Master 透明な壁・1
投稿日:2011/07/07 19:15:11 | 文字数:2,122文字 | 閲覧数:380 | カテゴリ:小説
そんなわけでばあちゃんマスター再びです。
今回はがっつりばあちゃんマスターです。
※この話はいっこ前に書いた微熱の音の続きのような話です。
これだけだと、?なところもあるかもしれません。
それでも良いよ!あるいは読んだ事があるよ!という方はどうぞ~
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マスターが。と、ミクが泣きそうな顔で言った。
「マスターがいま、ひとりなの。ひとりで、泣きそうな顔してたの」
自分が泣き出しそうな顔で、ミクはそう言った。
マスターが泣きそうならば、辛いことがあるならば、傍に駆け寄って抱きしめたいと思う。この腕は、誰かを抱きしめるためにあるのだと、そう思いたい。
けれど。
自分たちとマスターのいる場所の間には、薄くて遠い、透明な壁が立ちふさがっているから。
話は、少しさかのぼる。
私は嫌ですよ。とマスターの大きな声が、ルカたちの暮らす家まで聞こえてきた。突然響いたその大きな声に、ルカは手に持っていたお菓子を思わずぽろりと取り落としてしまった。
五月の穏やかな平日。ルカは家の居間で隣の家のがくぽと一緒にお茶を飲みながら、取りとめの無いお喋りをしていた。もうすぐ梅酒をつける時期だけど、今年も又沢山つけるのだろうな。とか、去年のものはあと少ししかないから、飲み比べはあまり出来ないかしら。とか。
兄姉のカイトとメイコは揃って買い物に出かけているし、リンとグミはあげはのところに遊びに行っている。レンは姿が見えないけれど、最近新曲を貰ったばかりだからどこかに出かけてこっそり練習でもしているのだろう。そしてミクは少し前に別の「ミク」さんのところから帰って来て、今はマスターと話をしているはずだった。
そう、マスターと話しているのはミクで。つまり、マスターが大声を出しているという事は、マスターとミクが喧嘩をしている、という事だ。マスターが多声を出すなんてそもそも珍しいことだ。ルカが迷子になったときだって、怒るというよりも、穏やかに諌められた感じだった。こうして誰かを大声で叱りつけるマスターなんて初めて見るかもしれない。
「私は反対です。そんな事、あなたにもさせたくありませんよ」
「そんなの、マスターの勝手じゃない。私には分かるんだもん。ミクさんの歌いたい、って気持ち、分かるから」
大声を出すマスターに対し、だから、とミクもまた大きな声を上げて反論している。
状況はまったくつかめないけれど、とルカは目の前で自分と同じように眉をひそめて何かを考え込んでいる、がくぽに視線を向けて思った。これは仲裁に入った方がいいのかしら、それともこのまま様子をうかがっているままの方がいいのかしら。
けれどやっぱり、とおろおろと中途半端に腰を浮かせたルカを制するように、がくぽが手のひらを向けた。
「ミク殿が戻ってくる気配がする」
「え?」
慌てていたせいで聞こえなくなっていたけれど、がくぽの言う通り、確かにこちらに向かってくる足音が響いてきていた。
ばたんと、乱暴に玄関を開けて帰ってきたミクは、どすどすと大きな足音を立てながら廊下を歩き、居間へと入ってきた。怒りと悲しみの形相で入ってきたミクは、ルカたちがここにいた事に気が付いていなかったのだろう。一瞬ばつの悪い顔をして、部屋にそのまま引っ込み掛けた。だが甘えん坊な所のある彼女は、誰かに話を聞いて欲しくもあったのだろう。一瞬だけ迷うように足を止め、そして、すたすたとルカの横に歩み寄り、すとん、と腰を下ろした。
ミクは、怒りとやりきれなさの混じり合った、泣きだしそうな顔をしていた。頼りないその様子に思わずルカがミクの小さな肩をそろりと撫でると、眉根を寄せて口を開いた。
「私だって、やりたいわけじゃないもん。私だって、嫌だもん。マスターだけが嫌じゃないんだよ、私だってそうなんだよ。だけど、同じ、ミクなんだよ。気持ち、わかっちゃうから、だから、」
最期の言葉はぐずぐずと涙で崩れてしまった。ううう、とこらえ切れない涙がミクの大きな瞳からボロボロと零れ落ちた。それでも泣きたくないのか、必死でこらえようとしている。ぎゅう、と両掌を強く握りしめて、口をへの字にしながらミクは、だから、歌わないといけないのに。と呟くように呻くように言った。
何があったのか全く分からなかったが、泣いているミクにルカまでもが悲しくなってくる。何とか泣きやんで欲しくてルカはそっとその二つに結ったミクの頭をなでた。さらさらと綺麗な髪をそっと優しく撫でる。がくぽもルカと同じ気持ちのようで、飲み物を持ってこようか、とか、今まで二人で食べていたお茶うけのまんじゅうを差し出したりとかしている。
「私、おやつにつられるほど子供じゃないよぅ」
泣いているせいで少しろれつの回らない口調でそう言って。ミクは、がくぽの差し出したまんじゅうを目の前に首を横に振った。
