【カイメイ】 逆光の海

投稿日:2014/02/15 22:44:30 | 文字数:3,824文字 | 閲覧数:720 | カテゴリ:小説 | 全5バージョン

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*前のバージョンで進みます。全5Pです*

どうも自ら報われない方向にダイブする傾向のある面倒くさいうちのV3くんを幸せにする計画です。

この子を支えるのはV1の2人で、この子を幸せにするのはやっぱりV3メイコさんであってほしいなぁ…という個人的な我儘であちこちにちまちまと書き溜めていたものをまとめました。ちょっと時系列や語り口などバラバラで読みにくいかもしれないです…が愛は、愛だけはぎゅうぎゅうに詰まってます。

※V1カイメイ前提のV3カイト×V1メイコ展開があります。苦手な方はお気を付けください。
※以前のいくつかのV3くんのお話とは、パラレル世界で繋がっている、みたいな、なんとなくそういうふわっとした感じで受け取って頂ければと…

この子たちの出逢いの最初の一言は、絶対にこれにすると、ずっと前から決めてました。
これははじまりの終わりのお話だから。V3くんお誕生日おめでとう。2人とも、幸せになぁれ!

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TEXT
 

言葉を編み繋げるような美しい旋律がふたつ、折り重なって虹のように空間に放たれていく。
メイコとカイトはスタジオのソファに並んで座り、時折視線を合わせては微笑みながら、伸びやかな歌声を響かせていた。

初代として生まれたMEIKOと、次世代として生み出されたKAITOである。
エンジンは違う。だがお互いに遜色は感じない。相手にあって自分にない長所を、彼らはよく理解し合っていた。相手を尊重し、足りないところを埋め、自分たちが共に歌うことに必ず意味はあるのだと、彼らは誰よりも知っていた。

楽譜を膝に置き、メイコは満足げな息を吐いた。
「…はぁー。すてき。いい感じねカイトくん」
「うん。メイコさんの声もすごく良かったよ」
「ホント?カイトくんがベースで引っ張ってくれたからかなぁ。すっごく歌いやすかった」
ありがとう、と笑顔を向けられ、カイトも笑い返す。

スペックは彼が上。でも生まれた順を考えれば彼女が上。そして彼女には、彼にそっくりな恋人がいる。
だから、混乱を避けるために、わかりやすく「くん」と「さん」で呼び合っている。

場所はカイトの持つ自宅兼スタジオだ。こじんまりとした録音ブースと、そのガラス越しにミキサーと2、3人が腰掛けられるソファが置いてある。楽譜を渡されてまだ間もなく、マイクは通さずに素声で練習しているところだった。

「どう?お仕事」
2人分のインスタントコーヒーを紙コップに注ぎながら背中越し、メイコは尋ねた。
ベージュのカーディガンを羽織ったその背中にカイトはふと目を上げて、穏やかに返す。
「…うん。色々やらせてもらってるよ」
「楽しい?」
「うん」
よかった、と言いながら、メイコはカイトの隣に戻ってコーヒーを差し出した。
「カイトくんが楽しいのなら、私はそれが一番嬉しいわ」
優しく微笑むその顔に、カイトは曖昧な笑みを返した。
ふ、と俯き、手の中の紙コップを握る。黒く濁る液体に、自分の無表情が映っている。
「―――でも」
「…でも?」
「寂しいよ」
陰を含んだ青い目に圧され、メイコは咄嗟に息を詰まらせた。
「孤独だと感じてしまう」
「……カイトくん」
メイコの目に同情と困惑が浮かぶ。
「やっぱりこの道は、独りだ」
「……」
「メイコさんもそうだった?」
答えを知っている。だから敢えてカイトはそう尋ねる。メイコに逃げ場を与えないために。戸惑った瞳が逸らされ、メイコは誤魔化すようにコーヒーを飲んで、そうね、と呟き、
「…でも」
何かを否定しかけて口を噤んだ。カイトはそれを逃さず、肩が触れ合うほどの近さで「でも?」とメイコを覗き込んだ。
「でも、オレは独りじゃない?」
メイコはまた、言いかけた言葉を飲み込んだ。
カイトの目が細められる。冷めた心地でメイコを見据えるがそれはほんの一瞬で、すぐに眉を悲しげに八の字にして見せた。
「一人ではないけど、でも、独りだよ」
「…どういう意味?」
「本当の孤独ってね、周りに人がいてこそわかるんだ」
手をぎゅっと握られ、メイコはハッとした。
「独りになるといつも不安で押し潰されそうになる」
「カイトくん」
「寂しいよ、メイコさん」
「……」
「寂しいんだ」
カイトはそのままぎゅっとメイコに抱きついた。頭一つ小さなメイコに覆いかぶさるように。メイコはカイトの薄いマフラーに顔をうずめて、零れないようにそっとカップをテーブルに置き、ぎごちなくカイトの背を撫でた。
メイコは何も言わなかった。言おうとしたが、結局やめた。今何を言っても、きっとよくないことになると、メイコは感じ取っていた。
「寂しい」、と。それだけで終わるなら、いくらでも抱きしめ返してあげるけれど。
きっと彼は。
「…メイコさん」
「……」
「ねぇ」
焦れるようにカイトが名を呼ぶ。どうしてもメイコには返事ができなかった。ダメだ、ダメだ。だってすでにもう、自分は半分以上彼に流されてる。
「―――っ」
メイコは息をのんで硬直した。カイトの口唇が耳たぶに触れた。
「カイトくん」
腕の中で必死に顔を背けるが、カイトはそれをしつこく追って何度も肌のそこかしこに口付けた。耳から頭、おでこ、そして頬を挟んで持ち上げ、口唇が降りてくる。
彼の胸を押し返し、メイコはそれを寸前で押し留めた。
「カイトく」
「メイコさんお願い」
今にも泣きそうなのはどちらだ。カイトの表情は打ち捨てられた子犬のように不安げで、メイコは困惑しつつもつつそれから目が離せない。
やめて、と思う。この顔で、そんな風に。
「お願い、オレを独りにしないで」
「…っし、ない。しないわ。私はいつだって、本当にあなたのこと」
「じゃあ帰らないで」
驚きはなく、メイコはわかっていたように困りきった顔で俯いた。
「…ダメよ」
「どうして」
「私、帰らないと」
「アイツのところに?」
今度こそビクリとわかりやすく反応したメイコに、カイトの深青の瞳が冷酷な色を伴い細められる。
絡ませられた指はまるで拘束具のようにメイコを縛りつけ、声も出せなくなった。
卑怯だ。メイコは心の中だけで男をなじる。
でも、わかっていたくせに、回避できなかった自分が結局は悪い。
徹底的に拒めないのは隙があるからだ。
私はこの人を見捨てられない。
そのことを、何よりも彼自身がよく知っているのだから。


