soundless voice イメージテキスト

投稿日:2009/03/16 09:23:25 | 文字数:5,717文字 | 閲覧数:900 | カテゴリ:小説

ライセンス:

soundless voice のイメージテキストです。
あんまりにも素敵だったので書いてしまいました。

参考動画
『soundless voice』
http://piapro.jp/content/g5e596c41z9do04u

『proof of life』
http://piapro.jp/content/rgkdr55lhqimy6x9



皆様のイメージを壊さないよう作ったつもりです。

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TEXT
 




soundless voice


世界に神様がいるなら、奇跡を起こしてほしかった。



「リン、外が綺麗だよ」


窓から見える景色を指差す。

外には青々とした木々とそこに真っ白な花が咲いていた。

昨日雨が降ったせいで雫で濡れて光っている。


リンはゆっくりと視線を移すと微笑んだ。



--うん


と首を縦に振る。





彼女がこうなってしまったのは約半年前。

俺が作った曲でリンがいつものように歌っていた。

ピアノを弾いている俺の少し後ろにリンがいて。

それは次回のコンサート終盤で歌う予定の曲で、俺とリン二人で歌うものに仕上げてあった。

リンの歌声に耳を傾けながら、自信の入るタイミングを確かめる。

調子は怖いくらいに良かった。

リンの声がいつも綺麗のだが、本当に空気に溶け込むような声で。

今日は調子がいいね、とリンに言おうと僅かに視線をずらした。

そのとき


「……っ!」


リンの目が大きく見開かれて、突然後方に倒れた。

ピアノから手を離してリンを受け止める。

僅かな衝撃と、リンの表情が今も腕に焼きついたまま、離れない。



「リンッ!?」

「っ……?」


リン自信も何が起きたのか分からないようで、ひたすら苦しそうに表情をゆがめる。

瞳から僅かに涙が流れた。

その涙を素早く拭って、リンをしっかりと抱きかかえる。



「リンッ待ってろ、今っ」

「っ----!」



-え?


