【ぽルカ】thinking about you
投稿日:2012/07/21 23:05:26 | 文字数:2,471文字 | 閲覧数:2,275 | カテゴリ:小説
いつだって、どんな場所だって。
!ご注意!
・初書きぽルカ
・とか言っておきながら全然カプ臭はしませんむしろルカ→→→メイ
・カイトほとんど出番ないですが当然のようにカイメイ
・シスブラコンのインタネ家がわちゃわちゃしてるのが好き
・インタネさんちは家もお風呂も純和風
・4P目はオマケですピー
※前のバージョンで進みます
「5人で泊まりがけのレコーディング?」
言われた言葉を鸚鵡返しにすると、お姉様の形の良い眉が申し訳なさそうに下がった。
お風呂から上がって、お姉様と二人で紅茶を飲んでいた時のことだ。
「ルカが来る前に5人で歌ってたシリーズなのよ。ユーザーの人気が根強くて、続編を作ることになったんだって」
へぇ、と相槌を打ちながら肩から垂らしたタオルで髪を拭う。
「いつからですか?」
「明日なの。ついでにPVも撮るって」
「随分急ですね」
「そうなのよね…」
私たちの仕事はとにかく不規則で、こんな風に前日に急に決まることも珍しくない。あまりに無茶な仕事はマスターの方で調整をしてくれるけれど、ギリギリ人道的なラインの仕事なら出来るだけ受ける、というのが彼の方針だったし私たちもそれに従っている。
「…参ったわ」
頬に手を当ててお姉様がため息をつく。どう見ても気乗りしていいないような様子だ。誰よりもプロ意識が高いお姉様は急な仕事の依頼でもイヤな顔ひとつしないのに。「何か困りごとでも?」と尋ねるとカップの湯気の向こうでお姉様が意外そうな表情を浮かべた。
「だって、丸二日ルカ一人きりになるのよ」
「そうですね」
私は頷く。朝から次の日の夜遅くまで、ということなのでそうなるだろう。
「ご飯の時も夜寝る時も、一人なのよ」
「そうでしょうね」
再び頷く。留守なのだから当然と言えば当然のことだ。首を傾げると、まるで鏡と向かい合っているかのようにお姉様も同じ方向に首を傾げる。
「…大丈夫なの?」
「なにがですか?」
「…ルカ一人で」
その返事に、一瞬だけ眉根を寄せてしまった。
家族の誰かが仕事で不在なのはいつものことだ。今回はそれが全員になったというだけで、特になにが変わるわけでもない。第一ご飯の時はともかく夜寝る時は一つ屋根の下にいるとはいえいつも一人ではないか。
「…大丈夫です、別に」
「本当に?一人でご飯の準備とか出来る?」
「はい」
「夜も一人なのよ?戸締まりとかちゃんと…」
続けられた言葉に今度ははっきりと眉間に皺を寄せる。
心配してくれているのは嬉しい。確かに私はこの家では一番後輩だけれど、年自体はミクさんや双子よりも上だ。もしお姉様から頼りない子供だと思われているなら、少し心外だった。
「…心配性ですね、お姉様」
「だって、ルカ一人にしていくなんて心配だもの」
「…大丈夫ですよ、私だってちゃんと…」
「本当に?」
「……」
きっと今、私はものすごく不服そうな顔をしているだろう。お姉様に対してこんな表情を向けるのは本意ではないけれど、あまりにも繰り返される心配は信頼されていないことの表れにしか思えない。
「ルカ一人にしていくなんて」。
――その言葉は、完全に私のことをみくびっている。
「…私は、そんなに頼りなく見えますか?」
「え?」
「確かに生まれたのは一番遅いですけど、私だってお姉様の妹です。一人でやるべきことくらいちゃんと分かってます」
言い放った言葉にお姉様の表情が曇っていく。
けれど、言葉の刺を隠すことは出来なかった。
『お姉様に信頼されていない』。その事実が、毒を持ってじわじわと心臓を蝕んでいく。
「お仕事なんですから、どうぞ気にせず行ってらしてください」
「でも」
「留守は立派に守ります。だから、ご安心を」
ガタン、と音を立てて椅子から立ち上がる。驚いたように私を見上げたお姉様と視線を合わせることが出来なくて、露骨に視線を反らした。ルカ、と背中を追ってきた声を振り切って、私はリビングを足早に出る。
足音が立つのも構わず廊下を進み、自分の部屋へ閉じこもって鍵を掛けた。
(私は、お姉様に信頼されていない)
たどり着いてしまった答えは、いとも簡単に私を打ちのめす。頭が熱くて血を吹きそうで、ごぉっと嵐が吹きすさんでいるようだった。
自負があった。家族として信頼されていると。
