【カイメイ】 大人の仲直り

投稿日:2011/12/15 01:02:01 | 文字数:4,514文字 | 閲覧数:1,502 | カテゴリ:小説

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前作『カイトさんの男の余裕』の続きです。読まなくても大丈夫ですがw
強がっていても結局お互いのことで頭がいっぱいな人たちのお話です。
年長組×ホテル、ってなんか…すごく…エロいです…ハァハァ
とか思ってたらいつの間にか書き上がってました。年長組…恐ろしい子!

前作とは別の意味で男の余裕を主張してきたカイトさん、まったくもってムカつきます。
それでもうちのメイコさんは「カイトの本気」には絶対的に逆らえないようにできているので…
兄さんわかっててやりたい放題ひゃっはー。クッソてっめえええ
お互いベタ惚れなんですけど、ポーカーフェイスの上手い兄さんの方が、こういう時はズルイ

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カイトはすれ違う人が驚いて振り向くようなスピードで駅の階段を駆け降りた。
仕事帰りのメイコが自分を待っている。
久々に大ケンカをして、一日連絡がつかなくて、思わずプレゼントなんか買ってしまって、やっと繋がった電話の向こうで、怒っていたはずのメイコからかよわい声音で謝罪なんか聞かされたら、のんびりしていられるわけがない。途中で「前方の電車が遅れているため間隔調整に5分ほど停車します」というアナウンスが流れた時、(死ねばいいのに…!)と歯ぎしりしたことは彼女には秘密だ。

「カイト!」
駅を飛び出し彼女が待っているカフェに向かおうとしたら、後ろから他でもないメイコの声に呼ばれ、びっくりして振り返った。
「…めーちゃん!なんでここにいんの」
「ちょっと早めに出てきただけ」
「寒いから店にいてって言っただろ!」
「さっきまでいたんだってば」
思わず声を荒げながら白くて華奢な指を取ると、すっかり体温を失って氷のように冷たい。
「あーもう、なんで手袋もしてないんだよ」
「朝そんなに寒くなかったから持って来なかったの」
「夜は寒くなるし長時間外にいたら冷えるに決まってるだろ」
彼女より一回り大きい自分の手の平で指先まで挟み、口元に持っていってはぁ、と息をかける。
いちいち文句ばかりのカイトに口唇を尖らせながら大人しくされるがままになっていたメイコは、そのうちふと何かに気付き、首を傾げてにっこりとカイトを見上げた。
「早かったね」
「うそ。遅いよ」
「早いわよ。びっくりした。急いできてくれたんでしょ?」
「まぁ、それなりに」
「マフラーも忘れるくらい?」
「えっ?」
驚いて首元に手をやるがあるはずの布がそこにはなく、カイトは慌てて自分の身なりを見下ろす。
「…あれ!?」
「電車に忘れた?」
「え、えーと、…えーと…いや…、……してくるの忘れた」
一目散に家を出てきたことを思い出し、カイトはがっくりと肩を落とした。
マフラーが本体、とまで揶揄される彼が分身を忘れるなんてことはおよそなく、そこまで急いで来てくれたんだと思うとこそばゆくて、メイコは口元が緩みそうになるのを堪え、わざと呆れた溜息をついて見せた。
