【カイメイ】 ゆたんぽーかろいど

投稿日:2013/04/04 23:30:25 | 文字数:5,753文字 | 閲覧数:330 | カテゴリ:小説

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うちのメイコさんは寒がりなので、カイトさんはあったかいのです。と、いうお話。

忙しい日々、寒い朝。起きられません。カイトさんはどうしてるのかなーと考えたら、こんなことになっていました。一人で爆発すればいいのに…(真剣)
お布団の中から出られない朝、この話を思い出してうわああああとなって頂ければ幸いです。

時系列は、お好みで。

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ジリリリリリ、とレトロな目覚ましの音に、半分浮上しかけていた意識が一気に覚醒する。
音はレトロだが発しているのは携帯端末だ。頭の上に手を伸ばしてそれを止め、なぜか仰向けの身体が動かせないことに気付いた。
「……」
顔だけを左に向ける。茶色の丸い物体。オレの身体はこの物体に手足ごと絡みつかれ、ガッチリとホールドされていた。

こんな風に彼女と共に冬を越しはじめて何年目になるだろう。
珍しいことでもなかった。まだまだ朝晩の寒さは厳しい。極端に冷え症で寒さに弱いこの生き物にとって、この時期は必死なのだ。寒さは主に、夜眠れないor朝起きれない、という弊害をもたらす。一家の平和を守ろうと奮闘する彼女にとって、それはなんとしてでも回避しなければならない事態だ。どうにかして確実な暖を確保しなければ、彼女が築き上げてきた日常の朝はやってこない。形振りかまっていられないのだ。健気なんだ。一生懸命なんだ、この生き物はいつだって。

