【カイメイ】鈍色空に花吹雪

投稿日:2011/05/26 01:41:15 | 文字数:4,324文字 | 閲覧数:2,965 | カテゴリ:小説 | 全7バージョン

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長っ!!自分でびっくりした!
大好きな仕事してPの「鈍色空に花吹雪」【http://www.nicovideo.jp/watch/sm12474254】がイメージ元になっています。

!ご注意!
◆黄泉桜【novel/102401】の続編です(当初大正時代だったのから昭和初期設定に変えました)
◆名前が漢字です(しかも苗字付き)
◆転生ものです
◆双子が70代です
◆あくまで私解釈です 石は投げなry

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TEXT
 

[五]

 兄様。死んじゃいやです
 返ってきたらまた遊んでくださるとお約束したのに。
 こんなのひどい。お願い、目を開けて。


 ああ、また泣いてるのか。泣き虫だなおまえは。
 ほら、泣くのはおやめ。おまえは一人じゃない。兄さんも蓮も側にいる。だから、寂しくないよ。
 だから笑って。可愛い笑顔を兄様に見せておくれ。

 凛。



「…おにいちゃん…?」

目を覚ますと、俺は四角い天井の真っ白な部屋にいた。
天国って随分病室と似てるんだなとぼんやり考えていると、視界の隅から覗き込む人影に気付く。
「…美久?」
見慣れた顔。掠れた声で呼びかけると、その顔がみるみる泣き顔に崩れていく。ベッドに縋るように膝を追った美久が、良かった、と消え入りそうな声で呟く。
(ああ、また泣いてるのか。泣き虫だな、美久は)
小さな掌がぎゅっと俺の指を掴むが力が入らなくて握り返すことが出来なかった。
「…ここ、どこ?」
「病、院。おにいちゃん、倒れたの」
「…なんだ、道理で天国にしては薬品臭いと思った」
バカとか何言ってるのとか、予想していた憎まれ口は返ってこない。ただ断続的に漏れる嗚咽に、また迷惑を掛けてまったという罪悪感に襲われた。
また生き延びてしまった。それを嬉しいと思うほどに、俺は訳の分からない子供ではない。

「…具合、どうだい」
ふと降って来た声。力の入らない体で視線だけ動かすと、美久の後ろに立っている人物に気が付く。微笑んだ顔に力はなく、緩く括った白髪は少し乱れていた。
「し、村さん、俺…」
「ああ、起きなくていい。寝てなさい」
手だけで制され、俺は再びベッドに沈む。
意識の途切れる寸前、始村さんが救急車と叫んでいたのをなんとなく覚えている。初めて訪ねていった人の家で発作を起こすなんて、俺はとんでもないことを。
そんな俺の気持ちを読んだのか、始村さんは微笑んでただ首を振る。
「僕よりも、妹さんに礼を言った方がいい。一晩中寝ずに、ずっと君の側についてた」
「……」
布団に突っ伏した美久の肩が小刻みに震えている。ごめん、と呟くと、美久はただ首を振った。
ごめん。ごめんな。こんな兄貴で、本当にごめん。


お父さんとお母さんを呼んでくる、と美久が病室を出て行って、部屋には俺と始村さんだけが残された。
ベッドの脇の椅子に腰掛け、始村さんが深く息を吐いて俯く。置いてあった水差しを差し出してくれたので、ありがたくそこから一口水を飲んだ。
「…それにしても、驚いたよ」
「…本当にすみませんでした。ご迷惑かけて」
「いや、そういうことじゃない。…なんていうか、心臓まで兄に似てるなんて思わなくて」
そっと顔を上げた始村さんの顔は疲れの色が濃い。一晩中美久は俺についていたと言っていた。もしかすると、始村さんもずっとここにいてくれたんだろうか。
「ああやって、兄が発作を起こして苦しんでいるところを僕は何度も見てきた。何も出来ない自分がいつも歯痒くてね」
「……」
「…今回は間に合って良かった」