「…もう、私のこと言えないじゃない。自分こそ何やってるのよ、寒いのに」
そう言って持っていた紙袋の中の包みを取り出し、かがんでと指示する。きょとんとするカイトが言われるがままに少しだけ首を下げ、それでもまだ少し届かない腕をよいしょと伸ばして、メイコは買ったばかりの青いマフラーを彼の首に巻いた。
「まったく、わかってるみたいに忘れてくるのね。…でもちょうどよかった」
「…え、何コレめーちゃん」
「もらって」
お詫びよ、と笑う彼女にようやく本来の目的を思い出したカイトは、慌ててコートのポケットに手を突っ込み正方形の小さな袋を取り出し、メイコに差し出した。
「ごめん、オレも、その…お詫び」
「ありがとう。開けていい?」
「うん。…あっでも、ミクが好きな店で売ってたようなものだから、全然安いやつだけど」
「そうか、今日ミクと買い物に行ったのよね」
嬉しそうに笑いながら小さな紙袋を開けてみると、中から出てきたのはピアスだった。
赤いガラスが嵌めこまれた5枚の花弁に、金色の光を模した放射状の小さなモチーフが寄り添っている。可愛らしいけれど上品で、どんな服にも合いそうだし、この時期にはぴったりだ。
「…かわいい。クリスマス?」
「あー。うん、まぁ、それも近いし。似合いそうだったから」
「ありがとう、カイト」
ぎゅっと大切そうに握りしめ、微笑む。破壊力の高すぎるその表情にニヤけを堪えるのが精いっぱいで、カイトはあぁうん、とか曖昧に答えながら、視線を逸らして口元を手で覆った。
今付けたい、と彼女が言うので荷物を持ってやり、細い指がまず先に付けていたピアスを外すのを見守っていたが、少し留め具が固いらしくその上指先がかじかんで上手くいかない。
「オレが外そうか?」
「ゃ、やだこんなとこで恥ずかしい。大丈夫よ」
彼氏が彼女のピアスを外してあげることの何がそんなに恥ずかしいのかカイトにはよくわからなかったが、そう言われたので大人しく待つ。しかし、なかなか事が進まない。
メイコはうーと唸ったあと、冷えた指をプルプルと振って、悔しそうにカイトを見上げた。
「ダメだ、金属も冷えて固まってるみたい。…カイト晩ご飯食べた?」
「うん、ミクと外で食べてきた」
「私まだ食べてないから、付きあってくれる?どっかおいしいお店入ろ。そこでゆっくり付けるから」
そう言って彼の手を握り歩き出そうとすると、めーちゃん、と半笑いのような声に呼び止められる。振り向くとそこにはカイトのバツの悪そうな、でも少し意地悪な顔があって、メイコは首を傾げた。
「あのさ、オレ来る途中に、もう泊るとこ予約しちゃったんだよね」
「……はい?」
「平日だし、わりといい部屋取れたから。ご飯ならそっちで食べよ」
「は!?…ちょ、ちょっ、ちょっと!」
今度は逆にグイと手を引っ張られ、メイコは慌てて足を速めた。
「とっ、泊るってなに!?どうしてそんな話になってるのよ!?」
「だってめーちゃんが『このあと会える?』って聞いたんじゃん。そりゃーもうバリバリ暇ですよ、オレは」
「ちがうっ、私はホントにただご飯でも食べながら2人でゆっくりできないかって」
「できるよ、2人きりで朝までゆっくり。だから早く行こ」
「こ、こら!!!…っ、カイトー!!」
カイトのご機嫌な鼻歌と、引きずられていくメイコの悲痛な叫びが、夜の街に響いた。


