トリコロール・ラプソディ

投稿日:2010/12/13 17:28:47 | 文字数:4,339文字 | 閲覧数:282 | カテゴリ:小説

ライセンス:

KAITO+がくぽ+キヨテルと、女子大生マスター。
若干カイマス……というか、カイ→マスな感じです。

予告した新シリーズが上手く進まず行き詰って、気分転換に書いてみました(今、新シリーズのネタが5つくらい溜まってて、その中のひとつだったりします。これが一番、単発でも形になりそうだったのでw 他のは1話じゃ切れないっぽい)

これは短編シリーズで、気ままに続けていきたいと思ってます。男ボカロばかり3種集う事になった経緯など、そのうちまた書きたいですね。

*****
ブログで進捗報告してます。連載各話やキャラ設定なんかについても語り散らしてます
『kaitoful-bubble』→ http://kaitoful-bubble.blog.so-net.ne.jp/

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TEXT
 

 俺の朝は、マスターの食事を作る事から始まる。
 大学生のマスターは、日によって朝のペースが変わる。それに合わせて、朝食のメニューも工夫する。例えば早く出なくてはいけない日には、ぱっと食べられるサンドウィッチやホットドッグをメインに。逆にゆっくりでいい日には、ご飯に味噌汁、焼き魚に卵焼き、おひたしなどのしっかりしたものを、といった具合だ。
 同時進行で、お昼御飯も用意する。学食や購買もあるとは言うけれど、混雑するだろうし栄養バランスや費用を考えても、お弁当の方が安心だ。

 俺が料理をはじめとする家事を受け持つ事について、マスターは時々謝ってくれる。
「ごめんね、ボーカロイドなのに。メイドじゃないのにね」
 そんなこと、と俺は首を振る。俺がしたくてしているだけだから、マスターが喜んでくれたらそれで充分嬉しいから。
 それにマスターが料理をするなら、俺も食べさせてほしくなりそうだし。俺も食べさせてもらうとしたら、俺だけって訳にはいかないだろうし。だからいいんだ。

 マスターの作ってくれたものを分け合えるほど、俺のココロは広くないからな……。


 * * * * *


 我の朝は、鍛錬より始まる。
 鍛錬といっても、本業――ボーカロイドとしてのそれではない。庭先に出でて楽刀を振る。我が楽刀・美振は武具ではないのだが、細かい事は脇に置く。心身を鍛え、有事に備える事が肝要なのだ。我は主に歌を捧ぐものではあるが、女性(にょしょう)一人の暮らしに邪なる輩が現れぬようにと、くれぐれも娘をよろしく頼むと、我をお招きくださった大殿より託されておる故に。
 朝の空気を刀身が薙ぐ度、精神が引き絞られてゆくのを感じる。我の務めはあらゆる禍、あらゆる危険からマスターを護る事。その為に、日々、刀を振る。

 我が自らに課す斯様な務めを、マスターは大袈裟だと苦笑なさる。
「大学生にもなれば一人暮らしなんて珍しくないんだし、父さんの言う事は真に受けなくていいから」
 なれど、我は首を振る。マスターはご存知ではないのだ。愛娘を一人置いて異国に暮らさねばならぬ父君の、なんと真摯な祈り様であった事か。
 我等ボーカロイドはマスターに仕えるものだが、購入してくださった御方にもまた、ひとかたならぬ恩がある。マスターを護るは我の必然、それが恩人の願いとあらば尚の事。故にマスターがどう仰せになろうとも、こればかりは譲れぬのだ。

 我はマスターをあらゆる禍からお護りする。あらゆる危険――あらぬ思いを抱く者共からも。


 * * * * *


 僕の朝は、何となく適当に始まる。
 マスターが二度寝の至福を味わっているこの時間、同居人達は自身に課した務めを果たすのに余念が無い。僕はキッチンから漂う良い香りに鼻をひくつかせ、気が向けばコーヒーなど淹れつつ、新聞をめくったりニュースを見たり。庭先に目を遣って、藤色の髪が揺れているのを眺めたりもする。生真面目な彼の髪が軽やかに舞う日は、晴れ。重くのたうつような日は、湿気があるという事だから要注意だ。朝は晴れていても、後になって崩れる可能性が高い。
 この“がくぽさん予報”は今のところ外れ無しで、お天気キャスター要らずの、信頼の的中率。この情報を、出掛けのマスターに伝える事――僕のお決まりのスタイルと言ったら、せいぜいがそんなところだね。

