(亜種注意)欠陥品の手で触れ合って16 『Regina』

投稿日:2009/05/22 01:37:40 | 文字数:3,612文字 | 閲覧数:450 | カテゴリ:小説 | 全2バージョン

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欠陥品の手で触れ合って16話、『Regina(レジーナ)』をお送りいたしました。
今回の副題は『女王』です。
勿論、残酷物語の女王陛下のことです。

前のバージョンで、帯人が耳を塞がれていた為に聞くことができなかった凛歌の台詞全文を見ることができます。

ここで確認。
これより先は、かなりの残酷表現を含みます。
絶対に大丈夫だよ!後でクレームつけないよ!違反通報しないよ!
な方だけ、ここから先にお進みください。
女王陛下の本気が垣間見れます・・・。


次で、『欠陥品の手で触れ合って』は、第一部完となります。
それでは、乱文失礼いたしました。
次回もお付き合いいただければ幸いです。

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TEXT
 

「私に、恥をかかせてくれましたね・・・お嬢さん。」

ゆらり、と幽鬼のように立つ黒服。
最初に公園で話をした奴だ。
最初に出てきたときの綽々とした余裕は既にその顔にはない。
まぁ、最初に出てきて数分で、一回コケにしたわけだが。
時間は、夜。
因みに、私の後ろにいる帯人は『そろそろ女装する必要ないでしょ』と既にいつものカッターシャツ姿に戻っていた。
最初に黒服のひとりを撃破してから、私達は次々と他の黒服をクリアしていった。
ある黒服には最後に残った曲『Cane』で付近の野良犬をけしかけ。
ある黒服には、モデルガンの引き金を空に向かって引いて見せた。その私の背後で帯人が爆竹を鳴らしていたわけだが。
皆同じく、不意打って体勢を立て直される前にトドメを刺す。
それも、精神的な方向で。
中途半端に制裁を加えても、相手の復讐を煽るだけ。
やるなら徹底的に。
二度とこちらに手を出そうと思わないように、徹底的に心を折っておく必要があった。
まぁ、そのためにイロイロとやったが。
最初に心を折った相手の事を思い出してもらえば、大体どういう感じのことをやったか想像していただけると思う。

「私が恥をかかせたんじゃない。貴様らが率先して恥をかきにきたんだろ。」

私は、こいつらの罪を忘れていはいない。
特にこいつは、重罪を犯した。

「貴様は、極刑だ。」


ゴシックロリータのドレスを身に纏った凛歌は、小さな女王のように傲然と言い放って見せた。

「貴様は、私の大事にしているものを、よりにもよって『欠陥品』呼ばわりした。」

こつん、と凛歌のブーツがアスファルトを叩く。

「私は、貴様などのために罪人になってやる気はない。」

こつん、こつん、こつん。

「貴様は、殺す。ただし精神的にだ。その腐った血で地面を汚すことなく、死ね。」

凛歌の歩幅にして、約10歩。
今の黒服と凛歌の距離が、大体そのくらいだった。

「だが、その前にやってもらうことがある。貴様が失敗した後で、上司からの減刑は欲しいだろう?とっとと上司に電話をかけろ。」

堂々と胸を張って言い放つ凛歌。
黒服は、無言。
ただ肩を震わせている。
いや、俯いて何かをぶつぶつと呟いている。

「おーお、やってるねぇ。」

緊迫した空気にまるでそぐわない、飄々とした声。
叔父さんだった。

「叔父さん、遅い。」

凛歌が振り返って文句を垂れる。

「頼まれてたもの、やっと届いたぜ。」

凛歌に向かって、指で輪を作ったくらいの円筒形の物が放物線を描いて飛ぶ。
それは、凛歌の掌の中に吸い込まれるようにして収まった。
白いそれは、黒い円筒形のものに白い紙を巻きつけたものだとわかった。