そう言って微笑んだ顔が、記憶の彼方の少年と重なった。
意識を失う直前に見た走馬灯には、おそらく幼い日の始村さんがいた。兄さん、と無邪気に笑う声に、その頭を撫でる節くれだった掌。

「…俺、意識を失ってる時、ずっと夢を見てました」
「…どんな夢だい?」
「『黄泉桜』下で、彼女と再会する夢でした。夢の中でずっとずっと俺は幸福で、いっそ目覚めたくないと思ってて」
「…彼女?」
「芽依子、です」
「…それは、黄泉桜の、精霊?」
「はい」

おかしなことを言っていると自分でも思う。けれど、そうとしか考えれない。
物心付いた時から焼き付いた景色。ここへ来てからの強烈な既視感。
――あれはきっと、『始村海斗』の記憶なのだ。走馬灯の最後の花吹雪は、黄泉桜の最期の瞬間で。

「その話を、詳しく聞かせてもらってもいいかい?」
「…俺も、うまく説明できるか分かりませんが…」
「…うん、それでいい。…凛、入っておいで」

始村さんに促され一人の女性が病室に入ってくる。
凛と呼ばれたその人は、始村家を尋ねた時に俺を出迎えてくれたお手伝いさんだった。
静かに年齢を重ねたその姿は、よく見れば彼と似た顔立ちをしている。呼び捨てにしているということは奥さんなのだろうか。いや、違う。凛、聞き覚えのある名前。俺はこの人のことを知っている。
「…体の具合はどう?」
「もう、大丈夫です」
「良かった」
ふっと微笑んだ目元は泣いた後のように少し赤い。
(また泣いてるのか。泣き虫だなおまえは)
――間髪いれずに出てきた言葉。無意識に伸びようとする手は、おそらく頭を撫でようとしたから。
「僕の双子の姉、凛だ」
「こんにちは。さっきはちゃんとご挨拶できなくてごめんなさい」

20歳で他県に嫁いだという凛さんは70歳を迎えた歳に旦那さんに先立たれ、始村家に戻ってきたと話してくれた。なにもしなくていいと言ってるのに勝手にお手伝いさんみたいなことをするんだ、と始村さんが笑うと、貧乏性だから何かしてないと落ち着かないのよと凛さんも微笑む。笑った顔が、二人はよく似ていた。

兄様、と縋りついて泣く小さな姿を覚えている。
可愛がっていた妹の頭を撫でたくても、もう叶わなかった彼の想いを知っている。

「…本当に、兄様によく似てるわ」
「……」
「…君が訪ねてきた時、兄に似てると言い出したのは凛なんだ」
「だって、そっくりじゃない。ねぇ蓮、彼に見せてもいい?」
「もう少し、後の方がいいんじゃないか?彼はまだ起きたばかりだし…」
ねだるような姉の問いかけに困ったように首を傾げ、始村さんは俺に視線を移す。
「…兄の写真を持ってきたんだ。もし君さえ良ければ、見てみるかい」

『海斗』の写真。
俺は一も二もなく頷く。始村さんは刺激を与えるとまた発作が起こるんじゃないかと心配していたが、俺は大丈夫と強く言い切った。その前兆はなかったし、例え発作が起こったとしても俺は彼の顔が見てみたかった。
知りたかった。どうして彼の記憶があるのか。――自分が一体何者なのか。
始村さんはため息をついて、俺の強い意志に押し切られるように写真を手渡してくれた。





そこに写っていたのは、俺だった。
似ているとかそういうレベルの話ではなく、そこにいるのは俺自身だった。モノクロの世界の中、絣の着物を着た俺が、よく似た顔立ちの幼い姉弟と共に笑っている。
「…ね、そっくりでしょ」
隣からのぞき込んだ凛さんが懐かしむように目を細める。
「私たち、兄様が絵を描いてる姿が好きだったの。ほら、ここにキャンバス」
「…ああ…」
「覚えてる?このあと、蓮がキャンバス倒しちゃって大変だったのよね」
「あれはおまえが悪ふざけしたからだろう」
「だからちゃんと謝ったじゃないの、それなのにいつまでもねちねち怒って」
「ねちねちってなんだ、ねちねちって」
「ほら、まだ根に持ってる」
「おまえがそう言う風に嫌味ったらしく言うから」

