せいしょくしゃ

投稿日:2012/09/30 21:59:21 | 文字数:4,793文字 | 閲覧数:722 | カテゴリ:小説 | 全2バージョン

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*前のバージョンで続きます。全2Pです*


人生煮詰まった。うおおおぉ。
息抜きのつもりで書いてたらいつの間にか出来上がっていました

DIVAfモジュ「ジーニアス」と「ホイッスル」で脳内妄想よろしくお願いしますということでカイメイと言い張って見る。
案外この人たちは欲望に忠実ですよね!と思ったのry
かわいい大人。どうしようもない大人。ダメな大人。全部愛しいですね。ぐだぐだでもいいじゃない。おとなだもの

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TEXT
 

のっそり、のっそり。目の前を進んでいく白い背中に、イラッとした。
「―――遅いッ!!」
「ぐぇ」
思いっきり背中を叩く。バシーンと反り返ったあとしばらく停止してから、のっそりと私を振り返る。
「……痛い」
「廊下は公共のものよ!トロすぎて交通妨害!」
「……横を通ればいいじゃないですか」
「なんでアンタのために私が道を逸れなきゃいけないのよ」
ふむん。腰に手を当てていばる。青い目が無気力に私を見下ろし、ふぅ、と息をついてまたのっそりと歩き出した。その背中を追いかけつつ、昨日と同じシャツの襟に気付き白衣を引っ張る。
「ねぇちょっと、アンタまた昨日家帰ってないんじゃないの!?」
「うん」
「さいてー。あのねぇ、生徒はそういうとこちゃんと見てるんだから!教師がそんな体たらくでどうすんのよ」
「うん」
「うんじゃない!」
もう一度全力をこめて背中を叩いた。

この無精極まれりな男、化学教師で、保険医兼体育教師代理の、私の同期。
家に帰るのが面倒くさくなったと言ってはたびたび学校内の自分のテリトリーである化学室に閉じこもり、そこで一晩明かして翌日には普通に教壇に立ち授業を行っている。
化学室ではお湯も沸かせるしスペースも広いから布団を持ち込めば適当に眠れるし水泳部のシャワー室は無断で使いたい放題だしと、私にすれば信じられないことだが、この男にはそれで充分な居住空間なのだという。
まだ薄暗い早朝、昼日中は授業をして、真っ暗な深夜の校内で。どの時間帯にも目撃情報のあるこのダメ教師、生徒にとっては「マジ謎」という話だ。そりゃそうだろう。

「あ、かいとせんせーめいこせんせーさよーならー」
「さよなら。気を付けてねー」
手を振り廊下をすれ違う生徒達に挨拶を返す。コイツはこくりと首を動かすだけで何も言わない。ホント、いつでも無表情で何考えてるかわかんないのに、生徒からの人気は悪くないのよね。
私から見たらこんな奴、ひょろひょろと背ばっか高くて頼りないし、なんかちょっとした衝撃で折れそうだし、頭いいから理屈っぽいし、人類滅亡の危機には真っ先に死にそうでつまんない男だわ!
…なんて、生徒達にはよくそんな風に嘯くけど。
目の前をのそりのそりと歩く背中。
意外にその背中が広いことを、実は知ってる。
「…ねー、かいとせんせ」
「ハイ」
「タックルかましていい?」
「嫌です」
「そう言わずに」
心底迷惑そうな顔にますますいたずら心がわいて、私は笑顔で彼に突進した。


