「夏空」小説/第一話

投稿者: usericonルナリーさん

投稿日:2020/06/18 19:27:02 | 文字数:4,812文字 | 閲覧数:84 | カテゴリ:小説

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ふっつー。

激ふつー。

やたらふつー。

の、普通じゃない世界の、

ふっつーの恋愛話の回。

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TEXT
 

 浅い海の上に作られている中空都市を通り抜け、町を出る前にある案内看板に従って、バブルボムで海の中に入る。
 滞空の時とシステムを変えなきゃならない。マニュアルの一番のメリットは、滞空から海中の状態になる切り替えが早い事だけど、それは全て手作業でセットしなおさなければならない。
 機械仕掛けより人間の技術って言うのはすごいって言うことだけど、みんなこのセッティングが面倒くさいから、オートマにして行くんだ。
 バブルボムの外装についていた僅かの気泡が、ブクブクと上に昇って行く。
 海底に、別の案内看板がある。「ポットサムまで50km」を、深海のほうに矢印が向いている。
 水の中を進んでいくと、次第に周りの日の光が青ざめて行く。
 リリの楽器屋がある、ポットサムの街は海底のニュータウンだ。本当は、ポットサンって名前にしようとしたらしいが、街の名前を申請するとき、つづりを間違えて「サム」になってしまったんだとさ。
 住んでいる人々…と言うと、少し語弊があるけど、一時的にでも人間の姿になるんだったら、「人々」で良いだろう。
 彼等は元々からこの星に住んでる原住民で、私達の祖先が陸地の少ないこの星を開拓するとき、だいぶ協力してくれたんだって。
 今では、私達は海底の岩盤に柱を穿って、天上高くまで届く高層ビルを作ってる。
 そしてそのビルの間に、中空都市をいくつも作って当たり前のように暮らしているけど、それも全て心の広い原住民達の支え無しでは成り立たない。
 マーブリックグラスと言うこの星の名前も、彼等が考えた「この星」を指す言葉を訳したものだ。「マーブル模様の草」って意味なんだって。さらに訳すと、珊瑚のことになると何処かで聞いた。
 私はその名の通り、七色の珊瑚の森の中を通り抜け、崖のような海底の岩壁に所々彫られた飾り窓を横目に、深海へもぐる。
 無事ポットサムに着いた。
 街の入り口に侵入するとき、センサーでバブルボムの型番とナンバーをチェックされる。壊れてるバブルボムや、銃器を備えたバブルボムは侵入できない。
 私のバブルボムは、マニュアルだけど、定期的に点検してもらってるし、私は別にポットサムに殴り込みに来たわけじゃない。
 街の中では、一般市民である原住民達が、色んな姿で建物を出入りしている。
 マナティに似ているものも居れば、絵に描いたような完璧な人魚もいるし、マーマンと言う種族に似ているものもの居る。
 彼等は、私達の祖先と遭遇してから、初めて、家を建てることと衣服を着ることを学んだそうだ。逆に、私達の祖先は、この星では宝石が何よりの価値があるのだと学んだそうだ。
 なんだか、純粋な子供とあくどい大人のやり取りを聞かされた時のように、その話を思い出すと気が滅入る。
 この星では、通貨は全て宝石だ。私がさっき持ってきたトルマリン、正確にはインディゴライトもそうだが、青い色が強い宝石ほど価値がある。
 最高品質のサファイアが片手分あれば、街一つ買えるくらいだ。
 リリの店の看板を見つけた。「アートミュージアム・リリ」。美術館と書かれているが、その件は店に入ると分かる。
 看板の突き出ている崖の前で2回ライトを点滅させると、バブルボム用の出入り口が開く。
 バブルボムを出入り口に侵入させ、ライトを灯したまましばらく待つ。扉が閉まり、海水が排水されて行く。エレベーターになった箱が移動し、バブルボム設置場に自動で連れて行ってくれる。
 ライトを消し、バブルボムが転がらないように床にアームを下す。
 気圧計がほんの少し低くなってるのが分かった。酸素マスクを外す前に、鼻を抑えて耳抜きをする。別に、はずしてからやっても良いんだけど、ドライビングスクールで習った通りに実行している。
 設置場の酸素濃度は、標高1000mくらいの山の上と同じ。多少息は切れるが、そんなに長居をする場所でもない。
 私は壊れたシンセサイザーを持って、バブルボムを降りた。そこで、クリスタルフォンをバブルボムの中に置いたままなのに気づいた。
 会員証をあの中に入力してあるから、持って行かなきゃ。