「…こら、喧嘩はよしなさい。仲良しこよし」

――出てきた言葉があまりに自然に喉を通ったものだから、始村さんと凛さんが驚いたように俺を見ている理由が最初は分からなかった。二人が言い合いを始めて、自然に出てきた仲裁の言葉。
『こら、喧嘩はよしなさい。仲良しこよし』。

「…どうして、知ってるの」
目を丸くした凛さんの声が震えている。
「私たちが喧嘩すると、必ず兄様がそう言ってくれたの。最後に必ず仲良しこよしって。おまじないみたいに」
「……」
「ねぇ、どうして?兄様のこと知ってるの?」

どうして、なんて、俺が聞きたいくらい。
なんと説明して良いか分からずに、俺は俯く。
信じてもらえる訳がない。俺は、60年前に亡くなったあなた方の兄の記憶があるんですなんて。もしかしたら俺は――。

「生まれ変わり、なのかもしれないね」
俺の代わりに言葉を紡いだのは始村さんだった。
言うのが怖くて形に出来なかった言葉を、彼は事も無げに口にする。
「生まれ変わり…?」
「世の中には信じられないことがたくさんある。桜の精霊がいるくらいなんだ。生まれ変わりだってあるかもしれないだろう」
「……」
信じられないといった表情で彼を見つめる。凛さんだけではない。俺自身もだ。
「音崎君、君は黄泉桜の精霊の名前を知っていた。おそらく、兄さんしか知らなかったはずの名前を」
「……」
「もしかしたら、自分のものではない記憶が、まだ残っているんじゃないかい?」
青みがかった瞳をまっすぐに向けられる。抗えない力に頷くと、やっぱりそうか、と始村さんは微笑む。
「ひとつ、聞いてもいいかな」
「…はい」
「…兄さんは、黄泉桜の精霊に恋をしていた?」
「…え?」
「蓮、なに言って…」
「ずっとずっと、それだけが知りたかった。もしそうなら、きっと黄泉桜は兄さんのあとを追ったんだ」
「……」
「……」
「…そうしたら、きっと兄さんも寂しくなかった。そうだろう、凛」
問いかけられ、凛さんの目に涙が溜まる。
少し逡巡する間があって、彼女は口元を覆って「そうね」と呟いた。


恋。黄泉桜の、精霊に。

「…はい、息もつけないくらいに」
「……」
「……」
「彼女のことを愛してた。出会えたことが最大の喜びで、ずっとずっと、一緒に居たいと希っていた」
「……」
「……」
「死すら怖くなかった。彼女の花に見送られて天国に行けるならと」
「…そう、か」
「……」
「…けれど、心残りが一つだけあって」
心残り?
首を傾げたのは始村さんたちだけではない。俺自身もだ。俺の口を借りた、『始村海斗』は、一体何を語ろうと言うのだろう。
「…彼女が、泣いてた」
「…え?」
「…泣いてた?」
「芽依子が、泣いてた。僕が泣かせてしまった」
「……」
「……」
「だから、誓った。必ずまた会おうって。必ず、君を見つけてみせるからって」

そう、誓ったんだ。必ず僕がその涙を拭うからと。



「音崎、君」

自分の頬を伝っているのは、涙。
もうとっくに枯れたと思っていた涙が次から次へと溢れて、彼女への気持ちが感情の堤防を決壊する。

憧憬、親愛、希望、熱情、尊敬、安らぎ、幸福。
そして計り知れない恋慕。
人間が持ち得る綺麗な感情をすべて集めて花束にしたような、色とりどりの感情。それが、彼女に対しての気持ち。