「いやしかし、お腹がすくと悲しさも倍増だと誰かが言っていて、だな、」
「お腹が空いて悲しいわけじゃないもん、がっくんのばかぁ」
がくぽの言葉に、何かのタガが外れたのだろう。うわーん、と勢いよく泣きだしたミクに、ルカとがくぽは何とか泣きやんでもらおうと思いながらもおろおろとただ横にいることしかできなかった。
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今日の夕ごはん・1
―絶対なもの。
だし巻き卵。遠く高い澄んだ青空。ふわふわのシフォンケーキにホイップクリーム、それにお砂糖一つ分のコーヒー。水撒きした庭からやってくる湿った風。
絶対なもの。
お兄ちゃん、お姉ちゃん、がちゃ坊。
ごりごりごり、とがちゃ坊がひたすらにすりこぎですり鉢の中身をすりつぶしていた。ごりごりごり、ねりねりねり。と、磨り潰されて練り上げられているのはイワシのすり身。あの青くて目がぎょろりとしていて小骨が気になって、なんだか生臭い、難易度の高いあいつである。
今日の夕ごはん・1
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Master・微熱の音・1~初音ミクの消失~
歌えなくなっても、あなたに私は必要?
またふられちゃったよ。画面の向こう側で情けなく笑うマスターに、またですか?と私はため息まじりで言った。
「また、女の子に『何考えているか分からない』とか言われたんでしょ」
「お、さすが。よく分かるなぁ」
私の言葉に、はは、と笑うマスターに私は盛大な溜息を吐きだした。
Master・微熱の音・1~初音ミクの消失~
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Cafe・我侭姫と無愛想王子・1~WIM~
綺麗にカールした睫に縁取られた、アーモンド形の黒目がちの瞳。形の良いアーチ型の眉に筋の通った鼻。口角の上がった唇は果物のように甘くてつややか。手入れの行き届いた長い髪はトレードマーク。まだ幼さのある輪郭に、少女と大人の境目を行き来するうなじ。細い肩にすらりと伸びた華奢な手足。ちょっと胸元が貧弱なのはご愛嬌。
どんな女の子にも負けはしない。だって私は世界で一番のお姫様。
普段は二つに結い上げている髪を下ろして毛先をゆるく巻いてみた。靴はつま先にリボンのついた新しいヒール。モノトーンの甘めワンピースにお気に入りのカーディガンを羽織ってみる。寒いから首にはストールをぐるぐると、でも可愛らしく巻いて。
今日のコーディネートは最強。
そう意気揚々と私はアルバイト先のカフェへと向かった。古いビルの二階にカフェがあり、その3階は店長の住居スペースなのだが、一部分、お店のスタッフルームとして使用させてもらっている。
Cafe・我侭姫と無愛想王子・1~WIM~
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Cafe・給料3か月分の贈り物・1
夜8時30分頃。テーブルの上、マナーモードにしてある携帯がぶるぶる震えているのを、しかし電話に出る事はせず留守電に切り替わるのを、メイコは床に座り込んだまま横目で眺めていた。
しばらくして点滅する光と共に、不在着信・一件。という表示がディスプレイに映し出された。そこにきてようやくメイコは携帯を手に取り、ボタンを押し、誰からの電話だったか確認をする。
相手はカイトから。しかしメイコは折り返しの電話をかけることなく、携帯をテーブルの上へ放り投げた。
はあ、とため息がメイコの形の良い唇から零れ落ちる。苦々しげに眉をひそめて、立てた膝の上に顔をうずめた。
カイトは、メイコと同じ会社で働く一つ下の後輩で、2年くらいの付き合いの恋人だった。
Cafe・給料3か月分の贈り物・1
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Master 梅酒の造りかた・1
梅酒の造り方。
梅を洗ってその水気をよくふき取る。
へたを楊枝などで取る。
殺菌した大きな瓶に梅と氷砂糖を交互に入れていく。
焼酎を注いでふたを閉めて冷暗所にて保存。
Master 梅酒の造りかた・1
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未来飛行・前編
こちらは“BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」” を原曲として書いた二次創作です。
ミクもミクのマスターもバンドのメンバーも、原曲を奏でる彼らをモチーフにはしていますが、すべて私の妄想です。正しくは、ミクさんもバンプも好きすぎてこの楽曲にかなり興奮して勝手に私、妄想しちゃったよ、的な話です。好きすぎて「こんな感じだったらいいなぁ~」とこじらせた結果です。作中の彼らの言動はすべてフィクションなのでご了承ください。
すべて私が勝手に妄想した話を、それでもいいよ、という方は前のバージョンで読み進めてください。
