【カイメイ】鈍色空に花吹雪

投稿日:2011/05/26 01:41:39 | 文字数:5,171文字 | 閲覧数:2,965 | カテゴリ:小説 | 全7バージョン

ライセンス:

長っ!!自分でびっくりした!
大好きな仕事してPの「鈍色空に花吹雪」【http://www.nicovideo.jp/watch/sm12474254】がイメージ元になっています。

!ご注意!
◆黄泉桜【novel/102401】の続編です(当初大正時代だったのから昭和初期設定に変えました)
◆名前が漢字です(しかも苗字付き)
◆転生ものです
◆双子が70代です
◆あくまで私解釈です 石は投げなry

前のバージョンで続きます

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

[四]


『黄泉桜伝承』の奥付をめくり、昭和60年2月初版と記された下にある著者の名前。
『始村蓮(しむられん)』。
彼に話が聞きたい。俺はいつしかそう思うようになっていた。

もう亡くなっている可能性もある。ダメ元で図書館の司書に彼のことを聞くと、意外とすぐに答えが返ってきた。
彼は先代の町長を務めていた人らしい。町民から愛された立派な町長で、今は自宅で小さな個人塾を営んでいるという。
教養や見識が深くお話も面白い方だから、一度訪ねてみてはどうかと司書の女性は教えてくれた。



彼女はご丁寧に始村家の住所をメモにしてくれたが、メモを見ずともすぐに分かった。
始村家は町の中で一番大きな家だった。幼い子供や学生、近隣の住民がしょっちゅう出入りしているため撤去しているのか、道路と敷地を隔てる門は存在しない。
何なくたどり着いた玄関前で、彼の本を抱きかかえたまま呼び鈴を押す。立派な日本家屋に気圧されていると、しばらくもしないうちにお手伝いさんらいき女性が顔を覗かせた。

「はいはい、お待たせしました…ごめんなさい、どちらさま?」
「あ、あの、急にお訪ねして申し訳ありません。俺、あ、いや僕は、下平高校の2年生の音崎と申します」
今度学校の課題で『黄泉桜』について調べることになりまして、この本を書かれた始村さんにお会いしたくて参りました、と告げると、ああそうなの、と女性は破顔する。事前に電話などをしなかったことを詫びると、いいのいいのと女性は首を振った。
「先生は若い方にものを教えるのが好きな方だから、いつでも大歓迎よ。ちょっと待っててね」
綺麗な白髪をお団子にまとめ、ぱたぱたと廊下の奥に戻る背中を見送って俺は大きく息を吐いた。
悪い嘘ではないにしても、まだ通ってもいない高校の制服を着て出されてもいない課題の話をするのは少し抵抗がある。ちらりと辺りを見回すと、広々とした玄関に様々な賞状が飾られていた。中には達筆すぎて何の賞なのか分からないものもあるが、大体は地域に文化的貢献をしたという意味合いのものが多い。評判通り立派な人なのだろう。


眺めていくうちに息を呑んだ。
賞状に混ざって飾られていたのは、本の見開きにもなっていた、満開の『黄泉桜』の写真。本では白黒だったその写真だが、鮮やかな色を得て飾られていた。
引き寄せられるように俺はその写真のもとへ歩み寄る。ふと、写真の満開の花の中に人の姿を見たような気がして、俺は目をこする。見間違いだろうか。しかし、今、花の中に白い着物を着た女性の姿があったような。


「その写真、気に入ったかい?」
食い入るように写真を眺めていると、穏やかな声で呼びかけられた。
声のした方を見やると、そこには優しい微笑を称える老年の男性が立っていた。真っ白な髪は少し金色が混ざっているように綺麗で、長めの髪を緩く括っている。紺色の着流しと深緑の帯を身に着けしゃんと背筋の伸びた立ち姿は、聞いていた年よりもずっと若く見える。
「あ、あの、始村蓮さんでしょうか」
「うん、そうです。黄泉桜のことを聞きたいっていうのは、君かな?」
「はい、下平高校2年の音崎櫂人(おとさききかいと)です」
「かいと?」
驚いたように見開いた目。首を傾げると、ああごめん、と始村さんが手を振る。
「…ちょっと、昔の知り合いに似ていてね。ごめん。話を戻そうか」
「あ、あの、この本を読ませていただきました。とても興味深かったです」
「そう?よかった」
「あの、覚えてらっしゃる限りで結構なんです。もし覚えてらしたら、直接『黄泉桜』のことを教えていただきたくて」
「勿論、僕が覚えていることはお話しするよ。こう見えても黄泉桜研究の第一人者、なんて大層な肩書きを持ってるからね」
あはは、と笑って、始村さんは俺を家の中へと招き入れる。
お邪魔します、と靴を脱ぎ揃えて廊下に上がった瞬間、俺はまた既視感に襲われた。『黄泉桜』を見た時と同様の感覚。どくん、と心臓が不穏な動きを見せる。
この廊下の奥に居間と書斎があって、ここを曲がれば台所が合って、階段の上には子供部屋と寝室がある。
(…なんで俺は、こんなことを知っているんだろう)
始村さんには気付かれないよう、俺は心臓を抑えた。――ここまで来て、発作なんて起こしている場合じゃない。


