私も、まだ信じてるの。今まで出逢って別れてきた人達みんなに、もう一度逢えたら、もっと分かってもらえることがあるんじゃないかって」
 そう言われて、私はその歌詞を書いたときの自分の子供っぷりを思い出して、赤面した。
「そんな…。ミユゥさんのことは、きっとみんな分かってくれてますよ」と、ありきたりな返事をすると、「そうだと嬉しいけど、そうじゃないことのほうが多いんだって事も分かってる」と返ってくる。
 ミユゥさんは、普段は絶対に見せない、少女のようなあどけない笑顔を浮かべてから、「その事、いつかもっと詳しく話せると良いな」と言った。
「是、是非!」と言って、私は荷物の中から、慌ててクリスタルフォンを取り出し、ミユゥさんの連絡先を聞いた。

 学校帰りに、ルーラーの着信音が鳴った。グミーからだ。
「6月20日。17時58分。我、郷里に到着せり。後日、詫び状を持って伺いたし。御身の所存の時刻と場所を指定申し込み致したい」
 どうやら、お騒がせ魔が帰ってきたらしい。
 そして、詫び状とやらを持ってくるので、私の都合の良い時間を指定してくれ、と。私も、怒りは沈静していたので、同じような文章を返した。
「よかろう。今週末、土曜の昼12の刻に、クルアの中央区にある『カフェ・ショコラート』にて待つ。時刻に遅れれば、二度はないものと覚えよ」
 返事はすぐに来た。
「承知つかまつった」
 うむ。このくらいの覚悟があるなら、ちゃんとしたお詫びも聞けるだろう。ついでに、私のお願いもしやすいと言うものだ。
 制服姿の私は、新しい目標に向かって、夕日の中で背を伸ばした。

 26日の土曜日、11時50分に、グミーは「カフェ・ショコラート」を見つけ出し、私の目の前の席に着席した。
「申し訳ない。ま、まず水を…」と、汗だくでゼーゼー言っている。どうやら走ってきたらしい。私がウェイトレスさんを呼んで水を頼むと、すぐに冷えた氷水が運ばれてきた。
 グミーは、一気に水をあけ、氷を噛み砕く。うーん。こう言う所は、私の友達って感じだなぁ。
 一息ついたグミーは、私との約束をすっぽかす前後の話を聞かせてくれてから、「詫び状」を本当に提出した。
 古文をちゃんと覚えてないと読めない文章で、「なんでも一つお願いを聞くので、この件は許していただけないでしょうか」と書かれている。
「お願いは、なんでも良いの?」と、私は問いただした。
「良いよ。でも、1つだけね。もちろん、良識の範囲で」
「じゃぁ、お願いするけどー」私はしたり顔で言った。「私に音楽教えて」
 グミーは、しばらく間顔だったけど、「ん?」と聞いてきた。「なんだって? もう一度言って」
「私に音楽教えて」と、私は繰り返した。「私も、ブラスバンドで鉄琴叩いてるの飽きたの」
「ブラスバンドは、ちゃんとした音楽だよね?」と、グミーは今一つ意味が分かってない。
「別のジャンルが知りたいってことだよ。ポップとかロックとか、テクノとかトランスとか」
「チューナーズ聞けば?」
「どんな風に作って、どんな風に弾いて、どんなふうに歌えば良いのかが知りたいの」
「それ、お願い一つじゃないじゃん」
「それを総合して、『音楽を教えて』って言ってるの。これが私のお願い。聞いてくれないなら許してあげない」
「私に音楽のことを聞くの?」
「そうだよ? プロでしょ?」
「やめたほうが良いよ」
「なんで?」
「だって私、和音使ってないもん」
「え?」と、今度は私が二度聞きするほうだ。「なん…で、和音使わないの?」
「飽きたから。そりゃ、曲の一部に厚みが欲しいときとかに、ちょっとは使うけど、ここ2年くらいは、丸ごと和音で作ってる曲は無いよ」
「よく曲になるね」
「飽きるほど和音を使った後だからね。ミークだって、飽きるほど鉄琴叩いたんだから、何処かにそのリズム感とかメロディーは活かせると思うよ。だから、私から習うより、独学のほうが…」
「別に良いよ。和音じゃなくても。グミーが教えてくれるなら」
 私がにっこり笑ってそう言うと、グミーは表情をこわばらせたまま、「本気で言ってる?」と聞いてくる。
「うん」と私は答える。
「高校生の部活とは違うよ?」と、グミーはあくまで牽制する。
「うん」と、私は答える。
「後悔しない?」
「うん」
 そのやり取りが終わってから、グミーは深々と溜め息をついて、「分かった。まず、一曲丸ごと作ろう」と言い出した。
 私は、「レッスンだけで良いよ?」と言ったが、「作りながら教えたほうが早い」とグミーは言う。
 先生が、「そのほうが早い」と言うなら、従おう。
「よし。じゃぁ、グミー・メグさんの作曲と演奏と歌唱のいろはを教えていただきましょうか」
 こうして、私はその日から、グミーの「無料生徒」になった。