「……めぇこ」
まだ起きぬけの掠れた声で、ボソ、と呼んでみる。反応はない。
必死なのはいい。家族のために頑張ってくれるのは嬉しい。
だけど、と思う。
オレは確か昨日の夜、一人でベッドに入ったはずなんだ。
「……めーこ…」
胸に張り付いて足はオレの下半身に絡みついて、それはもう気持ちよさそうに寝息を立てて、安心しきって眠っているこの生き物が、オレのカワイイ恋人だ。
…だというのにため息が零れるのはなぜだろう。
「めーちゃん、どいて」
オレのパジャマを握る手を離そうとすると、力を入れて抵抗してきやがる。起きてんじゃねーのか。
「めーちゃん」
「……ん、ゃ」
や、じゃない。
布団の中でもぞもぞと動いてさらにオレにしがみつく。眠いのと、寒いのと。多分両方。
もちろん簡単に引き剥がすことはできるんだけど、それをするとあとの不機嫌モードに手を焼くからできればここは穏便に済ませたい。
関係ないけど、オレ達がケンカしてると下の子たちからは問答無用でオレに非難の目が向けられる。朝イチにメイコが機嫌悪かったりするとさらに最悪だ。まるでケダモノを見るような目つきで軽蔑視されるんだから、たまったもんじゃない。濡れ衣もいいとこだ。昨夜なんかなんにもしてないのに。
「……」
そうなんだよな。
呆れた顔で、メイコのほっぺをむにむにした。おっぱいより少し弾力のあるプルプルほっぺ。ミクまんじゃなくてメイコまん出せばいいのに。いや、この弾力を生かしたメイコプリン作ってくれよ。
「…めーちゃん」
「………や、もー、や…」
嫌がってむずがる。オレはさらにほっぺを引っ張る。
こっちはメイコが疲れて先に寝てるのを知って、久々のお伺いを立てるのも憚ってこっそり帰ってきてひっそり布団に潜り込んだというのに、起きたらそこにおっぱいってどーいうことよ。一晩中そこにあったのに一揉みもしないで寝てたってなんとなく大損だよ。オレの気遣いを返せ。
「…??や?ぁ?…」
頬をいじる手を鬱陶しそうに払いのけて、オレの胸に顔を隠して眠たげに文句を言う。文句言いたいのはこっちだ。
「………ぽ…」
ぽ?
「……じっとして…かいたんぽ…」
誰が湯たんぽならぬカイたんぽだ!!
「っていうか起きてるだろ!!」
どう考えてもわかって言ってるだろうその発言に、思わずガバリとメイコの顔を引き剥がすと、若干寝ぼけまなこの瞳がとろんとしたまま笑っていた。
「かいたんぽー」
「違うだろ」
「おはよ、かいたんぽ」
「…おはよ、めいたんぽ」
ふふふ、とまたオレの胸にひっつく。
あぁそうさオレは君だけの湯たんぽだよ、とか言えばいいわけ?それって口説き文句になるの?
「もう起きるよ」
「やだぁ」
「めーちゃん今日は仕事午後からでしょ。眠いなら寝てていいよ」
基本的にメイコは自分の仕事時間問わず、家族の中で一番早く家を出る人間に合わせて起きて、ちゃんと栄養バランスの取れた朝ごはんを食べさせて送り出す、というのをモットーにしてる人なんだけど。
「やだぁぁ寒いぃ」
いや、ここは逆だろ。ぐずるオレを優しく起こして朝ごはん作っていってきますのチューしてよ。新婚さんみたいに。なんでオレだけそんな手抜きなの。
「ほらもー離れる」
「やだぁぁかいたんぽー」
だから違うっての。
無理やり手と顔をひっぺがすと、むくれてるかと思いきや眉を下げてうるうると潤んだ大きな目が上目遣いにオレを見つめてきた。
「…恋人が離れないでって言ってるのに…行っちゃうの…?」
「…………」
…今この瞬間の、オレとメイコの温度差がひどい。
並みの男ならドキューンと心臓射抜かれて一瞬でメロメロになりかねないそりゃあもう愛らしい仕草と表情なわけだが(まぁそんな状況絶対あり得ないけど)。
通称:チワワ戦法。オレ命名。
オレは騙されない。もはや動揺もしない。メイコがこの技を覚えたての頃は、オレも随分翻弄されて上手いように利用されたものだった。しかしどうだこの動じない頼もしさ、逞しさ、男らしさ。見よ、まるで聳え立つチョモランマのようではないか。
冷めた視線のままのオレの首に、メイコがするりと手を伸ばす。ねぇお願い、と吐息を耳元で囁かれる。
……イラッ。
「やめろ!朝からそういうのはダメだって言ってんだろ!」
男の朝をむやみにからかうな!色々大変な時もあるんだぞ!
メイコも、だって!と逆ギレする。
「だってカイトが冷たい!」
「オレはあったかいだろ!」
「うん」
うんじゃない。しがみつく身体を無理やり引き離す。
「オレは!早朝!出勤!なんだよ!」
「私は!寒いのよ!」
「冬が寒いのは当たり前だ!我慢しなさい!」
「あとちょっとだけ!」
「ちょっとっていつ!」
売り言葉に買い言葉。ガアッと吠えると、メイコはひるみながらも不満げにオレを睨んだ。
「…何よカイトのいじわる」
意地悪じゃない。本当に意地悪ならとっくにメイコ置いて起き出してる。
大体それを言うならメイコなんだよな。実は、夏にはこれと真逆の現象が起きるんだ。暑さがとことん苦手なオレはひんやりとしたメイコに絡みつく為に…いやもちろんそれ以外の邪念など微塵もなしにだよ?涼を取るためだけに夏になると頻繁に彼女のベッドに忍び込むわけだが…、…そりゃあもうなんの容赦もなく蹴り出されるんだぞ。
確かに亜熱帯の夜にでかい図体の男がしがみついてきたら不快指数は天元突破だろうけどさ。わかっててやるオレも大概大物だと思うけどさ。でもさ、もう少しなんていうかこうさ。
くそ。
無愛想な顔をお互い突き付けて睨みあっていたら、頭上のアラームがまたジリリリリ、と鳴った。第一弾の20分後にかけてある「二度寝阻止アラーム」だ。ほらアホなことしてたらもう20分経った。
ちなみにこの目覚まし音この前まで、メイコが起こしに来た時に隠し撮りした「カイトー朝よー起きてー」という声を使っていたのだが、バレた瞬間に速攻消去された。まぁ確かにオレにとって融和性のありすぎるメイコの声よりは、この無機質極まりない鐘の音の方が断然目覚ましとしては効果的なんだけどね。メイコアラームだった時期二度寝しまくりで全く意味なかったし。
そんなことはともかく、睨むのに疲れたオレはわざとらしく眉を顰め、脱力して見せた。
「…そんなに寒いの」
「…………うん……」
ため息をつきながら、手を伸ばしてアラームを止める。メイコは少ししゅんとして、またオレの胸に顔を隠した。
もう、あきらめた。今日は時間に余裕のある爽やかな朝は無理だ。このコの気が済むまで付き合ってやらないといけない気がする。そもそも今朝よりもっともっと冷え込んだ時だって、こんな風に我儘言ってきたりはしなかった。
だから、本当はなんとなくわかってる。
オレはパジャマを握るメイコの手を取った。少しひんやりとしていた。
絡む太ももをほどいて、彼女の素足をつま先で探る。そこは手よりもさらに冷たかった。
即座に、かわいそうに、なんて思ってしまうあたり。
置いてく気なんかないんだよな、最初っから。
「…どうしてほしいの?」
少しだけ呆れた風を装って聞いてやると、囁くような声で、あっためて、とのご用命が下った。
メイコの手を握る。足をさする。身体を抱きしめて、背中を撫でる。
キスする。
頭をよしよししてやって。
戯れに、つむじに息を吹き込んで。
そこまでしたら、ようやくうふふ、とご機嫌な笑い声が聞こえた。…はぁ。もう。手のかかる。