                *


「…バッカねー」
化学室がコイツのテリトリーなら、保健室は私のテリトリーだ。
いや、私物化するつもりはないけど。

タオルを氷水に冷やしながら、呆れた。ベッドには青い髪の男がぼんやりと目を開けて寝そべっている。
助走をつけてイェーイと真横から突っ込んだら、とりあえず私を受け止めようとしたらしいけど勢いが良すぎて受け止めきれず、後ろに倒れた拍子に窓枠に頭をぶつけた。眼鏡が割れなかったのは幸い。胸に乗りながら大丈夫かってバシバシほっぺたを叩いたけどうううぅ、と唸ってるから、仕方ないわねぇ!って肩に担いで保健室まで引き摺ってきたのだ。
…重くて途中で何度も放り出そうとしたことは色んな意味で秘密にしとく。
「頭痛い?くらくらする?」
「…ぼーっとする」
「それはいつものことでしょ。痛いとこないの?」
「側頭部」
「あー、たんこぶよねぇコレ…冷やすからこっち向いて」
頭の左側をぶつけたのでそこに触れると熱を持っていて、私はそこにタオルを当て、下にするように促した。
身体をゴロンとこちらに向け、ぼーっとこっちを見上げてくる。眼鏡外すと冗談抜きで何も見えなくなるらしいから、外せと言ったけどこんな時でもコイツは外さなかった。
レンズの奥にじっと居座る、深い青。
「…何よその目」
「……」
「…………悪かったわよ。でもだって」
「めいこせんせ」
アンタがひ弱なのが悪いんじゃない、と難癖つけようとしたら、低い声で名を呼ばれた。
…その声はヤメロ。
私はチラ、と視線だけを奴に送り、すぐに逸らした。
聞こえなかったフリをして、タオルを思い切りぎゅううううと絞る。絞って絞って、カラカラになるまで絞ったタオルを黙って握りしめていたら、また、名を呼ばれたので今度は反応せざるを得なかった。
「せんせ」
「…なによっ」
悔し紛れに、ペシ!とおでこにタオルを貼り付けてやる。
その瞬間を待っていたかのように、手首を捕えられて、息を飲んだ。
「……」
「……っ」
青い、青い瞳が、眉ひとつ動かさず、雄弁に何かを語りかけてくる。
やめて。
「めいこ、先生」
今度は、一語一句ハッキリと。
握られた手が、くい、と引かれる。こっちを向けと、促すように。
やめて。
グッと奥歯を噛みしめ、出来る限りの不機嫌な顔で、ゆっくりと振り向いた。
寝そべっている横顔が、手を握ったままじっとこちらを見上げている。
ぼーっと。相変わらずの無表情で。
でも。わかってる。ダメだ。やめて。
「…やめなさいよ」
「何が」
その目の奥に燻ってるものを、見咎めてしまったら。
「ここ保健室」
「連れてきたの君でしょ」
わかってるけど。
でも。
「…ちがう」
「何が」
「そんなつもりじゃ」
手を引かれ、前に倒れるままに、彼の胸に手を突いた。視線も、口唇も近すぎる。
そんなつもりじゃなかった。…本当に?
私の心の隙間を見透かすかのようなかいと先生の目が、妙な迫力を持って迫ってくる。
待って
言い終わる前に、口唇を奴のそれで塞がれた。

―――刹那ふわ、と背筋を走り抜けたのは、なんだったか。
あぁ、どうしよ。
ヤバ、ヤバい、これは。
気が付いたら、私はかいと先生の頬を両手で包み込んで、夢中になってキスを繰り返していた。
…キモチイイ。
どうしよ…久々で、身体が。
勝手に突っ走る。
余裕をなくした熱い息と共に一度顔を離すと、奴は無言でカチャリと眼鏡を外し、脇に置いた。
見下ろす先、隔てるもののなくなった瞳には、今度こそ隠しきれない欲が浮かんでいた。

この、化学室に閉じ籠っていかにももやし野郎なコイツと、運動大好きハツラツ美人な私。
実際よく揶揄される。『せんせーたちの力関係って男女逆だよねー』

この目を見て、はたしてそう言い切れるだろうか。
ただの男じゃないの。
やたらと指先が器用で、嫌になるくらいセックスが上手い、ただの

下から伸びてきた指先が、私の胸元にある水着の紐をゆっくりと解く。布地が抑え付けていた胸が解放されて、ふるりと揺れ外気に晒された。
冷めた視線が、そこに集中するのがわかって頬が熱くなる。
見んな、バカ。
次に肩からパーカ―をストンと落とされ、剥き出しになった肩を長い指がスルリと滑った。それだけで何かを期待した身体が、腰の辺りからゾクリと震えて。
「…めいこ」
ドク、と体の奥が疼く。
あぁもう。
…あぁ、もう、悔しい。
その声で呼ばれると、たまらなくなるのよ。
「かい、と」
応えるように呼び返した途端グッと腕を引かれて、あっという間に形勢逆転。私を押し倒し、じっと見下ろしてくる無表情な、その顔。
…無表情?どこが。
してやったり、って、顔に書いてあるわよ!
一度身体を起こして先に白衣を脱ごうとするから、
「…ダメ」
阻止して、ネクタイを引っ張った。奴は少しだけ目を見開いた。なんで、と言いたげに。
ネクタイの結び目に指を差し入れ、睨み上げる。…この朴念仁。
「いいからこのまま」
言葉を切って、下から白衣の襟元をきゅっと掴んだ。
「……このまま、して」
見上げる私の頬の熱さはごまかせているだろうか。
しばらく停止したまま私を見下ろしていたかいと先生は、そのうちゆっくりと目蓋を閉じ、ふぅ、と息を吐き出した。まったく、とか仕方ないな、とかいうニュアンスを含んだため息にイラッとするけど、突っ込むと墓穴を掘りそうなのでここは抑える。
奴は、ネクタイにやった私の手ごと掴んで、くいとネクタイを左右に揺らし、それをゆるめた。
普段は隠れているのど仏が垣間見えた。

