欠陥品の手で触れ合って・第二楽章 3 『Derringer』

投稿日:2009/06/06 00:51:58 | 文字数:2,565文字 | 閲覧数:183 | カテゴリ:小説

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欠陥品の手で触れ合って・第二楽章・3話、『Derringer(デリンジャー)』をお送りいたしました。
副題は、呼んで字のごとく『デリンジャー』。
最後の方で凛歌がぶっ放した、アレです。
さて、ぱぱりん登場(言うまでもなく悪役)です。
第一部で黒服たちを散々コケにした凛歌ですが、今回はどうなるのでしょう?
そして、次回かその次あたりに、皆様もご存知のあの亜種が登場いたします。
(一番最初に出てくる亜種を当てた人から日常編のリク受け付けようかな・・・)
それより何より気になるのは、現実離れし始めた駄文に、皆様付いてきてくれるのかということ!(かなり深刻)。

それでは、ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
次回も、お付き合いいただければ幸いです(かなり切実)。

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TEXT
 

「凛歌?」

「んー・・・?」

こてん、と頭を胸に預けた状態で、凛歌が応える。
胸に頬を寄せて、うつらうつらとしていた。

「今日は、甘えただね?嬉しいけど。」

「んー・・・。」

小さな手が、彼女自身が作ってくれた黒いカッターシャツを握った。
頭を撫でると、喉を鳴らす猫のような仕草をする。
凛歌の両手が伸びて、頭を撫でていた手を軽く掴まれた。

「手・・・大きい。」

まじまじと見て、ぽつりと呟く。

「帯人の手、好き。触れてくれて、撫でてくれて、甘やかしてくれる・・・大きくて、あったかい手。」

ひっくり返されたり、指先で形をなぞられたりして、少しくすぐったい。
しかし、同時に胸騒ぎがした。
熱心な凛歌の行為が、もう、この手で触れられることがないかもしれない、と、手の形を記憶に刻み込もうとしているみたいだった。
僕の手に触れる凛歌の、左手を捕まえる。

「凛歌の手は、小さいね。」

その手には、掌から手の甲に貫かれた、ひきつれたような傷跡があった。
僕が、図らずもアイスピックで貫いた傷だった。

「僕も、凛歌の手は好き。抱きしめてくれて、あやしてくれて、愛してくれる・・・小さくて柔らかい手。」

傷跡を指先で撫でると、小さな笑い声が漏れた。
どうやら、くすぐったかったらしい。

「ねぇ、帯人。」

胸元から顔を上げて、凛歌が僕を見上げる。

「愛してるよ。」

騎士の叙任宣誓のように清廉で、子供のように捻りのない、言葉。
凛歌は、『大好き』と言ってくれることはそれなりにあったが、今の今まで、『愛してる』と言ってくれたことはなかった。
それが何か、ひどく不吉な想像を掻き立てる。
腕の中に大事に抱いているはずなのに、凛歌が、酷く遠かった。

「どうしたの?帯人。嫌、だった?」

不安そうに小首を傾げる凛歌。
その仕草はいつもの凛歌のもので、ほんの少し不安を和らげる。
頭を撫でて、唇に触れるだけのキスを落とした。

「僕も、愛してるよ。凛歌。」

小さく温かな身体を抱いて、ただそれだけをようやく搾り出した。
よかった、と呟く凛歌。

「明日、ちょっと仕事が大変そうだから、ちゃんと家にいてね?真っ先に出迎えてくれなきゃ、やだよ?」

「あ、誕生会って言ってたっけ。」

「そ。こっちも準備があるんだから、一週間前に迫ってから言うなっての。」

いつもの軽いノリで茶化す凛歌が、淡い笑みを浮かべていた。
僕は、凛歌に対して抱いていた不安が決して気のせいではなかったことを、これからの数日の間に嫌というほど思い知ることになる。


