悪ノシリーズ二次創作~ss「そして、その後」

投稿日:2008/05/05 12:05:18 | 文字数:2,469文字 | 閲覧数:2,053 | カテゴリ:(未選択)

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 そして、その後その王国でその少年を見た、という噂を聞くことはありませんでした。


 原曲のあまりの素晴らしさにインスピレーションがびびびっと働きまして、思わず書いた作品です。
 何となく、リンはそのままレンとして一生を過ごしたんじゃないかと思って。リンとしてはもう生きられないんじゃないかな~って。

 原曲をもし穢してしまってましたら済みません……!!

 気分直しにこちらの素敵な原曲を。
「悪ノ娘」http://piapro.jp/a/content/?id=sjgxgstfm2fg2is4
「悪ノ召使」http://piapro.jp/a/content/?id=ktapoh00jbyf60v3

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TEXT
 

*注意*
この小説は、悪ノP様の「悪ノ娘」「悪ノ召使」の二次創作です。
悪ノP様とは一切合切関係ありません。
また、私の勝手な解釈が多分に入っております。その辺をご理解した上で読まれますようお願いいたします。
悪ノP様から削除してほしいとの意見があった場合のみ削除いたします。




 どうしよう。
 どうしよう……

 人々が歓喜の声を上げ笑いあう中、ぼろぼろと涙を流しながら、小さな子供が足早に歩いていた。白い外套を頭からすっぽりと被り、その下の顔は真っ赤に泣きはらして、怪我でもしているかのように足を引きずっているその子供が、実はこの国の王女だなどと、一体誰が信じるだろう。
「レン……」
 母親の形見のネックレスは、渡してしまった。あれがあると安心できたのに。代わりに貰った父親の形見のブローチが入った胸のポケットを布の上からぎゅうっと握り締める。落ち着いてきた鼓動がまた早くなる。喉がひゅうひゅう鳴る。頭がぐるぐる回る。ちゃんと呼吸しなくちゃ。分かってるのに、頭の声はどこか遠かった。



 父様と母様が死んだのは、もう三年も前のことだ。
 母様は病気で。父様は毒を盛られた。オロカナグミンガヨクヲカイテ。だからその三ヵ月後に私がこの国の頂点に立ったとき、私はまだ十一だった。
「大丈夫ですよ王女様。私たちが付いています」
「分からないことは全て私たちにお任せ下さい」
 大臣たちがそう言うので、全部任せることにした。だって、私にわかることは、グミンたちはお金をしぼりとらないとダメになるってことくらいだった。父様と大臣たちが話しているのをこっそり聞いてたときに、そう言ってたから間違いない。はずだった。
「お金がなければグミンたちからしぼりとればいい」
 私が最初に覚えたこと。

「ほら僕の服を貸してあげる」
「これを着てすぐお逃げなさい」
 ある日愚民たちが王宮に攻めてきた。その頃にはもう何となく世の中のことが分かってきてて、この生活も終わりかな、と寂しく思った。
 そして、周囲は私に隠してたつもりだったみたいだけど、ずっと前から知ってた双子の弟のレンが急にそう言い出したのを、私は不思議な気持ちで聞いていた。どういうことだろう。
「リンの格好だと王女様だってバレバレだから。僕の格好なら分からないだろう?」
「そしたらこの王宮から上手く逃げ出して、晴れて自由の身だ。何か聞かれたら僕の振りをしてやり過ごすんだよ」
「大丈夫僕らは双子だよ」
「きっとだれにもわからないさ」
 レンはいつもの優しい声で、言い聞かせるように言葉を紡ぐ。その間に私を着替えさせて、髪型もレンのようにしてくれた。変な髪形。
 首のネックレスをはずすのを私が嫌がると、レンは代わりにとブローチを渡してくれた。大丈夫、後でリンに返すから。ネックレスは邪魔だからね。今だけ我慢して。
「ここからずっと行けば、王宮の外に出られるからね」
「レンはどうするの?」
 するとレンは一瞬だけ黙って、にっこりと笑ってこう言った。
「他の道から行くよ。一緒のところから同じ人が出てくわけにも行かないだろ?」
「顔は見られないほうがいいから、これを被って、出来るだけ顔を出さないようにね」
 そういって、白いマントを頭から被せてくれた。
 ほら、と私を促す手つきがあまりにも優しくて、いつものレンじゃないみたいだった。レンはいつも優しいけど、いつものレンと違うような気がした。
「ねえ、本当にレンも来るの?」
「もちろんだよ。僕が今までリンにウソついたことあった?」
 そう言われればなかったので、そうだねと私は隠し通路に入って、歩き始めた。ちょっとだけゆっくり。レンとすぐに外で会えるように。
 後ろで通路のドアが、静かに閉まった。

 こんなに長いこと歩いたのは久しぶり。ぐったりして、でも早くレンに会いたかったから、何故かにぎわっている町に出てレンの姿を探していた私の耳に、変な言葉が飛び込んできた。
「王女の処刑は明日の午後三時だってよ」
「そりゃあ見に行かないとな!」
「あの王女の死に姿見とかねえと気がすまねえよ」
 王女の処刑?何を言ってるの。私はここにいるわ。
 ものすごく嫌な予感がして、私は王女の処刑を見に行くことにした。一日待つのは辛かったけど、森の中で丸くなっていた。昔よく遊んでいた場所。ここならレンが見つけてくれると思ったけど、レンはこなかった。
 王女の処刑が行われるのはいつも愚民たちを処刑してた広場。人が多い。そういえば愚民は処刑が好きだった。みんなこぞって見に来てたもの。
 小さい体を隙間に滑り込ませながら、何とか王女の顔がちゃんと見える所まできた。しばらくすると王女が壇上に現れた。あの時私が脱いだドレスを着て、私が外したネックレスを身につけて、私の髪飾りをつけて、私と同じ顔をした”王女”が、そこにいた。似合ってない。ぜんぜん似合ってない。どうしてみんな気づかないの?
 ”王女”は、私を見て、一瞬だけ笑った。すぐに目線をはずすと、ゆっくり前に足を踏み出す。
 ついにその時はやってきて、終わりを告げる鐘が鳴る。
 民衆などには目もくれず、教会を見て。
 ”彼女”はこういった。

「あら、おやつの時間だわ」



 バカ。バカ、バカ、バカ、バカ……
「うそつき……」
 私一人で、何が出来るだろう?
 今まで全部人任せにしてきた私に、何が出来ると思ってるの?
 今まで全部レンがやってくれたこと、私に出来ると……
『あら、おやつの時間だわ』
「……そっか」
 あの時、”リン”は死んでしまったんだ。
 あの”王女”が、”リン”を連れていってしまったんだ。
 だから、私は……
「ねえ、そこのお兄ちゃん」
 後ろから声を掛けられた。ゆっくり振り返ると、小さなやせ細った子供が立っていた。
「お兄ちゃん、お名前は?」
 一瞬止まって、胸のブローチをぎゅっと握り締めて、”僕”は、にこっと笑ってこう答えた。
「レンだよ」

(プロフィールはありません)

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