「夏空」小説/第八話

投稿者: usericonルナリーさん

投稿日:2020/08/02 20:23:05 | 文字数:3,605文字 | 閲覧数:100 | カテゴリ:小説

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グダグダになりそうになりながら…

とにかく書き続けている回。

ボカロキャラの設定を知らないと書けないので、

サイトで年齢設定とかを調べながら執筆しております。

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TEXT
 

 家でご飯を食べた後、グミーとルーラーでやり取りをしながら、3作目の曲作りにはしばらくかかると言うことを確認した。
 グミーが、冬にシングルを出す予定だそうで、その作業で忙しいんだって。
 私は、自分で何かできないかと考え、家の中で鍵盤を探した。そしたら、小学校の頃使っていたピアニカを見つけた。
 息を吹き込んで鍵盤を押すと、音が出た。
 鍵盤の数も少ないし、吹きながらだと歌の練習は出来ないけど、肺活量は落ちないだろうし、鍵盤の感覚を忘れない練習にはなるんじゃないだろうか?
 アルバイトをして、いつか自分のシンセを買おうと心の中で思いながら、私は海辺の東屋でピアニカを吹き続けた。

 次の週、私はしっかり風邪を引いた。
 秋の終わりの東屋でじっとしていたのが悪かったんだろう。ハク姉が体温を測ってくれたら、38℃あった。
「熱あるね。横になってな。薬持ってくるから」とハク姉は言って、私をベッドに残した。
 ネルは、風邪をうつされないようにリビングで勉強をしている。冬期講習が始まる季節らしく、学校の後はそのまま塾に行っていて、めったに早くは帰って来ないが。
 私は頭の中がグワングワン言うのを我慢しながら、ハク姉が薬を持ってくるのを待った。
「解熱剤あった。けど、飲んだら医者行こう」と、ハク姉は言って、カプセルタイプの解熱剤と水を差しだしてきた。

 私を乗せて、ハク姉はバブルボムを走らせた。酸素マスクの中が蒸し暑い。一番近くにある内科が海の中って言うのが、クルアの街の悪い所だ。
 ハク姉愛用のバブルボムはオートマだ。私がグミーに送り迎えしてもらう時、グミーがよくやる細かい操作は、そんなに必要ない。
 空中から海中に機体を沈めると、キュインキュインと機械音が鳴って、自然と操作方法や機内の気圧や酸素濃度が変更される。
 耳抜きをしなくても良いのは助かった。今の私は、自分の鼻が何処についているかも分からない。
 ぼーっとしたままハク姉に連れていかれると、一番近所にある内科の、「波音クリニック」は通常営業していた。
 赤毛に白髪の混じる初老のお医者さんが、私の様子を見てくれた。
「発熱と鼻づまりね…。うん。風邪だと思うけど、一応、インフルの検査しておこう」
 そう言われて、鼻の奥にある鼻水を、綿棒で採取された。

 幸いインフルではなく、3日間眠っていたら私の風邪は治った。
 その3日間、お医者さんからもらった、お粥より吸収の良いゼリー飲料を飲んでいたが、これが結構美味なもので、鼻がつまっている状態でも「美味しい」と言うことが分かった。
 人間と言うのは、食べるものに関してあくなき探求心を持っているらしい。
 私は、風邪が治ってから、「東屋でピアニカを弾く」のを禁止された。
 だが、音楽の練習は続けたい。そこで、ハク姉に借金をして、ヘッドフォンと小型のキーボードを買ってもらった。
 ネルの「テレビタイム」が終わった頃にリビングにキーボードを持って行って、小声で歌いながら練習を続けた。
 時々、ネルの「うるさい! 音痴!」と言う声が部屋から聞こえてきたが、ヘッドフォンに遮られてほとんど気には付かなかった。

 グミーの手が空かない間、私は蕎麦屋でバイトを始めた。ハク姉に借金を返すのと、グミーの家へのガスロールの往復料金くらい払えるように。
 蕎麦と言うのは、蕎麦の実と言う植物の実を粉末にしたものを練り合わせて薄く伸ばして細く切って、茹でて麺として食べる料理だ。
 冷やした状態でも美味しく食べられ、蕎麦を茹でたお湯「蕎麦湯」で、最後につけ汁を割って飲むのが通だと言う。
 私は、蕎麦屋のユニフォームである「着物」と言うものの着方を学び、足袋と言うものと草履と言うものを履いて、いかにも蕎麦の国の人に見えるように装いながら、ウェイトレスの仕事に従事した。
 異国の文化を学びながら仕事をしていると、以前近所に住んでいた「氷川」さんの家のお兄さんが、20代前半の男性の集団に混じって蕎麦屋に入ってきた。
「氷川ー。マジでこんな高そうなところで奢ってくれんの?」と、誰かが言う。
「良いよ。ただし、全員ざるそばだけだぞ」と、氷川さんは言う。
 話を盗み聞くに、どうやら、何かの賭けで負けた氷川さんが、親しい友達に蕎麦を奢る約束をしたらしい。
 顔見知りと仕事先で逢うのは変な感じだったが、氷川さんが呼び出しボタンを押し、丁度私がオーダーを取りに行くことになった。
「いらっしゃいませ。お決まりでしょうか?」と聞くと、「ざるそば8つ。…って、ミークちゃん?」と、氷川さんは驚いたように聞いてきた。
「はいー。ご無沙汰してまーす」と、よく分からない挨拶をすると、周りの7人の男性達が、氷川さんをやいのやいのからかい始めた。
「ざるそば8つですね。今、お水お持ちします」と言って、私は集団から離れた。