 リリの店の中は、すっかり地上人用の作りになってる。バブルボム設置場から専用の通路を通って、自動ドアをくぐって店に入った。
「いらっしゃいませ。リリの美術館にようこそ」と、元気の良い案内フレーズが店内に響いている。
 リリの店は、何処をどう形容しても楽器屋だ。だけど、リリはこの星では珍しいシーグラスを集め、それでオブジェを作って店に展示している。
 小さなシーグラスを丁寧に接着しながら作った、複雑で不思議なオブジェ達は、確かに楽器に見劣りはしない。
「グミー。いらっしゃい。新作があるんだけど、観てみてよ」と言ってきたリリは、癖の無いさらさらの金髪を荒く一束に結っていた。
「あー。ごめん。それより、火急で頼みたい仕事があってさ」
 私はアーティストの申し出を断り、音階がガタガタのシンセサイザーをカウンターに乗せて見せた。
「音が不ぞろいになってるんだけど、修理してもらえない? これ、代金」
 そう言って、私はトルマリンをカウンターの上に差し出す。
「前払いはありがたいわね」とリリは応え、手際よくシンセサイザーを店の機器に接続した。
 それから、音叉も使わず耳でシンセサイザーの音を聞く。
「あー。音がぐちゃぐちゃ。これ、使い物にならないわ」
「直らない?」と、私が聞くと、リリは音階のボタンや音色のメーターを操作しながら、
「うーん。どの音階にしても、同じ異常が出てるから…。内部装置を全部入れ替えるしかないかな。新しいの買ったほうが安いわよ?」と言った。
「これと同じシステムのがある?」
「なくはないわね。ちょっとだけ追加機能があるけど」
「代金内で買えるなら、お願い」と、私が手を合わせると、リリは「ちょっと待っててね」と言って、店の奥に引っ込んだ。
 彼女の結った髪が、黒いブラウスの肩で揺れている。ぴったりしたデニムにハイヒール姿のスマートな彼女は、確かに芸術家って言っても良いかも。
 リリは人魚なんだけど、地上人を相手に「ミュージアム」を経営するようになってから、めっきり人魚の姿には戻ってないんだって。
 しばらく待つと、リリは確かに、私の持って来たシンセサイザーによく似た機器を持って来てくれた。
「設定はほぼ同じで使えるものよ。唯、追加機能で『オートマチックアレンジメントエフェクト』って言うのがあるの」
「何それ?」
「名前の通りよ。自動編曲効果」
「特にその機能は使わないかも。でも、今まで通りに使えるなら、買っておく」
「OK。特に差額は出ないから、お代はもらっておくわね」
「安くなるって言ってなかった?」
「あのオンボロを直すのと比べればって事よ」
 そう言って、リリはトルマリンをカウンターから拾い上げ、軽く放って片手にしっかり握ると、「毎度あり」と言って、にっこり笑った。

 3杯ほどカクテルを飲み干し、すっかり出来上がったミークは、号泣しながら瑠香に抱き着いた。
「逢った時は、すごく良い子だったんだけど、彼女、段々私をテキトーに扱うようになってきてさー。もう、私達ダメかも~」
「ああ、放り出されたのは今回だけじゃないわけね。それは大変ね」と、瑠香もわかったもので、酔っ払い少女を抱擁し、頭を撫でてあげている。
 俺は店の傍らで、グラスに水を入れ、ミークに差し出した。「ほら、飲め」
 ミークは新しいリキュールかと思って一気にグラスを空けたが、「何これ、水じゃ~ん」と、文句を言う。
「16歳が3杯もカクテル飲めば十分だ。これから街を徘徊しに行くんだろ? 瑠香、ミーと一緒に先外出てて」と俺は言って、瑠香達を店から退却させ、レジの前で財布の中から翡翠をいくつか取り出した。

