「ああぁー暇だー…」
傍でリンがだらけている。
まったくもう…
「何やってんだよ。大掃除の途中だろ?」
「そうだっけ?」
「忘れるなよ!」
まったく…大丈夫かn
「痛ッ!!」
「あ…大丈夫?」
クローゼットを開けたとたん、何かが頭に当たった。(正確に言えば落ちてきた)
…本?
「何?その本」
「んー『マッチ売りの少女』だって…」
「何それ?」
「え?」
リンはマッチ売りの少女を知らないようで、首をかしげていた。
「レン、それどういう話?」
「え?仕方ないなー、だったら読んでやるよー」
「ありがとー。お願いします」
ページをぱらり、とめくった。
<<孤独な少女に幸せを【マッチ売りの少女】>>
それは、ある年の12月1日。
街は幸せそうな人で溢れていた。
そんな幸せそうな街に、幸せそうな顔をしていない少女がいた。
「マッチを…買ってください…」
かごを一つ手に下げて、行きかう人々に呼びかける。
そのかごの中には、沢山のマッチ。
足は裸足で、服はボロボロだった。
彼女は『マッチ売りの少女』、グミだ。
まだ13才の少女は、震える声で一生懸命マッチを売る。
だが、大人たちはそんなグミになど目もくれず、無視して歩いていってしまう。
「あ…ッ!!」
「邪魔だ!気をつけろ!!」
中には、わざとぶつかってグミに怪我をさせる、タチの悪い者もいた。
しばらくして、この街の教会が12時を告げる鐘を鳴らす。
街を歩く人は少なくなった。
人が少なくなったために、グミは父の待つ我が家に行った。
父…というよりは、グミを引き取った、遠い親戚の男である。
「た、ただいま戻りました…」
「…金は?」
グミの養父――カイトはおかえりの一言も言わず、グミを睨んでかごを見た。
そのかごのマッチが減っていないことに気づくと、立ち上がりグミの頬をおもいきり叩いた。
「……!!」
「全部売って来いと言っただろう!一個も売れないなんて、お前は俺を侮辱しているのか!!」
「…申し訳ございませんでした」
グミが涙目になって謝ると、カイトはもう一回グミを叩いた。
「謝る暇があったらさっさと売って来い!!全部売るまで家には入れないからな!!」
カイトはそう言い放つと、グミを家から追い出した。
食事もさせないつもりらしい。
酷い話である。
グミは幼いころ、両親が事故で他界し天涯孤独になっていたところをカイトに引き取られた。
しかしカイトの性格がアレな為、グミはずっと孤独だった。
カイトはその性格の為につい一年前に仕事をクビになり、グミにマッチといった物を売らせていた。
遠くで、夜の3時を告げる鐘が鳴る。
家から離れた路上でグミは蹲り、ボソリと呟いた。
「もうやだ、こんな生活…」
ロクにご飯を食べさせてもらえていない為か、グミの体はやせこけていた。
友達と呼べる者もいない。
助けも呼べない。
皆が悪い人に思え、人を信じることができなくなった。
カイトからは酷い仕打ちを受け、服もボロボロ。
家出したい時もあるが、身寄りがない為結局あの家にしかいれない。
何度も死のうとしたが、怖くてできなかった。
体がそれを拒むからだ。
グミはただ、温かさがほしかった。
蹲っていたグミだが、しばらくしてそのまま眠ってしまった。
雪が降り積もる中寝たら凍えて死ぬ可能性があるが、グミはそんなことにはなれっこだった。
(どうして、私だけこんな目に…)
グミの意識が闇に落ちたのは、そう遅くはなかった。
ここのところ眠れて居なかったからか、しばらく目覚めなかった。
そしてまた夜になっても、カイトはグミを探そうとはしなかった。
その日の、夜の9時ごろ。
グミは眠っていた…というよりは倒れていた。
倒れて気を失っているグミには、誰も気にする様子はなかった。
その近くに、ある親子が通りかかった。
母親は桃色の髪をしていて、娘は緑の髪をツインテールにしていた。
楽しそうに話していた二人だったが、娘の方は倒れているグミに気がついた。
「お母さん…人が、倒れてる」
「え?…え、なんで誰も気づかないの?」
二人はグミに駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「…気を失っているみたいね。うちに運びましょう」
「だったらお父さん呼んでこようか?」
「うん、お願い」
*
「・・・・?」
グミが目覚めた時に見たのは、見覚えのない天井。
感じたのは、布団の温かさだった。
「あ、気づきましたか。おーい、目が覚めたみたいだよー!!」
横にいるのは、グミと同じ緑の髪の少女。
誰かに向かって叫んだ後、グミに体を向けた。
「ひッ…」
「え?あの…大丈夫、ですか?」
「…え?」
怖がっていたグミだったが、その言葉を聞いて警戒態勢を強めた。
(ここどこ?この人誰?なんで私はここに?)