付き合いは一番短いかもしれないけれど、過ごした時間は決して密度の薄いものではなかったから。出会った当初から私の憧れはお姉様で揺らぐことはなくて、仕事だってお喋りだって、誰にも負けないくらい一緒にしてきたつもりだったのに。
「…ばかみたい」
本当にばかみたい。
自信過剰だった、私自身が。
きっとダイニングに置かれた紅茶は冷めてしまっているだろう。そして、その向こうにいる焦げ茶の瞳が悲しそうに揺れているのを想像して、胸がきりきりと痛んだ。
「じゃあルカちゃん、いってくるね」
「お土産買ってくるよー!」
「戸締まりちゃんとな」
「ちゃんと晩ご飯食べるんだよ、ルカ」
「はい。いってらっしゃい」
賑やかにお喋りをしながら玄関を出ていく家族の背中を見送ると、家の中が一気に静かになった。体の中に溜まっていた息をまとめて吐き出すと、重たい呼気は廊下の下へと沈んでいく。
…結局、最後の最後までお姉様と目を合わせることは出来なかった。
玄関を出ていく背中が元気がなかったのも、お姉様の行ってきますが聞けなかったのも自業自得だとは分かっていた。けれど、どうしてもだめだった。
大好きなお姉様に信頼されていないという絶望感。
大好きなお姉様に失礼な態度をとってしまったという罪悪感。
その二つがない交ぜになって、未だに胸の奥にくすぶっている。
「……」
ぺちん、と頬を叩いて気合いを入れ直す。これから丸二日間、一人きりなのだ。こんな鬱々とした気分で過ごすのは精神衛生上良くない。絶対に良くない。気分を変えて、一人の時にしか出来ないことをしよう。
ちょっと高い紅茶を飲んで、リビングのソファを独り占めして、レッスン室を一人で贅沢に使って。そうだ。滅多にないことなのだから、楽しまなくちゃ。…そうすれば、きっと笑顔でおかえりが言えるはず。
くるりと踵を返し、妙に浮かれた足取りで私はリビングへ向かう。まずはお気に入りのDVDを見よう。普段は双子に占領されている大画面テレビも、今日だけは私のものなのだから――。
作品へのコメント2
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ご意見・感想
キョン子さんのぽルカ美味しくいただかせて頂きました!キョン子さんのぽルカが見れるとか嬉しいです。今の二人の距離感とってもスキです!
2012/08/17 04:52:10 From 文月玲
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コメントのお返し
>くらぴー様
お返事が大変遅くなって申し訳ありませんでした…!!
うおおおおああたたかいお言葉ありがとうございます…!いつかインタネさん家を全員書いてみたかったのです!お気に召して頂けたなら恐悦至極…!////はじめてのポルカは恋?か?みたいなレベルでしたので、ちょっとずつ段階を踏んで行けたらいいなと思います…!
>文月零様
美味しく頂いてもらって光栄です!!////実はぽルカもすごく好きなんですが、どうしてもカイメイという巨塔の影に隠れしまいがちで…今回はがっつりこの二人を書けたのでとても楽しかったですー!
恋愛未満、というかルカさんに至ってはがっくんを一体どう思っているのか私もちょっときになりますwwまた二人のことも書きたいと思いますので、是非また!2012/08/28 21:06:20
キョン子
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ご意見・感想
ぽルカもめちゃくちゃステキでしたーー!!
家族全員出てくる話はとても好きなんです! 素敵なお話ありがとうございました(^▽^)2012/07/22 01:53:46 From くらびー
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コメントのお返し
>くらぴー様
お返事が大変遅くなって申し訳ありませんでした…!!
うおおおおああたたかいお言葉ありがとうございます…!いつかインタネさん家を全員書いてみたかったのです!お気に召して頂けたなら恐悦至極…!////はじめてのポルカは恋?か?みたいなレベルでしたので、ちょっとずつ段階を踏んで行けたらいいなと思います…!
>文月零様
美味しく頂いてもらって光栄です!!////実はぽルカもすごく好きなんですが、どうしてもカイメイという巨塔の影に隠れしまいがちで…今回はがっつりこの二人を書けたのでとても楽しかったですー!