 店先でミークをあやしていた瑠香は、「それじゃ、これからカラーズパーク行こう」と言い出した。
 カラーズパークは、無料で季節の花が見放題の、写真の撮影スポットとしても名高い公園だ。確かに、女の子が喜びそうなところだ。
 土を手に入れるのが難しいこの星では、花は全て水耕栽培。その中で生き延びれる花しか、今の時代には伝わっていない。
 俺と瑠香は、両側からミークに肩を貸し、「ちゃんと歩け~」とか、「此処で眠らないで~」とか言いながら、なんとか坂を上りきった公園までミークを連れて行き、ベンチに横たわらせた。
 そろそろ日の暮れてくる時間だ。見晴らしの良い公園から、日の沈んで行く海が見える。
「もう、わらひは、このまま塵になりまふ…」
 酔っ払いに酔っ払いきったミーは、訳の分からないことを言い出した。
「最後に、あの子に、わらひが、『ばっきゃろー』と言っていらと…」と言って、ついにベンチの上でいびきをかき始めた。
「どうしょうもないなー。この子は」と、瑠香は言って、ミークの頭側に座ると、優しくミークの首を持ち上げ、自分の膝に乗せてあげた。「3年前とは大違いね」
「子供の3年は、俺達の6年くらいの違いだろ」と、俺はベンチの前にしゃがみこんで、すっかり大人になった少女の横顔を見る。「俺達は老けるだけだが、このくらいの子達は成長するからな」
「お。父親の眼差しに目覚めたか?」と、瑠香はからかってくる。「奥さんとはどうなのよ。上手く行ってる?」
「一日くらい、連絡なしで夜まで出歩いててても怒られないくらいの信用は得た」と、俺は自慢した。
「さすが。夫婦ってのは、信用で成り立ってるからね。愛じゃダメなのよ。愛じゃ」と、瑠香は何か言っている。
「瑠香は、そろそろ身を固める気はないのか?」
 俺は聞いてみた。何せ、この女も、18歳ではないしな。
 瑠香は、腕を組んで視線を彷徨わせ、「どうするかなー。身を固めるにしても、相手が必要でしょ?」と言う。
「ほー。まだ理想を追いかけてる最中?」
「理想かー。私も、結構理想は高いのよ」
「希望の年収とか、性格とか、ルックスとかは?」
「一年で一千万ラピス稼いで来る男で、家計は私に預けてくれて、私が仕事するのも反対しないで、年に一回は旅行に出かけさせてくれて、ルックスも内面もエレガントな人」
「どんな宇宙人だよ」
「それ、差別用語よ?」
「じゃぁ、どんな異星人だよ」
「えー? 居ないかなぁ。昔のマーズって言う星では、そんな人が流行ってたって聞いたんだけど」
「いつの時代の話だ」
「年代忘れたわ。たぶん三百年くらい前」
「時代の化石じゃないか。そんな都合の良い男が今時いると思ってるの?」
「いや、居る所には居ると、私は信じる」と、瑠香は言い切った。そして、ミーの耳にそっと、「ミーク。女の子と友愛してないで、ちゃんとした恋しなさいよ」と囁いた。
 お前もな、と俺は心の中で瑠香を応援しておいた。

 何時間眠っていたかは分からない。ハッとして起きると、私は柔らかい太ももの上に頭を預け、夜空の下で横たわっていた。
「瑠香さん…。今、何時?」と聞くと、「おお。起きたか」と瑠香さんは言って、自分のクリスタルフォンを取り出し、時間を確認した。
「18時26分。お腹減ったでしょ? なんか食べに行く?」と聞かれた。私はその言葉に甘えることにした。「はい。スチーム屋でもなんでも良いので」
 そこに、戒斗兄さんが近づいてきた。やはりクリスタルフォンを手にしてる。「メイの奴に、夕飯食べてくって言っておいた」
 戒兄さんの奥さんの名前を聞いて、私の中で古傷がチクリと傷む。だけど、そんなのを気にしてるほど、私の胃袋は感傷的じゃない。
「戒兄さん、瑠香さん、今日はとことん付き合って下さい」とお願いすると同時に、私のお腹がグ~と鳴った。

作り続ける事を目的としているコラボになります故、月一でアイデアの元としてテーマを掲げております。
テーマから投稿された作品が色々な方々の目に留まり、そこから最終目標のコラボへと通づることが出来れば尚良しです!

楽曲でもよし、動画でもよし、小説、作詞でもよし、イラストでもよし。何でもよし!
とにかく作り続ける事!
身体に無理のないように!

完全思いつきなんで、上手くいくかわからないですが楽しく、そして素敵なオリジナル作品がどんどん増えていければいいなあと思います。

ルールは追々追加していくと思われます。

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