「ツキノカケラ」小説/第七話

投稿者: usericonルナリーさん

投稿日:2020/07/26 13:54:43 | 文字数:4,249文字 | 閲覧数:95 | カテゴリ:小説

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今月のテーマ「夜空」への投稿作品です。

麟ちゃんも相当良い年齢になってきました。

こう言う回を描くと思いますね。

人って理屈で生きてるわけじゃないんだなぁって。

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 第二期移住民の宇宙船で、私達第一期移住民はテレビモニターを観ていた。
 海中人達は、錬達の働いている鉱山の同族と連絡を取って、公的にも「鉄工所建設」を認めた。
 私が先日提供したヘアピンから、「鉄」がどんな物質か、大体の予想がついたのだ。
 鉱山の男の子達は、鉄を採掘する他に、鉄を精錬する方法を実際に試し始めた。
 その仕事にも、海中人の技術者達が関わるようになった。鉄の精錬中に、ナタリウム加工を施す事で、「海の水に強い鉄」と言うものが作られた。
 海の中に「工事中」の標識が置かれ、海底の岩盤に加工鉄の柱が立てられた。
 大きな六角形を形作るように並べられた柱の上に、別の加工鉄の柱をどんどん継ぎ足して行く。
 数日後には、テレビに映るリポーターが、「今、柱が海上に届こうとしています」と伝え、銀色の加工鉄の柱が水中から姿を現した時、テレビモニターの前で歓声が上がった。

 最初の柱の内部は、水温や空気の温度を測る装置や、エレベーター、地上から「ロール」に乗るための延長チューブが設置された。
「陸地にチューブを通すのは初めてではありません」と、モニターに映った工事責任者が答えていた。「ですが、地上人専用の駅を作るのは、実に画期的な発想です」と。
 私達は、どんどん進んで行く「都市建設」を、毎日モニターで見つめ続けた。
 錬達が働いている鉱山を遠くから映す映像も流れていた。

 建設の間も、海中人との会議は続いていた。
 議題は、最初の「橋の中に街を作る」と言うプランに向けて、どのように工事が進んでいるか、どのような技術が必要か等だ。
 メイさんは、「柱」の間をつなぐ「橋」の構造に、「揺れが少なく、街を建設する重量に耐えられる設計」を申し込んだ。
 空気中には、波はないが風がある。暴風にも耐えられる強度と、雨を速やかに排水するシステムも必要だ。
 私は、リーリから「公的な場での言葉遣い」を教えてもらい、メイさん専属の正式な「通訳」としての仕事に就いた。
 テレビのインタビューに答えることも増え、長年使いこんでいる大事なヘアピンは、私のトレードマークになった。
 通りすがりの、子供を連れた海中人のお母さんが、「ほら、鉄のピンの人よ」と言って、子供達に私を「紹介」していた。
 その言葉は、ちょっとからかうようなニュアンスがあったけど、「そうですよ。鉄のピンのお姉さんです」と、滑らかなこの星の言葉で話しかけると、海中人のお母さんはバツが悪そうに子供を連れて行った。
 何せ、私があの日「髪から鉄のピンを引き抜いた女性」であることは、この星の近代史の教科書にも載っているのだ。
 「髪がほどけるのも構わず、彼女はその小さな鉄のピンを髪から引き抜き、我々の代表者に渡したのだ。顔にかかった金色の髪を耳にかけた彼女の姿は、その場にいた全員の記憶に残っている」と。
 そんなシーンを記憶と記録に残さないでほしいと、私本人としては思ったが。

 錬が、日に焼けた逆三角形の体形になって、最早故郷である島に帰ってくる頃には、その頭上には柱と柱の間の基礎工事も終了していた。
「すげーな。この上に街が出来るのか?」って聞いて来たから、私は、「そうだよ。これから、海水や排水を真水にする浄水場も作るし、マンションや発電所も作るんだ。街として機能できる、色んな設備をね」と、答えた。
「俺達も、穴倉暮らしを続けた甲斐があったよ」と、錬は言う。
 錬達の働いた「収入」は、全て街を作る資金になっている。
 実際は、宝石の採掘がほとんどないのだから、ただ働きも良い所なのだが、そこは海中人が気前を利かせてくれている。
 そしていよいよ、暮らしの中にも「鉄器」が入り込んできた。第二期移住民の「貨物」の中にも、鉄製のフォークやスプーンがあったが、それ以外でもナタリウム加工をした鉄食器が作られた。
 錬が自慢していた「金」や「銀」の採掘も順調で、その金銀は貨幣に加工され、この星の一部の通貨にあてられた。「宙の人」の働いた賃金として。
 海中都市にある博物館では、掘り出された姿そのままの大きな金塊が飾られている。
 そして、閲覧注釈に、「『地球』で価値があるとされている金属の塊。純粋なこの鉱物はとても柔らかく、道具として使うには合金化が必要」と書かれていた。

 私とメイさんは、島を離れて、海中都市で暮らすことが多くなった。街が出来上がるまで、何日かごとに意見のすり合わせが必要だからだ。
 空気を満たした「地上人用宿泊施設」に寝泊まりしている。緊急の連絡を取る手段として、電波を発する小さな機器を渡された。電話のようにしゃべることも、文字だけでやり取りすることもできる。
「地球の『フォン』みたいですね」と私が言ったら、業者はこの装置の呼び名をつけてくれと言ってきた。
 装置は、全体が不透明な白で、まるでクリスタルみたいに見える。「クリスタル・フォンなんてどうでしょう?」と聞くと、業者は、本当にその名前で発受信機器を売り出した。