 後日、氷川さんがまた私のバイト先に来た。その日は一人だった。
 私は蕎麦を運んでいる最中だったので、別のウェイトレスさんが氷川さんの接客をしていた。
 私がバイトの時間を終えて帰ろうとすると、店の外で氷川さんが待っていた。
「どうしたんですか?」と聞くと、「いや、夜道危ないから…送ろうと思って」と言う。
「然して危なくもないですよ。いつも通ってる道ですから」と答えると、「いやいや、16歳の女の子が、こんな…」と言って、氷川さんは辺りを見回した。
 街灯が煌々と点き、オフィスビルから明かりの零れる、簡素ながら清潔そうな通りを見て、氷川さんはこの通りを批判する言葉を失ったらしい。
「まぁ、久しぶりですから、お話ししながら帰りましょう。って言うか、氷川さん、大学通ってるんですよね? なんで帰って来たんですか?」と、私が聞くと、氷川さんは答えた。
「いや、ちょっとオルワールの街で、時代錯誤なことが起こって…避難してきたんだ」
 氷川さんが語るに、「ガクセイウンドウ」と言うものが、氷川さんの通っていたオルワールの街の大学で巻き起こったのだそうだ。
 オルワールの大学を占拠した「ガクセイウンドウ」に加担している学生と、警官隊の間で、死人が出そうなほどの攻防が行われていると言う。
「それは、学生VS警官って事ですか?」と聞くと、「うん…。そう思われちゃうでしょ? だから、一時的に田舎に戻ってきたんだ」と氷川さんは答える。
 なんでも、オルワール大学の生徒だと言うだけで、家に警官が来て、「署までご同行」を願われ、同行した者は、厳しく尋問されたりしているらしい。
「学生運動に加担してるのは、ほんの一部の生徒なんだけど…。『大人』達から見たら、同じ枠の中に入ってるものはみんな同じに見えるみたいなんだ」と、氷川さん。
「権力の横暴ですか」と私は言った。「うん。短く言うとそうなるかな」と、氷川さんは苦笑いしながら言う。
 それから、私と氷川さんは昔のクルアの街の話をしながら、家路を歩いた。
 カフェ・ショコラートはまだ同じ場所にあるのかとか、トラゴローはまだ生きているのかとか、この町にはまだ「公衆電話」ってあるのかとか。
「トラゴローって、僕には絶対懐いてくれなかったよね。君ん家の庭に入るだけで、『俺のハーレムに侵入するな!』みたいに威嚇してきてさ」
「いやー、そのトラゴローも、だいぶ丸くなりましたよ? そろそろ15歳だから、餌もシニア用に変えたし」
「ミークちゃんのお母さん元気? 病気がちって聞いたけど」
「ええ。まぁ…。母は、体より精神的に衰弱してて…。今は、ハク姉が仕事頑張ってくれてます」
「ハクさんか…僕、昔彼女にいじめられてたって知ってる?」
「リアルで?」
「リアルに」
「初耳です」
「今更、蒸し返す気はないけど、シャンプーされて機嫌の悪いトラゴローをけしかけられたりしてた」
「どう言う『イジメ』ですか」と言って、私は笑った。
 別れ際に、氷川さんは鞄の中からチューナーズのアドレスを入力してあるカードを取り出した。
「これ、貸すよ。返すのは、飽きたらで良いから。それじゃ」と言って、氷川さんは実家のほうに歩いて行く。
「ありがとうございます」と答えて、私は自分の家に向かった。

 氷川さんからもらったチューナーズのアドレスカードは、「ミユゥ・シフォン」と言う、知らないアーティストさんのものだった。
 クリスタルフォンでアドレスを読み込み、ヘッドフォンをつけて再生すると、ピアノの音と綺麗な歌声が聞こえてきた。
 透き通るような声、と言うのはこう言うものかもしれない。そう思わせるような、透明感があるのに、冷たくはなく、柔らかく包み込むような声が聞こえてくる。
 私は、音楽家を目指すものとして、グミー以外の「先生」…いや、「神」を見つけた。

作り続ける事を目的としているコラボになります故、月一でアイデアの元としてテーマを掲げております。
テーマから投稿された作品が色々な方々の目に留まり、そこから最終目標のコラボへと通づることが出来れば尚良しです!

楽曲でもよし、動画でもよし、小説、作詞でもよし、イラストでもよし。何でもよし!
とにかく作り続ける事!
身体に無理のないように!

完全思いつきなんで、上手くいくかわからないですが楽しく、そして素敵なオリジナル作品がどんどん増えていければいいなあと思います。

ルールは追々追加していくと思われます。

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