リンが強く腕を引っ張る。


何?なんて言った…リン。

先ほどとは違う、痛みと戦っている表情とは違う。

何か、恐怖のような。



--コ…エ














「リン、花を取ってこようか?近くで見たいだろ…?」



リンに聞くと嬉しそうに何度も頷いた。

ちょっと待ってて、と言って外に出る。

朝露と昨日の雨粒でぬれた花、綺麗だ。



「ごめんよ」



2本ほど白い花を切って、花瓶に挿す。

リン、喜ぶかな。

急いでリンのところに戻り扉を開ける。



「お待たせ…リン!」



自分でも驚くほど大きな声を上げて、リンに駆け寄る。

リンはベットから出て窓を眺めていた。

リンは安静にしていなきゃいけない、ベットから出るなんて。

リンはぺろりと舌を出して、申し訳なさそうな罰の悪そうな顔をする。

駄目だぞ、そんな顔しても。



「駄目じゃないか、眠ってなくちゃ」



リンの背中を押して、ベットへと促す。

少し汗をかいている。

医者に連絡しようか…。



「って!」



リンは俺の考えたことが分かったのだろう、軽く頬をつねられた。


--だいじょうぶ


僅かに微笑んで少し悲しそうだ。

少し過保護になってしまっただろうか。

何か言おうとして迷っていると、リンが花瓶に触れた。


--綺麗


「よかった…」


嬉しそうにそばに置いた花瓶を眺める。

本当に良かった。









医者はリンの病の原因は不明だと言った。

だから、治療法も分からないと。

どこの病院も答えは同じで、それでもリンは一度も泣かなかった。

あの声を失った日以来、一度も。








朝目が覚めると、思った以上に寒い。

外を見ると一面真っ白な雪だった、しんしんと新しい雪が降り積もっている。

すごい、こんなに積もるものなのか。

数ヶ月前まで花の咲いていた木も真っ白だ。

雪で花が咲いているみたいで…。



「わっ」


ふと時計を見て気が付いた、いつもの起床時間を大幅に過ぎている。

しまった、リンもう起きているだろうか。



「ごめんっリン…寝坊」



リンの部屋に入って気が付いた、俺の部屋より数倍寒い。

窓が開いている、そこから新しい雪が振り込んでいた。



「リン!駄目だろっ体が冷える」


思わず走りよって窓を急いで閉めようとすると、リンが強く袖を引っ張った。


--いや


何度も何度も首を振る。

苦しそうに、僅かに瞼を腫らしている。



「リン?」



--あけてて


そう口が動いた。




「駄目だよ、今ので随分体が冷えただろう」



今回ばかりは駄目だ。
そんな俺を見たリンが強く袖を引く



--そとに、でたい



口を大きく開けて、俺を見た。



「駄目だ、外に出て具合が悪くなったらどうするんだ?」



リンの瞳を覗いて咎めるが、リンは一向に諦めようとしない。

おねがい、と懇願してくる。

こんなに外に出たいと言ったのは初めてだ。

雪に触りたいのだろうか。




「…わかった、でも少しだよ」



リンのための上着を取りに行こうとすると、リンがどこから出したのかコンサート衣装を持っていた。

オレンジリボンにセーラー服をモチーフにした上着に短いスパッツ。

これを着たいと言うのだろうか。

でもこれはとても薄い服だし、外に行くには向いていない。



「リン、それは今度…」



そう言いかけるとリンがマイクを頭につけて、こちらを向いた。


--お願い


昨日、リンの調子は良かった。

最近もよく食べるし、少しの間なら大丈夫か。



「わかった、でも上に…」



そう言いかけてまた口をつむぐ、リンは俺にもう一つの服を渡した。

俺の衣装だ。



「何、俺も着るの?」



こくこくと何度も嬉しそうに頷く、そんな顔をされると断れない。

もともと断るつもりはなかったが…。

すると、リンに背中を押された。

けっこう強い力。



「え?な、何?」



リンは頬を赤くして、服を何度も叩いた。

あぁ、なるほど。




「はいはい、着替えね」



俺は部屋を素早く出る。

リンはどんなに具合の悪い日でも着替えは自力でやっていた。

助けようにもそうするとかなりの力で殴られたのだ。








扉の開く音がする。

振り返ると、リンが嬉しそうに衣装に身を包んでいた。

昔に戻ったみたいに。

少し痩せていて、細身ではあるけれど。



「似合ってるよ」


本当だった、黄色い髪によく似合う。

リンが嬉しそうに微笑む、遅めの小走りで俺に触れた。

上着着ろよ、と渡そうとすると首を振った。




「駄目だって…」




どうしてもいやなのかリンはひたすら首を振る、仕方ないのでマフラーを渡した。



「その代わり、すぐ戻るからな」



リンは渋々頷くと、外に出て行った。

俺も急いで後を追う。

リン、何急いでるんだ?