 僕のこんな気ままな振る舞いに、マスターは別段怒りもしない。
「ちょっと意外だったけど、納得もしたかな。お堅いセンセイじゃ、母さんが気に入る訳無いし」
 酷いですね、と僕は首を振る。勿論冗談で、マスターと一緒に笑いながらだ。実際彼女の言う通り、マスターのお母さんが『娘に贈るボーカロイド』に僕を選んだ一番の理由は、おそらくそこだった。売り場中の男性ボーカロイドに声をかけて、熟考の末に購入されたのが僕だったから。
 一人暮らしになる娘の生活に彩りを。そう願ったお母さんは、堅い事は言わないようにと僕に言い含めて行った。むしろ良さそうな人の陰が見えたら全力で支援して、とも。

 何とも、面白い家に来られたものだと思う。お言葉通り、僕は傍らで見守ろう。


 * * * * *


 私の朝は、……時々、賑やかすぎるほど賑やかに始まる。

『其処で何をしておいでか、キヨテル殿!』
『マスターに声かけに来たんですよ。そろそろ起きないとまずいでしょう?』
『婦女子の寝室に入ろうとは何事か!』
『何を騒いでるの、マスターに迷惑だろ? ……ていうかマスターの部屋の前で何してるの……?』
『いや起こしに来ただけですから、』
『マスターが寝てる所に……?』
『不埒な真似は我が許さぬっ』
『いやいやいや、おかしいでしょうそれ。寝てるから起こすんであって、』
『……イチゴソースをご所望なんだね、氷山君……?』
『我が美振の錆にしてくれよう』
『ちょ、待ってください! そもそも入りませんから、外から声かけるだけですからっ!』

 今日はまた何の騒ぎなんだか……とりあえず顔出そう、着替えたし。
「おはよう、何事?」
「マスター! 助かりました……」
「はは。先生の焦った声とか、珍しいよね」
 冷や汗を流すテル先生に苦笑しつつ、視線を移す。涼しい顔で楽刀を鞘に収めるがくぽ(って抜刀してたのか?!)、その隣ではカイトが爽やかな笑みを浮かべる。
「おはようございます、マスター。朝食出来てますよ」
「ありがと、カイト。顔洗ったら、すぐ行くよ」
 私も笑って返すけど、――見てしまったよ。テル先生に『お前、後で屋上来いや』的睨みを利かせてるのを……!
 うーん、どうもカイトはヤンデレ寄りになりがちだよねぇ。ほどほどにしといてくれるといいんだけど。


 * * * * *


 全く、油断も隙もない。マスターの寝室に近付いた挙句、『今朝一番の会話』まで奪っていくなんて。
 赦し難い、との思いがありありと出ているんだろう、目が据わっているのが自分で判る。マスターのいない場所で取り繕う気もなく、じとりと睨み続けた。
「氷山君、罰ゲームは何がいい? 希望くらいは聞いてあげるよ」
「罰ゲームって……」
「1、俺のアイスピック。2、神威君の楽刀。3、この家から追放。……他には何かあるかな?」
「それもう罰“ゲーム”じゃなくて普通に“処罰”ですよね?! しかもほぼ死刑的な」
 引き攣った声を上げる氷山君に、変わらぬ視線を刺しつつ片眉を上げた。ま、そういう見方も出来るかな。
「あと神威君もね、どうしようか」
 素知らぬ顔で聞いているもう一人にも声をかける。矛先が向くとは思っていなかったらしい、神威君もまた白い面(おもて)に慌てた表情を浮かべた。
「っ?! 我が何をしたと?」
「マスターの寝室に近付いた上、朝から騒いだだろ? マスターには気持ち良く目覚めてもらいたいのに」
「それはキヨテル殿を止める為であろう? 此度の件では、我と貴殿は同志ではないか!」
「それはそれ、これはこれ」
 さらりと言い切ると、絶句が返った。意思が通じたようで何よりだ。

「あー、カイトさん? 提案なんですが」
「ん、何? 4番目の選択肢だね」
「あの罰ゲームの事は忘れてください」
 真顔の訴えを無言で流すと、氷山君の両手が肩の位置に挙げられた。……降参、ね。
「提案なんですが。朝食の片付けなんかを僕等で引き受けて、カイトさん"だけ"でマスターを送っていただく――という事で、収めてもらえませんか」
「……俺、だけで」
「待たれよ、それは――むぐっ」
 異論があるらしい神威君を押さえ込んで、氷山君がこくこく頷く。
「そうです、カイトさんだけで! 駅まで然程の距離は無いとはいえ、マスター独り占め! なんて羨ましい!」
 ここぞとばかりに畳み掛ける氷山君。口を塞がれてむーむー言う神威君に、「妥協してください、生命が惜しくないんですか?!」などと鋭く囁いているのも聞こえる。

