「ツキノカケラ」小説/第三話

投稿者: usericonルナリーさん

投稿日:2020/07/22 19:22:15 | 文字数:4,882文字 | 閲覧数:79 | カテゴリ:小説

ライセンス:

今月のテーマ「夜空」への投稿作品です。

段々、騒がしくなってきた第三話。

次回も騒がしい話は続く予定。

ルールの無い世界なんて何処にも無いんですよ。

カイはカイト、ウータはウタ。

前のページへ
1
/1
次のページへ
TEXT
 

 晴れ渡って居てくれちゃ困る船出の日は、風の心地好い曇り空だった。
 錬を含めた5人の青年達が、数週間分の水を持って、舟の旅に出た。モーターやスクリューなんてまだ作れない私達の技術では、先住民が船頭になって、乗組員達がオールで舟をこぐ。
 食料は、道案内をしてくれる先住民達が魚を採ってくれるそうだ。
 その5人のうちの一人に、私から言葉を学んでいた人が居る。名前は確か、カイって言ってたっけ。
 彼は私よりずっと年上だったけど、良い意味で知識に貪欲で、疑問には素直な生徒だった。きっと、新しい土地で、通訳としてうまく仕事をしてくれるだろう。

 錬達が旅に出てから数ヶ月もしない夜、ポッドの明かりもつかなくなってきていた宇宙船に、一つの通信が入った。
 私達が見守る中、通信技師のおじさんが、チューナーを操作しながら、途切れそうになる電波を追う。
「こちら…05型…。第一期…移住…船舶…応答…願う…」と、音声が流れた。
 こちらの宇宙船には、もう音声を送るのに使ってられるエネルギーは無かった。技師のおじさんが、モールス信号で、自分達が第一期「移住計画」の生存者であることを説明していた。
 通信機を耳にあてて真剣に聞いた後、おじさんが言うに、「第二期移住計画の船が、ほぼコントロール不能になったらしい。この星に『不時着』したいと言っている」と言うことだ。
 私は、すぐメイさんの所に駆け付けた。話を聞いたメイさんは、
「不時着させるなら、島のある場所に」と言って、私はその言葉をそのままおじさんに伝えた。
 私は、メイさんの言わなかった真意が分かった。この星の海の中には、多数の先住民が住んでいる。彼等を犠牲にすることは出来ない。
 技師のおじさんもしっかり頷いて、「二期移住民よ。陸地を感知することは可能か?」と発音しながら、信号を打つ。
「先人…よ…応答…感謝す…る…」と言う、やはり途切れ途切れの音声が届く。
 その話を纏めると、その船は宇宙空間を、わずかなエネルギーの放射でゆっくり動いている状態なのだそうだ。
 自動システムの宇宙船に民間人だけを乗せて宇宙に放り出した第一期の反省を踏まえ、アンドロイドの操縦士と通信技師が配備され、宇宙船を動かしているらしい。
 通信は、そのアンドロイドの操縦士からのものだった。
「レーダー…は…生きてい…る」と、返事が返ってきた。「エ…ンジンが…機能…しない…。逆噴射…不可能…」
 技師のおじさんが、大袈裟に舌打ちをした。「宇宙空間から自由落下で突っ込むしか出来ない状態のようだ」と、忌々しそうに呟く。
 着地する陸地を選ぶにしても、宇宙空間から見たら、私達の村でさえ、ノミやダニと同じくらいにしか見えないだろう。
 先住民の命も大事だが、私達だって不時着に巻き込まれて死にたくない。それは、他の生存者も同じだと思う。
 私達がどうしようどうしようと騒いでいると、陸地の騒ぎに気づいた先住民の、ウータって言う女の子が、事情を聴いてくれた。
 紫色に近い、不思議な色の髪をしているウータは、「ウェリア極地に近い海峡に深い海がある。そこでなら、宇宙船を受け止められるだけの水があると思う」と提案してくれた。
 一刻を争う事態だったので、私はウータの提案を、メイさんを通さず直接技師のおじさんに伝えた。
「北の極地の海を目指せ。深海に船を。この海には、知的生命体が生きている。浅瀬には降りるな」と、技師のおじさんは信号を打った。
 間もなく、夜空の中に銀色の発光物体が見えた。それは、私達が乗って来たものよりはるかに大きい宇宙船だった。
 宇宙船は、大気との摩擦で僅かに赤く光りながら、空の遠くに飛んで行く。北の極地を目指して。

