「ルカ、おっぱい揉んで」(後編)

投稿日:2011/08/07 00:54:18 | 文字数:2,440文字 | 閲覧数:2,301 | カテゴリ:小説

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タイトルどおりの内容です。4作目の投稿。
微エロ路線を突き進みます。

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(前編からの続きです)

「…ミク、ジェンダーとか勝手にパラメータ変えてない?」

スーパーセロPの自宅。
シンセサイザーやミキサーなど音響機器が所狭しと並んだ部屋で、ミクは新曲の調教を受けていた。
いつもより手こずるので首をかしげていたセロだが、どうやら原因に気が付いたようだ。
勝手をしていたのがばれて、ミクは肩をすくめた。

「ご、ごめんなさい。ちょっと、大人っぽい方がいいかなと思って…」

セロは黒い革張りのイスを回してミクに向いた。
「どうしたの? 今までそんなこと気にしなかったのに」

怒るでもなく、不思議そうな顔をしている。
セロPはまだ若いのだが、大人の雰囲気を持っている。
渋みのある顔で優しい言葉をかけられると、ミクなどはクラッとしてしまう。

「あ、あたし、もう十六なのに全然子供っぽいから、もっと色っぽさとか、そういうのもあった方がいいのかなって…」

「ルカみたいに?」

ずばり言い当てられ、ミクは言葉が続けられなくなった。

「ルカはルカ、ミクはミク。そうだろ?」

「で、でも…」

「うーん、どう言えば分かってもらえるかな…」

セロPが苦笑いして頭を掻く。そんな姿も様になっている。

「仮にミクが色っぽさを身に付けたとして、それはファンが望んでいることだろうか?」

「それは…男の人は、セクシーな女性が好きなんじゃないですか?」

「それは性の対象として見た場合だよ。君はボーカロイドだ。ファンとプロデューサーが初音ミクに望んでいるのは、等身大の女の子像じゃないのかな?」

穏やかな声でミクを諭すセロP。
ミクはコーチのアドバイスを受けるアスリートのような顔で話を聞いている。

「例えば君がスタイル抜群で、道を歩けば誰もが振り向くような美女だとする。そんな君が片思いの曲を歌っても、イメージが合うかな」

「…合わないと思います」

セロが頷く。

「いつの時代でも、アイドルは普通の女の子らしさとカリスマ性を同時に身に付けてるものだよ。それはミクの魅力そのものだと思うけど、どう?」

「…あたしの魅力?」

「そう。みんな、素顔の君にみっくみくにされてるんだよ。かく言う僕も、その一人だね」

ミクの頬が林檎のように赤くなる。

「セロ様もなんて、そんな…」

「分かってくれたかな?」

「はい! あたしはあたしのままでいいんですね! セロ様、ありがとうございます!」

セロも満足げに微笑む。さすが敏腕P、ボーカロイドの調教はお手の物である。

「ミク、手を出してごらん」

「え? あ、はい」

またマジックを見せてくれるのかな?
前述のとおり、セロはマジシャンとしても活躍している。
ミクは期待でワクワクした。
差し出した腕をセロがそっとつかむ。
いやらしさはないが、ドキッとしてしまう。
どこから取り出したのか、薄いハンカチをふわりとミクの手に被せる。

「自分で取ってごらん」

言われるままに、空いている方の手でハンカチを取り除く。
ミクの手には一輪の花が握られていた。

「わあ、すごい…」

オレンジ色の花弁の、可憐な花だ。
サイネリアだよ、とセロは言った。

「花言葉を知ってるかい?」

「いいえ…」

「“いつも元気”」

セロはミクの手から花を取ると、髪に挿してあげた。
緑色の髪にオレンジ色の花びらが映える。
ミクは天に昇るような気持ちになった。

     ☆

「♪ペチャパイ~なんて~気~に~しないわ~」

翌朝、ボカロ家のキッチン。
ミクが歌いながら朝食の納豆に入れるネギを刻んでいる。すこぶる機嫌がいい。

「ルカ姉、あれ替え歌だよね? ピアプロ的にいいの?」レンが聞く。

「あんな古い歌、いいんじゃない? 問題あれば運営が削除するでしょ」

「それにしてもアホみたいに機嫌いいわね」とリン。

「昨日セロPさんとこでいいことあったみたいよ」

「ああ、それで。ミク姉セロP大好きだもんね。いいな、あたしも曲作ってほしい」

ネギと卵と醤油を混ぜた四人分の納豆を持って、ミクが食卓につく。

「はーい、みくみく菌たっぷりの納豆、お待ちどーさま」

さすがに三人ともあきれ顔になる。

「昨日あんだけ凹んでたのに、今日はえらくご機嫌ね。まあ胸は相変わらず凹んでるけど」

ルカの意地悪にも動じない。

「へーんだ、おっぱいなんか小っちゃくてもいいんだもんね」

「セロP貧乳好きなの?」

「ひっぱたくわよルカ! セロ様はね、あたしはあたしのままでいいって言ってくれたの」

頬に手を当て、昨日の幸福を噛みしめるように思い出すミク。

「ああ、何か金子みすず的なことを言ってもらったのね。良かったじゃない、コンプレックスがなくなって」

「いちいち棘があるわね、あなたの言い方。ボインは悩みがなくていいわね。ねえ、リン、Aカップ同士仲良くしようね」

ミクがリンに微笑む。

「あたしBだよ」

納豆の糸を引きながらリンが言った。
ミクがピタッとフリーズする。

「え? そうだった?」ルカが聞く。

「一昨日だったかな、前のがきつくなったから、新しいの買いに行ったの。お店の人にちゃんと測ってもらったら、Bですねって。あ、ミク姉またorzになっちゃった」

イスから滑り落ちたミクが、床で四つん這いになる。

「じゅ、十四歳に負けるなんて…悔しい…」

「考えてみたら、リンはミクより体重あるもんね。そっか、グラマーなんだ」

「大人になったらルカ姉みたいになれるかな?」

「なるなる。わたしよりボインになるかもね」

リンとルカが笑う。ミクはなかなか床から立ち上がることができない。
レンはおっぱいの話には入りづらく、一人黙々と納豆ごはんをかき込んでいた。


リビングの窓辺にはガラスの一輪挿し。
オレンジ色のサイネリアが、朝陽を浴びて輝いている。



       おわり

沖縄県在住のピーナッツです。ちょこちょこと小説を書いたりしてます。

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