玩具屋カイくんの販売日誌(186) ミニ・イベント in イベント?
投稿日:2013/03/03 16:55:49 | 文字数:1,597文字 | 閲覧数:332 | カテゴリ:小説
勝手に会場内で行事をしてはいけませんね。でも、困った奴って誰でしょうか。
「はいはい、並んでね。あ、通路にはみ出しちゃダメよ」
会場のブースには、男の子たちの長い列が出来ている。
雑誌をメガホンのように丸めて、それを仕切っているのは、霧雨さんだ。
雑貨とキャラクター雑貨のショー「雑貨&コミックフェア」の会場。
その一角で、時ならぬ“ミニミニ撮影会”が起こっていた。
ちょっと迷惑そうに、でも頬を上気させて立つ少女。それはリンちゃんだった。
男の子たちが、おとなしく並んで順番に、彼女をデジカメや携帯で撮影している。
撮り終わって、握手を求める子もいる。
リンちゃんの片手には、おしゃべり人形の「はっちゅーね」が抱かれていた。
ブースから少し離れたところで、それを呆れ顔で眺めているのは、テトさんだ。
さっき、「会場で撮影会みたいなものをやっている」と聞いて、ふと心配になったのだ。
そこで、自分のブースをコヨミ君に任せて、やってきてみると…。
案の定、それは霧雨さんと駿河ちゃんのブースだったのだ。
「はいはいはい、通路に出ないでね。係りの人に怒られちゃうからね。並んでくださいね」
てきぱきと仕切る霧雨さんの姿を、テトさんは思わず口を開いて眺めてしまった。
●不思議なお店、上海屋で…
その頃。
ゆくりさんのお店「ゆっくり」から、一台のバイクがゆっくりと走り出した。
運転は、アルバイトのレン君。さきほどまでお店にいた、りりィさんを後ろに乗せている。
「ゴメンなさいね、乗っけてもらって」
りりィさんは後ろから、レン君に言う。
「いいえ、いいんですよ。ちょうど、お宅のお店に届ける品物もありますから」
レン君はハンドルを握りながら、言った。
やがて、2人はりりィさんのお店、「星を売る店・上海屋」に着いた。
ちょっと雑然とした、不思議なお店。
異国の不思議な雑貨や、アンティーク、そして最近の色とりどりの雑貨。
いつ来ても、どこか“違う空間”に迷い込んでしまうような…「上海屋」はちょっと怖いような、でも楽しいお店だ。
「あ、おかえりなさーい」
2人が店のドアを開けて入ると、店の奥のカウンターから声がした。この店のアルバイトの、ルコ坊だ。
りりィさんが不在の時は、ルコ坊とフランドールちゃんが、交代でアルバイトの店番をしている。
いつもは、フランドールちゃんの時が多いが、きょうはルコ坊がいた。
レン君は、バイクの後ろに縛ってきた荷物から、サンプルの商品を出して、カウンターに置く。
「これ、お願いします」
「どうも有難う。ちょっと、一息入れていかない?ルコちゃん、コーヒー入れてあげてくれる?」
りりィさんはそう言った。
「はぁい」
ルコ坊が、店の奥に入っていった。
●変わった奴がいるヨ…
レン君は、「お気を使わずに」と断ろうと思ったが、ルコ坊がコーヒーを入れると聞いて…
「じゃ、ちょっとご馳走になります」
と頭をかいた。
すごく美味しいコーヒーだと、界隈では有名なのだ。
店内はいろんなものが置かれてはいるが、それなりに広い。
カウンターの隅にあるスツール椅子に座ると、不思議にゆったりとした気分になる。
ちょっと薄暗いのが、また、ここち良い。どこか、異国の部屋にいるようだ。
「もう、ゆくりさんのところのバイト、すっかり板についたみたいね」
微笑みながら、カウンターの奥に入った、りりィさんが言う。
「ええ、なんとか。でも、雑貨って楽しいですね。仕事は大変だけど」
レン君は笑って答えた。
すると、彼のポケットのスマホが着信音を上げる。
「あれ?」
彼がメールを開くと、それは妹のリンちゃんからだった。
『レン、まいったよ。S・O・Sダヨー…』
そう始まっているメールを読み、レン君は目を見開いた。
「なになに?撮影会させられて、それで、…変わった奴がいて困ってる、って??」(・_・;)
作品へのコメント2
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ご意見・感想
こんにちは、ご無沙汰してました。ついったーの方、お読みいただき、ありがとうございます。一段落しましたので、バックナンバーから拝読させて頂きました。
今回は、リンちゃんの撮影会から始まって、1つのイベントが起こる前半ですね。ビックリしたのが、レン君がバイク(おそらく原付だと思いますが)を運転していたことです。実は、頭の中で、レン君=公式設定の14歳…だとバイトできないからその付近だと思っていたので、凄く新鮮でした。バイクを駆るレン君、うん、これは格好いい!