            *


バスローブ姿でよろよろとバスルームから出てきたメイコは、ふにゃあと妙な声をもらしてベッドに突っ伏した。
「…あっつい」
頭に血が昇っているのか、首から上が火照りまくっている。疲れを取るためにお風呂に入ったのにさらに疲れて出てくるなんてどういうことだ、まったく。
…だから嫌だと言ったのに。
一緒に入るなんて嫌だと言ったのに、一緒に湯船に浸かるなんて嫌だと言ったのに、身体を洗わせるなんて嫌だと言ったのに、抱きしめられてもキスされてもとにかく嫌だと言い続けたのに。あの男ときたら耳に欠陥でもあるんじゃないだろうか。もしかして右耳と左耳が一直線に繋がっているのかもしれない。よし、今度耳掃除の時に確かめてやる。
「あったまったねぇ」
同じバスローブ姿で出てきたカイトの呑気な声に、頬の筋肉がピクリと引きつった。あったまるどころじゃない、熱すぎるというのだ。
もう、言い返すのもめんどくさい。メイコは無視を決め込み、脱力して枕に顔を埋めた。
カイトがクスリと笑うのが聞こえ、ベッドの端が音もなく沈む。それなりにいいホテルのそれなりにいい部屋は、バスルームもベッドも広くて綺麗だった。
「…めーちゃん」
「……」
「ごめん」
「……だから嫌だって言ったのに」
「ごめんって」
カイトは苦笑し、むくれるメイコの濡れた髪を梳いた。
「…泊りなんて、絶対ああいうことするじゃないカイト。だから嫌だって言ったのに」
「いやーだって、うちの風呂じゃもうほぼ不可能じゃないですか、ああいうこと」
「当たり前です。元々お風呂はああいうことするための場所じゃありません」
「いやいや、オレ達、前はしょっちゅうしてたじゃないですか、ああいうこと」
即座に涙目で起き上がったメイコに枕を投げつけられ、カイトは口を噤んだ。ミクが来るまでの自分達のことは、メイコにはわりと禁句である。
困るメイコが可愛いからってわざと言ったりはしてないですよ、と自分に言い訳しながら、さらにご機嫌を損ねてしまった彼女の背中を優しく見つめ、静かに口を開いた。
「…2人で泊りとか、仕事でもない限りなかなかないし、プライベートでってめーちゃん嫌がるし。でも、今日はめーちゃんから誘ってくれたって思って、すごく嬉しかったんだよ」
「……」
「そんで1人で舞い上がって、1人ではしゃいで、1人でワクワクして…ちょっとバカだった。疲れてるのにホント、ごめん」
「…そんなに疲れてないわよ…」
「うん。でもオレ達明日も仕事だし、いきなりだったし、強引だった。…ごめんね、メイコ」
後頭部に触れるだけのキスをしながらそう囁くと、メイコは小さく身動ぎした。
やがて「もういい」、というかすかな声が、カイトの耳にかろうじて聞こえる
免罪を得たと判断したカイトは、小さく息をつきながら笑った。
「…あーあ、悔しいな。オレ今日一日メイコのことで頭いっぱいで、皆に怒られたよ」
「…私だって、仕事あんまりスムーズにいかなかったわ」
「ホント?…じゃあたまにはケンカもいいかな」
まだシーツにうつ伏せたままの彼女の首筋、乱れた髪の毛を掻き分けて白いうなじにそっと指を這わせ肌を撫でてから、次に耳たぶに触れた。そこには自分が買ったピアスが付けられていて、甘やかな満足感がじわりとカイトを満たす。
いたずらなカイトの指に抵抗を示さず、メイコはどこかうっとりとした様子だ。
「…そういえば、私たちが2人とも帰ってこなかったら、みんな心配するじゃない。連絡はしたの…?」
「あぁ、それは…。…多分みんなわかってるから、大丈夫」
自分たちの電話の内容を聞いていたであろう妹たちには、すっかり事情は悟られているに違いない。帰ったらまたボロクソに言われるんだろうな、と内心で苦笑していると、彼女が何かに気付いたように、いきなり半身を起こしてこちらを振り向いた。
「っや、やだ、なんて言ったのよ」
「え?」
「まさ、まままさか、変なこと言ったんじゃないでしょうね」
――ほ、ホテルとか、とか細い声で聞かれ、カイトは目を丸くしてから吹き出した。
「いやいやいやいや、言ってない。言ってないけど。ちゃんと言っとくから大丈夫」
「だ、だって、一体なんて言って説明」
「『おにーちゃんとおねーちゃんは仲直りに一晩かかるので今夜は帰れません』、って」
「…っ!」
その程度で事情を完璧に理解してくれる、よく出来た妹弟たちですからね。
耳元で囁くと、真っ赤になった彼女が困りきった表情で見上げてくる。カイトはニヤリと笑い、隙だらけのその肩をシーツに押し付け、口唇を奪った。
「……で、仲直りする時間はまだいっぱい残ってるわけだけど」
まだ日付も変わっていない。高層ビルから見下ろすネオン街も、まだ当分眠りにはつかない。
何より今夜は本当の意味で、2人きりの時間を過ごせるのだ。
「せっかくだから思う存分、“仲直り”しようよ。メイコ」
完全に確信犯なカイトの笑みは卑怯なほどにカッコよく、艶っぽくて、メイコはドクンと高鳴った鼓動を感じ、泣きそうな表情で彼を見つめた。
―――あぁ、明日の朝、どうやってあの子達に見つからないように帰ろうか
非日常なシチュエーションに溺れかけている自分から現実逃避するように、頭のどこかでそんなことを考えながら、メイコは再び降りてきた口唇を望んで受け入れた。

MEIKOさんを筆頭に、年長組、大人組、ボーカロイドが大好きです。

液晶の向こうに行くことは諦めたので悔しいけどめーちゃんはカイトさんに任せることにしました。幸せになれ。幸せになれ。

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