「…忙しくてごめん」
太陽の光が差し込みはじめたカーテンをぼんやりと見ていたら、ぽとりと言葉が零れ落ちた。
自覚してなかったけど、自分でも罪悪感があったんだなと気付いて驚いた。
…ここしばらくやたらと忙しくて、ずっと走りまわっていた。本当にもう、なんの家族サービスも恋人のフォローもできてない。
仕方ないけど。
メイコは腕の中で首を振った。
「…ちがうの。ごめん」
「オレももう少し余裕持てればいいんだけど」
「ちがうの。いつでもカイトの歌楽しみにしてるのよ。だから気にしないでたくさん歌って」
「……」
「……」
ここまで隠してきたのに結局こうしてオレに気遣わせてしまって、きっと彼女も後悔していた。
忙しくて、忙しくて、ろくに話すこともできない、触れ合うこともままならない。だけど我儘なんか言える立場じゃない。オレもメイコも、色んな意味で。だから。
ずっと、寂しいのを我慢していたんだろう。悪かった。そう思うと胸が苦しくなって、抱き締めた手を離せなくなった。
いっそ寂しいなんて伝わらなければいいのに。寂しい思いなんてさせないでいられたらいいのに。
そう思うけど、今こうして僅かな時間に抱き合っていられることが、2人ともすごく幸せで。
体温が混ざり合って、ココロが混ざり合って、すごく心地いい。久々の感覚を噛みしめるように味わう。このままもう一度まどろんでしまいたい。お互いを湯たんぽ代わりにして、気が済むまでずっと。
―――だけど。
「…ね、もう一回だけキスして」
切ない笑みに促され、断る理由もなくオレはそっと口唇を合わせた。まだ歯も磨いてないし、朝はくっつけるだけ。でも未練たらしく柔らかい下口唇を何度も食んで、ちょっと舐めて、吸って。
「…ん、ふ…」
離す。
なんかちょっと余計な欲まで頭を擡げてきそうで、お互い気まずくなってしまったのを誤魔化すように、メイコが小さく笑う。
「カイトは口唇もあったかいね」
「メイコの為だよ」
「ありがと。すごく、あったまったよ…」
ぎゅう、と一際強くオレの胸に顔を押し付けて。
―――そしてメイコは、よいしょ、と身体を起こした。