「う、ろおおおぅあああああああああああぁああぁああぁああぁあああぁああぁあああぁあぁああっ!」

濁った叫びが谺した。


誰もが円筒に注意を移していて、黒服に注意を払っていなかった。
部下の殆どを失った今、銃刀法に護られた日本では黒服は殆ど何もできないと思っていたのだ。
黒服の手にはダガーナイフ。
あれは確か、ガーバー・マークⅡだ。
秋葉原での無差別殺傷事件で使われたのと同じものである。
刃渡り約15センチ。
当然、銃刀法に引っかかる立派な凶器である。
こいつは刃物マニアか、と胸中で毒づいた。
その刃はまっすぐ私に向けられている。
アレは濡れた手でもホールドできる持ちやすさと、肋骨に水平に入れやすい殺傷性を併せ持ったとんでもない殺人ナイフだったはずだ。
まずいな。
この距離じゃ、避けるの無理かな。


空気がどろりとした液体でできてるように、身体が重かった。
それでも、身体を叱咤して前へ進む。
以前、割れ目から囁いてきた何かが、叫んでいた。
『もう二度と、凛歌を死なせるな』と。
絶叫していた。
それが意味することも判らないまま、ただ身体を前に押し出した。
黒服に身体ごとぶつかり、引き倒す。
そのまま右手を踏みつけ、手放されたナイフを蹴り飛ばす。

「ゆるさない・・・。」

うつ伏せに倒れた黒服の背中を踏みつけて固定し、ポケットからアイスピックを取り出す。
思考を司る回路が、灼けつくようだった。

「ゆるすものか・・・!」

そのまま、黒服の後頭部めがけてアイスピックを振り下ろした。
肉を貫く感触。
目の前に散る、緋色。

「はい、ストーップ。」

しかしそれは、黒服のものではなかった。
掌からアイスピックを生やした凛歌が、目の前にいた。

「こんな奴のために、帯人は手を汚さなくていい。それは、私の役目だ。」

左手から、アイスピックを引き抜く凛歌。
それを、ぽいと投げ捨てた。

「あー・・・こりゃ骨の間を抜かれてんな。病院での言い訳、どうしよ?」

痛みに耐えるよりも、どちらかというと困った顔で掌を眺める凛歌。
その視線が、こちらに向けられた。

「そんな顔するな。これは私が勝手に手を出したんだから。帯人は悪くない。悪くないんだ。」

そう言って、くしゃくしゃと僕の髪をかき回す。
さて、と僕の下に組み敷かれている黒服に無機質な視線を投げかける。

「これ、なーんだ。」

先程の円筒に巻かれていた白い紙を目の前でひらひらさせる。
それは、意外なものだった。

「カスタマイズボーカロイドの登録証・・・?」

そう、カスタマイズボーカロイドの申請用紙のコピーと登録証だった。
しかも、そこに書かれている名前は・・・。

「月隠 誠一制作のカスタマイズボーカロイド、個体識別名『帯人』。ベースはKAITO、ヘアカラーはブラック。アイカラーはクリムゾン。所有者は月隠 凛歌。本来ならば起動前に申請が終わっているはずだが、些細な事故で申請前に起動してしまった。しかも、そのときの事故で顔面に傷が付くオマケつき。申請が遅れ、ようやくカスタマイズボーカロイドとして登録された・・・ってわけ。表向きはね。帯人、腕出して。」

むき出しになった左腕、Vocaloidの文字列の下に円筒が押し付けられる。
カスタマイズボーカロイドの登録ナンバーを刻印する、ポータブルタトゥーマシンが。
Vocaloidの文字列の下に、アルファベットとアラビア数字から成り立つ登録ナンバーが刻印された。

