小説【とある科学者の陰謀】第九話~祭りの始まり~その三
投稿日:2011/07/09 10:06:44 | 文字数:3,215文字 | 閲覧数:252 | カテゴリ:小説
漸く更新です!!長らくお待たせし誠に申し訳ありません!!
シグのテンションの上がり幅が一番激しい話でした……なんか上がりっぱのまま進むけど、安心してみんな!!ちゃんと突き落とすから!!←
今回お借りした亜種はありません!!誠にすみません!!また頑張って出します!!
さり気UTAU三姉妹が出揃いました。リツ以外あんまり活躍してませんが……
そう言えばUTAUに「無音シグ」なるキャラクターがいるのに最近気づきました。畜生名前被った……
次はデート?な話になるかと思いきや、またちょっとした話を挟むかもです。頑張ります!!
「……」
街のざわめきが遠い。
パフォーマンスを行っていた商店街を離れ、住宅街まで戻った俺が第一に思ったのは何故かそんな事だった。
夜の帳が降り始める中、俺が立つのは一つの宿舎の前。
普段俺が日常生活を送っているものより数段綺麗なそれは、亜種の中でも凄まじい人気を誇る者のみが生活を許されている、言わばVIPマンションだ。
(そう言えば、ここにハクさんも住んでいるんだったか……)
しかし、それは今気にすべき事ではない。なぜなら、俺が今から会おうとしているのはあくまでも波音リツだからだ。俺はハクさんの部屋を探したくなる気
持ちを押さえ、雑音から教えて貰ったリツの部屋番号を思い出した。
「えーと……73だったか……?」
該当する部屋の前まで向かい、コンコン、とノックを入れる。すると、ドアが開きリツが顔を出した。
「はい……あ、シグ君……」
「ちょっと、上がっていいか?」
「あ、ちょっと待って……いいよ」
突然の来客に少し戸惑いながらも、部屋の中に一旦戻ってからリツは俺を部屋に招き入れた。
(おお……)
中を覗いた俺は思わず感嘆した。
勿論VIPマンションというだけあってこちらの方が全体的に綺麗なのだが、それ以上に部屋の中がきちんと整理されている。ゴミ屋敷での生活に慣れてしまった者にとっては、なんだか新鮮な光景に思えた。少しだけ悲しい。
「おや」
「あんたらは……」
リツの部屋には既に先客がいた。
片や赤褐色のドリルテールに真紅の瞳を持ち、片や黒髪の短いツインテールに赤と青のオッドアイを持つボーカロイド、即ち重音テトと欲音ルコだ。
俺の姿を見留め、テトが口を開いた。
「君が語音シグだね。リツから話は聞いているよ」
「そうか……どんな風に?」
「いい友人、とだな。ただ、迷惑をかけてしまって悔やんでるとも聞いたぞ」
質問にはルコが答え、さて、と二人は立ち上がった。
「ん?どこか行くのか?」
「私達がいるとやりづらいだろう?それに、用事は済んだしな。それじゃ」
手を振り、彼女らは部屋から出て行く。その気遣いは素直にありがたい。
そして後には、俺とリツのみが残された。
「……まあ、まずはあれだ、さっきは悪かった」
「いや、あれはボクの押し付けだった訳だし……」
「いや、元を正せばきちんと断らなかった俺の原因さ。すまなかった」
俺が謝罪の言葉を述べると、リツは暫し沈黙し、また口を開いた。
「じゃあ、お互い様って事でいいかな?」
「ああ」
「ありがとう。でも、ならなんで女装を?」
「ああ、それはな……」
問うリツ。まあ当然の疑問だろう。
俺はこれまでの経緯を若干端折りながら伝えた。
「へぇ……大変だったんだね……」
「まあな。最も、今となってはもう懐かしき思い出だが」
そう言えば、俺が蘇ってからまだ1ヶ月程しか経過していないのだったか。この短い中に随分色々あったものだ。
「じゃあ、シグ君は同盟から除名しておくね。……でも、さ」
「?」
過去の記憶に思いを馳せる俺に、リツは微かに目を伏せ、問うた。
「これからも、友達でいてくれるかな?」
「……」
普段と変わらない筈なのに、その声色はどこか、焦りのような感情が感じられた。
このまま関係が断絶してしまうのを恐れているのだろうか……まあ、よくよく考えてみれば彼が誕生してからまだ数年、まだそういった事態には慣れていないのだろう。
少し考えて、俺はリツに言葉を返した。
「今日の俺のパフォ衣装、お前が選んだんだっけな」
