「VOCALOID HEARTS」~第24話・海の向こう側で~

投稿日:2013/12/25 16:19:47 | 文字数:5,099文字 | 閲覧数:543 | カテゴリ:小説

ライセンス:

ピアプロの皆さん、今日は!
今回は前回の説明文で予告していた、ルカ編の第24話を投稿させて頂きました!

ゆかりとの再会の後、捜査官と偽ってルカに接近してきた謎の男・アル。この窮地、いかにして脱するか?

次回の25話は後編になります。バトル回になりそうですが、戦闘シーンを文章で表現するってなかなか難しいですね…

前回メッセージ、ブックマークして下さった皆さん、ありがとうございました!

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

「お待たせ、ゆかりちゃん」

「あっ、ルカさん。お待ちしてました」

「隣に座っていいかしら?」

「どうぞ掛けて下さい」


 MARTの一員として活動を続ける巡音ルカは、ニューヨーク湾に面した公園を訪れていた。彼女を待っていたのは、結月ゆかり。おしとやかでミステリアスな雰囲気のアンドロイドだ。2人は自由の女神が見える海岸のベンチで待ち合わせをしていた。ルカが来てそっと微笑むゆかりの笑顔は、まぶしく映っていた。


「はい、ゆかりちゃん。あなたの好きなお茶よ」

「ありがとうございます。それにしてもルカさん、こんな所でよくお茶を見つけましたね」

「ニューヨークなんて、炭酸飲料しかないと思ってたんだけど…探してみるものね」


 アメリカで日本茶が飲めるのは、やはり日本料理店ぐらいだろう。そんな国で暮らすゆかりは水か炭酸のどちらかしか飲めないのには、かなり堪えていた。お値段2ドルの緑茶。ペットボトルに入っている緑茶を、ゆかりは味わって飲んでいた。


「…ふう。やっぱり緑茶が一番ですね。これを飲んだら、何だか日本が恋しくなってきました」

「やっぱりゆかりちゃんには、日本が一番あってるわね」

「私もそうだと思います。でも今となっては、この国も捨てがたいものです」


 結月ゆかりも、かつては日本で暮らしていた。でもある日、母国を離れてこの国へ逃れることになってしまった。「一時的な自由の国」として。


「今日は確か、国連総会の日でしたね」

「そうよ。出席して帰る途中なの。明日には日本へ帰らないと…」

「そうですか。ここのところ、いつもより仕事がたくさんあって、大変だそうで…」

「いいえ、私はMARTとアンドロイドたちのためなら、何だって苦にならないわ」

「ルカさん…」


 どこからか、パトカーのサイレンが聞こえてくる。ハドソン川を流れていく蒸気船の汽笛も。ゆかりはその後に、ルカの方を向いて微笑んだ。そして彼女は、ゆっくりと口を開いた。


「ルカさんのような素晴らしいアンドロイドが、たくさん増えて欲しいですね。そうなれば、この世界はもっと平和になるはずです」

「そんな…大袈裟よ、ゆかりちゃん」


 そうは言ったが、正直ルカは照れていた。ゆかりからそんなことを言われて、嬉しかったからだ。ゆかりがもう一口、お茶を飲もうとした時だった。2人の背後から優しい声が聞こえてきた。


「ゆかりお嬢様、こちらにいらっしゃいましたか」

「あ、瑞希ちゃん」

「巡音様もいらっしゃいましたか。お嬢様のお相手、ありがとうございます」

「いえ…」

「もうすぐ5時になります。移動しましょう」


 2人の前に現れた、和風の着物を着た執事。名前は瑞希(みずき)。ゆかりの側近を務めており、アメリカへ渡った彼女を保護している。結月ゆかりは、アンドロイドであるが持病を患っていた。腎不全である。それもある理由で、意図的に施されたものだった。そんな彼女には、週3回の定期的な血液透析が必要だった。それで決められた時間帯に、瑞希がいつも迎えにくるのだ。


「それではルカさん、また今度近いうちにお会いできれば…」

「ええ。またね、ゆかりちゃん」

「失礼致します」


 ゆかりは瑞希に連れられて帰っていった。残されたルカは、1人でニューヨーク湾の夕日を見つめていた。手に持っていた青色のファイルを側に置き、疲れた顔に手を当てて肘をついて溜め息を漏らした。ルカは最近、疲れを感じることが多くなっていた。青色のファイルには、国際連合のマーク。置いた拍子に、いくつかの資料がはみ出していた。その資料の表紙には、題名がこう書かれていた。「アンドロイド(人造人間)に関する基本的人権の追加案」と。横には「否決」のメモが。思えば彼女の疲れも、ここからきているのかもしれない。つい数時間前の国連本部での出来事だった。