招き入れられた12畳ほどの応接室には、玄関で見た以上の賞状と盾やトロフィーが所狭しと飾られていた。
その数に呆気に取られていると、恥ずかしそうに始村さんが頭を掻く。持って帰ってくると誰かが勝手に飾ってくれるから僕がやったわけじゃないんだ、と微笑んだ顔はまるで少年のようだった。
「適当に座って。コーヒーでいいかな」
「いや、僕は…」
「僕が飲みたいんだ。良かったら付き合って」
じゃあ、と頷くと、始村さんは机の上に置かれた電話でコーヒー二つ頼むよとどこかに告げ、向かいの革張りのソファに腰を下ろした。
「さてと、じゃあ何を話そうか?」
「…すごく、変なことを聞くと思われるかもしれませんが」
「うん?」
「…あの、『黄泉桜』が枯れた時の話をお伺いしたくて」
「…枯れた時?」
「あの、この本には『当時町長の次男である青年の葬儀の最中』と書いてありました。…始村さんも、この場にいらっしゃいましたか」
「うん、いたよ」
やはり。町長の次男、ということは、始村さんの親族かもしれないという考えは間違いではなかったようだ。
「あれは、僕の兄の葬儀だったんだ」
「…お兄さん、ですか」

うん、と悲しそうに始村さんは笑う。
始村さんは上にお兄さんが二人、そして双子のお姉さんの4人兄弟。30歳の時、町長を務めていた一番上のお兄さんが亡くなって、それ以来町長職を引継いだという。
「じゃあ、その葬儀の時に…?」
「いや、黄泉桜が枯れたのは2番目の兄の時。兄は17歳の誕生日の目前で、…僕と双子の姉が、14歳の時だった」
「14歳…」
「今でもはっきり覚えてる。黄泉桜が散っていく様を。幼心に怖くてね」
「怖い…?」
「僕らが子供の頃から、いや、もっとずっと昔から、黄泉桜には神が宿っていると言われてきた。1年中枯れずに、この地を守ってくれている神様の木。黄泉桜は咲いているのが当たり前で、枯れることなんか誰も想像していなかったんだ」
「……」
「本当に、目を疑うくらい一気に黄泉桜は散っていった。その日は雪が降っていてね。白い雪と赤い桜が混じって、なんだか嘘みたいな景色だった」
懐かしむような口調に、哀切と畏怖が混じる。彼にとって、いやおそらくは当時の人々にとって、『黄泉桜』は本当に神と同義の存在だったのだろう。
「…でも、咲いたんですよね?」
「…ああ、咲いたよ。黄泉桜はその年の春にまた蕾をつけた。ただ、すぐに散ってしまたけれどね」
――散らないはずの桜が散った。それはまるで。
「魔法が解けたみたいだと、思ったよ」
「……」
「…兄が亡くなって、桜の魔法も解けてしまったんだと僕の姉はずっと言ってた。桜の精霊が悲しくて、花を散らせてしまったんだってね」
「桜の…精霊?」
「そう。非科学的で、当時は信じていなかったんだけれど、今となってはそれが一番しっくりくるんだ」
皮肉なものだね、と始村さんは微笑む。

桜の精霊。『黄泉桜』の、精霊。
どうしてだろう。ふっと、優美な女性の姿が浮かぶ。それはさっき写真の中で見たような、白の着物を着た姿で。
まただ。また、強い既視感。落ち着け。お願いだから。祈るように俺は心臓を掴む。

「…お兄さんは、どんな方だったんですか」
「優しい人だった」
ソファに寄りかかり彼が息を吐くと、年齢を重ねた首筋が露になる。
「父は多忙だったし、一番上の兄もその仕事を手伝っていたから、僕たち…僕と姉と遊んでくれたのは専ら2番目の兄だったんだ。絵が上手で、穏やかな人でね」
「……」
「訃報を聞いたときは信じられなかった。必ず治ると聞かされて、東京の病院へ送り出したのに、ここへ帰って来たのは物言わぬ兄の体だけ」
「……」
「悲しくて悲しくて。僕も姉も、1日中泣いてたよ。葬儀までの間、床の間に寝かされた兄の体に縋って泣いた」