「え?うん……」
「個人的には俺が今まで着た奴の中では一番ましだった。だから、次雑音に女装やらされた時は、お前が服を選んでくれるか?」
俺は、リツの目を見ながらそう言った。因みに、一見この台詞はとてもクサいが、実際は俺が今後女装させられる羽目になった時少しでもその恥ずかしさを軽減したいという保険の意味合いがある。
そんな下心に気付く事も無く、俺の台詞を聞いたリツは安心したように頷き、腕を差し出した。
「……うん、ありがとう」
「ああ、改めてよろしくな」
俺も、彼の、まさしく女性のような細腕を握り返す。
服装に関する悩みが減ったのは俺にとっても大きな一歩だ。
「そうだ、暇ならこの後どこか行かないかい?」
「そうだな……ん?」
どことなく口調も軽くなったリツからの誘いを受け、俺はふと何か大切な事を忘れている事に気づいた。
少し考え、それがなんであるか思い立った時、俺の喉からは思わず絶叫が溢れ出した。
「……ああああ!!しまったああああああああ!!!!」
「ど、どうしたの?」
「すまんリツ!用事があった!!」
戸惑いの声を上げるリツを残し、俺は全速力で夜のピアプロを駆け抜ける。右腕の腕時計は……怖くて確認できない。
祭りの景色が広がる中を、尚も光と音が激しい方向へと進んで行く。幾つも立ち並ぶ小型のライブドームの一つが、俺の目的の場所だ。
「ハァ……ハァ……」
(間に合わ、なかった……)
俺は固く閉ざされた門を前にゆっくりと崩れ落ちた。中から微かに聞こえてくる歓声を聞いている俺の頬を、両目から溢れ出した透明な汗が濡らした。
◆◆◆
「……ただいま……」
「おかえりーって、どったの!?」
酷くやつれた顔で己が部屋に帰った俺の姿を見て、雑音が驚きの声を上げた。
「リツと、上手く行かなかったの……?」
「……」
「……ド、ドンマイ」
普段だったら大爆笑をしても可笑しくない雑音が素直にフォローに入るという非常に珍しい事が発生したが、今の俺にそれを気にするだけの余裕はない。
死んだ魚の目のまま、俺は押し入れに潜り込んだ。
「……ん?」
その時、ポケットから電子音が鳴り響いた。
(誰だよ……こんな時に……)
画面も見ずに、俺は乱雑に電話に出た。
「もしもし?」
『あ、シグ君?』
「ハクさんんんんんんごふっ!?」
思わず身を起こし、俺は激しく天井に頭をぶつけた。ゴッ、という鈍い音が響き渡る。
『だ、大丈夫?』
「大丈夫大丈夫もうピンピンしてますとも!!」
俺は痛みも気にせず超ハイテンションで答えた。
さっきまで絶望のどん底にいた俺と言う名のロケットはハクさんという名の天使の光臨に伴い遥か高空へと飛翔を開始していた……!!
『な、ならいいんだけど……』
「はい!ところで何の用でございますか?もうこのまま28時間位ただ話すだけでもいいですけど!!」
『さ、流石に28時間はキツいかな……えーっとね、明日さ……お祭り、一緒に回らない?』
「……え?」
言葉の内容を理解すべく、一時停止した俺の脳は再び高速回転を始めた。
(「明日、お祭りを一緒に回らない?」と、ハクさんは確かに仰られた……あれ?これって……)
デートじゃない?
『あの、駄目だった……かな?』
「……ぜ、」
『ぜ?』
「是非行きましょう!!もうむしろ今すぐ行きましょう!!!!イヤッフウウウウウウウ!!!!」
今や俺という名のロケットは大気圏を飛び出し、太陽系すらも後にし新たな次元へと旅立ちを開始していた。
『よ、喜んでくれてるならありがたいけど……明日まで待ってね?』
「ハイ!もちろん!!ハクさんの頼みとあらば例え100年だろうと待ち続けますよ!!」
『あ、ありがとう……じゃあ、明日10時から、はちゅね像前で』
「ええ!わかりました!では!!」
電話を切ると共に、俺の口角が急速に緩んだ。もう明日が楽しみで仕方ない。
「んっんん~ん~♪」
「シグ……病院行った方がいいんじゃない……?」
挙げ句には鼻歌すら演奏し始めた俺を、雑音が可哀想な人を見る目で見ていた。
作品へのコメント2
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ご意見・感想
びんさん今晩は!
先刻はうpした9話へのメッセージありがとうございました!
