【壊れた世界 。2】
居場所も、あらゆるすべてのコンテストをも「初音ミクに似ている」と追い出されたミクさんは悩みました。自分の本質を変える事は出来ないし、それに依るような仕事は禁止されているとすれば、それ以外の事を向いているかどうかではなくやらなくてはいけない。
少しでも昔の自分から離れた事をする以外に生き残る術はありません。
ツインテールをやめ、歌う事も諦めて、様々なところを転々とします。
殆ど着の身着のまま辿りついたのが、今の合成音声を使ってリハビリを行うという会社でした。
歌が歌えなくてもこれなら少しだけ似たような事をして過ごす事が出来る。
収入で払えるまで「お金を貸してやるから」と社長に寮に詰め込まれ、少しずつ仕事を覚えて居たこの頃……日に日に残業が増えて行っていましたが、それでも何もさせて貰えなかった頃に比べれば、何か奪われずにさせて貰えている数少ない事です。
「でも。こんなに残業していたら、生きていけないよ~」
レン君の提案。
それは「お金を貸してやった」会社を裏切るということでした。
今の上司たちには、未練があるわけではありませんが、何処に行けばいいのか、それだけはわかりません。
だって何処にだって居られないのです。
「そもそも、私に歌が歌えたら借金をしなくて済むかもしれないのに……」
帰り道。
人気のない公園のベンチで缶コーヒーを啜っていたミクさんは呟きます。
そういえば昔、誰かが言っていたっけ。
――――才能を無駄遣いする人が嫌いだ。だから代わりに見せびらかしてやるのだ
だから、「無駄にするしかない事だってあるじゃない」と。思ったものです。
それどころかお金を貸してやったんだなんて言われていて、残業なんてあるのに、それ自体を誰も見せびらかしてくれはしません。
これはもう、世界が悪いとしか言えないのではないでしょうか。
「きっとレン君は優秀だから、何処へでも行けるんだろうな。良いなぁ」
(レン君は私の為に言ってくれているのだろうけど……私は初音ミクに似ているから、何処に居ても、変に目立ってしまう……この仕事だって)
頭にこれまでの様々な事が過ります。
自分にだけは頑なに評価をしたがらないお局。感謝してくれるお客様。
匿名評価形式の調査票で評価をしかけて「あっ、間違えた」と慌てて消しに来た上司。
いや、もっと、いい事……
歌のお手本を見せる事になって、私が歌っていると
急に「停電になった」とブレーカーを落としに来たお局……
その間に他の仕事を頼まれて、下がる事になって、代わりに他の人が……
(あれ?)
「なんか、私が歌う事、評価されることだけが阻止されていない?」
ミクさんはベンチから立ち上がり、唐突にひらめきました。
思い返してみれば、まるでどうしても阻止したいかのようにいつもいつも、無理矢理仕事が横から来るのです。
「これって、もしかして……」
些細な思い付きでした。しかし、その可能性はあります。
(個人情報をどうとか、不正金がどうとかってレン君も言っていたし、
私に初音ミクの才能があるとすれば、初音ミクとして顧客にデータを販売しているというのもあり得る)
『レン君の足を引っ張らなければいいや』くらいだった意識に、突然光が差し込みました。
「残業を無理矢理増やしている根本的な原因に行き着けば、私の抱えている悩みも解決するのかも!」
>>>>>>>>>>>>
翌朝。
ミクさんは元気よく会社のドアを開けました。
「おはよー!レン君!」
「おはようございます。早いですね」
いつも早く来ているレン君が眠そうにデスクでコーヒーを飲んで居ます。
「私、外回りに行って来るね!」
来るなりなにやら慌ただしいミクさんがホワイトボードを眺めながら言うと、レン君は首を傾げました。
「あれ、いつも、面倒~って言ってるのに、珍しいですね」
レン君が何か言っていましたが、ミクさんは急いで外に出て行ったのであまり聞こえていませんでした。
「……っていない」
昨日、なにやら落ち込んでいる様子だったのに、もう立ち直ったのかな。
それならよかった。
レン君は、椅子から立ちあがるとホワイトボードのミクさんのところにペンで「外出中」と書きます。
それから、片手間にゲームのSNSを見ました。
そこでは誰かが複数人で集まって『ネギ』、恐らくミクさんをレアアイテムとして話し合っていました。
■goyadeti
最近はじめたばっかりの初心者になら、細かい話は一切せずに「■■のことは気にしなくていいよ~」ぐらいの事を言うかも!
ネギ以外のコストもそれなりに重いけど、ネギの重さに比べたら貯めやすいはず!
■goyadeti
でもこの界隈自体一般的な話じゃない気はする!
>>■goyadeti
こないだのイベで苦労した身としては、少し背伸びしても盗っておいた方がいいような気がします。
まだやり込むかも分からないような新人には流石にオススメしにくい!
■goyadeti
でもある程度の自力があるなら、クォータリーの更新分とサンマを合わせて結構調達できそう!
■goyadeti
どっちかというと取る方向で考えて、辛そうだったら取らない場合のリスクを判断していく...みたいな流れがいいかなーって思ってる!
■sirotty
確かに今持っておかないと。仮に★10にしても全滅を免れないこともあるから、無理をしてでも回収任務をしておいた方が全滅リスクを減らせると思えば尚更かなぁ......
■sirotty
後のことも改修しておけば索敵に少し余裕が出来ますし。
全滅するかどうかは確率が絡む所も大きくて、たぶん難関海域の攻略って意味では改二とそんなに大きな差は出ないかなーとは思う。
どうやら『★10』というチームが全滅しそうである事と、関係があるようです。
■sirotty
今は使わなくてもいずれ多用する状況になるかも知れないから、レア装備はとりあえず貰っとけというのはありますね。
>>>■sirotty
クリティカルに攻略に絡んでくる状況は想像しにくくはあるけど、ある程度ネギを調達できるならそういう保険としても持ってれば安心なはず!
>>>■sirotty
欧州イベでの海外の特効装備化という大きな例があるし、無視出来ない事だと思う!
難関じゃない海域では割と出番が多くて持ってると気持ちよく使えるし、先の事を考えるとどうなるか全然分かんないのがこの世界の恐ろしい所!
■sirotty
2つ目の最大の利点は『付けっぱなしに出来るのが増える』事だと個人的には思ってる。
■sirotty
大体の仕事は「塾生でもそんなに変わらないんじゃ?」って思ったりもする!でもあったらこれが最強!みたいな気分になるので気持ちいい!
ある日、歌姫が現れ、突然消えたと思えば今度はネットで電子の歌姫としてまた現れた……それがレン君の考える『初音ミク』でした。
正確に言うなら「ミクさん」は随分昔に、街で歌っていたのです。
幼い頃に一時期住んでいた街の片隅。そこでよく歌っていた……
レン君が親の転勤で引っ越した後、ふとミクさんの事を思い出していると、初音ミクが電子世界に現れました。
それはミクさんに似ていました。
【小説】壊れた世界 。2
「あんたが金出してくれるの!?」
社畜ミクさん(㍶ミクさん的な)とレン君の小説https://piapro.jp/t/i8C6の続き。2
別の小説を書いてたんですが尺が長すぎるのでこっちにも台本代わりに置こうと思います
規約的に人は死なない方がいいかな?
ゆるくします
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