 私とメイさんは、工事関係者に連れられ、出来上がりつつある街に足を運んだ。
 中央が道路で、両端に居住施設や街として必要な設備を管理する建物が設置されている。
 何より驚いたのが、「植木」があったことだ。小さな低木だったが、第二期移住民の持ってきた種から、水耕栽培で増やしたものだそうだ。
「海にも、色んな植物がありますから。地上にだって必要でしょ?」と、植木の管理をしている人が言っていた。
 街には、生活施設の他に、公園らしきものや、お祭りや集会をするための広場、「ロール」に続く駅等が作られた。
 できるだけ文化的な生活をしてほしいと言う、海中人の思いやりみたいなものだ。
 私達は、此処に平和な街が出来ると、信じていた。彼等を起こすまでは。

 街の完成と同時に、第二期移住民の一部を、再びポッドから起こした。
 彼等は、意識を覚ますと、まず、銃器を探し始めた。そして、自分達の持って来ていた「武器」が無いと知ると、船の中から出るのを拒んだ。
 私達、第一期移住民が、時間をかけて彼等を説得した。この星に自分達の命を脅かすものはいないこと、武器が無くても生きて行ける環境を、海中人の協力を得て備えてあることを。
 彼等は疑いの眼差しを私達に向け、「その『かいちゅうじん』って言うものに、操られてるんじゃないか?」とまで聞いてきた。
 それを聞いたとき、メイさんが表情を厳しくした。新しく目覚めた「彼等」に、こう言う。
「その言葉は、あなた達がこの星の先住民であったら、新しく移住した者達を『思い通りに操る方法』を考えると言うことですね? よろしい。ならば、一生船から出ないように」
 そう告げてから、こう付け加えた。
「この船は、近隣住民の生活の妨げになるので、分解、破棄されることが決まっています。船と命を共にしたいのなら、ご自由に」
 それを聞いて、第二期移住民は慌てて救命ボートを用意し、浅瀬を渡って、私達の島に来た。
 天空を見上げて、彼等が言う。「街だ。街があるぞ!」
 だから、環境を備えてあるって言ってるだろうに、と、私は心の中で唱えた。

 先に目を覚ましていた赤ん坊達も、そこそこ成長していた。正確な地球の年月は分からないけど、少なくとも5~6歳には成ってる。
 ポッドの上に書かれていた名前で呼んでいたけど、どうやら正解だったらしい。
 自分によく似た子供を見つけて、子供の名を呼ぶ保護者らしき人達が居た。
 子供達は、訳が分かって無い風だった。自分を抱きすくめようとする見知らぬ大人を怖がって、その腕から必死に逃げようとした。
 その子供達の有りように、保護者達は激怒した。そして、「幼稚園」の保母達に、「お前達が私達の子供を洗脳したのか」と、怒鳴りつけた。
 その様子を見て、子供達は泣きだし、保母達は「力づくで抱きかかえようとしたり、苛立って怒鳴りつける大人に対して、子供が恐怖を抱かないと思いますか?」と聞き返した。
 こんな風に、感覚の違う人々との間で、小さないざこざが絶えなくなった。
 私は、第二期移住民の「怯え」が分かった。
 用意されていた世界が、自分達が支配できるものではなく、人間より「見劣りがする」者達から、「協力」を得て生きて行かなければならないと言うことに恐怖を感じているのだ。
 海中人は、ヒステリーを起こし、喚き散らす地球人を初めて見て、ショックを受けたようだった。
 ウータが驚いたように私に聞いてきた。「この人達、なんでギャーギャー言ってるの?」と。
 私は、「目を覚ましても王様に成れない世界だった。残念だって言って駄々こねてるの」と答えておいた。
 私達は、残りの第二期移住民を起こすべきかどうかを考えたが、宇宙船の解体作業の日は近づいている。
 そこで活躍してくれたのが、鉱山で体を鍛えた男の子達だった。
「こいつらを、街まで運べば良いんだな?」と、錬達は言って、50人ほどの第二期移住民をロープで縛り上げ、荷物のように舟に積むと、「柱」のエレベーターがある場所まで運んで行った。

 その日のうちに十回、100人ずつの第二期移住民を起こした。みんな、夢見心地のうちに街のほうへ行ってもらった。抵抗する者は、もちろん縛り上げられて連れていかれた。
 これで一日、合計1000人。十日あれば約1万人全員を起こせる。あらかじめ起こしてあった子供達の分を引いても。
 生存が可能かどうかわからないが、牛や羊、それと山羊と犬、猫、鶏なんかも起こした。
 家畜達は、しばらく宇宙船の小屋のような施設に留め置かれ、宇宙船ごと移動して広い島に運ぶことになった。

 第二期移住民は、ショック状態であると、メイさんは隠さずに首長大臣に伝えた。
 首長大臣は残念そうな顔をして、「分かりました。『ロール』への入り口はしばらく封鎖します」と答えた。
 放り出された「新しい環境」に、第二期移住民が慣れるまで、様子を見ようと言うことになった。
 元・鉱山組は、自分達の筋力を生かせる仕事として、自警団を作った。
 防犯が主な仕事だが、一番基礎にあるのは「海中人に危害を加えない事」と言うルールだ。
 まだ住民の居なかったどの家に誰が住むかを把握し、過剰な「土地」や「権利」を得ようとする者を取り締まった。

作り続ける事を目的としているコラボになります故、月一でアイデアの元としてテーマを掲げております。
テーマから投稿された作品が色々な方々の目に留まり、そこから最終目標のコラボへと通づることが出来れば尚良しです!

楽曲でもよし、動画でもよし、小説、作詞でもよし、イラストでもよし。何でもよし!
とにかく作り続ける事!
身体に無理のないように!

完全思いつきなんで、上手くいくかわからないですが楽しく、そして素敵なオリジナル作品がどんどん増えていければいいなあと思います。

ルールは追々追加していくと思われます。

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