【メイコ生誕祭】この戦争に勝者はいない【カイメイ】

投稿日:2012/11/05 02:21:09 | 文字数:4,398文字 | 閲覧数:1,637 | カテゴリ:小説 | 全5バージョン

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\みんなの嫁イコだからね!/

メイコ生誕祭!ふぁいなる!
というわけでよりによってこの佳き日に青い人があの赤い方々に喧嘩を売りました!「うらあぁあモニター越えて来いやあぁ!!!(屮゜Д゜)屮」私は逃げます!めーちゃんお誕生日おめでとう!!さっ一緒に逃げよう!!=3


愛してるよメイコメイコメイコ、貴方の歌声が、存在が、全てが、大好きです。もう一度言う。愛してるよ。もう一度言う。メイコ、愛してる。もう一度言う、…

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「…メイコ…愛してる」
汗が顎を伝い、彼女の白い肌に落ちた。
応えるように頷くメイコ自身も、火照った身体に玉のような汗を散らしている。
本能と欲望と愛情をすべて綯い交ぜにして、ただ無心で求め合うだけのこの行為。
今までもこれからも、メイコのこんな姿を見られるのはオレだけだ。
頬に当てたオレの手に彼女の手が重なり、激しい律動の中にあっても優しい微笑みが、オレを見上げた。
濡れた口唇が、あの愛しい声で、わたしも、と言葉を紡ぐ。

「―――私も、愛してます。…………マスター」







「――――――ッッッヅ!!!!!!」
ビクンと跳ねた自分の動きで、急激に目覚めた。
……うわ、すげ、心臓、速、い。なんか、ねっとりした汗、いっぱいかいて、る…。
うわ、夢だ。
今の、夢だ。
最悪すぎる。
なんでこんな夢見たか、わかってる。
あぁ夢で良かったーなんて。
到底思えない。今でもまだ、鳥肌立つくらい嫌悪して…。
…あぁ…最悪。何が最悪って、こんな夢をモロに見る自分のチキンっぷりが。…最悪だ。
オレは仰向けになり脈打つ心臓の音を聞きながら、やたらと遠く感じる天井をしばらく見上げていた。


                      *


のっそりと階段を降りる。
リビングに入る前からバタバタと慌ただしい音が聞こえてくる。女4人もいれば朝はいつもそれなりに騒がしいが、今日は普段と様子が少し違っていた。家族の中でも多分もっとも落ち着いていて、朝の準備一つに大騒ぎなんてしない人物の声が、ドアの向こうからやけに目立って響いてくる。
「ルカ!ルカごめんね、朝ごはん中途半端なの、時間なくなっちゃって」
「大丈夫ですよ、スクランブルエッグくらい私も作れます。メイコさんは納得のいくまでメイクされてくださいな」
笑いながらのルカの言葉に、うーありがとう、と余裕のない返事。どうやらキッチンではルカが朝ごはんを作り、リビングテーブルではメイコが自室で施した化粧では物足りず、さらに顔をいじっているところらしい。
…オレは、ドアノブにかけた手を止めた。
あぁいやだな。入りたくない。ずん、と重い気持ちがのしかかる。
「めー姉、右ほっぺの方がちょびっとチーク濃いー」
「えっ、ウソやだ」
「リン余計なこと言うなよ。大丈夫だってねーちゃん、充分綺麗だから」
「何ソレぇ!レンのばかぁ!たらしー!」
「ちょ、たらしってなんだよ!」
「だってキレイなんてリンには言わないくせにー!!」
朝から全開にやかましい黄色たちの微笑ましい応酬にも、胸がチリ、と焦れる。率直な弟の褒め言葉にさえ引っ掛かってしまうなんて、どうしようもなく余裕がない。
「ねぇねぇルカ、大丈夫?変なとこない?」
「えぇ、とってもお綺麗です。お肌の艶もバッチリですし、マスカラも完璧ですよ」
えへへぇ、と普段なら決して年下の家族には見せないような甘えた笑い声が耳に入り、オレはムッとした勢いで思わず扉を開いていた。
「あっ、おっはよーカイ兄!」
「はよ」
「おはようございます」
おはよー、といつもの気の抜けた体を装って、その笑顔のままメイコを見る。
「おはよ、めーちゃん」
「おはようカイト」
にこやかに、ゴキゲンなご挨拶、だ。
確かに今日のメイコはやけに艶々している…気がする。白い頬にほんのりした赤味。口角の上向いた口唇。撫で心地の良さそうな茶色の髪。少し気負った元気な眉に、まろんとした優しげな瞳。今日もオレの嫁は綺麗だ。世界でいちばん綺麗だ。
…ただしその美しさは、オレの為に磨き上げられた美しさではないんだけれど。
クソ。クソクソくそくそ。内心で毒づくオレの気持ちを知りもせず、メイコはルカを振り向いた。
「そうだ、ミクは?」
「洗面所で格闘中です」
それを聞いたメイコがじゃあ私も、と脇を通り過ぎるのを、拳を握り黙って見送る。ふと漂うスウィーティな香り。…あま。お菓子っぽい甘い匂い。いつもこんなの、つけないくせに。
「ミクミク、あとでツインテールやってあげるから先に私の髪の毛直して」
「えっ、大丈夫だよ?寝癖もないしいつも通りサラサラだし」
「ダメなの、ちゃんとブラッシングして、艶出してほしいの、お願い」
「いいよーおねえちゃんの頼みとあらばミク張り切っちゃうよー!」
洗面所からは、またさっきと同じようなやり取りが聞こえてくる。
あぁもうダメだ、苛々する。堪え切れずに、ため息をついた。


