【カイメイ】 ネーコは貴族で丸くなる

投稿日:2012/06/10 18:48:58 | 文字数:5,670文字 | 閲覧数:441 | カテゴリ:小説

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DIVAモジュール『KAITOクラシック』と『MEIKOブラックテール』で脳内妄想よろしくお願いしますということでカイメイだと言い張ってみる

クラシック様は非常に冷徹でその他のメイコモジュ達を喰ったり捨てたりしてるドS。などという神々の落としたけしからん設定に喰いつき、しかしテールちゃんだけは手出さず猫っ可愛がりしてるヘタレ。などというけしかr

途中からめーちゃんがなんの生物なのか怪しくなってきましたがそれはそれで、とクラシック様も頷いておられますのでツッコミは不可です。じゃないと…ホラ、貴方の後ろにクラシック様が…


題名を「クラクラしテール」にしようと思ったのは秘密です

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TEXT
 

獣は嫌いだ。野蛮で品位がなく独善的で、理性が足りないわりに狡猾で生意気だ。
…それなのに、なぜか我が屋敷には一匹の獣がいる。


浅い眠りに微睡んでいた私の腹の上に、すさまじい衝撃が落ちてきた。
「ぐっ…!」
一気に目が醒める。何事かと焦るまでもない。私の寝室に進入できる者など、1人…いや一匹しかいないのだ。
ふぅ、と息をついて、目を開く。飛び込んできたのは想像していた通りの光景だった。
「ご主人さま」
キラキラと瞳を輝かせ、私をのぞき込む女。頭には茶色の耳に結い上げた髪と揺れるリボン、同じくふるふると揺れる無駄に大きな胸と、背後にはピンと立った尻尾。私に跨っているせいで、短かすぎるスカートの中の下着が丸見えである。
「……飛び乗るのはやめなさいと」
「ちがうでしょ!朝おきたらおはようございますですご主人さま!」
「…おはよう、メイコ」
「おはようございます!」
出鼻を挫かれ、メイコのあまりに嬉しげな様子に、叱りつけるのもどうでもよくなってしまった。どうせ言ったところで聞くまい。正しい人間の起こし方など、これまで何度言い聞かせたかわからないのだ。
私が目を覚ましたのにメイコはまだ退かない。目覚まし時計の代わりだけではなく、まだ何かを存分に期待している目で見つめてくる。
私はふと周囲に目をやり、見慣れたベッドの天蓋、大きな窓から差し込む光、部屋中を埋め尽くす整頓された本棚の列を眺め、思い出した。
この自室で目覚めるのは久しぶりだ。
「…いい子にしていたかい?メイコ」
言いつつ頭を撫でる。柔らかい耳がぺたんと下がり、すぐにクルルルル、とのどを鳴らす音が聞こえてきた。
その手触り、毛触りは、一週間前に出掛ける時に撫でた感触よりわずかに艶が足りない。拗ねてエサを食べなかったのか。よく眠れなかったのか。…それとも。
「悪さでもしていたか?」
「?」
「私がいないのをいいことに、屋敷の外に出て、どこぞのオス猫と」
冗談だった。少なくとも私はからかう笑みを保てたはずだが、メイコはそうと受け取らなかったらしい。
シャッ、とネコパンチが飛び、撫でていた手が跳ねのけられた。さすがに主人に爪は出さないが。
上目遣いで、恨みがましく見上げてくる瞳の淵に、あっと言う間に涙がたまる。
「…ご主人さまきらい」
主人に向かってなんたる暴言。頭ではそう考えているのだが、私の手はすぐさまメイコを抱きよせ、目元に光る滴に舌を這わせていた。そのままもう一度頭を撫で、のども指でくすぐってやると、またすぐにのどを鳴らしはじめたので少しほっとする。
一週間は、さすがに寂しかったのだろう。私にしがみつき、久しぶりの撫でられる感触を一欠片も逃すまいと目を瞑り集中して、一心不乱になっている。ふと尻尾に目をやると、天に向かって一直線に立ち、時折感極まってビビビと震えているのに、思わず苦笑した。
メイコは身を乗り出し、私の首元に鼻を擦り付けてきた。こうなるともはや会話が成立しなくなり、なかなか解放されない。
…そろそろ起き出したいのだが。
「メイコ」
宥めるように一応名前を呼んでみるが、やはり応答はない。
小さな舌がペロペロと首や口元、耳を舐め、その間も絶えずクルル、コロロ、とのどの鳴る音が聞こえている。
私はあきらめ、枕とベッドヘッドに背中を預けて押し倒されながら、メイコの好きなようにさせることにした。無理矢理はねのけることの方があとあと厄介だと身を持って知っているからだが、それにしてもと自己嫌悪せざるを得ない。
獣一匹、それもメスネコに対して、なぜこの私が譲歩しなければならないのか。面倒ならさっさと首根っこを掴んで引きはがして、部屋から放り出してしまえばいいだけの話…
…ふと、私の唇を舐めていたメイコと、目が合う。
ふにゃあと、とろけるような笑みで擦りつかれて、思わずこちらも脱力した。
……まったく、甘い。