……保健室の鍵、かけてない。
頭の片隅でのんきに考えながら、その首に腕を回した。




                   *



奴と私がこんなどうしようもない関係になったのは。
……白状しよう、私のせいだ。

同期だったから、懇親会なんかで一緒に飲みの席に連れていかれることがよくあった。
自慢じゃないけど私はお酒が大好きなうえに酒癖が悪い。…本当に自慢じゃないわね。
もちろん社会人として、そこまで度を越えた飲み方や酔い方はしないわよ!あ、あんまり。
―――ただ、あの時は。
あの時は、仕事とか、元カレのこととか、なんか色々イヤなことが重なってた時期だったの。
その前から、なんだか陰気でパッとしなくて、話しかけてもろくなコミュニケーションの取れないアイツのことがずっと気に食わなくて、イライラしてた。相当強引に連れてこられた飲みの席の隅っこで、相変わらずぼーっとソフトドリンクを啜っているアイツを見てると、もうなんだか無性にむしゃくしゃして。
……いっぱい飲んで、めちゃくちゃ絡んだ。
無表情な顔が嫌そうに歪むのが楽しくて、無理やり飲ませてみたりセクハラしてみたり、…いや、もう、ホントに、なんていうか、すいませんでした、裁判で訴えられたら確実に負けるレベルでサイテーなことしましたごめんなさい、みたいな。…うん。

…プライベートのイライラを、単純に、奴にぶつけてストレス発散してたのよ。
ただの八つ当たりって自分でもわかってて、そんな自分が情けなくて。

―――ふと気付いたら。
私、泣いてて。
泣き上戸なんかじゃないのに、アイツの胸をばすばす叩きながらわぁわぁ泣いてたの。
それを、アイツは、黙って受け止めてた。
相変わらずぼーっとして。
でも、決して跳ね除けられはしなかった。
この自分勝手で迷惑すぎる女の背中や頭を、なんにも言わないで、ずーっとぽんぽん叩いてた。

その後、酔い潰れた私は…あんまり言いたくないけど、みんなに帰るよと言われてもいやいやと駄々をこねて、アイツにしがみついていたそうだ。
関係ないけど信じられないことにこの時もアイツは白衣を着ていて、私はそれを掴んで離さなかったらしい。
で、私とアイツの家が近かったということもあり、結局ヤツが私を家まで送り届けることになった。
で、まだでれでれに酔ってた私は、案の定玄関先でアイツを家の中に引っ張り込んだ。
で、ぐだぐだと、…そうホントにぐだぐだな感じで。

ベッドにもつれこんでしまったのだ。

……お約束すぎる。
自分でもそう思う、もーホント最低よね。大丈夫、翌朝に死ぬほど後悔したからもう言わないで。

え、翌朝どうなったのかって?
いやにスカッとした気分で目覚めた私は、素っ裸で毛布にくるまっていた。
現状に頭が追い付くまでさすがに時間がかかったけど、元々きれいに記憶が飛ぶタイプでもないから徐々に色々思い出してきて。
ヤバ…!と気付いて飛び起きたけど、部屋にはもう私だけしかいなかった。

一瞬だけ昨夜のこと、夢だったかも、と思ったけど。
まぁ、それなりに、誤魔化せないアレやコレやの名残があったりして、うわああぁと頭を抱え。
…ふと、毛布の中で何かをぎゅうと抱きしめ、足にまで挟み込んで眠っていたことに気付いた。
くしゃくしゃになった白い布。何コレYシャツ?と思い広げてみて、正体がわかった瞬間顔から火が出そうになった。

…アイツの白衣を抱きしめて、眠っていたのだ。


MEIKOさんを筆頭に、年長組、大人組、ボーカロイドが大好きです。

液晶の向こうに行くことは諦めたので悔しいけどめーちゃんはカイトさんに任せることにしました。幸せになれ。幸せになれ。

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