芽依子。
めいこ。
君に会いたい。


やっとわかった。
――だから俺は、生まれてきたんだ。

駄文を書いては自己満足しています。
一応小説。たまになりそこないのポエム。
全くの自己流ですので、読みにくいところも多々あるかと…


年長組が好きです。全力でカイメイ支援。
っていうかカイメイ小説しか書いてませんのでご注意ください。


めーちゃん可愛いよめーちゃん。
めーちゃんが皆から愛されてれば幸せ。
めーちゃん中心に家族は回っていると信じてやみません。
めーちゃんハァハァ

美麗イラストを見てぴぎゃぁぁぁぁすると勝手に小話を作ることがあります。
ご注意ください。


タグやブクマ、メッセージありがとうございます…!(`;ω;´)ブワッ
カイメイ好きさんの優しさは世界一や


プロフ画像の可愛すぎるめーちゃんは青菜しゃーぷ様よりお借りしました!


[ブログサイト]
http://saltcabbage0919.blog.fc2.com/

[pixiv]カイメイ以外もあり。ピアプロの方がカイメイ作品多いです
http://www.pixiv.net/member.php?id=1040966

[twitter]たいしたこと呟きません
http://twitter.com/kyonturbo



※11/19発行の小説本3点、おかげさまで完売しました…!お買い上げくださった方々に最大の敬愛を!!

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作品へのコメント3

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    ご意見・感想

    黄泉桜を初めて読んで、号泣。
    これを初めて読んで、超号泣。
    弟にも読ませました笑

    本当に素晴らしい作品をありがとうございました!!
    カイメイ万歳!

    2013/02/25 18:36:21 From  カメフィ

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    メッセージのお返し

    >カメフィ様
    わわわわ黄泉桜も読んでくださったのですね…!ありがとうございます////
    しかも弟さんにも…ですって…ww弟さんすみませんごめんなさい…www
    少しでも気に入って下さったのなら嬉しいです…!
    鈍色と黄泉桜は書いた作品の中でも特別なものなので、感想頂けて嬉しいです!////
    またお待ちしてますー!///

    2013/03/27 01:41:40 キョン子

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    ご意見・感想

    はじめまして。
    キョン子さんのカイメイが大好きでどの作品も何度も読ませて頂いています。
    読み終わった今、涙が止まりません…。
    声が出るくらい泣いてしまいました。
    素敵なお話を有難うございました。
    カイメイばんざぁぁぁぁいっ!

    2011/05/27 00:43:36 From  くまごろー

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    メッセージのお返し

    >くまごろー様
    ふぉぉぉぉぉぉぉ…!!!なんて嬉しいお言葉の数々…!!!;ω;
    ありがとうございますありがとうございます、すっごい嬉しいです!!
    読んでくださる方の涙を頂戴出来るなんて本当に書き手冥利につきるというか、なんていうかこんな私の作品でそう言っていただけるなんて本当に幸せです、ありがとうございます!
    もしよろしければまた呼んでやってください、頑張ります!!!
    カイメイばんざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!

    2011/05/28 22:22:13 キョン子

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    ご意見・感想

    黄泉桜の続きが読めるなんて…!
    兄さんとめーちゃんが再び出会えてほんとうに良かったです。カイメイは永遠ですね(*^^*)
    あと、リンレンがご年配というのがなんだかツボです。
    素敵なお話をありがとうございました!

    2011/05/25 05:37:13 From  マーブリング

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    メッセージのお返し

    >マーブリング様
    その通りですともカイメイは永遠です!!
    過去でも現世でもパソコンの中でもカイメイは結ばれる運命なのだと信じてやみません!
    70代のリンレンなんて受け入れてもらえるのかとすごく不安でしたが、嬉しいお言葉…!
    ミクも出せて満足でしたが、実は転生めーちゃんの妹にルカがいるという設定が生かしきれませんでしたw
    こちらこそメッセージありがとうございました!

    2011/05/26 20:37:56 キョン子

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