「リン?」



リンが雪の中でようやく止まる。

白い息を漏らしながら振り返った。

俺からも同じように白いと息が漏れる。



「リン?」


リンが微笑む。

嬉しいのだろうか。

それなら、よかった。


リンが嬉しいなら、俺も嬉しい。


俺も微笑む。


雪がリンの髪に積もる。


すると突然、リンが口を開いた。


歌うように。



--悲しい、歌は…



「リン…」



歌ってる。

リンは声が出ないけど、歌っている。

今、俺のために。

泣きそうになるのを抑えて、微笑む。

とびっきりの笑顔だ、のびのび歌ってる。

楽しそうに、そこだけ春が来るみたいだ。

リンが両手を広げる、青のマフラーがなびいた。

ずっと見ていたい、そんな衝動に襲われる。



「……っ」



その時だった、リンが弧を描いて倒れていく。


「リッ!」


ゆっくりと世界がスローモーションになる。




「リン!」



俺の声とリンが地面に倒れる音は同じたった。


嘘だ、こんなの。



嘘だっ




「リンッ!リンッ」



リンの体に触れる、冷たい。

先程の冷たさとは違う、氷のような。

最悪の未来を想像する。

馬鹿やろう、そんな暇あるか。

しっかりしろ…っ



「大丈夫か?リン、今誰か人をっ」



その時、リンが俺の肩を掴んだ、手が震えている。

苦しそうに、瞳を光らせながらリンの口が動く。



--大丈夫



どうして



「…えよ」



いつも



「苦しいって言えよ!」



分かってた

我慢してたこと



「寂しいって言っていいんだよ!」



俺にいつだって気を使って

苦しいのはリンなのに



「そしたら、迎えに行くから…」



リンの瞳が大きく見開かれる




「どこにだってっ行くから!」



瞳から自然に涙が溢れそうになる

駄目だ、泣くな

リンを強く抱きしめた、リンの顔は見えないだたリンの腕が俺の背中に回った。


行かないでくれ


一人にしないで




「行くなっリンっ」



強く強く抱きしめる



リンが腰から手を離して、俺の顔を見る体制になった。

リンの綺麗な瞳が俺を見る。

何故だろう、リンの表情はとても穏やかで。


笑っていた



「…声、ごめん」


ぽろりと、自身の口から漏れる。

心の中で、いつも思っていたこと。


リンが首を僅かに振る

レンのせいじゃない、と

最後まで、強がりだ



「もとに戻せっな…」



言葉が出ない、涙が溢れる。

最後なのだと、自身の心が伝えてくる。

やだ、俺たちはいつも一緒で、二人で…。

リンがいなくなるなんて。


微笑んでいたリンの瞳が閉じかけていく




「リンっやだっリン!」



リンの髪をなで上げて瞳を覗き込む



「駄目だっリン…っそうだ…リン名前」



リンの瞳は容赦なく落ちていく



「名前、呼んでくれよ…っ」



リンの頬に涙が落ちた

俺の涙だ



「声とか…いいんだ、俺のことっ」



駄目だリン


俺の手の届かない世界に行っちゃだめだ




リンの瞳がもう僅かしか開いていない



--あ



「リン…?」



--あり…がとう


視線が俺を捕らえたまま離れない



--ごめんね



「っ…リ…リン?」


リンの吐息が途切れた

僅かに見えていた白い

リンの生の証



「っ?リ……ぁ」



リンの体が冷えていく

どんどん



「っああああああああああああ!」



リンを抱きしめた

反応がない



「っリンやだっリン!」


雪がどんどん積もっていく



「ぅっあああっリ…っあああああぁああぁああ」


神様は、奇跡なんて起こさない



だったら、せめてこのまま世界を真っ白に塗りつぶしてほしい


俺ごと


リンごと


ただ、白い世界に

































「……」


どのくらい日数が経ったのだろう。

わからない…。

朝日が昇った回数を思い出せない。

リンの声が…離れない。


俺は、無意識にリンの部屋に行っていてそこから景色を見ていた。


リンの見ていた世界


最後の直前まで。


リンのベットに触れる。


温度なんて無い、ただ…冷たいだけ。

ベットに伏してシーツを握り締めた。

意味が無い、そんなの分かってる。

リンの枕に触れる。



「……?」



何か、乾いた音がした。

枕の下からだ。



「…て、がみ?」



リンの、手紙だ

筆跡を見れば分かった

少し古めの羊皮紙

いつ、書いたんだろう




--これを呼んでるってことは…駄目だったんだね

 覚悟は、できてたよ

 ずっと、沢山…ごめんね




「何…謝ってるんだよ」


瞳から流れかけている涙を拭いながら、続きを読む



--レン…もし私がいなくなってしまって

 苦しくて…どうしようもなくなっていたら

 私のクローゼットを見てください


 リン



リンらしい丸い文字で、下に手紙を書き終えた日数がかいてあった



「え?」


その日は、俺が花を切った日だ

あの日…

俺は後ろを振り返って、リンがあの日見ていた窓から外を見る



「あ…」



リンの視線の先にあったのは、俺が花を切った木だ

もしかして…


手紙の裏を見る



--花、切るときに謝るクセまだ続いてたんだね

 レンらしくて…好きだよ



そう書いてあった



見てたのか?リン


俺を見ててくれたのか?




「っリン」




窓に手を付く




「リンッ…」


小さく窓が音を立てた












--クローゼット


しばらく、泣いてしまった後にリンの言葉を思い出した



すぐ傍にあったクローゼットを開く


僅かに甘い香りがただよって、そこにはリンの服が入っている

そして、服の下にある包みに気が付いた

白い布でくるまれている


--レンへ


小さな文字で、そう書いてあった


ゆっくりと包みを開く

そこには、数枚の楽譜があった

でも、見覚えが無い


俺が、作曲したことの無い曲だ



--proof of life



「悲しい…歌には…」



リンが、歌っていた曲

雪のなかで、満面の笑みで



「一人じゃ…」



--あなたはいつも 一人じゃないよ



「っ…リン…」


その包みから何か大きなものが落ちた

ゴトッと鈍い音がする


リンのヘッドマイクだ


そういえば、あの雪の日…リンはヘッドマイクをつけていなかった



「これ…俺、に?」



--歌っていたいよ……あなたと 共に




「…っ反則だぞ…リン」



リンのマイクをゆっくりとはめる




「もう、歌うの止められないじゃないか…」




涙を拭って、息を吸った

隣を見る


今、俺がこの歌を歌ったら


傍にリンが



きっと    いる













HN*麻木
 リンレン好きです。
小説やら絵やらを書いてます。
絵は練習中.
HP http://kiiro.yu-yake.com/

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作品へのコメント4

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    タグ追加ありがとうございます!そろそろ新作を書きたい…です。←

    2010/01/26 11:36:35 From  麻木

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    ご意見・感想

    初めまして、沙雲って言います!
    涙腺が崩壊しました・・・。
    すごく素敵ですー。ぼろぼろと泣いちゃいました・・・!

    2009/11/03 21:31:28 From  れーら

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    メッセージのお返し

    コメントありがとうございます。忙しくてメッセージを確認できませんでした、返信おそくなってしまいましたすいません(汗)
    素敵といっていただいて嬉しいです。

    2010/01/26 11:35:49 麻木

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    ご意見・感想

    初めまして^^泣けるだなんてっありがとうございます!
    コメントありがとうございました。

    2009/09/15 22:15:03 From  麻木

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    ご意見・感想

    初めましてーayuuといいます!
    もうすんごく泣けました!!!!
    涙で画面が見れない・・・!!

    2009/09/10 13:48:05 From  ayuu

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