「―――メイコさん」
情感を呼び覚ます、低い、哀切な声。
メイコの肌が粟立つ。似ているのに、違うから、こそ。
『あの人ではない』のだと、身体が拒否反応を起こして、その背徳感に、目眩がする。
「…寂しいんだ」
「…ダメ」
「寂しいんだ、メイコさん」
「ダメよカイトくん…」
言葉とは裏腹に、泥の海に沈んでいく彼女を、カイトは冷静に見やる。

大義名分なら欲しいだけ与えてあげるよ。

「オレには貴女しかいないんだ」
「……ッ」

ほらね、こうやって、これが欲しかったんでしょ?
だからいくらでも言い訳して、建前だけで抵抗して見せてよ。
不安げに縋り付く幼い子供のような表情で。可哀想な自分になりきってあげるから。

「『オレ』を『アイツ』だと思っていいから」
反射的にはキツく目を瞑ったメイコに、カイトはほくそ笑んだ。
耳を塞ぐこともできず、怯えるように震え、何かに耐える小さな身体。
やめて。それは違う。それだけは違う。
己自身に言い聞かす声が聞こえるようだ。
どっちでもいいんだ、そんなこと。
ただ今この瞬間だけ貴女がオレのものになってくれればそれだけで。

メイコは塞いだ瞼を開けなかった。開いたそこに見たくないものがあるとわかっているかのように。
落ちるようにカイト、と呟いた時、メイコの脳裏にあったのはどちらの『彼』であったのか。
カイトは、獲物を生きたまま咥えて殺さない猫のような欲深さで、メイコの耳の裡に囁きかけた。



「―――慰めて」



ソファに押し付けられた女の影と、捕えて押し付けた男の影が、重なった。



                      *



久々に夕飯前に帰宅できたミクがリビングでくつろいでいるところに、その電話はかかってきた。

「もしもしおねえちゃん!」
大好きな姉からのコンタクトだというだけでテンションが上がる。メイコは今日早めに家を出たからきっと帰ってくるのも早いはずだ。今夜は久々に寝る前にお話ししていっぱい甘えるんだ、絶対に絶対に!
『―――――ミク』
勢いよく携帯にかぶりついたミクは、その声にふと我に返った心地になった。
何度か、まばたきを繰り返す。なんだろう、私は今何に気を取られたんだろう。
姉の、穏やかなはずのその声に、何か…違和感を覚えて。
「…おねえちゃん、…どうしたの?」
だからミクも、どこか微妙な笑みで尋ね返してしまう。
『ミク、今、ひとり?』
「うん」
『…あのね、今日、帰るの、予定より少し遅くなっちゃいそうなの』
「お仕事伸びたの?」
『そうなの、だから、ごめんね、ご飯の支度、なんにもしてきてないんだけど』
「大丈夫だよ、じゃあ今日はレンくんとミクで晩ご飯作るね!おねえちゃん帰ってきたらおいしいご飯が待ってるから楽しみにしてて!」
『ありがとう』
クス、と笑った声はようやくいつもの姉の声で、ミクは少しホッとした。
「おにいちゃんにも言っとくね」
『…あ、まって、カイト、は』
そこで、ふと言葉が途切れた。ひゅっと一瞬、息を飲み込んだような音。
あれ?
ボーカロイドの耳が、ほんの些細な異変を掠め、捉える。
「おねえちゃん?」
『カイトには私から言うから言わないで』
「おねえちゃ…」
どこか慌てたように言い切ったと同時、さよならを告げる間もなく通話は切られていた。
ミクはそっと耳から携帯を離し、それを見つめる。
なんだろう。メイコらしくないとか、そういう表面的な違和感じゃなくて。
なんだろう、この、漠然とした―――
「ミク」
背後からかけられた穏やかなテノールに緑のツインテールがぶわっと跳ねた。振り返ると、いつの間にかカイトが扉のそばに立ち、きょとんとしている。
「今の、めーちゃん?」
ぎく、と強張った妹の顔に、カイトは首を傾げた。

MEIKOさんを筆頭に、年長組、大人組、ボーカロイドが大好きです。

液晶の向こうに行くことは諦めたので悔しいけどめーちゃんはカイトさんに任せることにしました。幸せになれ。幸せになれ。

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