欠陥品の手で触れ合って・第二楽章 10 『Zoologia』

投稿日:2009/06/27 00:08:13 | 文字数:2,441文字 | 閲覧数:205 | カテゴリ:小説

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欠陥品の手で触れ合って・第二楽章10話、『Zoologia(ゾオロジーア)』をお送りいたしました。
副題は、『動物学』です。
ドSの御大、活躍気味です。
そろそろ、帯人・凛歌組にも活躍の日の目が・・・(来るのか?)

それでは、ここまで読んで下さりありがとうございました。
次回も、お付き合いいただけると幸いです。

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TEXT
 

「うんうん、いい具合に動揺してくれるね。では、もうひとつ基盤を外してあげよう。君は『東の黒き魔女』・・・わたしの愛娘の、『使い魔』だったわけだが・・・・・・。」

黒緑の深淵が一瞬そらされ、アカイトを見た。

「『アカイト』、『ここに来て』、『跪きなさい』。」

不思議な響きの声音で、命じる。
踏みつけられていた太腿から重量が消える。
黒コートの膝下に跪く、アカイトの姿がそこにあった。
黒い革靴が、赤い頭髪に乗せられる。
そのまま、その足が体重をかけてアカイトの頭を踏みにじった。

「一度元の名を剥ぎ取られ『真名』を与えられた『使い魔』は、こうやって『真名』を『力ある声』で呼ばれれば、どんなに不本意な命令にも従う。ほら、ご覧?この嫌そうな顔。その命令は強制。意志の力で跳ね除けることの出来ない、束縛。」

くすくすくす、と忍び笑う声が聞こえる。

「さて、本題に入ろうか『使い魔』君・・・『帯人』君。君は、前の世でも今の世でも、同じ名前をわたしの『愛娘』から与えられた。元々名を持たない存在ならば、初めて与えられたその名が『真名』となる。『真名』による拘束は、なにもこういう物理行動のみにとらわれない。精神面にも影響を及ぼすのだよ。」

再び、黒緑の深淵が僕を覗き込む。

「君がわたしの『愛娘』に向ける想いは、本当に君自身に由来するものかな?」

ちょっと聞いただけならば耳障りよく聞こえるだろう声が、悪魔の囁きのように耳に触れる。

「わたしの『愛娘』は、中学に通う3年間を魔術の鍛錬に費やした、魔術師だ。・・・未熟ではあるけれどね。当然、その彼女に『真名』を与えられた君は、知らず知らず彼女に拘束されることになる。・・・・・・君は本当にあの子を愛している?その想いは本当に君のもの?気付かないうちにあの子の精神支配を受けてはいないかな?」

「ちが・・・ちがう、違う!そんなのじゃない!精神支配なんて、受けてない!」

「本当に?」

ぎゅっ、と無意識に、掌の中の指輪を握りこむ。
僕の名前が入った、凛歌の指輪。
掌の中の、銀の感触にすがる。
それを嘲笑うように、黒緑の深淵は続ける。

「本当に?本当に?本当に?本当に?本当に?精神支配は厄介だ。時には、受けている本人すら気付かない事だってある。『真名』で存在の基底を縛られている者は、特に。あの子は、寂しがり屋だろう?ほら、あの子の声が聞こえるようじゃあないか?『寂しい。傍にいて。ここにいて。離れないで。私に依存していて。愛してよ。愛して。愛して。愛して愛して愛して愛して愛して・・・』。まるで、我が子を失うまいとする狂った母親。もしくは、子供そのものかな?君は、どっちだと思う?」

黒コートの男が、ようやくアカイトの頭から足をどける。
アカイトがそれを、険しい顔で睨み付けていた。

「その子は、『捨て置きなさい』『アカイト』。どうせ何もできはしない。・・・・・・礼を言おう。君のおかげで、娘がいまだ魔力を保ったままであることを確認できたし、朧にだが魔眼の発現も見ることが出来た。」