でもって、なにやら最後に、”イベント”が発生したようですね。さてはて、”変わった奴”とはどういう方なのでしょう? これから続きを拝読させて頂きます!
P.S ビブリアの漫画の件ですが、絵柄と構図が少し違うので、”カラクリ”以外を、別作品として読もうと思います。人によって、あの二人の絵柄設定がちょっと違うのも面白いなぁと思いました。勿論、ドラマの役者さんもかなり違うんだなぁとも思いました。ではでは。2013/03/14 15:03:37 From enarin
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メッセージのお返し
enarinさん、メッセージありがとうございます!
>ビックリしたのが、レン君がバイク(おそらく原付だと思いますが)を運転していたことです。
たしかに、バイク姿のレンは見ませんね。
この話を書き始めたのは約2年くらい前で、私の中では、その時から時と共に登場人物は年を重ねているんですヨ。
ちょうど、「あずまんが大王」のようにです。
なので、レン君は今、高校生のはずなんです。
サザエさんのように、永久に同じ、というのもひとつの手ですし、同じあずまんがの作者の「よつばと!」のように、時の流れが「極めて遅い」というアイデアもありますよね。
どれもそれぞれ、面白い設定になりますネ。
>P.S ビブリアの漫画の件ですが、絵柄と構図が少し違うので、”カラクリ”以外を、別作品として読もうと思います。人によって、あの二人の絵柄設定がちょっと違うのも面白いなぁと思いました。勿論、ドラマの役者さんもかなり違うんだなぁとも思いました。ではでは。
ですね、微妙に違うのが、また面白いですね。
買われたのは「ナカノ」さんの方、それとも交田稜さん... 全く違う作風で、違う話のようですよね。
ちょっと紛らわしいですよネ!買う時は。
やっと春めいてきましたが、ご健康に留意してください。
それでは、また。2013/03/16 02:05:10
tamaonion
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ご意見・感想
tamaonionさん、今晩は!
遅くなりましたが、前回からの続きを拝読させていただきました。
リンちゃん、会場の撮影会で人気みたいですね。迷惑そうにしつつも、取り巻く人たちへのサービス精神を忘れない。さすがです!
実際のコミケでも売り買いや交流だけではなく、コスプレイヤーさんの存在や撮影会も欠かせないものになってますよね。
ところが、ここで困った人がいるとは。コミケという場に限りませんが、マナー・エチケットの守れない人はダメですよね。誰かを不快な思いにさせないようにするための知識配慮は、一番大切ですし。
より悪質なものになる前に、解決するといいのですが…
ブクマさせていただきました!
余談ですが、ルコ坊のコーヒーは界隈で評判みたいですね。自分はコーヒーが好きなので、ちょっと味が気になるところです(笑)
次回も楽しみに待ってます!2013/03/06 22:25:59 From オレアリア
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メッセージのお返し
オセロットさん、コメントありがとうございます!
>実際のコミケでも売り買いや交流だけではなく、コスプレイヤーさんの存在や撮影会も欠かせないものになってますよね
そうですね!でも近頃はアマなのか半プロなのか、よくわからないケースもありますね。会場ですれ違うと、一瞬日常を忘れるくらいの「インパクト」はありますネ。
>誰かを不快な思いにさせないようにするための知識配慮は、一番大切ですし。
そう、それを守ってこそ趣味が楽しめますよね。
意外と、ほんとにコミケやサブカルが好きな人は、マナーを知ってる人が多いようですネ。半分冷やかしで来る人とか、業者に、配慮にかける人がいるみたいですよ。経験上、そんなことを思います。
>ブクマさせていただきました!
>余談ですが、ルコ坊のコーヒーは界隈で評判みたいですね。自分はコーヒーが好きなので、ちょっと味が気になるところです(笑)
ありがとうございます!ルコのコーヒーは公式設定で「納豆コーヒー」が得意、というのを発展させてます(笑)。納豆コーヒー…については、詳しくないですけれど。
コーヒーはリラックスできていいですね。私も好きで1日1回は飲みますネ。
またぜひ、感想を聞かせてくださいね
それではまた。
2013/03/09 23:46:36
tamaonion
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玩具屋カイくんの販売日誌(192) リンちゃん+“はっちゅーね”の行方は?
霧雨さんのブースに向かって、ルカさんがゆっくりと歩いてきた。
「ルカさん!」
「たこるかちゃん、おつかれサマ」
彼女は、たこるかちゃんに向かって微笑んだ。
「あら、れおんさん。どうしたの?」
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玩具屋カイくんの販売日誌(189) リンちゃん攻防戦、開始!
“はっちゅーね”の人形を持った、リンちゃんに、どこかアヤシイおじさんは、話しかけつづけている。
「アナタもかわいいし、人形もカワイイねー。」
リンちゃんはちょっと困って、でも強気に応戦する。
「でも、おじさん。写真ばかり撮ってるけど、私が目的?人形が目的?」
おじさんは、ニコッと笑って答えた。
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玩具屋カイくんの販売日誌(194) 新商品で勝負だ!
