ボカロ イメージ小説~家に帰ると家族が必ず死んだふりをしています~(1)

投稿日:2015/10/12 20:47:58 | 文字数:3,525文字 | 閲覧数:145 | カテゴリ:小説

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原曲「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています」(作詞作曲:ほぼ日Pさま)

作品中はタイトル通り、めーちゃん主役で、死んだふりするのは旦那と弟妹達になってます。

前作と違ってハッピーエンドにしかならないのでご容赦ください。

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TEXT
 

<家に帰ると家族がそろって死んだフリをしています。>

……最近、少し食欲が無い。

いつものお昼のA定食(焼き肉定食)も…

たまに選ぶB定食(メンチカツとコロッケとアジフライ盛り合わせ定食)も…

週一の楽しみのC定食(大盛り焼きそば餃子チャーハン定食)も…

最近は完食できずに残してしまいがちになってしまった。

そういえば最近、お酒の量も減ってきたかな、とも思う。

仕事の付き合いでもプライベートでも、最近は以前ほどお酒が美味しいとは思わなくなってきたような気がする。

他人からは良く「健啖家」だとか「酒豪」とかよく言われるが、これはつまり裏を返せば「暴飲暴食」とマユをひそめられていると言う事でもあるわけで、むしろ世間体的には今ぐらいがちょうどいいのかもしれないけれど……

……それでもやっぱり、内臓あたりが弱まってきたのかなぁ、と自分なりに気にかけていたら、ついに他人からも同じことを言われてしまった。

「ねぇメイコさん。最近、飲まないのね。体調悪いの?」

酒の席でビールを瓶一本空けて次を断っただけでそう言われた。

これはやっぱり自分の体調を気にかけるべきなのか。

それともこの程度で体調を心配されてしまう今までの自分の飲みっぷりを気にかけるべきだったのか。

何とも釈然としない気持ちで私は家路に付いた。

そう言えば、気にかけることといえば他にもあった。

と、我が家の玄関の前に立ちながら、私は軽く溜息をつく。

ここしばらく家族の様子がおかしいのだ。

つい先月くらいまでは、私が玄関の呼び鈴を鳴らして「ただいま~」と声をかけると、家の中から鍵が開いて、うちの“ちびーず”こと義弟義妹たちが我先にと出迎えに飛び出して来てくれたと言うのに……

……最近はそうじゃない。

今日も試しに呼び鈴を鳴らして「ただいまぁ~」と言ってみたけれど、家の中からは何の返事もしない。

(今日もやっぱりかぁ)

