壁が競り下がり、それが何かの入口を指し示しているのだということを、ゆかりさんたちが気付いたのはその壁が完全に地面へ溶け込んでからだった。
「……まじかー」
「ほれみたことかゆかりん」
マキはドヤァ……とでも効果音が付くかのような微笑みを二人に見せる。キヨテルはちなみに、愕然としていた。
「なんかいったか」
ブイーンとチェーンソーの音が響く。
「なんも言ってない! 何も言ってないよゆかりん! だからその手を離して!」
「Why? どういうつもり?」
「ネタじゃないから! ネタじゃないってば!」
「ほんとお前ら仲いいな……」
「「仲良くないから!」」
「あーはいはい、分かりましたってば」
ゆかりさんはため息をついて、この現状をもう一度見る。
果てさて、どうすればよろしいものか――ゆかりさんが呟くと、奥に何かあかりが見えるのが解った。
「明かりが見える……。これは行ったほうがいいかもしれないね?」
「ゆかりん暗闇こわーい」
「そうかいそうかい」
そう言ってゆかりさんはマキの首根っこを掴んで、思い切り背中を蹴り上げた。
刹那、マキの身体がふわりと浮いて、暗闇の通路を転がっていった。
「なんでええええええええええええええええええ!?」
「蹴りたい背中だったから」
「そういう問題かよ……」
キヨテルが冷静に突っ込むと、ずいずいとゆかりさんが通路の中へ入っていった。
「ちょ、もう行っちゃうの」
「だって行かないと話にならないし」
「そうだけど……!」
「よーし、どんなことがあるのかなー!?」
ゆかりさん、完全に楽しんでいる。
そんなゆかりさんは笑いながら、通路を歩いていた。
……この女、悪魔である。
≪ゆかりさんの非日常な売店日誌 7≫
「……何だかこの地下にずっといる感じがするのは気のせい? 大体一年くらい居る気がするのだけれど」
「そんなメタい発言はやめてくれ……頭が痛くなるから」
キヨテルの言葉を聞いてもなお、ゆかりさんはずっとそんな言葉ばかり言っていた。喜んでいるに違いなかった。
「にしてもマキはどこまで転がっていたのかな? こんなに深いとなると帰るのがあまりにも大変のような気がするけれど」
ゆかりさんはそう言ってニコニコとチェーンソーを振り回している。あまりにも恐ろしいことである。
「チェーンソーを振り回すのはいかがなものかな、と思うのだけれど」
キヨテルはそう言ってチェーンソーを止めようとする。
しかしゆかりさんはそれに聞く耳を持たない。
「おい、ゆかりさん。これ以上話を聞かないと流石に僕だって怒るぞ」
――キヨテルが怒りを顕にした、そんな時だった。
ゆかりさんが唐突に立ち止まったのだ。あまりにも早く立ち止まったために、頭が切り替えられなかったキヨテルは思わず彼女にぶつかってしまう。
「いてて……どうしたんだよ、急に――」
――立ち止まったりして、と続いて言う言葉を、キヨテルはゆかりさんの指で遮られた。
「静かに……声が聞こえる」
それを聞いて、キヨテルは耳を欹てる。
すると――確かに彼女の言うとおり、声が聞こえてきた。はじめは小さいもので、あまり聞き取れなかったが、徐々にそれが聞き取れてきた。
つづく
ゆかりさんの非日常な売店日誌 7
【生徒会長行方不明事件編・5】
お久しぶりです。
ぼちぼち書いていきたいと思います。
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たとえば・・
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イド
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ファントムP
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