 兄様。お願い目を開けて。
 兄さん。絵を教えてくれると約束したじゃないか。
 兄様。死んじゃいやです。兄さん。こんなのひどいよ。


脳裏に浮かぶ、幼い女の子と男の子の声。取り縋る掌を左手に感じた気がするが、もちろん足元には誰もいない。、
今のはなんだ。今の記憶は一体。

「…どこか、お悪かったんですか」
「ここ」
彼が指したのは、左胸。その奥にあるものは、誰でもない俺が一番良く知っている。
「本格的に発症したのは10歳の時だったんだけど、生まれつき心臓が弱かったんだ。本当なら5歳くらいまでしか生きられないと言われていたらしい」
聞いたことのある話にどくん、と心臓が存在を主張する。逃れられない既視感。この類似は単なる偶然なのか。
すると、僕を見つめて彼が微笑んだ。

「…こんなことを言っては気分を悪くするかもしれないけれど、君は兄によく似ている」
「…え?」
「その青い髪も、瞳も、顔立ちも。そして何より、兄も『かいと』という名前だった」
「……」
「始村海斗。僕の、自慢の兄だった」

言葉が出ない。呼吸の仕方を忘れてしまったように、喉の奥からはひゅぅと息が漏れていく音がする。
60年前。同じ名前で、同じ場所を患っていた、もう一人の『かいと』。
そして、眩暈がする既視感。
まさか。

「そうだ、君に見てもらおう」
ぽん、と膝を叩いて彼は立ち上がる。迷いのない足取りで応接室から続く物置に入り、額に入った賞状より少し大きめの何かを持って帰って来る。
「祠を取り壊す時、引き取ってきたんだ」
「…何を、ですか?」
「絵だよ。兄が描いた、黄泉桜の絵」
どくん、と心臓がこれまでよりももっと大きく動いたのが分かった。
これまでよりも、もっともっと大きな発作の前兆。まずい。荒くなる呼吸で、強くシャツを掴む。
「桜の色が入っていないから、未完なんだけれどね。姉はこの絵を見て黄泉桜の精霊の存在を信じた。だから、僕達は枯れた黄泉桜にこの絵を奉納しに行ったんだ」
「……」
差し出された額縁を震える手で受け取る。ふわりと薫る古いキャンバスと絵の具の匂い。また既視感。
心臓が悲鳴を上げ始めている。ぎゅう、と締め付けられる感覚。まずい。保たない。

震えながら、けれど強い気持ちに突き動かされるようにそれを裏返すと、そこには満開の桜とその中心に腰掛け微笑む女性の姿が描かれていた。

 ああ。
 やっと会えた。

「裏面に、名前が入ってるんだ。兄の名前と、もうひとつ」
「……」
言われるがままにもう一度額縁を裏返す。確かに右下に小さく名前が書かれていた。
海斗、という署名の下に書かれた、もう一つの名前。
「もう古くなってしまったから掠れて読めないんだけど、姉は精霊の名前じゃないかって…」
「…いこ」
「え?」
「…芽依子、だ」

めいこ。

その名前を口にした瞬間、一瞬だけ鼓動が止まった。
そして、止まっていた分の血液が一気に流れて、心臓が暴れだす。どくんと打った脈が破裂したかと思うほど激しい動悸に襲われ、息が詰まった。
眩暈。膝から崩れ落ちる体。回る世界。
俺を襲うのは発作と凄まじい速さで巡る走馬灯のような景色。



 あなたは優しい。だから皆、あなたを愛してるんだわ。
 治ったら、まず何がしたい?
 分からないの。人に、触れられたことなんか、ないから。
 あなたも、あたたかい。
 独りにしないで。
 逝かないで。