                    *



「…ご主人さま、つかれてる?」
私の黒いコートを手に持って、メイコがおず、と尋ねた。
背中を向け、それに腕を通しながら、私は答える。
「なぜ?」
「…元気がないです」
私の仮面に気付ける人間など、この世にいないだろう。いたとしても片手で足りる。
しかしさすがに獣は別か。動物は顔色や声音ではなく、空気で、匂いですべてを察知するのだ。…この子の前だから油断しているわけではない、はずだ。
「大丈夫だ」
頭を撫でてやる。しかし、予想に反してメイコは眉を寄せたままだった。さっきまで元気に揺れていた尻尾が、やや下方に下がっている。私は小さく息をついた。
確かに、疲れてはいた。上流世界の馬鹿馬鹿しさ。薄汚い腹のさぐり合い。くだらない駆け引き。顔色をうかがって、言質を取ろうと手ぐすね引いて、わずかな隙を見つけては懐に忍び込もうと手をこまねく人間の愚かさ。どんなに忌み嫌ってみても、その檻の中からは逃れられない己に対する絶望。
―――そして、本当に手に入れたいものが何なのかすら、見つけられない。
赤が踊る。目の前で翻るドレス。もしくは黒と赤の人魚のようなドレープ。お菓子のように着飾った甘い少女の涙。淑女然とした娘の憐憫のほほえみ。ふわりとすり抜けていく白いコート。
「……ご主人さま?」
お前と、同じ顔の。
「ご主人さまっ」
慌てたような涙声に、は、と我に帰った。
…ダメだ。今この子の前で思い出すようなことではない。
「すまない、メイコ。泣かなくていい」
「…うー、…にぁ…」
主人の挙動を敏感に感じ取るメイコは、不安げに私を見上げてしがみつく。
一週間ぶりということもある。この調子では、今日は一日私のそばを離れないだろう。
「…お前、ちゃんとエサは食べていたか?」
ふと思いだし尋ねると、案の定メイコはうっ、と怯み、耳を倒した。叱られると思っているのだろう。実際少しばかり怒ってやりたかったが、それよりも保護欲が勝った。
この手のかかるネコは、私以外の人間の手から受け取るエサには、ひとまず毛を逆立てて威嚇する。世話係のメイドが何度も宥め、落ち着かせ、好物をチラつかせて、なんとか落ち着いた頃にそっと部屋を退却すると、次に様子を見に来た時には皿の中身は減っているということだが。
とりあえず、私がいないとあまり進んで食事をしない。
手を伸ばすと、叩かれると思ったのかビクリと身を竦ませる。その頭を撫で、安心させるようにゆっくりと声をかけた。
「…朝食はここに運ばせよう。お前の分も。それなら食べるだろう?」
途端に、パアァと日が射すような笑顔でメイコが大きく頷く。私もつられて笑った。するとメイコが全力で飛ぶように抱きついてきたので、咄嗟に受け止めながら、背後のベッドに再び座り込んでしまう。
「…メイコ」
「ご主人さま、やっと笑った」
咎める声を遮って降ってきた言葉に少し目を見張る。確かにそうだったかもしれない。それではこの子だって不安にもなるだろう。
「ご主人さまが笑ってるの、だいすきです」
「……それはわかったから、抱きつく時は力の加減をしなさい」
「ご主人さま以外にも?」
「…私以外に抱きつくことがあるのか、お前は」
思わず低くなってしまった私の声に、メイコはきょとんとして首を横に振った。
「いやです」
……いいとか嫌とかそういうことではないんだが。
まぁいい。
呼び鈴を鳴らそうと首を巡らせると、ふと扉の横の壁が目に入り、…沈黙した。メイコも不思議そうにそちらを振り向き、に゛ゃっ!と声を漏らす。
即座にそろり、と逃げ出す準備をはじめた尻尾をがっしと掴んでやった。お前の大好きだという笑顔、それでは大盤振る舞いしてやろうではないか?
「…やはり悪さをしていたな」
「~~…にゃ、にゃ」
「壁で爪研ぎするなとあれほど」
「だってぇ!」
「だってじゃない。お仕置きだ、腹を見せなさい」
獣にとって、仰向けに腹を晒すのは完全なる服従のポーズ。弱点であり、急所であり。そこを攻められればどんな獣とて陥落する。
「や、やーだーぁ!ごしゅじんさ、ごめなさ・・・やだやだ、んにゃ、くすぐった、ひゃは、…にゃああぁー!!」
我ながら凄みのある笑みを張り付けたまま、メイコがぐったりと反省するまで全身をくすぐり続けた。