ブースの前で、コヨミ君と、れおんさんは、にらみあって立っていた。
ザワザワ、と騒ぎ出した男の子たち。
それを見て、テトさんは思わず、コヨミ君に声をかけた。
「ねぇ、どうしたの? もめ事はよくないですよ」
フッと我に返ったように、コヨミ君は彼女の方を見た。
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玩具屋カイくんの販売日誌(179) レイムさんのオカルト理論 (その1)
お店の売り場には、コスメや、美容関連のアイテムが、いろいろ並んでいる。
それを、レイムさんは目を丸くして眺めている。
「ワタシ、こういうの詳しくないんだわ~」
そうつぶやく彼女に、後ろを歩いているぱみゅちゃんは、諭す様に言った。
「そうそう。あんたはちょっと化粧っ気が無さすぎるからネ。少しは知っといたほうがイイわよ」
玩具屋カイくんの販売日誌(179) レイムさんのオカルト理論 (その1)
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玩具屋カイくんの販売日誌(187) 困ったヤツの目的は?
「はーい。コーヒー、入りましたよ」
ルコ坊がカップに入ったコーヒーを、レン君たちに運んできた。
ちょっと不思議な雰囲気の、りりィさんのお店「星を売る店・上海屋」
りりィさんを送ってきたレン君は、美味しそうにそれを飲んだ。
「いつも、美味しいね。ルコちゃんの淹れるのって」
玩具屋カイくんの販売日誌(187) 困ったヤツの目的は?
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玩具屋カイくんの販売日誌(182) コミックフェアで、ひと騒動
ゆくりさんのお店で、バイトのレン君が、青くなっていた、その頃。
東京・有明にある東京ビッグサイトで、人気のイベント「雑貨&コミック・フェア」が開かれていた。
企業のブースをはじめ、コミックやフィギュアを作る有志や同人の人たちが、それぞれにブースを出展している。
会場のホールの一角に、移動式自動車のカフェ「ドナドナ号」が乗り入れていた。
車内のキッチンでは、たこるかちゃんとツナちゃんが、メニューの料理を作り注文に対応して、切り盛りしている。
玩具屋カイくんの販売日誌(182) コミックフェアで、ひと騒動
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玩具屋カイくんの販売日誌(180) はっちゅーねの謎を解け!(レイムさんのオカルト理論?・その2)
ヘルシー&美容雑貨のお店、「アディエマス」。
ふらりと遊びに来た2人組、ぱみゅちゃんとレイムさん。
お店に仕事で来ていたルカさんと、たこるかちゃんと、話に花が咲いている。
4人が今、見つめているのは、売り場の棚の上にマスコットとして置かれている、はっちゅーね人形だ。
人の問いかけに答えたり、なんだか不思議な反応をする人形だと、巷でちょっと話題になっている。
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玩具屋カイくんの販売日誌(193) リンちゃんキャラの取りっ子に!?
霧雨さんのブースの前で、ルカさんとテトさんは久々に声を交わした。
「元気?ルカちゃんのとこの商品、相変わらず、いい調子ね」
「テトのとこの、テト・ドールも可愛いよね」
仲良く話す2人。
じっさいには、テトさんの方がかなり年配なのだが、タメ口を聞く間柄だ。
玩具屋カイくんの販売日誌(193) リンちゃんキャラの取りっ子に!?
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玩具屋カイくんの販売日誌(185) 楽しいナチュラルグッズ、スタート!
「雑貨&コミックフェア」の会場は、ますます、お客さんが増えてきた。
テトさんとコヨミ君がいるブースにも、先ほどからたくさん来場者が詰めかけている。
テト・ドールをはじめ、陳列している商品の説明で、2人とも大忙しだ。
ひとしきり、お客の流れがとだえたところで、テトさんはフーッと一息をついた。
「バイヤーさんの名刺、ずいぶん溜まっちゃったね」
玩具屋カイくんの販売日誌(185) 楽しいナチュラルグッズ、スタート!
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玩具屋カイくんの販売日誌(184) テト・ドール ナチュラル・シリーズ!
「あ、おかえりなさい」
テトさんは、ブースの前で言った。
「ええ、どうも」
コヨミ君は軽く頭を下げて、笑いながら答えた。
「いろいろ、面白いブースが出ていたよ」
玩具屋カイくんの販売日誌(184) テト・ドール ナチュラル・シリーズ!
雑貨の仕事をしてます。
キャラクター雑貨がらみで、キャラクターも好きです。
音楽も好きですが、好きな曲の初音ミクバージョンを聴いて感心!
ボーカロイドを聴くようになりました。
機会があれば、いろいろ投稿したいと思ってます。
宜しくお願いします。
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