笑顔。温度。香り。目の前をよぎる彼女のすべて。



「…音崎君?」

 ああ、芽依子。ごめん。
 必ず君を見つけ出すって約束してたのに。もう17年も経ってしまった。

「音崎君、どうした?具合でも悪いのか?」

 今すぐ君の元に行くよ。
 必ず会いに行く。必ず。だから、もう少しだけ待ってて。

「音崎君、しっかりしろ、音崎君。僕の声が聞こえるかい?」

 泣かせてしまって、ごめん。
 君は泣き顔も綺麗だけど、笑った顔の方がもっと素敵だよ。
 ねぇ。芽依子。

「コーヒーおまたせ…きゃあ!どうしたの!?」
「凛!救急車だ!救急車呼べ!」

 僕は、ずっとずっと、君のことが。



――薄れいく意識の中で、俺は夢を見ていた。
満開の桜の木の下、ようやく再会した彼女の華奢な体を抱きしめている夢。

夢だと分かっている夢だった。
だから、このまま醒めたくないと切に願った。

駄文を書いては自己満足しています。
一応小説。たまになりそこないのポエム。
全くの自己流ですので、読みにくいところも多々あるかと…


年長組が好きです。全力でカイメイ支援。
っていうかカイメイ小説しか書いてませんのでご注意ください。


めーちゃん可愛いよめーちゃん。
めーちゃんが皆から愛されてれば幸せ。
めーちゃん中心に家族は回っていると信じてやみません。
めーちゃんハァハァ

美麗イラストを見てぴぎゃぁぁぁぁすると勝手に小話を作ることがあります。
ご注意ください。


タグやブクマ、メッセージありがとうございます…!(`;ω;´)ブワッ
カイメイ好きさんの優しさは世界一や


プロフ画像の可愛すぎるめーちゃんは青菜しゃーぷ様よりお借りしました!


[ブログサイト]
http://saltcabbage0919.blog.fc2.com/

[pixiv]カイメイ以外もあり。ピアプロの方がカイメイ作品多いです
http://www.pixiv.net/member.php?id=1040966

[twitter]たいしたこと呟きません
http://twitter.com/kyonturbo



※11/19発行の小説本3点、おかげさまで完売しました…!お買い上げくださった方々に最大の敬愛を!!

もっと見る

作品へのコメント3

ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!

新規登録|ログイン
  • userIcon

    ご意見・感想

    黄泉桜を初めて読んで、号泣。
    これを初めて読んで、超号泣。
    弟にも読ませました笑

    本当に素晴らしい作品をありがとうございました!!
    カイメイ万歳!

    2013/02/25 18:36:21 From  カメフィ

  • userIcon

    メッセージのお返し

    >カメフィ様
    わわわわ黄泉桜も読んでくださったのですね…!ありがとうございます////
    しかも弟さんにも…ですって…ww弟さんすみませんごめんなさい…www
    少しでも気に入って下さったのなら嬉しいです…!
    鈍色と黄泉桜は書いた作品の中でも特別なものなので、感想頂けて嬉しいです!////
    またお待ちしてますー!///

    2013/03/27 01:41:40 キョン子

  • userIcon

    ご意見・感想

    はじめまして。
    キョン子さんのカイメイが大好きでどの作品も何度も読ませて頂いています。
    読み終わった今、涙が止まりません…。
    声が出るくらい泣いてしまいました。
    素敵なお話を有難うございました。
    カイメイばんざぁぁぁぁいっ!

    2011/05/27 00:43:36 From  くまごろー

  • userIcon

    メッセージのお返し

    >くまごろー様
    ふぉぉぉぉぉぉぉ…!!!なんて嬉しいお言葉の数々…!!!;ω;
    ありがとうございますありがとうございます、すっごい嬉しいです!!
    読んでくださる方の涙を頂戴出来るなんて本当に書き手冥利につきるというか、なんていうかこんな私の作品でそう言っていただけるなんて本当に幸せです、ありがとうございます!
    もしよろしければまた呼んでやってください、頑張ります!!!
    カイメイばんざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!

    2011/05/28 22:22:13 キョン子

  • userIcon

    ご意見・感想

    黄泉桜の続きが読めるなんて…!
    兄さんとめーちゃんが再び出会えてほんとうに良かったです。カイメイは永遠ですね(*^^*)
    あと、リンレンがご年配というのがなんだかツボです。
    素敵なお話をありがとうございました!

    2011/05/25 05:37:13 From  マーブリング

  • userIcon

    メッセージのお返し

    >マーブリング様
    その通りですともカイメイは永遠です!!
    過去でも現世でもパソコンの中でもカイメイは結ばれる運命なのだと信じてやみません!
    70代のリンレンなんて受け入れてもらえるのかとすごく不安でしたが、嬉しいお言葉…!
    ミクも出せて満足でしたが、実は転生めーちゃんの妹にルカがいるという設定が生かしきれませんでしたw
    こちらこそメッセージありがとうございました!

    2011/05/26 20:37:56 キョン子

もっと見る

▲TOP