「おはようカイト。今日もお仕事がんばってね」

何事もなかったかのように、ベッドに腰かけて振り向いた顔は、いつも通りの優しい笑顔。しっかり者の長女。いつの間にか甘えるのが苦手になってしまった不器用な恋人。カチリとスイッチの入った音が聞こえた気すらした。その、瞬間。
「―――……ッ」
あっ、と思った。これはまずい、と本能が叫び、何かがこみ上げる。
急に遠ざかった温度。柔らかさ。匂い。オレは途端に堪らなくなり、彼女の腰にぐるんと腕を巻き付けた。
「待ってメイコもうちょっと待って。もうちょっとだけここにいて」
「だめよ。朝から収録なんでしょ。ちゃんと朝ご飯食べてきちんと身支度整えて行かなきゃ」
「あと10分。あ、5分でいいから。行かないでめーちゃん行っちゃやだ」
「先に下行って暖房付けといてあげるから」
「いやだいやだオレだって寒いんだよ。こんなんじゃ足りない全然足りないもっとイチャイチャしないとオレ歌えない」
「何それプロ失格」
「お願いもうちょっとだけ」
「ちょっとっていつ」
さっきまでとまるで逆の会話だ。苦笑する身体は言葉ほど抵抗してはいなかったから、オレは彼女の腰を強引に後ろから抱きよせ仰向けに倒して、その身体をもう一度腕の中に収めた。
「もう、ダメだってば」
「朝ごはんいらない。寝グセもどうでもいい。でもちゃんと歌うから。ギリギリまで許して」
ぎゅうぎゅうと力を込めて抱きしめて、白いうなじのそばで訴える。
あぁオレ今さら自覚した。
―――オレ、すっごいメイコ不足だった。
もう少しでいきなり歌えなくなるくらい、ゲージが残り僅かになってた。気付かないくらいずっと突っ走ってた。周りを見る余裕どころか自分自身の限界すらわからなくなるほど、がむしゃらになってた。

メイコは腕の中でじっとしている。ダメだと言ったのにオレの気の済むようにさせてくれている。
…ふと思った。
もしかしたら、メイコはわかってたんだろうか。
オレが無理をしていること。無理してることにすら気付いていないこと。ただひたすらに無心で突き進もうとしている今のオレに足りないものを、知っていたんだろうか。
あんなに我儘言って、オレに絡んで。不安げに、構えと甘えて。
あれは全部、オレの為だったのか。
仕事のストレスとか、責任感とか。プレッシャーに感じるタイプでもない。そう思って、淡々とこなしてきたつもりだったけど。
そうか。オレ意外と、…寂しかったんだな。
「…メイコ」
後ろから強く抱きよせて腕を回す。腕に柔らかい胸が当たって、ふわふわとしてすごく癒される。
「―――ありがと」
構ってほしかったのも、不安だったのも、甘えたかったのも、ぬくもりが欲しかったのも。
全部オレだ。
何が?なんてクスリと笑いが聞こえたけど、何も言わずに全身でその暖かさを感じることに集中した。足を絡めて、両腕でホールドして、必死で暖を確保する。だってこれだけがオレの動力源なんだ。
腰に巻かれた腕に手を添えて、メイコは優しく微笑んだようだった。
「……無理しないでね」
「……うん。大丈夫」
ありがとう。


ギリギリまでと言った。あと何分こうしていられるだろう。30分か。30分でどこまでイチャイチャできるだろう?
頭の中で計算しながら、振り返ってきたメイコと目を合わせ、共犯者のように笑い合った。

MEIKOさんを筆頭に、年長組、大人組、ボーカロイドが大好きです。

液晶の向こうに行くことは諦めたので悔しいけどめーちゃんはカイトさんに任せることにしました。幸せになれ。幸せになれ。

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