グミの頭は、状況を理解していなかった。
やがて少女は立ち上がり、手を差し出す。
「おいで」
グミはよくわからないまま立ち上がったが、少女の手をとることはできなかった。
グミがまだ若干怯えていることを察し、少女は「こっちこっち」と歩きながら手招きした。
グミは、その後を追った。
着いた場所には、大きめのテーブルがあった。
そこにイスが四つ並べられている。
「ここ、座って」
グミは恐る恐る近づき、イスにそっと腰を下ろす。
少女はグミの隣に座った。
グミが俯きながら口を開いた。
「あの、ここは…?」
「私の家よ。あなた、街で倒れてたからうちに運んだの」
声は、グミの隣に座る少女から発せられたものだった。
そして、向かい側から声がする。
「この寒い中倒れていたから心配したが…無事で何よりだ」
グミがちらっと顔を上げると、いつのまにかそこに紫の髪の男性が座っていた。
そしてその隣からも声が。
「お茶どうぞ」
「……どうも」
グミは桃色の髪の女性が差し出したお茶を受け取り、水面を見つめる。
警戒しているのか、飲もうとはしない。
それとも、ただ怖いだけなのか。
「飲んでいいよ。普通のお茶だから」
少女が言うと、グミはやっとお茶に口をつけた。
温かいお茶が、冷え切っていた体を温める。
「……あの…助けていただき、ありがとう、ございました」
声が震えている。
グミの心は、本当に心配してくれたのかという不安でいっぱいだった。
「そう警戒しなくてもいいよ。あ、私はミク。よろしくね」
ミクはにこやかに笑いかける。
グミはミクをちらっと見たあと、すぐに目を逸らした。
「ところで…どうしてあんなところに?」
ミクはグミに尋ねるが、グミは俯いたままで喋ろうとはしない。
「何か…あったの?」
ミクが言うと、グミはこくんと小さく頷いた。
「何があったか、教えてくれる?」
ミクが続けて尋ねるが、その言葉を聞いたときグミの肩がビクッとはね、頭をぶんぶん横に振った。
「…そうか。ミク、今はそっとしてやりなさい」
「お父さんは気にならないの?」
「きっと、よっぽど辛いことがあったんだ。触れないほうがいいだろう」
「…わかった。ごめんね」
ミクが謝ると、グミは小さく頷いた。
「さて…あんな時間にあんな所で倒れていた、ということは、行く所が無いんだな?」
「……あるけど、ない。あんなところ、いっそ、帰れないほうが、いい」
「そうか…」
男性が少し考えている間に、ミクが提案した。
「だったら…うちで暮らす?」
「……え?」
これにはグミは顔を上げた。
「行くところないんでしょ?」
「……うん」
「うちで暮らしなよ。私は大歓迎だよ!…っと、お父さんとお母さんは?」
「辛いことがあって家には帰りたくない、ということだから俺は認めるぞ」
「一人くらいなら増えたってかまわないわ。ちょうど、部屋もひとつ開いてるから」
「だって。どうする?」
グミはしばらく黙っていたが、あんな家に帰るよりはここにいたほうがいいかもしれないと結論を出し、小さな声で言った。
「……やっかいですが、よろしく、お願い、します」
【童話・マッチ売りの少女】孤独な少女に幸せを【ボカロで童話やってみた・2】
ボカロで童話第二段「マッチ売りの少女」
人魚姫の反応が大きかったので第二段書いてたら…どうしてこうなった。
そしてギャグにするつもりだったのに…どうしてこうなった。
短くするつもりだったのに…どうして長くなった。
そして続く。
そしてもう一つ、ボカロで童話を書いていることには皆さん気づいてますね。気づいてるよね、確実に。
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ご意見・ご感想
姉音香凛
ご意見・ご感想
おぉおおおおお!←
GUMIきたああああああ(((
そしてぽルカ夫婦ーっ!((おちつけ←
なにやらあいすまふらーがひどいことを・・・?
ちょっとばかいとに一言言ってくr(ぇ
続き楽しみにしてるぜっ そしてブクマもらっとく! ノシ
2011/12/19 16:55:16
ゆるりー
謎のおぉおおおおお!←
GUMIちゃん人気ですね((
おちついてくださ((
あいすまふらーが酷いことをしてます。
このあと、あいすまふらーは報いを受けるので大丈夫です。←
ブクマありがとうございます!
2011/12/19 17:08:16