 最初の「講義」は、そのままカフェの中で始まった。
「音楽の基礎は知ってる上で話進めるから、分かんないことあったら自分で調べてね」と、ざっくりしたグミー先生は言う。
「はいはい」と気軽に答えると、グミーはまず二択を出した。「詞を重視したい? それとも、曲を重視したい?」
「それ、何が違うの?」
「歌を作るときに、重要になってくる。『言いたいことを伝えたい』か、『音楽の中に言葉を組み込みたい』のか」
「ミュージシャンって、みんな言いたいこと言ってるんじゃないの?」
「そう思われがちだけど、色々だよ。言いたい言葉に合わせた旋律を考え出す人もいるし、決まったメロディーの中に組み込めるように、言いたい言葉をアレンジする人もいる」
「へー。私はどっちでも良いけど」
「それが、どっちでも良いじゃ済まないんだ。これを先に決定しておかないと、後で泣くことになる」
「途中から変更することは出来ないの?」
「一人で作ってるなら、それもありだけど、ミークは一人で世間の荒波に立ち向かえる? シーンと静まった会場で、鉄琴だけで戦える?」
「そんな深い話になるの?」
「何かを表現するってことはそう言うこと。歌詞は、特に意味を込めやすい部分だから、曲の中の主軸だってことは、聴者である君にも分かるだろ?」と、グミー。
「まぁ、それは分かる」と私が答えると、「主軸がブレてたらどうなる? せっかく伴奏がエモーショナルでダイナミックなのに、陰気な声でブツブツ言ってる歌が入ったら?」とグミーは聞いてくる。
 私は、オーケストラで声楽が入る時のことをイメージした。「壊滅的」と私は答えた。
「それと同じ。まぁ、邪道を言うなら、そう言うアンバランスを売りにすることも出来なくないけど、最初のうちは避けたほうが良い。唯へたくそに聞こえるだけだ」
 そんなやり取りを30分くらい続けて、入り込みやすい「詞を重視」にして、詞からイメージする曲を作ることになった。
「歌のキーは後で決めよう。来週末くらいに私の家に来て。それまでに、何を歌いたいのか、目的を持って歌詞を書いておいて」
「歌詞か…。えー? どんなのでも良いの?」
「君の曲だもん。君の好きなこと書けば?」と、投げやりな先生は言ってから、「って言っても、たぶん最初は上手く書けないと思うから…ミークは、何色が好き?」と聞いてきた。
「オレンジ色」と答えると、「意外」と一言言ってから、「じゃぁ、オレンジ色で連想する言葉を綴ってきて。続きは、来週」とグミーは言って、水しか飲まないでカフェを後にした。

 家に帰ると、妹のネルが「ミー姉ちゃん。夕飯の係忘れてたでしょ?!」と、怒ってきた。
「人生の分岐点に立ってる時に、包丁は握れない」って言うと、「はぁ? 頭イカレタ?」と聞かれる。「ハク姉ちゃんが米研いでるから、ミー姉は野菜炒めて」
 きりきりと妹に仕切られながら、私はブレザーを脱いで椅子に掛け、手を洗って夕飯の支度にとりかかった。
 こんな家庭環境で、来週末までに「ロマンスいっぱい」な文章が書けるだろうか?
 私は、「創作者」として、学校以外でも公私を分けなければならない状態に陥った。
 眠る前になってようやく時間が出来たけど、ネルがテレビ見てる時と、お風呂に入っている間だけが、私が部屋で一人になれる時間だ。
 個室を与えられているハク姉に嫉妬しながら、私はとにかく短時間で「オレンジ色」に関する言葉を描き殴った。

作り続ける事を目的としているコラボになります故、月一でアイデアの元としてテーマを掲げております。
テーマから投稿された作品が色々な方々の目に留まり、そこから最終目標のコラボへと通づることが出来れば尚良しです!

楽曲でもよし、動画でもよし、小説、作詞でもよし、イラストでもよし。何でもよし!
とにかく作り続ける事!
身体に無理のないように!

完全思いつきなんで、上手くいくかわからないですが楽しく、そして素敵なオリジナル作品がどんどん増えていければいいなあと思います。

ルールは追々追加していくと思われます。

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