「これで、帯人は社会的にも私のモノってわけ。わかったら二度と来るな。上司に電話繋いでとっとと帰れ・・・と、言いたいところだが、お仕置きがまだだな。」

にやり、と笑う凛歌。

「あいつの高校時代の綽名・・・知らないだろ、帯人。」

いつの間にか叔父さんが僕の背後に立っていた。

「『Queen of GrandGuignol』。」

『クイーン・オブ・グランギニョール』と、叔父さんは発音した。

「・・・残酷物語の女王陛下、だ。周りに合わせた生き方を選んだあいつが、高校時代にただ一度マジギレしたときに戴冠した名だよ。」

「そうですねぇ、昔話でもしましょうか?楽しい楽しい童話です。」

にこにこと、とても機嫌よさ気に凛歌は笑う。
それとは対照的に、叔父さんの表情はすぐれなかった。

「『昔々、ある王国の女王様は、王子様をとてもとても大事にしていました。王子様は拾われてきた人でしたが、女王様にはそんなこと、まったく関係ありませんでした・・・。』」

「世界残酷物語の始まりだ。」

その言葉と共に、耳に何かが押し込まれる。
耳栓だ。
さらにその上から、叔父さんの手で耳を塞がれた。

「慣れてる俺は別にいいが、お前にゃまだ早い。」

凛歌の声は、殆ど聞こえない。
たまに、『卸金』とか『ドーパミン』とか『ハンバーグ』とかの単語が聞こえてくるだけだ。
黒服は眼に見えて蒼白になり、熱病にかかったようにびっしりと冷や汗をかき、震えていた。
懐から携帯電話を取り出すと、ボタンをプッシュして何事か話し、捧げるように凛歌に差し出した。
受け取った携帯電話に向かって、やたらと上機嫌に話す凛歌。
やや暫くして、黒服の顔面に携帯電話が叩きつけられた。
耳から、叔父さんの手が離れる。

凛歌の眼が、黒服に向けられた。

「とりあえず、こいつは・・・。」

ブーツの踵が持ち上げられる。

「待て待て待て待て待てっ!ちょっとタンマっ!お前何する気だこの期に及んで!!」

「えー・・・とりあえずクローン技術の進歩に期待しないと子孫が残せないようにしとこうと思って・・・。」

「あの精神攻撃で充分だろが!とりあえずそれは、そーれーだーけーは、ダメ、ゼッタイ。同じ男としてそれだけは絶対に阻止する!」

「えー・・・・・・。」

なおも残念そうに黒服に視線を落とす凛歌だったが、その視線が僕に向けられた。

「終わったよ。帰ろう、帯人。」

そうして、凛歌は穏やかに笑った。

日々妄想を文章にしています。

妄想・・・いえ、想像たくましいです。

甘やかされるよりは甘やかしたい人(だと自分では思っている)



(追記)
約一年ぶりに活動再会という名の復活を果たしました。
以前のような更新ペースは守れないかもしれませんが、見捨てないで下さると嬉しいです。
無言で消えて、申し訳ありませんでした。

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作品へのコメント2

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    その他

    >秋徒様
    コメントありがとうございます。
    正確には、次で第一部完結なので、よろしければ見てやって下さい。
    その後の二人のドタバタ模様を見ることができます。
    黒いお話を楽しんでいただけましたか♪
    『黒服ざまぁwww』に吹きました。
    やはり物語はハッピーエンドがいいですよね♪

    それでは、乱文失礼いたしました。
    次回もお付き合いいただけると幸いです。

    2009/05/23 00:26:37 From  アリス・ブラウ

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    ご意見・感想


    とても面白かったです。第一部完結おめでとうございます^^
     何を隠そう私、こういう腹黒い御話が大好物です(いい笑顔 アリスさんに弟子入りしたいくらいです!(自重
     それにしてもカスタマイズとしての申請ですか、ヒントがあったのに全然気が付きませんでした。話が綺麗に繋がっていて読んでて気持ちがよかったです。
     とにかく願い通り『黒服ざまぁwww』となりハッピーエンドにもなってよかったです^^

    長くなってすみませんでした。新作も楽しみにしてます。

    2009/05/22 02:28:41 From  秋徒

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