その言葉を最後に、2人の姿が忽然と視界から失せた。


空間転移で隠れ家に戻る。
悟道が振り向き一言。

「お馬鹿。」

「んだと、てめぇ!」

思わず地で言い返してから、口を噤む。

「お馬鹿、と言ったのだよ。勝手にあの『使い魔』君に手を出して。万一死なせていたら、また余計な手間を取るところだっただろう。それに、前に言ったはずだよ?わたしの『愛娘』は『狼』だと。『狼』は獰猛で孤高を気取る癖に、情が深い。一度懐に入れた相手は、何があろうと護り抜くのが『狼』の本質だ。あの『使い魔』君を鞭打ったことを『愛娘』の耳に入れてみろ。今度は、手に歯型がつくくらいじゃ済まないだろうね。間違いなく、手指の2、3本は持っていかれる。獰猛極まりない『狼(フェンリル)』の首にようやっとグレイプニルを巻いたというのに、さらに凶暴にしてどうするつもりなんだい?」

その黒緑は、刺々しい視線を向けている。
もっと具体的に言ってしまえば、殺気立っている。

「まったく、同じ『使い魔』を使役するなら、賢いあの子のほうが良かったよ。なかなか素直そうじゃないか?・・・・・・いいかい?あの2人は、『対』だ。『魔女』はその小賢しさで『使い魔』の生存の基盤を庇護し生存に必要な知識も与える、かわりに『使い魔』は、『魔女』の脆弱な精神を護っている。性別も、外見と精神のバランスも、衝動と理性のバランスも真逆で、だからこそ己の理想とする『鏡の向こう側』を愛し、幸運にもその手に抱きとめることのできた・・・『対』としての完成品。それが、あの2人だ。割って入るなら、馬鹿正直に敵を亡き者にするよりも、搦め手でも考えた方が建設的だと思うよ?」

何も、言えない。
無言のまま階段を降り、扉を開ける。
悟道の言うところの『愛娘』・・・拘束服と手錠で拘束された凛歌が、俯いていた。
ドアの開く微かな音に、びくりと肩を跳ねさせるのが、唯一の楽しみだった。

「よぉ凛歌ちゃん、元気?」

声をかけるだけで、肩が跳ねる。
愉しい。
髪を撫でると抵抗はなく、身体を硬直させる。
愉しい。

「あーあ、だいぶ髪の毛、触り心地悪くなっちまったな。もう少ししたら洗ってやるからな。」

髪の毛をかき上げ、穴を開けたばかりのピアスに触れる。
ひっ、と小さな声を上げた。
愉しい。

「もう少ししたら・・・あの『片目』、始末したら。」

その、刹那、だった。
悪寒。
絶対零度の殺気。
手を離し、距離をとる。
がちん、と歯の鳴る音。
ぎろりとこちらを睨みつける夜色。
ふうううっ、と獣が威嚇するような吐息。
白い歯の覗く口元から、ちっ、と舌打ちが零れた。
迂闊だった。
悟道の言うとおり、手指を喰い千切られるところであった。

「お馬鹿。」

背後から、もう一度、悟道が言った。

日々妄想を文章にしています。

妄想・・・いえ、想像たくましいです。

甘やかされるよりは甘やかしたい人(だと自分では思っている)



(追記)
約一年ぶりに活動再会という名の復活を果たしました。
以前のような更新ペースは守れないかもしれませんが、見捨てないで下さると嬉しいです。
無言で消えて、申し訳ありませんでした。

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作品へのコメント1

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    まゆか様>
    コメント、ありがとうございます。
    お気に召していただけたようで、幸いです。
    私にはもったいないお言葉を、ありがとうございます。
    これからも頑張って続けていくので、また読んで下さると幸いです。
    ついでに、またコメントを頂ければアリスがパソの前で狂喜乱舞・・・(←図々しくてすいません)
    それでは、乱文失礼いたしました。

    2009/06/27 23:41:13 From  アリス・ブラウ

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