 確かにそれは、魅力的な提案だった。『マスターの守護』を務めと自認する神威君が大学までの送迎をすると言い張り、彼だけがマスターの隣を歩くなど赦せる筈も無い俺が同行を表明し、『目立ちすぎるから』とマスターが難色を示して、普段は“最寄駅まで3人で”を妥協点としている(氷山君はと言うと、その日の気分で一緒に来たり留守番したり。気が向けば片付けをしてくれる事もある)
 学業とアルバイトで忙しいマスターとふたりっきりになれる機会なんて、そうは無い。『羨ましい』っていうのが多少引っかかるけど、そこは言葉の綾と流してあげようか。
「わかったよ、それで手を打とう。……あぁ、でも」
 ほっと息を吐く氷山君に、俺はひとつだけ注文をつけた。
「皿洗いは氷山君でよろしくね。神威君には触らせないように」
「……了解です」
 真剣な視線を交わす俺達に、神威君が気まずげに小さくなる。意外にも漫画級に不器用な彼は、キッチンに壊滅的な打撃を与えた前科があるのだった。


 * * * * *


「あれ、今日はカイトだけ?」
「はい、マスター。……駄目ですか?」
「や、いいけど。がくぽh」
「マスター」
 言葉の途中で遮られ、拗ねたような怯えるような瞳で見つめられて、あぁ、と苦笑した。
「ごめん。……いいけど、殿はどうしたの? よく引き下がったね」
 独占欲の強いカイトは、思いがけない同居人達にも些か複雑な心持ちらしい。何とか自制はしているものの、私が彼等を名前で呼ぶ事を嫌う。だからカイトの前では、『先生』『殿』と呼ぶ約束になっている。
 うっかり名を呼んだ事を謝って言い直すと、カイトは安心したように微笑んだ。
「朝から騒いだ罰なんです。氷山君が抑えてくれてますよ」
「あぁ、成程」
 朝の騒ぎを思い出し、カイトがテル先生を凄い目で見ていた事も連鎖的に思い出して、私は心底納得した。先生、ご機嫌取りに必死だな。

「ま、いいか。ほどほどにね、カイト」
 我ながら甘い気もするけど、下手な対応して本気でヤンデレに走られても困るしな。アンインストールは遠慮したい。
 まぁいいか、と心中で繰り返して、隣を歩くカイトに手を差し出してみた。途端にカイトは耳まで朱に染め、ダッツを見る時よりも目を輝かせる。
「マスター、大好きですっ」
 きゅっと手を握って満面の笑みと共にそんな事を言うんだから、可愛いひとだ。こんなに素直に喜ばれたら、こちらも嬉しくなってしまう。
 ま、いいか。
 3度目の呟きを口の中で転がして、手を繋いだまま駅へと向かった。

【お知らせ】テキスト投稿が非常に使い辛いため、こちらでは歌詞や音源のUPとコラボ関係のみに縮小、以後の小説投稿はすぴばる&ピクシブへ移行します。

■小説メイン時々歌詞な字書き……だった筈が、動画編集やボカロ調声、作曲にまで手を出してます。どうしてこうなった。

□ブクマやコメント、有難うございます! 転げ回るほど嬉しいですヽ(*´∀`)ノ
□オールキャラ書くけど9割KAITO。
□使えるものがあればお気軽にどうぞ。使用報告だけお願いします^^ 歌詞については、良識の範囲内であればアレンジや部分使用など改変していただいて構いません。多忙な時期でなければ、ある程度の調整も承ります。

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作品へのコメント3

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    ご意見・感想

    こんにちは
    アリサです


    いーですねぇ
    代わってほしいですよぉ……

    がくぽはもちろん,カイトもキヨテルも好きなので,ホント羨ましい限りです……
    あぁあ
    いーなーwwww


    読みながらによによですよwww
    秦から見たら,変人ですよねwwwww


    ブクマさせていただきます!
    それでは,失礼しました~

    2011/04/02 13:07:18 From  アリサ

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    メッセージのお返し

    こんばんは、アリサさん。
    ブクマ! ありがとうございますヽ(*´∀`)ノ

    美声の美形に囲まれた生活、羨ましいですよねぇ。
    私も代わってほしいですw

    によによしていただけて嬉しいです♪
    ありがとうございました!