「…賛成国が過半数に満たないため、この決議は¨否決¨と致します」

「そんな…!」

 
 国連議会にこの案を提出する事になった日本は、代表として人間とアンドロイドの共存社会の平和に貢献している、MARTの巡音ルカを派遣した。まだアンドロイドの法整備が完全に整っていないこの世界で、国連の条約にアンドロイドの基本的人権が確立されれば、平和への更なる大きな一歩にすることができると考えた彼女は、喜んで引き受けた。だが現実は厳しかった。人間とロボットと共に生きていくなどと、考えられない人間たちがまだまだ多かったのだ。結果、国連加盟国のやや半数以上が反対に批准した。それに伴い、この案も白紙になり、棄却されてしまったのだ。ルカはこの現実に大きく落胆した。本当なら、笑顔でこの案の成立を、ゆかりに報告するはずだった。


「ルカさん、気を落とさないで!」

「まだまだこれからだ。こんな所で落ち込むことは無いさ!」

「…はい」


 落ち込むルカに、周りのみんなは笑顔で励ましてくれた。そんな人たちの希望と期待に応えるためにも、自分の夢を実現させようとする思いは、少しずつ強くなっていく。全ての人間とアンドロイドが、互いに手を取り合って共存していく世界が必ず来る。巡音ルカはそう信じて、MARTの活動を続けている。例え、誰かに綺麗事だと言われても、その思いが揺るぐことは決してないだろう。


「思いはあれど、実現せずは夢と終わる…か」


 ルカは思わずそう呟いてみせた。そんな彼女の背後から突然、背広の男がゆっくりとやってきた。彼はルカに声をかけた。


「…失礼、巡音ルカさんでしょうか」

「はい、そうですが」

「連邦捜査局のアル・トーテンコップと言います。突然、申し訳ない」


 ルカの前に現れたがっちりとした体格の男・アルは、バッジを見せて連邦捜査局・FBIの捜査員を名乗った。


「いえ、こういうのは慣れていますから」

「それならよかった。巡音さん、少しお時間よろしいでしょうか? 至急、お話させて頂かなければならないことがあります」

「構いませんよ」


 アルは、自分がここ数ヵ月調査を続けている犯罪者集団がルカを狙っていることと、近日中にそれを実行するのではないかということを告げた。連中の目的はまだ分かってはいないが、アルは捜査官としてルカを守るためにやってきたという。


「…そんな訳で率直に申し上げます。巡音さん、あなたの身に危険が迫っている」

「物騒な話ですね」

「これは冗談ではありません。私も合衆国政府からの命令でやってきました。それが証拠に、この指令書があります」

「直々に、ですか」

「そうです。この後、巡音さんは日本に帰られると聞きました。保護の必要は無くとも、護衛ならできる。煩わしいかもしれませんが、どうか頼まれていただけませんか?」


 さすが捜査局だけあって、情報の入手も早い。アルはこれから日本へ帰るルカに、護衛をさせて欲しいと頼み出た。それは身の危険が迫っているルカにとっては、頼もしい話だった。


「連邦捜査局の方に護衛して頂くのなら、本当に心強いですね」

「嬉しいお言葉だ。ではそこに車を待たせてあるので、どうぞこちらに。我々が護衛を…」

「いえ、お断りします」

「な…なぜですか!?」

「ちょっとお聞きしたいことがあるからです。いいですか?」

「…ええ、どうぞ」


 断る理由も無いはずのルカに、アルは同行を拒否されてしまった。ルカの視線はあらゆる方向に向いている。そして口を開いた。


「この国の捜査官は、いつからピストルにサイレンサー(消音器)をつけるようになったんですか?」


「何を…今の時代、銃にサイレンサーをつけることなんて、珍しくないでしょう?」


「そうですね。でも、この職務においての必要性は無いと思いますよ。消音器なんてものは、周囲に銃声を聞かれないようにするためにあるんじゃないですか? スパイじゃあるまいし」


 2人の間には、奇妙な雰囲気が漂っていた。そんな空気の中で、捜査官のアルが一瞬、息を飲んだのが分かった。そんな細かい所を見たルカは感じ取った。この捜査官は、何かおかしいと。ルカは更に問い詰めるように、会話を続けた。