私はまた一つ溜息をつきながら、バッグから自分の鍵を取り出した。

玄関のドアを開けると、そこには旦那と、義弟義妹たちがそろって倒れ伏していた。

私から向かって右から順に、

旦那、

義弟のレン、

義妹のリン、

同じく義妹のミクが、

真っ赤な水たまりの中で、うつ伏せになって倒れている。

旦那の背中には包丁が深々と突き刺さり、床は血まみれ。

私は目の前に拡がる光景に目眩を覚え、膝をつきそうになった。

最近、家族の様子がおかしい、おかしいとは思っていたけれど、でも、まさか、よりによって、こんな、こんな……

「……こんな掃除が大変そうな真似しなくていいじゃないの」

私が呆れたように呟くと、背中に包丁突き立てた旦那と、赤い水たまりに突っ伏したちびーずたちは、うつ伏せのままそろってクククと満足そうに笑った。

「大丈夫だよ」

と、旦那がひょっこり顔を上げた。

「これ、拭きとり簡単で洗濯したらすぐに落ちる、染みにもならない特別製の血のりだから」

得意そうに言ったその顔は、トマトでも顔面にぶちまけたみたいに真っ赤だった。

私は屈みこんで、旦那のおでこにデコピンをくらわした。

「あ、痛」

「もう、ドア開けたのが私じゃ無くて他の人だったらどうするのよ。今日のは流石に、知らない人が見たら卒倒するか通報されるレベルだったわよ?」

「大丈夫だよ。だってめーちゃん、いつも必ず“ただいま”って言ってくれるでしょ」

それを聞いてから、家族総出でここまで手の込んだ死んだフリをするのか。

そのエネルギーと情熱をもっと他に回せと言いたくなる。

「とにかく、これを何とかしなくちゃいけないわね。玄関真っ赤じゃないの」

血のりを踏まないように玄関に上がろうとしたら、旦那と義弟義妹たちが身を起して、そろって私を眺めてニヤニヤ笑っていた。

あ、何か嫌な予感がするわ。

「めーちゃん」

「「「お姉ちゃん」」」

血まみれ家族がそろって両腕を広げた。

「「「「おかえりなさぁ~い」」」」

「わ、ダメ、そんな血まみれで抱きついてこないでっ!?」

むぎゅぎゅぎゅ~。

ああ、もう、本当に最近、家族の様子が、可笑しい。




血のりでべたべたになった自分の服を、義妹たちの分ごと洗濯機に放り込んで、彼女たちと一緒に風呂に入った。

血のりはシャワーで流しただけで簡単に落ちた。

「血のりなんて、いったいどこで仕入れて来たのよ?」

浴槽につかりながら訊くと、リンがショートカットの金髪を男の子みたいにわしゃわしゃ洗いながら答えた。

「がくぽさんがくれたの」

「やっぱり」

他人に変なお土産や差し入れを渡すのが趣味の同僚の顔が思い浮かんだ。

けど、なんで血のり?

「この前、時代劇の撮影で使ったやつが余ってたから持ってきてくれたんだよ」

「ああ、あの大きいリンレンと共演したやつね」

うちのリンレンの親戚に当たる双子のことを思い出した。

うちの双子によく似ているので、私は勝手に大きいリンレンって呼んでいる。

確かあの撮影の時は大きいレンが女装すると言うんで、家族そろって見学に行ったんだっけ。

そのあまりの似合いっぷりに、思わずウチのちびレンの将来が楽しみになったほどだ。

「それにしても、あんた達の死んだフリも手が込んできたわよねぇ」

なんでそこまでするのよ、と訊いたら、傍で一緒に湯船につかっていたミクが「う~ん」と顎に指を当てて考え込んだ。

「おもしろいから?」

「理由になって無い」

組んだ両手にお湯を含ませて、勢いよく噴きかけてやった。

「わ、やったな、お姉ちゃん、この!」

ミクの反撃に、頭からお湯を被った。

「わ~い、私も、私も」

リンもシャワーで参戦。

むむ、無差別攻撃とは卑怯な。

「って、リン、ちゃんと髪洗いなさい」

「ぶわ~!?」

ばしゃばしゃ、ばっしゃーん。

かくて今日も賑やかな入浴を済ませた後。

ミクリンを子供部屋に放り込んでから、着替え終えてリビングに戻ると、隣接するキッチンで旦那が洗い物をしていた。

……背中に包丁突き立てたままで。

さすがに顔や手の血のりは洗い流してあるものの、着ているシャツもいまだに血だらけのままだ。

こっそり背後に回って、包丁の柄を力いっぱい押しこんでやった。

「ぐはぁっ!?」

「あのさ、コレいつまで付けてるの?」

「あ、忘れてた」

旦那は苦笑いすると、そそくさとその場でシャツを脱いだ。

どうやらシャツと包丁は一体化していたらしい。

背中側にパッドの様なものがあって、そこに半分だけ刃の付いた包丁の玩具がくっついていた。

上半身裸になった旦那は、包丁付き血まみれシャツを片手に、良くできてるでしょ、と自慢気に笑った。

「これも、がくぽからの貰ったの?」

私はすぐそばの旦那の身体から意識を逸らしつつ、何気ないそぶりで聞いた。

……旦那の身体なんて今さら見慣れているはずなのに、それでもドキドキしてしまうのは当の本人には絶対に内緒だ。

「いいや、こっちは自作だよ。細部にこだわりすぎて、ちびーずの分まで用意できなかったのが失敗だけどね」

「全員の分を作る気だったの?」

「めーちゃんも欲しかった?」

「遠慮しとくわ」

「そりゃ残念」

一家総出で背中に包丁突き立てて、今度は誰を出迎える気だ。

「アナタもお風呂に入ってきたら? いまレンが入っているわよ」

「もうすぐ洗い物が終わるから、それから入るよ。あ、そうだ。夜食どうする? すぐに準備できるけど」

「…ん~、今日もいらないわ」

断ると旦那は少し驚いた様な顔をして、すぐに真剣な表情で私を見つめた。

「……メイコ」

「…な、なに? ――ひゃ!?」

不意打ちで抱き寄せられ、額と額を合わせられた。

ちょっと、これは反則だ。

「う~ん、やっぱり熱があるな。風邪かな?」

「そ、そんなわけないでしょ。急にこんなことされたら顔熱くなるに決まってるじゃないの!」

「あれ? もしかして照れてる?」

「五月蠅い」

ぐい、と旦那の胸を手で押して身体を離す。

くそ、こいつは自分の今の恰好を分かっているのか。

「う~ん。風邪じゃないとしたら、どうして食欲ないんだろう?」

「夜食抜いたぐらいで病人扱いしないでよ」

「だって、どんなときにも夜食と寝酒は欠かさなかっためーちゃんなのに!?」

割と本気で心配された。

ええい、今までの自分の大食漢酒豪っぷりがうとましい。

(プロフィールはありません)

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