                    *




飼い慣らされた飼い猫。今ではそう見える。
しかし、牙をもがれたように見えても、私の命令とあらば、隠し持った鋭い牙で即座に敵の喉元に噛みつき、心臓を爪で切り裂く虎となる。

このネコ、本来は気質の荒い野良猫だった。
闇夜を音もなく走り、どんな堅牢な館にも忍び込み、隠された宝を盗み出し、姿を見せることなく消え失せる。特定の主を持たず、クライアントに依頼を受け、報酬次第でどんな任務でもこなす凄腕の美しき女怪盗。

そんな野良が、私の屋敷に忍び込んだのが運の尽き。
捕らえた野良猫の顔を見て、私は一人驚愕した。
そして誰に何一つ説明することなく、このネコを飼うことを決めたのだ。
はじめは何度引っかかれ、毛を逆立てられたことか。毛先一本撫でさせようとはしなかった。どうあっても脱走しようとするので、閉じこめた部屋の奥、一日中かごに丸まって顔すら見せようとはしなかった。
私はそれでも別によかった。ただ、このネコがこれからも仕事のたびに見知らぬ男の僕となり、主の好きなように扱われることに虫酸が走っただけだ。
ちなみに、私の屋敷を狙ったメイコの元クライアントはもちろんのこと、その前、その前、延々と、辿れるだけの履歴を遡り、かつてメイコを雇ったことのある連中を調べあげ、その全てに制裁を加えておいたことは特筆すべきでもないだろう。何も全員の息の根を止めるなどという暴挙には及んでいない。半分程度は生きている(はずだ)。


