「ルカ姉!」
遠くに、ピンク色の大好きな巡音ルカお姉さまを発見するなり、
私はパタパタと走り出しました。
「るーかーねええーっ!」
「んっ?あ、ミク!」
いつものようにいきなり後ろから抱き付いてみたり(`・ω・´)
うーやわらかいぃ・・・憧れのお姉さまです。
でも、いつもの落ち着いた雰囲気じゃなくて少し慌てたようなルカ姉に気づいて頭にはてなマークを浮かべて周囲を見てみると、
その理由が分かって私は少し不機嫌になりました。
「あぁ・・・彼氏さんと一緒でしたか」
「∑かれっ!?//ち、違うわよ;;」
急に真っ赤になって弁解するルカ姉を、じとーっとした目で見つめます。
そして次に、その隣にいた紫の物体をより鋭い目で睨みます。
「な、何かなあミクちゃん・・・^^;;」
そう言って私に苦笑いを向けたのは、
確か神威がくぽとか言ったロン毛のナスの人。
「・・・別に。ルカ姉に手出さないでほしいだなんて思ってませんから」
「・・・・・・・・・手・・・・・」
どういった反応したらいいか分からないといったふうながくぽさんに、私はむっかぁ~と牙を剥きます。
「しゃーっしゃーっ」←精一杯の威嚇
「ミク!勘違いしないでちょうだい?こいつは私の彼氏でもなんでもないのよ。ただのナスよ。相手にしちゃダメよ」←言い聞かせる。
「・・・・・・・・・。・・・・・・そうだョミクちゃん」←若干傷心
「むー・・・・ルカ姉がそう言うなら」
渋々、がくぽさんに伸ばしかけていた腕を引っ込めます。
・・・が、威嚇はやめません。危険人物であることは変わりないのです。
「じゃ、じゃあ僕はこのへんで」
「あっ、待ってがっくn・・・・・」
「がっくん?」
「・・・・・・・・・・・じゃあね、がくぽ」
「うん、ばいばい」
それから私は、ルカ姉と存分に遊んで楽しみました。
でも、がくぽさんに対する明確な怒りはずーっと私の心の中に生きていました。
ある日のこと。
<ちょっと校舎裏来いやゴルァ>
という手紙をがくぽさんの荷物の中に忍ばせ、校舎裏なんてないけど何かそれっぽい場所で私はがくぽさんを待っていました。
・・・この場所をがくぽさんが分かってくれるかがただひたすらに心配でした。
数分後―――
きっ、来た!来やがりました紫の物体が!
「あ、ミクちゃん!・・・・・やっぱり」
「ちょっとあんた何でここが分かったの!?」
「∑ええっ?何でって君が呼び出したんじゃ」
「あったまいいんだねがっくん!・・・・って、ハッ」
「・・・・^^;;」
あ、危ない危ない。
思わずこの男のペースに乗せられるところでした!
やっぱりこの男、危ない!
「それで、用件は何かなぁ?」
「え、えーとそうだ、なんだっけ・・・」
「・・・・ルカさんのこと?」
「あっ、そうそれ!ルカ姉を変な目で見ないでくれる!?」
「・・・・。へ、変な目って・・・・・」
うん、この調子この調子。
それからは、こいつに言ってやりたいことがどんどんと言葉になって出てきて、なんだかいい気分になってしまいました。
「それから!ルカ姉に手をだすな!」
「それ昨日も・・・・」
「ルカ姉に近づくな!」
「ちょっと・・・・」
「あと!ルカ姉を困らせるな!ルカ姉をちゃんと護れ!ルカ姉がピンチのときはしっかり救え!」
「う、うん・・・・・・?」
「んでんで、ルカ姉が困ってるときは絶対に力になれ!ルカ姉が泣いてるときは優しく接しろ!ルカ姉に変な奴が寄ってきたら倒せ!」
「・・・・・あれ・・・・・?」
「ルカ姉に呼ばれたらすぐに駆けつけろ!
あとは、・・・ルカ姉を幸せにしろっ!!」
「はい!・・・・・・・・・・え?」
頭の中に次々と浮かんできた想いをすべてぶちまけることができて満足顔の私に、がくぽさんがあっけにとられたようにこちらを見つめます。
「・・・・・・?な、何?私なんか変なこと言った・・・・・?
ちょっと、ちゃんと伝わったんでしょうね?」
「へ・・・・・・・あ、あれ、無意識・・・かな?
あいや別に変なことなんて何一つ言ってないよ!
ちょっと矛盾してるとこもあったけど(´・ω・`)了解しました^^」
「よし!それでいい!いい子いい子ー^^」
そう言って私は彼の頭を撫でます。よしよし。
「あ、あははー」
「じゃあこれからもよろしくねー
今度いっしょに遊ぼうね、がっくん♪」
「・・・・・・・・・・・・そ、そうだねミクちゃん」
「じゃあねっ!ばいばぁい」
手を振りながらパタパタと私は走り出します。
何だ、結構あいつもいい奴じゃないか。
なんとなく、自分の言葉に違和感を覚えたのは気のせいでしょうか?
後日談。
「あのときのミクちゃんは途中で目的忘れてたのかな・・・
それだけルカさんのことが好きなんだね」
3人で遊んでいながら、私とルカ姉がいちゃついているとき、
私たちの斜め後ろでそれを眺めていたがっくんの呟きは、
誰の耳にも入りませんでした。
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