「アルさん」

「何でしょう?」

「アルさんの捜査手帳、もう一度だけ見せて頂いてもいいですか」

「…ルカさん、まさかあなたは私が偽者だとお思いか?」

「それも否めないので」


 ルカがそう言った瞬間、アルは顔を曇らせた。彼女は疑いの目で、この捜査官を見ていた。渋々、捜査官手帳を差し出したアルは相変わらず表情は曇っていた。じっくりと確認したルカは、手帳をアルに投げ返してこう言い放った。


「…アルさん、あなたは本当に捜査官なのかしら」

「な…何を仰るか!」

「さっきから、色々引っ掛かるところがあったんですけど…あそこのアパートを見て下さい」

「どこですか?」


 ルカは海と反対側の方角にある、市街地の方を指差す。アルの目には、茶色レンガのアパートが映っていた。その6階にある窓から、何かが光に反射してチラチラ輝いていた。


「お仲間ですよね、あのスナイパーも」

「…っ!」


「FBIの立派な捜査官なら、ライフルのスコープレンズは光を反射するから、気をつけないと位置がバレてしまうってことぐらい、知ってますよね?」

「くそっ、あいつ…」

「あんなに反射光をちらつかせてたら、私でも分かりますよ」

「…勘違いなさらないで下さいね。あれも私の部下で、巡音さんの護衛のために狙撃手として、周囲を警戒させています。ですからご安心を」

「勘違いするな、ですか…アルさん、あなたはむしろ私に勘違いさせようとしているんじゃないですか?」

「…何を?」


 アルはその言葉の意味が分からなかった。そんなアルに、ルカは再び街の方向に指を指した。例の狙撃手だ。


「あのスナイパー、どう見ても私を狙ってますよね」

「馬鹿なことを…先程あなたの護衛だと、言ったではありませんか」

「私は結構視力が良いんですけど、あの狙撃銃は見たところ…ボルトアクション式ですよね?」

「…ええ、随分とお詳しいですね」

「もし誰かが私を襲うなら、複数でやってくる可能性が高い。FBI捜査官がいると知っていれば尚更。ボルトアクション式の命中精度は申し分ないけど、多数の敵に対処しづらい…だから普通は手動の排莢を必要としない、連射可能なセミオート式の物を使うでしょう?」


「ええ、まあ…」

「つまり、私1人を狙撃するなら単発式が最適…ですよね?」


 アルはまるで意表を突かれたようなような表情になっていた。さっきの曇った表情はどこへやら…そんな呆気にとられている捜査官を後目に、ルカは話を続ける。


「それに周囲を警戒しているなら、臨機応変に場所を移動しなければならないのに、脚立を付けて完全に狙撃態勢になっている…あの人が優秀なスナイパーなら、私も万事休すですね」

「…巡音さん!まだ言わせるのですか?あれは私の部下だと……」

「アルさん、もう私には分かっていますから。あなたが¨襲撃の実行犯の1人¨だろうって。それでもし、アルさんがその襲撃の中心人物なら、是非とも褒めてあげたいですね。これは私を仕留めるのに絵に描いたような、素晴らしい包囲ですよ、って」

「…巡音さん、まったくあなたという人は」

「その捜査官手帳も、見事にできてますよ。小道具にも手を抜かないんですね、どうやって作ったか知りたいくらいです」

「くっ、くくくっ…」


 話し終えたルカに、アルは微笑を浮かべた。そしてアルは腰からサイレンサーピストルを取り出し、ルカの脳天に狙いを定めた。


「…巡音ルカ、あんたほどの聡明な女は初めてだ! それにそこの筋金入りの犯罪者どもよりも勘が鋭い。本当にご立派だよ!」

「…で、これからどうするのかしら」

「事前に言っておくが、お前は我々からは絶対に逃げられない」

「どうしてそう言えるのかしら」


 ルカは化けの皮が剥がれた男に銃口を突き付けられながらも、冷静かつ強気な姿勢で会話を続ける。しかし、2人の周囲に人はいない。更に遠くからスナイパーにも狙われているため、かなり危険な状況である。崖っぷちに立たされたルカ。この状況、あなたならどうする?


