【赤ノ剣士】《1》

投稿日:2008/05/11 23:26:34 | 文字数:1,824文字 | 閲覧数:998 | カテゴリ:(未選択) | 全2バージョン

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悪ノP作、【悪ノ娘】【悪ノ召使】の関連SSです。歌詞じゃなかったんですがピアプロで文字が投稿できるところが他に無かったんで…スイマセン。
メイコ姉さんが革命を率いた女剣士だというところがツボだったのですが、彼女にもいろいろ思うところがあるのでは無かったかなあ、と思って捏造してみました。
冒頭は歌詞っぽいですが、詩作の才能は無いので、完成はしておりません。そのうち悪ノPの許可をいただけたら、Full歌詞もやってみたい…と思ってみたり。

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TEXT
 


 【茜の鎧を身にまとい 見よ 聖剣士は行きたもう】

 【高らかにうたうその言葉 可愛く可憐な王女様 あなたの細いその首に 王座も国も 重すぎる】

 【誰もが彼女を褒め称え けれども剣士は歌を聞く】

 【鐘楼が三度時を告げ 双子の王子を悼むとき】

 【赤ノ剣士はただ思う 私と王女と召使】

 【罪はそれぞれ違えども 重い鎖は皆同じ―――】

 【茜の鎧に紅玉の剣】

 【これは聖女の物語 哀しくも強き人の詩】






 彼女は紅き鎧の戦士。だが、彼女が身につけるその彩は、尊い紅の猩々緋でもなければ、臙脂で染め上げたあざやかな紅でもなかった。
 彼女がまとうその鎧、鋼鉄と革の甲冑を染め上げるのは、野山に花咲く茜の色。
 後の世に救世主と呼ばれし女戦士。これは彼女の物語。




「隊長、本当に行かれるのですか……?」
「うん。そうね、あたしの郷里はエールが美味いの。そろそろエールの季節だからね、それが理由じゃダメかなあ?」
 一人の女がそう笑いながら、目立たぬ毛織のマントをばさりと払った。身に纏うものは鋼の甲冑と革鎧を組み合わせた軽装な装備。だが、丹念に鋼の輪を編み合わせた鎖かたびらも、使い込まれて深い色彩となった革の具足も、見るものが見れば彼女がいかに己の剣、そして、鎧に対して心を配ってきたとわかるもの。
 その胸からは、もともと刻印されていたはずの、紋章が削り取られている――― 黄金の薔薇抱く獅子の紋章。王都を守る警備隊の分隊のひとつを任された印として、彼女にあたえられていたはずの栄光の紋章が。
 眼下に見下ろせば、灰色の石作りの路が街にまで続く。頭上を仰ぐと空は晴れ、遠くに鳶が鳴いていた。「旅日和だね」と女は笑い、自分よりも頭一つ以上も大きな部下たちを、「心配しなさんな」と力強くねぎらう。
「あたしは、単に新造りのエールを飲みに戻るだけよ。きっとここに戻ってくるわ。あたしたちの町に…… きっとね」
 そして女はあぶみを踏むと、たくましい栗毛にひらりとまたがる。ぶるる、と馬が鼻を鳴らした。女の腰に佩かれた剣、その柄に象嵌された柘榴石が、あざやかな真紅に照り輝く。
「隊長! 自分たちは……っ」
「またね! 楽しみにしてなさいよお、あたしのお土産!」
 磊落に笑って手綱を打ち、女は馬を走らせ始めた。白亜の宮殿を後にして、女は、王国一の猛者の名も高い女戦士は、己が主であったはずの王宮を後にした。
 堀にかけられた橋が上げられ、女の後ろで、があん、と音を立てて跳ね上げ扉が締まる。女の顔から笑みが消え、代わりに、射るような鋭い光が宿った。女はたずなをひき、馬を止まらせた。栗色の断髪をはらい、背後を振り返る。白亜に聳え立つ尖塔と、今は薔薇がさく盛りの庭園。毎夜毎夜のように舞踏会が開かれて、ピスタチオやアーモンドの菓子、溢れるほどに供されるワインを代わりにそそげば、深い堀すら葡萄酒で充たすことが出来る。
 くっ、と女は唇を噛んだ。馬の首を街へと向けようとする。
 だが、そのとき、ふいに気付く。
 一人の少年が、一本の樫の下に立っている。
「レン?」
「メイコさん」
 女は馬をなだめながら、ゆっくりと少年へと近づいた。それは、王女の傍仕えのものの証である、緑の生地に黄金のふちどりが施されたお仕着せ。金の髪でふちどられた白皙に、宝石のような緑の眼を持つ少年だった。
 レン、と呼ばれた少年は、半ば泣きそうな顔をしていた。メイコは思わず破顔する。身も軽く馬から下りると、少年の正面に立った。
「あなたが、王宮警備隊を辞したという話は、ほんとうなんですか」
「ええ、半分くらいね。もう半分はわたしのわがままよ。急に、郷里のエールが恋しくなっちゃってね」
 いたずらっぽく答える女を、少年は、その真意を見抜こうとするかのように見つめる。二つの目は透き通る緑、海柱石の緑だ。少年はためらいがちに手を伸ばし、馬のあぶみを取る。「僕が外まで送りましょう」と言った。
「あら、悪いわね。王女殿下のお相手はいいの?」
「殿下は今、午睡をなさっているお時間ですから。先刻の仮面舞踏会でお疲れなのでしょう」
「だったら、なおさら、傍にいてあげないといけないんじゃない?」
 あなたがいなかったら、きっとぐずるわよ、あの子、と女は言う。少年は口を結んで答えなかった。女は大きく顔を挙げ、天を仰いだ。



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