恋愛未満、というかルカさんに至ってはがっくんを一体どう思っているのか私もちょっときになりますwwまた二人のことも書きたいと思いますので、是非また!2012/08/28 21:06:20
キョン子
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人魚姫【自己解釈】
「──私は、あなたが好きでした……」
それはどうしようもないほどに。
自分の運命を歪めてしまうほどに。
そんな私は、もうすぐ泡となって消えてしまうのだろう……
さようなら……
人魚姫【自己解釈】
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【ACUTE】二人の少女と絡まる感情【二次創作】
「私達は、ずっと友達でいようね」
それは、昔三人で交わした約束。
絶対に破らないでと、皆で誓い合った。
しかし時が流れ、三人の関係は変わりつつある。
“約束”も、誰かが破る状況に、なってしまった。
【ACUTE】二人の少女と絡まる感情【二次創作】
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【リクエスト】おでこに生えたビワの性格が悪い【自己解釈】
「ありえない」
人なら、誰でもそう思うことがあるだろう。
たとえば、たまたま住んだアパートの住人が変わった人ばかりだった時。
たとえば、家の裏でなぜかマンボウが死んでいた時。
たとえば、この星を作った神様が、地球を売った時。
【リクエスト】おでこに生えたビワの性格が悪い【自己解釈】
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【メイカイ】共犯者?【カイメイ】
同型のボーカロイドを1日交換しよう、というのはマスター同士の思いつきだった。
『新曲で女声がもうひとつほしいのよ、メイコ貸してくれない?』
『なら俺もメイト貸してくれ。調声してみたい』
俺のマスターとメイコのマスターは昔馴染みで、プライドが高く完璧主義の似た者同士。
言い合いも口喧嘩もしょっちゅうのことだけど、互いのボーカロイドを持ち寄っては2人で一緒に仕事をするような気安い関係だった。
【メイカイ】共犯者?【カイメイ】
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【がくルカ】Jack-o'-lantern【ハロウィン】
今年も、この季節がやってきた。
お菓子か悪戯かを選ぶ、甘い甘いイベント。
それが、ハロウィン。
「trick or treat」
それは、魔法の言葉だろう。
【がくルカ】Jack-o'-lantern【ハロウィン】
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【カイメイ】共犯者【メイカイ】
同型のボーカロイドを1日交換しよう、というのはマスター同士の思いつきだった。
『新曲で女声がもう一つ欲しいのよ、メイコ貸してくれない?』
『なら俺もメイト貸してくれ、調声してみたい』
私のマスターとメイトのマスターは昔馴染みで、プライドが高く完璧主義の似た者同士だ。
言い合いも口喧嘩もしょっちゅうだけれど、互いのボーカロイドを持ち寄っては二人で一緒に仕事をするような気安い関係だった。
【カイメイ】共犯者【メイカイ】
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【カイメイ他】Bad ∞ End ∞ Night 前夜
――静かになった部屋の中 拍手を送る謎の影
『今宵は良い舞台でした…』 手紙を拾って泣いていた――
ごめんなさい。
ごめんなさい。
せっかくの舞台が壊れてしまったの。
【カイメイ他】Bad ∞ End ∞ Night 前夜
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【カイメイ】 落ちつけ、カフェオレ飲もう
「……っ、……ッッ!」
「落ち着いてー」
「……ぅあっ」
「ちゃんと画面見て、集中して、…あ」
「あぁっ!!」
【カイメイ】 落ちつけ、カフェオレ飲もう
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【カイメイ】 めー充びより!
世の中、黄金色でにぎわうこの時期。
オレ達のような仕事の仕方をしてる人間は、そういう世間の流れはほとんど関係ないどころか、むしろ逆方向に生きてると言っても過言ではない。要するに世間様がお休みの時ほど、オレ達には仕事が舞い込んでくる。なぜならオレ達のユーザーは、平日出勤の人が少なくないからだ。
それでも、なんの天の采配か。
家族や仲間がバッタバッタと走り回っている中、1日だけオレとメイコにぽっかりと休日ができた。昨日まで唄ったり踊ったり喋ったりと大忙しで、明日からもしばらく仕事は詰まっているが、偶然今日だけ二人揃ってオフだ。確かに下の子たちに比べればオレ達の仕事量はまだ穏やかな方だが、それにしてもこの稼ぎ時のさなかに一息つける幸福を思うと、申し訳ないような気持ちになる。
「…っづああぁあーーー」
【カイメイ】 めー充びより!
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【カイメイ】恋扉桜【短編詰め合わせ】
【恋】君の熱
幼い頃、俺は病弱だった。
今ではその面影は微塵もない健康体だけれど、中学校に上がるくらいまではしょっちゅう熱を出して寝込んでいて、両親が共働きだった俺の面倒を見てくれたのはいつも彼女だった。二階で向かい合わせの部屋だった俺たちの部屋は屋根を伝うと簡単に行き来が出来るようになっていて、お互いのために窓の鍵はいつでも開いていた。
「ただいま、めーちゃん」
玄関を開けレジ袋を放り、もどかしい気持ちで寝室の扉を開ける。
【カイメイ】恋扉桜【短編詰め合わせ】
駄文を書いては自己満足しています。
一応小説。たまになりそこないのポエム。
全くの自己流ですので、読みにくいところも多々あるかと…
年長組が好きです。全力でカイメイ支援。
っていうかカイメイ小説しか書いてませんのでご注意ください。
めーちゃん可愛いよめーちゃん。
めーちゃんが皆から愛されてれば幸せ。
めーちゃん中心に家族は回っていると信じてやみません。
めーちゃんハァハァ
美麗イラストを見てぴぎゃぁぁぁぁすると勝手に小話を作ることがあります。
ご注意ください。
タグやブクマ、メッセージありがとうございます…!(`;ω;´)ブワッ
カイメイ好きさんの優しさは世界一や
プロフ画像の可愛すぎるめーちゃんは青菜しゃーぷ様よりお借りしました!
[ブログサイト]
http://saltcabbage0919.blog.fc2.com/
[pixiv]カイメイ以外もあり。ピアプロの方がカイメイ作品多いです
http://www.pixiv.net/member.php?id=1040966
[twitter]たいしたこと呟きません
http://twitter.com/kyonturbo
※11/19発行の小説本3点、おかげさまで完売しました…!お買い上げくださった方々に最大の敬愛を!!