険悪な雰囲気から一転してリツの和解、そしてそこからまさかのハクさん直々のお誘いでシグがヘブン状態にw
ここから某番組のロ○ドンハーツの様に好きな相手とのデート天国から地獄へ……頼む!今だけ彼に楽園を見せてやって下さ(ry
いよいよUTAU三人衆も登場しましたね。それに加えて更なる亜種様の登場が楽しみです!
コラボの方も追々固まってきて、良い感じになりそうになってきました。
これで上手く出来そうで楽しみです!!2011/07/11 02:08:05 From オレアリア
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メッセージのお返し
こんばんは!
はいもうものっそい楽しみにしとりました!←
上がったり下がったり忙しいシグのテンションです←
本当の楽園など、この世に存在しえないのですよ……!←
UTAU三人衆は一見まだVOCALOID HEARTSと関係ない感じですが、ちゃんと絡めて行きますよ!!
自分の処理能力と相談しつつ出して行きたいと思います!!
はい、頑張って行きましょう!!2011/07/11 04:03:49
瓶底眼鏡
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ご意見・感想
このマンションにのりこみたい…よし、ガラスでも割tt(ry
UTAUもVIP扱いされてるんですねwww 私も音源作ろうかな(((は
てかシグ!!! ハクさんとデートなんて百万年はやいんだよおおお! まずは私や瓶底眼鏡さんが先だろおおおお!!
お祭りあるんですね。たくさんボカロがいるんだろうなあ。運が良ければ公式にもお近づきに((ないわ
ブクマもらいます!2011/07/09 21:52:03 From 絢那@受験ですのであんまいない
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メッセージのお返し
もしそんな事したらリリィ隊長達が飛び出してくるよ!!←
UTAUでも一定以上の人気を持つ者はVIPなのです。だからボロアパート住まいの奴も無論います←
本当だよ全くうううううううう!!!!こいつはいっぺん締め上げるしかないな←
公式とはそうとう運がよくないと巡り会えません。でも意外と道端を普通に歩いてたり←
ブクマありがとうございます!!2011/07/09 22:26:25
瓶底眼鏡
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小説【とある科学者の陰謀】第九話~祭りの始まり~その二
量産化祭中には、様々なイベントや出し物がそこら中で行われている。
その大多数は、初音ミク人気に惹かれやってきた客に自分たちを知って貰おうと考えた亜種達が開いたものだ。そしてそういった中に混じり、また、《男の娘☆ボカロ同盟》も
活動をしていた。
「リッちゃーん!こっち向いてー!!」
「サイン下さいサイン!!」
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小説【とある科学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その一
はちゅね像とは、ピアプロで一番大きな広場の真ん中に鎮座する、巨大なはちゅねミクの銅像のことだ。
何かの記念に配置されたらしいのだが、とにかく目立つのでピアプロで生活する人々やボカロ達からは渋谷のハチ公みたいにわかりやすい待ち合わせ場所という認識で定着している。
その例に漏れず、俺もまたここでハクさんを待ち続けていた。
「9時58分か……」
そわそわと、右手にした腕時計に目をやる。この仕草をするのは何度目だろうか……既に数千回は超えていそうだ。何せ秒単位で確認してるし。
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小説【とある科学者の陰謀】第八話~悪の組織、始動~その一
近未来的な装飾の成された薄暗い部屋の中に、円卓を囲む十数人の人影があった。
ケータイをいじったり、隣と話し込んだりと、皆一見思い思いに過ごしているように見えるが、その中には確かに緊張した空気が漂っていた。
「……さて」
俺の右隣の黒髪ツインテールの少女、雑音ミクが発した一声に敏感に反応し、皆が静まり返る。注目が集まったのを確認し、雑音はゆっくりとその口を開いた。
「今日は忙しい中、みんな集まってくれてありがとう……なんて、長ったらしい前口上は面倒だし飛ばすわね。ではこれから、我らが悪の組織《BINZOKO》の第1回作戦会議を行うわ。シグ宜しく」
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小説【とある科学者の陰謀】第四話~天国と地獄~その二
「……」
(……どうする……)
俺に許された選択は2つ。
一つは普通に一言残す事。俺の面子は保たれるが、どんなリスクがあるかわからない。最悪もう一度死ぬ。
一つは組織の宣伝をする事。俺の命は助かるが、無数のギャラリー、そしてハクさんに狂言を吐く変人と認識されかねない。最悪死ぬ。社会的に。
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小説【とある科学者の陰謀】オープニング~一人の男の物語の終わり~