    2011/04/03 02:54:16 藍流

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    ご意見・感想

    こんばんは、読ませて頂きましたので感想なぞ1つ。

    いやはや……何て言うんでしょうね。なんか、「これぞSS!」って感じのお話ですね。
    好きなキャラを、好きなように動かして、好きな話を書く。
    そうして楽しむのがSS作家の原点であり、執筆の原動力なんですよねぇ。
    ずいぶん昔、初めてネットで二次小説を読んだ時を思い出しました。
    公式のテレビ放送で終わりだと思っていた物語が、同じ視聴者の手によって書き出されたサイドストーリーによってどんどん続き、世界が広がって行く。その無限に物語が膨らんで行く感覚に、ワクワクしたものです。
    この話を読んでいて、何だかその頃の感覚を思い出しました。純粋に「ボカロのキャラが好きだ!」って気持ち1つで書かれた文章という感じがして、とても良いと思います。藍流さんはまた、読ませる文章力も兼備しているから、余計にそう感じられるんでしょうねw
    個人的には、がくぽの語り口調が好きですw ござる言葉を使ってくれる作家様って、あんまり見かけないので。
    ともかく面白かったです! GJでした!

    ……なんか切り口の違う、変な感想文になってしまった気が……(汗

    2010/12/15 00:09:10 From  時給310円

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    メッセージのお返し

    こんばんは時給さん、コメントありがとうございます!

    今回はストーリーやキャラ設定より、日常風景を気ままに切り取る感じを重視して書いてみました。
    「物語」というには半端なのかもしれないけど、こういう事が出来るのがSSならではの自由度かもしれませんね。
    『最初』のワクワク感を思い出していただけたとは、嬉しい限りです!

    がくぽの口調への言及も嬉しい! ありがとうございます^^
    今回に限らず、がくぽの口調には妙に「古風な語り口で!」というイメージが染み付いていて、しかし書くのは難しいので頭を抱える羽目に。辞書やネット検索と首っ引きで書いてますw
    カタカナも無しにしようかと思いましたが、『電脳侍』の未来的イメージを考慮してそこはアリにしてみました。「マスター」にするか「主殿」にするか、とかも迷ったんですが。
    設定を考えるのが一番楽しい人間なので、このあたりを詰めていくのも楽しかったですw

    面白かったと言っていただけて嬉しいです!
    読んでいただいてありがとうございました^^

    2010/12/15 01:26:55 藍流

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    ご意見・感想

    こんばんは、sunny_mです。
    男性ボカロの3人3様っぷりに、にまにまが止まりません(笑)
    怪しい人街道まっしぐらに突き進んでいる今日この頃です。

    一番話が合いそうなのは気まぐれキヨテル先生ですが、見ていて楽しいのは生真面目がっくん殿で、いいぞもっとやれ、と焚きつけたくなるのはやっぱりカイトさんですか。
    このマスターに下手に手を出したら3方向から闇討ちに遭ってしまうのでしょうねwww

    ちらりちらりと出てくるマスターの両親がなんか興味をそそられるなぁとか、そもそものこの3人が一緒にいる空間ってなんて贅沢なんだ!とか、なんだか面白そうな気配にもにまにまが止まりません。
    それでは!

    2010/12/14 20:04:32 From  sunny_m

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    メッセージのお返し

    こんばんは、sunny_mさん。コメントありがとうございます!

    3方向から闇討ち! 的確すぎる表現に噴きましたw
    殿が真っ向から叩き斬り、兄さんが容赦なくトドメ&脅しに入り、傍観してた先生が後からにこにことアフターフォロー(という名の念押し)をするのでしょう。

    三者三様の男性陣を書くのは楽しいんですが、口調や二人称に随分迷いました。
    私の中での年齢設定は『KAITO<がくぽ<キヨテル』なんですが、ボーカロイドとしての年季は逆なんですよね。
    カイト→キヨテルを「氷山さん」にしようかとか、キヨテル→カイト・がくぽを君付けにしようかとかも考えたんですが、カイト→がくぽが「神威君」のイメージで固定されちゃってたので、そこに合わせました。

    マスターの両親は設定メモにチラリと書いてあるんですが、キャラ立ちすぎてどうよこれwwwとなってますw
    そのうち「3人が集った経緯」を書くつもりなので、その時にお披露目となるかと。

    がくぽはまだしも、キヨテルをまともに書いたの初めてだったので、にまにましていただけて嬉しいです。
    読んでいただいてありがとうございました!

    2010/12/14 21:58:02 藍流

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