                    *


国内初のボーカロイド発売から間もなく8年。
今となっては、MEIKOのユーザーは決して多い方ではない。それは本人も認めるところで、だからこそ自分を選んで使ってくれるマスター達には、彼女は特別な思い入れを持って誰よりも真剣に仕事に取り組んでいる。

そしてMEIKO所持者の中には、他ボーカロイドユーザーとはちょっと次元が違うレベルで、熱狂的にメイコを愛する人達が存在する。
その偏愛っぷりは凄まじく、量より質、という言葉をリアルでぐいぐい実感させてくる、実に熱の籠もった暑苦しい連ちゅ…いや、非常に気合いの入ったファンの方々なのだ。オレだとて敬意を表するほどに。メイコ自身彼らのことを非常に大切にしており、自分がここまで歌えてこれたのは、オレ…KAITOの次に彼らのおかげであると明言していた。



―――そんな彼らの中でも、メイコが特別に、一際の思い入れを持って接している一人のマスターがいる。
その人は初音ミクが発売される前からMEIKOを所持していて、音楽に対するこだわりと情熱でずっとMEIKOを唄わせ、時にこちらが驚くようなスピードで数多の楽曲を作り続けてきた。ガチ曲からネタ曲に至るまでその幅の広さは尋常ではなくクオリティも高い、いわゆる『伝説のMEIKOマスター』だ。
彼の楽曲のファンは多い。いや、彼の『MEIKO』を楽しみにしているファンは多い。
かれこれ間もなく8年。ボーカロイドが無名だった時から、ボーカロイドが供給過多になってしまった現在に至るまでずっと、その人は一途にMEIKOを愛し、唯一の歌姫として唄わせ続けてきたのだ。



…と、ここまではいい話。
要するに、今日はそのマスターの収録日であり。
要するに、メイコはそのマスターに会うために、朝からバカみたいにテンション上がっているのである。