…いくら野良とはいえ、なぜこんなに人を嫌がるのか。人慣れしていないわけでもない。人に雇われ、人に付いて生きてきたのだろうに、と、単純な疑問は抱いていた。
ある時眠っているメイコに近寄り、なんの気なしに、白くすべらかな頬をそっと撫でた。
その瞬間だ。この私が目に留まらぬほどの速さで、メイコの爪が私の手の甲を切り裂いた。
驚いて見やると、メイコは壁にピタリと身を寄せ、胸元の手をぎゅうと握りしめて、私を今にも殺さんばかりの目で睨みつけている。耳も尻尾も、ぶわぶわと毛が逆立っている。
その様子は確かに俊敏な怪盗の姿を彷彿とさせたが、私には精一杯の虚勢を張っているようにしか見えなかった。
弱い、生き物。所詮女、所詮メスネコだと。
尊厳を踏みにじられ、愚かしい人間共に一体どんな目に遭わされてきたのか。
私は知らない。知ることはできただろう、しかし知りたくもない。
メイコの心の根本に根付いている、人間への深い不信感。
似たような嫌悪を自分自身にすら抱いている私には、この子を無理矢理懐柔しようなどという気は起きなかった。
ただ、死ぬまで私のそばから離さないと、その時私はそれだけを誓ったのだった。


                   *



ピチャピチャと、ミルクを舐める音がしている。
正確には、ミルクをつけた私の指を舐める音だが。
一人でも飲めるだろうと言いたいのだが、私がいる時は、こうしていちいち指に付けてからでないと舐めようとしない。もちろんわざわざ白い手袋は外して、だ。
まったく面倒なネコである。
「…これでは、いつまで経っても終わらないだろう」
指につく液体の量などたかが知れている。器に半分ほど満たされたミルクを見て、うんざりする。
メイコは聞いているのかいないのか、久々の私との食事にご満悦で、次のミルクを嬉しそうに待っている。私はため息をついた。
「―――まったく。体ばかり発達して、中身は子ネコのままだな、お前は」
「んー…む?」
言われた意味を理解したのかしないのか。私が渋い顔をしたのに気付き、メイコは主を怒らせたのかと尻尾を丸めた。
私は濡れた指をメイコの口から引き抜いて、ミルクの入った器を手に取る。中身を一度に口に含み、捉えたメイコに口付け、直接飲ませてしまうことにした。
噎せないように少しずつ口の中に送り込んでやると、メイコは美味しそうにコクコクと飲み込む。はじめからこうすればよかったと、少し後悔した。



メイコの口元をきれいに拭ってやり、食器を下げさせると一息ついて、ソファに腰掛けた。
すかさず、膝の上にメイコが乗り上げてくる。
ふにゃふにゃとした耳の付け根をいじってやると、泣きそうに鳴いた。頭を撫でる。触れている体から伝わるわずかな振動。ぐるぐる、るるる、ごろろろろ、と喉の鳴る音。ご機嫌度合いがこれ以上ないことはこの音でよくわかる。
日差しがちょうどソファの横から差し込んで、私たちを暖かく包み込んでいた。
メイコは私の膝を枕にして、いつの間にか眠っていた。体の下になっていたコートの裾を引きずりだして、防御力のまるでない体にかけてやる。

―――こんな甘えたなネコでも、私が危険に晒されれば、命を省みず敵に向かっていくのだろう。
いざという時は腕の立つ、主を護る用心棒。周りはそう思って、メイコを屋敷に置いている。
私はそんなものはいらない。そんなことの為にお前を手元に置いたのではなかった。
はじめは、嫉妬。
それから、愛玩動物にでもなればいいと。
しかし、この子は自分にとってMEIKOでもペットでもない、メイコという唯一の存在になっていった。
これから先、この子が辛い思いをしない為ならどんなことでもすると当たり前のように考えている自分に気付き、私は一人苦笑する。
「……ん、にゃ、ぁ……かいと、さま…」
幸せそうに身動ぎしたメイコが呟いた寝言に思わず頬をゆるめ、艶めいた茶色の髪を、ゆっくりと撫でた。

MEIKOさんを筆頭に、年長組、大人組、ボーカロイドが大好きです。

液晶の向こうに行くことは諦めたので悔しいけどめーちゃんはカイトさんに任せることにしました。幸せになれ。幸せになれ。

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