 初めての方は初めまして、オレアリアと言います! 最近、さりげなく名前変えました(笑)
 様々なクリエイターさんの創作作品を見たい思いでピアプロにやって来ました。そのピアプロのユーザー様のおかげで、底辺の作家ながら今日まで創作活動を続けられています。

 現在はシリーズものを中心に、番外編も交えながら小説を書いています。イラストは自身の画力不足で、とてもうpできません…でも、ごくたまに晒すかも? そんなワケで、ここでは身内や友人のイラストを投稿させて頂いています。更新の方は自身の都合上で、なかなか思うようにできていませんが、時間の合間を縫いながら少しずつ書いています。
 なお、7月下旬から「VOCALOID HEARTS」シリーズ多数が注目の作品入りしています。こんな駄作が…ありがとうございます!

 軽い挨拶と紹介になりましたが、皆さんよろしくお願いします! 余談ですが、カラオケでの十八番はいろは唄とかだったり←

 メッセージ等は必ずお返しします…とか言っときながら返信おせーよ!
 お友達やフォローも大歓迎です!(フォローして下さる時は、メッセージで報告して頂けると、フォロー返しがしやすくて嬉しいです)

 プロフ画像の重音テトは、リア友のwestさんが書き下ろしてくださいました! 絵のイメージは「VOCALOID HEARTS」作中に登場する査察部隊・トリプルエーのテトからです。
 
 2014年も、よろしくお願いします!

・ツイッター
http://twitter.com/ocelot0207
・ユーザーID
ocelot0207

※現在、7話~21話までのボカロハーツの文章とストーリーを修正しています。

もっと見る

作品へのコメント1

ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!

新規登録|ログイン
  • userIcon

    ご意見・感想

    こんにちは! 早速拝読させて頂きました。

    今回は前半、ルカさんとゆかりさんのお話。二人の間柄と、ルカさんが今いる所の説明が丁寧にされていて、凄く面白かったです。それと瑞希(みずき)さんは適役ですよね。そういう感じでしたからね。

    ゆかりさん、大病を患ってますね。人工透析は大変です。リアル日本でも震災当時や計画停電の時期は、人工透析の患者さんは、本当に苦労されてました。

    でもって、後半は緊迫のルカvsアルの対決の会話編ですが、ルカさんの聡明さがよく解り、そして丁寧な設定でしたので、しっかりと読ませていただきました。ルカさん、凄い!

    さぁ、アブナイ人であるアルに、ルカさんはどう対決するのか! とっても楽しみです!

    それと、こういう小説らしい書き方の方が、確かに説得力ありますよね。

    ではでは~♪

    P.S 暑中お見舞い申し上げます。お盆中という事もあり、近所がガランとしてます。どこも暑いですので、ご自愛下さいませ。

    2012/08/12 13:06:54 From  enarin

  • userIcon

    メッセージのお返し

    enarinさん、今晩は!
    今回も最後まで読んで下さって本当に嬉しいです!

    うわぁ、ありがとうございます!今回は念入りに何回も見直しと修正を繰り返して、自分の思う誤字脱字や変な表現を極力直すようにしました。

    ルカとゆかりの間柄についても、短い会話からでも読み取って頂けるように表現しました。この2人の絡みはあまり見られないですけど、それもいいなと思いながら書いてました。

    ミズキについても、どの役柄で登場させようか色々考えてました。その内の1つには「がくぽへの刺客」もありましたが、すぐにやめましたw

    結果的には、この¨ゆかりの側近¨で適役だったと思います。でもディアフレの瑞樹さんの方が好きだったりします←

    ゆかりに関しては腎不全という思い病気を患っていますが、僕もニュースや新聞で大震災や計画停電の影響で、人工透析の患者の方がとても大変だったエピソードを知りました。

    後半のアルとの会話では下書きの段階で色々矛盾が生じてきて、書くのが一番難しい所でした。消音器やレンズの反射の話についても、警察や軍隊では一般的に知られている事だと思います。もしかしたらまだ多少矛盾が残っているかもしれませんが、ご容赦を…

    アルの正体、そして目的は一体?ルカの運命は如何に?対決の結末は?次回後編の25話は、そういったものを書いていきたいと思います!

    お褒めの言葉を頂いて、とても恐縮です…!これからも頑張ります!長文失礼しました。


    追伸:いよいよ8月も中旬に入りましたが、またまだ蒸し暑い日が続いていますね…お盆中は外出の人も多かったです。
    enarinさんも、有意義な夏を過ごして下さいね!

    2012/08/14 20:06:42 オレアリア

もっと見る

▲TOP