「…よしっ、大丈夫、多分大丈夫。…ね、変なとこないわよね?」
「大丈夫だよーそうやってはしゃいでるめー姉超かわいい!」
「は、はしゃいでなんかないわよ」
「おねえちゃんかわいいー緊張してるー!ちゃんと楽譜もった?」
「う、うん」
「そんなに緊張してたら、あれだけ練習してらしたのに本番で上手く唄えなくなりますよ」
「えっ、そんなのいやだ…」
「大丈夫だろ、あのPねーちゃんには激甘だし。オレらとか他のボカロには上手く唄えないとけっこう悪態つくけど」
「そうそう、MEIKOだったらどんなに調整うまくいかなくても『どしたのめーちゃんご機嫌ナナメさんだな~』とか言ってデレデレしてるもんね。正直引くよね」
「リンったら、もう…!」
頬を膨らますメイコに一同が笑い、その背後でオレは一人もそもそとコーヒーを淹れていた。別にその輪の中に入りたいわけじゃない。全然ない。だけど実際問題『入れない』。
なぜかって?
ところで言い忘れていたが、これだけ頭数が出揃った今、このPとてMEIKO以外のボーカロイドも一通り購入している。ソロ曲の使用頻度は極端に少ないものの、MEIKOのコーラスなんかにわりと使用しているようだ。ミク、鏡音、ルカ、それからがくぽ、リリィちゃん、いろはちゃん、リュウト君…だったかな。

ちなみに、KAITOは持っていない。
もう一度言う。KAITOは持っていない。

話は変わるようだがちょっと聞いてほしい。
熱狂的なMEIKOファンにとって、オレすなわちKAITOという存在は、時に目の敵にされることがある。単純に、V1同士でMEIKOとセットにされがちなうえイケメンでイケボイスで実質ハーレム状態なオレが気に喰わないのだろう。ただし一方的にお仲間だと認定されることもあってそれはそれで大変な勘違いであり思い込みでありいい迷惑でありどちらにしろオレのメイコへの長年の愛とか恋とか粘着質な執着とかを昨今のボカロブームに乗じて俄かにめーちゃんめーちゃんなどとおっぱいコールし始めた新参者と同等に扱われても何言ってんだコイツ臍で茶を沸かしてやんよというレベルの浅はかさであり甚だ愚かしい認識と言わざるを得ないわけでそもそもオレはメイコの婿でありメイコはオレの嫁だよバーカバーカ!とりあえずMEIKOを愛でる上でオレというのは無視しづらい存在らしく、それは非常に名誉なことだと思っている。ちんけな妬みや恨みも甘んじて受けねばならないのだろう、それも選ばれし者の宿命だ。そんなわけでオレはその手の連中に嫌われがちなわけである。
このPの場合も例に漏れずなのかどうなのかは知らんが、とりあえずずっと前からいる男声のオレ―――さらに詳しく言うなら『メイコの美声をより引き立てることのできる唯一無二にして相性抜群であるこの・オレ』、をガン無視してがくぽを即購入したってのは、要するにそーいうことなんじゃねーの、とオレは思っている。

構わないけどね?
もう一度言う。別に構わないけどね?


それじゃ行ってきます!とメイコは慌ただしく玄関に走って行った。追っかけてお見送りしてあわよくばいってらっしゃいのちゅーを一発かまして怒られる。そこまでがオレの朝のワンセットだ。だけど着飾ったメイコの姿を見るだけで気分が悪くなる今朝は、到底そんな気も起きず…
「…あれ」
ふとテーブルの下、視界の端に入ってしまったのは、小さな赤色の半円形のポーチ。確かさっきまでメイコがその中からあれやこれやと引っ張り出して、鏡とにらめっこしていた化粧道具入れじゃなかろうか。
それぞれ忙しいうちの家では、基本リビングで行ってきますを宣言すれば玄関まで見送ることはあまりしない。さっきも言ったようにオレ→メイコ、あとリン→レンなんかは、最後までしつこくかまうけれど。
周りを見渡す。下の子たちはいやーおねーちゃんかわいかったねぇなどと言いながら、いつもの朝の風景に戻っている。
…これは、今さらオレが誰かおねえちゃんにコレ届けてきなさいと言ったら、ものすごく不自然だよね。え、なんで私たちに言うの突っ立ってるくせに自分で行きなよと言われるのが目に見えてるよね。
そうだよね、おにいちゃん今日暇だしね。ごめんね。
…はぁー。
肩を落とし、のそのそとリビングを出て玄関に向かった。

MEIKOさんを筆頭に、年長組、大人組、ボーカロイドが大好きです。

液晶の向こうに行くことは諦めたので悔しいけどめーちゃんはカイトさんに任せることにしました。幸せになれ。幸せになれ。

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