窓から見上げた空は、曇天。
日が長くなってきて、晴天ならばまだかなり明るい時間帯であるというのに、外はうっすらと暗かった。
そして、空気。
間違えるはずの無い、暗い匂い。
『奴』が、近くにいるのだ。
タイムカードを押す手が、震える。
ロッカーに収めた自分のリュックから、ポーチを取り出した。
天然石をいくつも鎖で連ねたブレスレットを大量に取り出し、幾重にも両手首に巻きつける。
しゃりしゃり、と銀の鎖が触れ合って涼やかな音を立てた。
小さな巾着状の袋を、ベルトに括りつけ腰から下げる。
両の耳には水晶球のイヤリング。
胸元にはお守りのように帯人と揃いのペンダントを下げて、左手を見る。
薬指に飾られた指輪に、唇を落とした。
デリンジャーを腰の後ろ、ベルトに挟む。
白いスプリングコートを着込んで、目深にフードを被った。

「あいしてるよ。」

ロッカールームで呟いた言葉は、誰にも聞かれず空気の中に解けていった。


職場の玄関を一歩出た瞬間、周囲の雑音の一切が消えた。
通行人の会話、車の騒音、そういったものが全て、消失したのだ。
周囲を見やると、猫の仔一匹姿を見せない。
試しに、職場の窓から中を覗くが、誰もいなかった。

「・・・・・・結界。」

急に周囲の人間が消えたのではない。
私が、向こうから消えたのだ。
この結界の中に入ることによって。

「いい加減、姿を見せたらどうだ。それだけ気配を垂れ流しにして、まさか気付かれてないなんて、思ってないよな?」

応える声は、無い。
そのせいで、私の言葉は独り言にしか聞こえない。

「聞いてるのか?それとも、トシで耳が遠くなったか?えぇ?悟道 上近(ごどう かみちか)ッ!」

唐突に。
そう、唐突に、それは現れた。
長身痩躯、闇色のコートを着た、だいたい20代後半くらいの、男。
顔立ちは日本人のそれだが、頭に頂く毛髪は柔らかそうな薄茶色、柔和そうな眼はオリーヴのような黒緑をしていた。
しかし、見た目に騙されてはいけない。
9年だか10年だか前に師事していた頃も、こいつは今とまったく変わらない姿をしていた。
魔術師(マグス)、悟道 上近。


「いけないな。」

そいつは、呟く。

「凛歌、君は知らなかっただろうが、私は父親なのだよ?師であり、父親である私を、10年近くにわたって騙し続けるとは・・・少し、仕置きが必要だね。」

「ほざけ。お前が私の父親だってくらい、気付いてたさ。涼が、お前の血を継いでないってこともな。」

そのことには、かなり前から気付いていた。
涼と私、似通った顔立ちをしているが、それでもそれは母親似の部分だけなのだ。
母親似の部分を全て取り払って比較すると、驚くほどに似ていない。
たぶん、幼少期に蒸発した父親は、涼の父親だったのだろう。
男運のない母に、ほんの少し同情する。

「私は、蜘蛛も蛇も大丈夫だし、ゲジゲジなんかも嫌いではあるが、まだ大丈夫だ。」

父親を名乗る眼前の男に対し、およそ関係がないようなことを淡々と告げる。

「だがな、私は、覗き趣味の変態だけは許容できない。あれに比べればゲジゲジの方が百倍愛らしいと思うぞ。勿論、誰のこと言ってるか、判るよな?それと、言ってなかったか?それとも、トシで忘れたか?なんだったらもう一回言ってやる。」

悟道との距離は、約1間(1間=約1,8m)。
黒緑の深淵と、対峙する。

「次に会う時・・・いや、遭う時は、必ずブチ殺すと、言ってただろうがっ!!」

腰の後ろから、デリンジャーを抜く。
そのまま、盛大にぶっ放した。

日々妄想を文章にしています。

妄想・・・いえ、想像たくましいです。

甘やかされるよりは甘やかしたい人(だと自分では思っている)



(追記)
約一年ぶりに活動再会という名の復活を果たしました。
以前のような更新ペースは守れないかもしれませんが、見捨てないで下さると嬉しいです。
無言で消えて、申し訳ありませんでした。

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