ヒトゲノム ~ショート・ストーリー~

投稿日:2009/05/01 19:48:41 | 文字数:1,418文字 | 閲覧数:732 | カテゴリ:小説

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カラオケ配信決定記念です。ヒトゲノムのショート・ストーリーです。

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人間とはどういうことだろうか?

人間は人間を愛する。
人間は人間を憎む。
人間は人間を尊敬する。
人間は人間を見下す。

人間とは矛盾で出来た生き物だ。

そんな人間を解明するために私は旅に出た。

・報告書1

私の視界は私ではない他人の視角を捉えていた。
私の知らない人物の視界だ。女性のようだ。
もう何日も彼女の視角を追っている。しかし彼女の行動は殆ど変わらない一日を過ごしている。

彼女は涙を流していた。写真を抱きしめて泣いていた。
写真には彼女と男性のツーショットで写っていた。
写真の男性は目の前で眠っている。口には管のようなものが咥えさせられ、
腕には点滴針が何本か刺さっていた。脈は正常だ。一命は取り留めたらしい。

彼女は写真を棚に置くと、今度は男性の右手を握る。
私が知る限り男性が目を開いた所は見た事がない。

この男性は確かに生きている。しかし言葉を失い、表情を失い、人格を失う。
それでもこの男性は生きていると言えるのだろうか?
もしかすると、この男性の魂は既に違う世界に向かって行ってしまったのかもしれない。

それでも彼女はこの男性の目覚めを待っている。
彼女の魂がこの男性から離れる日は訪れるのだろうか?

私の視界は徐々に薄暗くなり、彼女から徐々に離れていった。

・報告書2

私の視界は私ではない他人の視角を捉えていた。
私の知らない人物の視界だ。男性のようだ。

彼は心のどこかで焦りを感じているようだ。ソワソワしている。
テレビを付けチャンネルを一通り変えると、そのままテレビを消す。
ベッドに寝転がっては数分も経たないうちに起き上がる。
パソコンの前に座るとインターネットのトップ欄でニュースをチェックする。
そして新着メールが届いていないのを確認すると直ぐに立ち上がる。
高まる鼓動が治まらない。時刻は午前2時を過ぎたばかりだ。

ピンポーン

玄関口から呼び出し音が部屋中に鳴り響く。

彼は急いで玄関に向かい、勢い良くドアを開いた。
彼の前には女性が立っていた。彼と同じ年くらいだろうか。
どこか不安げな表情を浮かべ、彼に謝罪した。
彼は彼女の謝罪を聞くと同時に、彼女の手首を強く握り締め部屋の中へと引きずり込む。
彼女は驚き、僅かな抵抗を見せたが、彼の力には及ばなかった。
彼は強引に自分のベッドに彼女を押し倒す。

ここで私の視界が男性から女性へと切り替わる。

彼の表情はとても危機迫る形相になっていた。彼女は恐怖のあまり声も出なかった。
そして彼女を強引に抱きしめる。彼の目には涙が溢れていた。

「この世に僕の生きた証がどこにも無かった」

彼はとても悲しそうに嘆いた。
彼女はその言葉に冷静を取り戻した。そして優しく頷いた。

ここで彼らの視界から私は切り離された。

人間が人間を求める理由は遺伝子レベルで決められているのだろうか?
彼は漠然とした不安から自分の遺伝子を残したいと願った。
しかし彼女は彼の漠然とした不安から遺伝子を残す事を決めた。
双方の考えの不一致に私は違和感を抱かずにはいられなかった。

・報告書3

私の視界は私本来の視界に戻っていた。
自分の存在を今まで以上に不思議に思えた。
私の魂は本当に存在しているのだろうか?
私の遺伝子は本当に私の存在を認めているのだろうか?
その答えが本当に存在するのだろうか?

私の旅はまだ終わりそうにない。

0-9の作詞担当をしているアサキです。

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