【カイメイ】 この鈴音、摘まれて開く命なら 【後篇】

投稿日:2012/05/14 19:22:03 | 文字数:1,625文字 | 閲覧数:835 | カテゴリ:小説 | 全5バージョン

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*前のバージョンで進みます。全5Pです*


仕事してP様の『大輪の花』http://www.nicovideo.jp/watch/sm15901451を元にしたカイメイ妄想話です。本家様にはカイメイどころか青い人の影すらありませんこと、どうぞご留意下さいませ

http://piapro.jp/t/vBYp?lr=lからなる前中後編の完結になります



そのりんねは、真実だったのか。彼らがそう思い込みたかった幻想だったのか。確かめる術はありません。
只一つだけ言えることは、開人の『望み』は叶えられました。
多くのものを犠牲にして、それでも彼は再び手に入れました。
だから二人は幸福でした。
例えそれが世界を変える選択だったとしても。

――大輪の花は、残酷であり、この上なく、慈悲深い。

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TEXT
 

足をやられ、腕も深く傷付いていた。もう、進むことなど無理なのではと心挫けるほどに。
……しかし。
あの歌は。
あの鈴の音は。
もはや命子の頭の中から、直に耳元に鳴り響く。その音は割れんばかりに大きく、そして鮮明に。
…逃れられるわけがない。
そう悟った瞬間、命子はふと風が運んできたかぐわしい香りを嗅いだ。
蕩けるように甘く、飲み込まれるほどに強い、―――花の香り。何故か命子には、それがかの花の芳香だと理解できた。
その酔うような香りは命子の軋む身体の奥深くに沁み込み、苛む痛みを取り払った。
―――立ち上がれる。
命子は月を見上げた。地平の彼方に傾きゆく満月。
「…だめ、まって、おねがい」
私はここにいる。
「あなたを見失いはしないから」



未開の森林を突き抜け、急な斜面を登り、道なき道をただ辿る。
目指した頂きはすぐそこだ。命子には分かる。どうか、どうか待っていて。今すぐ会いにゆくから。その気持ちはまるで恋慕のように、命子を陶酔とさせた。
登り切ったところでふいに木々が途切れ、視界が開けた。ざぁ、と風が吹く。それまで木々に阻まれほとんど凪ぐことのなかった風が、命子の頬をぬるく撫でた。
あんなに煩く響いていた鈴の音が、もう聞こえてはこなかった。
そこは断崖だった。生い茂る森から突き出た自然の高座。遥か眼下に広がる森を見下せばそれは闇そのもので、竦んで動けなくなるほどに高い。ごつごつとした岩の転がる黄土の大地は、生命が息吹く隙などどこにもなく、からからに乾いていた。
しかしそこに、確かに命子は見出した。鼓動を。意思を。その姿を。一輪の―――

「…………っ、どう、して」
命子は駆け寄った。その唯一の生命の元に。膝を土に汚し、縋りつく。
「どうして…っ!私は間に合ったわ…!ねぇ、どうして!ねぇ!」
一夜限り。夜明け来たる前に。それが、『約束』。満つる月は、水平線からはまだ遠いのに。
命子は知らず泣いていた。悲痛にどうか、と言い募る。
「おねがい…っ、どうか…おねがい、―――咲いてぇ…っ!!」

……花は蕾のままであった。開きつつあるわけでもなく、今まさに萎もうというわけでもなく。
頑なに花弁を閉じ身を捩じり、ただ静かに、絶壁の間際に佇んでいるだけだった。

何がいけないのか、いけなかったのかと、問い、己を責めた。
それとも全ては花の気まぐれなのだろうか。その酔狂に振り回されただけなのか。違う、違う。
―――ならば、何故花はここに在るのだ。
命子は流れるままの涙を拭うこともせず、呆然と蕾を見つめた。
愚かな人間が踊らされる様を見たいだけなら、何故律儀にあなたはここで私を待っていたの。
私に望みがあったように。
…あなたも何かを望んだのではないの。
涙が、ぱたぱたと蕾に落ちる。
―――その時。




りぃん






…確かに、聞こえた。
語っている。
何かを、告げている。


りん  リン   鈴 凛  燐   輪   輪     ――― りん


命子はゆっくりと目を見開いた。
その旋律の意味。花の声。鈴音のような、少女の囁き声のような。
…あぁ。
命子は顔を上げ、虚空を見つめる。
あぁ、そうか。
―――ようやく、伝わった。
その瞬間、命子はやっと理解した。
この道程の意味を、無条件で受け入れ、認める。
誰しもが、何もかもが、全ての事象が、ここに至る為の業。
そしてさだめ。
…それが、最後の――…

命子の瞳から、新たな涙がつたい落ちる。それは慟哭の涙ではなく、諦観と悟りの涙。
あぁ。私は今ようやく、あなたを見つけた…




木の葉を潜り 橋を渡り 頂を目指し あの月を追い 
満ちる月に 一夜限りしか咲かぬという花を求め 夜明け来たる前に辿り着かねばと
滲む涙も 庇う足も 傷付いた腕も 血に濡れ 幾多の屍を重ねても かまわなかった
惜しむことはない
その果てに、―――例え何を失っても。

MEIKOさんを筆頭に、年長組、大人組、ボーカロイドが大好きです。

液晶の向こうに行くことは諦めたので悔しいけどめーちゃんはカイトさんに任せることにしました。幸せになれ。幸せになれ。

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