リグレットメッセージ ~数年後の君へ~

投稿日:2008/12/31 00:31:22 | 文字数:2,498文字 | 閲覧数:641 | カテゴリ:小説

ライセンス:

mothy様の「悪ノ」シリーズで、リグレットメッセージを下地に作りました!
リンは少女というよりも、女性の年齢になっています。

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

※この作品は「悪ノ娘」「悪ノ召使」のネタばれでもあります。












朝焼けの太陽が波間を僅かに赤く染め上げている。
静かに寄せては返す波音を聞きながら、大きく伸びをした。
今日はいい一日になりそうだ。
朝の清々しい空気を胸いっぱいに吸って、ゆっくりと吐き出す。
ふと、波打ち際に女性がいるのが見えた。
少年は珍しいことに首を傾げた。
この近くではあまり見かけない女性だったからだ。
フードを目深に被り、素足で波打ち際に立っている。
興味を引かれた少年はゆっくりと近づく。
女性まで、五メートルもない所で、やっと彼女が祈りを捧げていることに気がついた。
少年は声を掛けたい衝動に駆られるが、彼女の雰囲気に圧倒されて、結局何も言えずただ朝焼けの太陽に照らされ、赤く染まる彼女を見つめた。

数分後、彼女は持っていた何かを海に放り投げた。
黙ってみていた少年は女性の表情を見た途端に、海に駆け出した。
彼女は、今にも泣き出しそうな表情をしていた。
きっと大事なものを投げたのだ。
「ちょっと、君……」
女性の慌てた声が耳に聞こえたが、少年は止まらずに走る。
必死に走って、次第に泳いで、彼女が投げたものを捕まえた。
それは、小さな小瓶だった。
そこでやっと、少年は自分の失態に気づいた。
これは、きっと海にながすべきものだったのだ、と。
海に戻そうかと思うが、自分が戻していいのか良くわからない。
困り果て、とりあえず、砂浜へと戻ると、女性が駆けつけた。
「君、大丈夫!?」
「えっと、ハイ。大丈夫です。なんか余計なことを……してしまったようでスミマセン」
「いいのよ。それより早く着替えたほうがいいわ。春とはいえまだ海は寒いから……。うちが近いからいらっしゃい」
女性は有無を言わせずに、少年を家へと案内した。



「はい。ホットミルクよ」
そう言ってテーブルに置かれたコップに、少年は申し訳なさに頭をさげた。
「スミマセン。何から何まで……。僕の単なる勘違いで……」
「いいのよ。……それになんだかちょっと嬉しかったから」
ふふっと笑う女性はとても綺麗に見えて、少年は頬が赤くなっていくのがわかった。
「あ、あの!小瓶は何をいれてたんですか!?」
慌てて、自分の頬の赤みを誤魔化すように聞いた。
「あら、知らないの?昔からの伝説よ。あの海はね、願いを書いた紙を小瓶に入れて流すと、願いが叶うって」
「そ、そうなんですか!?ちっとも知らなくて…。お姉さんの願いの邪魔を……」
「気にしなくていいわ。私の願いは……叶わないものだから」
「そ、そんなのわかんないですよ?」
彼女の顔が悲しい笑みを浮かべたから、少年は思わず言っていた。
「お姉さんの願いは僕がきっと叶えます!」
彼女は目を丸くして、次に切なげに笑った。
しかし、次第に涙が浮かび、顔を伏せた。
「お、お姉さん、僕何か……」
「違うの、昔ね……同じ事を言ってくれた人がいたの」





『レン、ありがとう。レンは魔法使いみたいね、私の願いを何でも叶えてくれる』
彼は小さく笑った。
『叶えましょう、お姫様。僕はリンの願い事だったら何でも叶えてあげたい』
おどけた調子で笑いながら言う彼に、リンはムッとした。
『本当ね!嘘ついたら承知しないんだから!』
『僕はリンにだけは嘘つかないよ』
優しく笑ってリンの頭を撫ぜた。



「もう…ね。いないのよ。私の魔法使いは……。私を守って……」





『リン、この服に着替えて』
彼の真剣な表情に、私は何かを感じていた。
『いやよ!そんなことして、レンはどうするつもり?』
『リン、……リン、君が逃げる間、僕が囮になる。敵の目を君から逸らさなきゃいけないんだ。双子の僕なら、きっとだれも気づかない』
『でも、でも……』
ためらう私に、彼はいつものようににっこりと笑った。
『大丈夫、僕も後で敵を撒いて合流するから。少しの間、離れるだけだよ』
『本当ね。後で絶対合流するのね?』
『本当だよ。言っただろう?僕はリンにだけは嘘をつかないって』
いつものように笑って言った彼は、私に最初で最後の嘘をついた。


3時の鐘の音が街中に響き渡る。
『あら、おやつの時間だわ』
民衆の喝采を叫ぶ声に、私の泣き叫んだ声はかき消された。







「お姉さん、泣かないで」
少年がうずくまるリンの背中を優しくさすった。
昔、ぐずる私に彼がしてくれたのと、同じように……。
「ごめんなさい、ごめんなさい……。私、何も知らなかっ……」
知らない事が、罪なのだと、思い知ったのは彼を失った後だった。
「レンはいつだって私を一番に考えてくれたのに……、私、私はっ……」
彼のために、何一つ出来なかった。
「我が侭しか言わなかったっ!レンの為に、何一つ……っ」
「大丈夫だよ、お姉さん。もしもそれが僕なら、きっと後悔はしてないから。今、お姉さんが泣いていることが、きっと一番つらい筈だよ」
『リン、泣かないで。大丈夫、僕がきっと何とかしてあげるから』
一瞬、レンの声が聞こえたような気がして、リンは声をあげて泣いた。







「ごめんなさい、何か恥ずかしいところを見せてしまって……」
戸の前でリンは少年に頭を下げた。
リンが泣いていた間、少年はずっと慰めてくれた。
その所為で、太陽は既に真上にきていた。
「ううん、気にしなくていいよ!きっと巡りあわせだよ」
「巡り…あわせ?」
「そう!お姉さんの大切な人……レンっていうんでしょう?」
「ええ」
少年はにっこりと笑った。
「僕の名前も、レンっていうんだよ。すごい偶然だよね。きっと……お姉さんの願いが届いたんだよ。ずっと泣いてるお姉さんが心配で、同じ名前の僕をお姉さんに引き合わせたんだよ。ね?」
屈託なく笑う彼に、昔のレンが重なるような気がした。
「そう…かもしれないわね。レンは優しいから、私が心配になっちゃったのかも、しれないわね」



『ね、リン、幸せになって。長く生きて、そしてまた生まれ変わったら…また一緒に遊ぼう』



(プロフィールはありません)

作品へのコメント0

ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!

新規登録|ログイン

もっと見る

▲TOP