……空が狭い。
いや、狭まっているのは俺の視界だ。
……空が暗い。
いや、光を失っているのは俺の視界だ。
手のひらにねっとりとした感触がある。
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小説【とある科学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その3
「え?な、何?」
「ハクさん、後ろに」
俺はすぐさま、オドオドしているハクさんを庇うように前に出た。とりあえず、なにがどうあれハクさんにだけは指一本触れさせないようにせねば。
チンピラは俺たちの顔をニタニタと見つめ、挑発するような声色で言った。
「まさか、こんな所で会えるとはなぁ……」
小説【とある科学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その3
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小説【とある科学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その4
「本当に……ありがとうございました!!」
チンピラ達が連れて行かれ、色々と混乱が収まった路地裏には
、今、ペコペコと頭を下げるハクさんと、照れる鈴音コンビの姿があった。
「いえいえ、当然の事をしたまでですよ……それよりハクさんにデルさんですよね!サイン下さい!!」
すると、ララの周りに《HoneyBee》達が集まって来た。ハチ達の威嚇のような動きを見てララが肩を落とす。
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小説【とある科学者の陰謀】第関話~スポットライトの外で~迎え撃つ者たち
クリプトン社の私有地であるピアプロは、警察に頼らない独自の警備体制を敷いている。
人間の警備員の数が圧倒的に少なく、代わりに独自技術で作り上げた警備ロボや日頃アイドルとして働くボカロ達を使っているのだ。
何故彼らを使ったかと言えば、ボカロの中には制作者のこだわりからか無意味に戦闘能力の高いものも珍しくはなく、しかも彼ら自身がピアプロの住人であるが故に防衛意識も高い、などといった理由が挙げられ、実際彼らは期待以上の成果を上げ続ける事になった。
だから故に、彼らにとって今回の事件の結果ーー則ち、突如起こった暴動を鎮圧出来ず、更にセントラルビルへの侵入者に保管物資の盗難を許してしまった事は、初の大きな『敗北』として語り継がれることとなる……最も、この背景には、今までボーカロイドが犯罪を起こした前例がなく、故に実質初のボーカロイドによる能動的な犯罪行為であった今回の事件にうまく対応出来なかったのだが。
因みに、余談ではあるが実行犯が完全に外見を隠していた為に現時点で誰もこの事件をボーカロイドが起こした事と気づく事はなく、結果多くの人々は初のボーカロイド犯罪は後の《初音ミク誘拐事件》であると認識する事となる。
小説【とある科学者の陰謀】第関話~スポットライトの外で~迎え撃つ者たち
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小説【とある科学者の陰謀】第八話~悪の組織、始動~その2
草木も眠る丑三つ時、ピアプロセントラルビル内部。非常灯の頼りない緑の光に照らされた廊下の上に、怪しげな三つの影が浮かび上がる。
「こちら実行A班。現在地七階、3-Fです。指示を」
『こちら指令班。周囲に生体反応なし、そのまま予定通りのルートで3-Dまで向かって。その後、連絡があるまで待機』
「了解しました……おっと、警備ロボです。気をつけて……よし、行きましょう、シグさん、デルさん」
雑音の指示を受けながら、俺たちは先に進む。俺とデルの前を先行するのは相柳音レイキというボカロだ。長い青髪で片目を隠していることと、背中に刻まれた711の数字が特徴で、どこかの民族のような衣装を着ていた。しかし現在は全身を黒いライダースーツのような服で覆い、ヘルメットを被っているのでそういった点は全て隠れてしまっている。
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小説【とある化学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その2
「……」
「……」
始まってしまった三人デート。
ハクさんを真ん中に、俺が左、デルが右に並び道を歩く。にこにこと笑うハクさんを挟み睨みを効かせあう俺とデルという、なんとも修羅場な光景が繰り広げられていた。
「ところで……」
小説【とある化学者の陰謀】第十話~波乱と男心~その2
最近漠然とし過ぎた不安に襲われてます。まあそれは置いといてプロジェクトミライ楽しみですね。
余談だが弟が精神病になった。\やべぇ/
性別・平均寿命が短い方
年齢・結婚が出来るようになる年齢
彼女いない歴・年齢と同じ
精神年齢・永遠の中二の夏
知能・ゴールデンレトリーバー以下
好きなもの・スルメ、バナナ、神話、どこか切ないけど楽しい物語
嫌いなもの・セロリ、昔の自分
好きな楽曲・Dear ユラギ
好きなボカロ・弱音ハク Lily
最近一番嬉しいこと・ピアプロで新着メッセージのお知らせがあった時