未来飛行・前編
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Cafe・ロータス・イーター 1
開店時間のほんの少し前に森はコックコートに着替えて髪をひとつにまとめて、厨房に立っていた。
「おはようございます。」
先に作業をしていたスタッフの女の子のあいさつに、森もおはようございます。と声をかけながら、手を洗った。
先に作業していた女の子は最近入ったばかりの専門学生だった。短い前髪に小柄な姿が年齢よりも幼く見えるけれど、仕事を覚えるのも作業速度も速い。朝の作業があらかた終了している事を確認しつつ、森も前日焼いて休ませておいたケーキを型から出して切り分けたり、と開店の為に手を動かした。
程なくしてホールで開店準備をしていた鳥海から、もうすぐ開店です。と声がかかった。
Cafe・ロータス・イーター 1
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おやつと一緒に詰めた妄想たち。
某所でおやつという名の賄賂と一緒に、一部妄想も詰めました。そして、もろっと渡しました。その内容です。
がっつり文章をを足そうと試み中。
予定は未定です。
前のバージョンで読んで下さい~。
6/23ひとりめ投稿。
おやつと一緒に詰めた妄想たち。
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Master 昨日の終わりと明日の始まり・1
ぼんやりとした思考がゆっくりと輪郭を整えていく。雨戸の隙間からこぼれるのは、早春の白い光。まだ寒々しい空気の中、そこだけが柔らかな春の気配を湛えていた。
今日は良い天気みたいだ。パソコンの内側の天気は外側の天気と連動している。つまり、現実世界も天気が良いという事だ。きらきらと柔らかな日差しはしかしまだ眠い目には眩しすぎる。
すうと布団の中で息を吐いて吸って、また吐いて。頭の片隅に引っ掛かっていた夢の残滓を振り払い、カイトはゆっくりとベッドから起きあがった。うん、と伸びをして眠気を振り払う。
と、誰かの歌声が聞こえた。甘く可愛らしい、少女の声。ミクの声。声の遠さからして、居住区ではなく録音室に行って歌っているようだった。ミク、珍しく早起きをしたんだな。そんな事を思いながらカイトは部屋のカーテンを開いた。
淡い、水色の空が広がっていた。今日も良い天気だ。まだ少し肌寒い空気を感じながら白い陽光を体いっぱいに浴びる。からりと窓を開けて外の冷たい空気を吸い込むと、徐々に細胞が覚醒していく感じがあった。気持ちいい、朝の空気だ。冷たい空気の中、柔らかく跳ねるような音に合わせてミクの歌声がどこからか甘く響いている。
Master 昨日の終わりと明日の始まり・1
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今日の夕ごはん・6
庭の植物たちは素直にすくすくと上へと育っていく。その伸びて行く先に何か障害があったとしても、柔軟に避けて、そしてまた上へと伸びて行く。自分は何で植物のように行かないのだろう。愚鈍なまでに真っ直ぐに、言わなくても良い事まで行ってしまうほどにまっすぐにしか、進めないのか。
そして失敗したと、間違えた方向に進んでいると、早く元の場所に戻って謝らないといけないと。分かっているのに。なかなか戻る事が出来ない。素直に謝る事が出来ない。
本当に、どうして自分はこうなのだろう。とリリィは情けなさを感じながら思った。
グミが悲しくないわけがない。ただ自分が知らなかっただけで、悲しみを隠していただけで、悲しくなかったわけではないのに。
そう。悲しみをコントロールして笑っていただけなのに。自分が出来ない事をグミはできただけなのに。悲しみを感じない人なんて、いないのに。
今日の夕ごはん・6
・オリジナルマスターの「ばあちゃんマスター」シリーズとか、曲の二次創作とか書いてます。
・ほのぼの日常系が多めで時々切ない系あり、ごはんの描写多め。
・話的に長いのが多い。作品の一話目はブクマでリンクしてあります。
☆コラボ【シェアワールド】響奏曲【異世界×現代】に参加中
☆コラボ「ドキッ!KAITOだらけの水着大会!!」に参加してました(動画作成終了のため応募は終了)
ツイッターコメ、ありがとうございます!!
・どうでもいいことばかりつぶやいてるツイッター。
http://twitter.com/sunny_m_rainy
・最近ほとんど稼動していない二次創作用ブログ。
ハレノヒブログ
http://ameblo.jp/sunny-m-rainy/
・オリジナル置き場として、ピクシブにもこっそり進出。
http://www.pixiv.net/member.php?id=1519443
・ニコっとタウンでもこっそりと物語(?)的なものを書いてました。
http://www.nicotto.jp/user/mypage/index?user_id=826733