 第二期移住民を乗せた宇宙船は、無事に北の深海に着水できた。
 アンドロイドの乗務員達は、私達の島に「着水の成功」と、「死傷者0」を伝えてきた。宇宙船は機内の空気で自然と海の上に浮かび上がったらしい。
 突然の出来事に、ウェリアの先住民達は非常に驚いていたと後で聞いた。
 この事件は、先住民の間で、私達の「故郷を無くした船」と言う歴史と一緒に、「天空を引き裂いた船」と言う名前でニュースになった。

 アンドロイド達は用心深かった。海の上に浮かんでいる状態で、乗客をポッドから出すのは不適当と判断した。
 私達が「代表者を送る」と言う信号を送信すると、
「感謝…。伝令…を…待つ」と言う音声が帰ってきて、通信は途切れた。
 私とメイさんは、誰より先に「第二期移住民」の所へ行ってくれと先住民から頼まれた。先住民達も、私達の時とは、移住の規模が異なると分かったのだろう。
 でも、私達が極地に辿り着くまで、手漕ぎの舟じゃ数年がかりになってしまう。
 そこでも、ナイスアドバイスをくれたのはウータだった。
「海の中には、チューブが通ってるよ。ガスでカプセル状の乗り物を飛ばして、長距離移動できるの。それに乗って行ったら?」
 そんな文明があったなんて! って言うのも失礼だけど、先住民達は唯「服を着る習慣」と「家を建てる習慣」が無かっただけで、やっぱり原始人ではなかった。
 私とメイさんは、先住民が用意してくれた、酸素を供給してくれる装置のついた小型の丸いカプセルに入り、先住民達の手で「チューブ」の乗り場に連れて行ってもらった。
 人魚の姿になったウータが、仲間達に指示して、「海の中で息が出来ない者」の扱いを説明してくれていた。
 海水越しだと唇を読むしかないんだけど、私も長年「言葉の先生」をしていたのは無駄ではなかった。半分くらいは正確に読めたと思う。
 チューブの出入り口に行くと、四角い扉が天井に在った。先住民の言葉で、「ロール」と書いてある。地球の言葉で一番近いのを当てはめるなら、「道」。
 カプセルを先住民達の手でその扉に通してもらう。私達とウータが「ロール」の中に入ると、他の先住民は外に残って、扉を閉じた。
 カプセルが、水の表面までプカリと浮かび上がる。其処は意外にも空気のある広い駅のような場所だった。
 ウータが、小型カプセルを水際まで運んでくれた。私とメイさんは、カプセルの中でバランスを取りながら出入り口を開け、水に濡れないように外に出た。
 ウータは水から上がり、尾ひれを振って水を切ると、見る間に人間の姿になった。駅の片隅に置かれた「消毒箱」から、ガウンのようなものを取り出して身にまとう。
「この布、ちょっとダサいんだよね」と、ウータが文句を言った。
 チューブの中を通ってきた「大型カプセル」が、駅で扉を開ける。「30秒しか開いてないから、すぐ乗って」とウータが言って、私とメイさんは大型カプセルの中に飛び乗った。
 カプセルの中には、数人の乗客が乗っていた。みんな、似たようなガウンを着て。
「降りる時はどうするの?」と、私はウータに聞いた。ウータは、向かい側の扉を指で示して、「こっちが『出口専用』」と教えてくれた。

 ウェリア海峡までは、片道7時間の旅だった。この星での「7時間」なので、それが長いのか短いのかは、私とメイさんの体内時計にまかされている。
 でも、私達も、緊張のせいか喉も乾かないし、お腹も減らない。
 私とメイさんは、移動中にぽつりぽつりと地球の言葉で会話をした。
「メイさん。第二期の計画があったって事は、まだ地球は残ってるんでしょうか?」
「分からない。第一期の準備も、あわただしいものだったもの。私達のすぐ後に第二期計画が立てられたのかもしれないし」
と言って、メイさんは視線を少し下に向ける。
「もし、時間をかけて計画が練られたとしても、この星までたどり着くのには数万年以上かかる。その間に地球がどうなってるかは、今回の『移住民』が情報を持っていない限り、不明のままだね」
 そこまで話すと、ウータが興味を示してきた。「なんの話してんの?」と聞いてくる。彼女は、まだ地球の言葉はそんなに知らないようだ。
「私達の故郷の星はどうなってるんだろうって話してたの」と、私は先住民の言葉で解説した。

 ウェリア海峡最寄りの駅でカプセルを降りると、ウータが「人間の姿のまま出入りできる扉があるよ」と言って、私達をその便利な扉の所へ連れて行ってくれた。
 私達、第一期移住民がこの星に住むようになってから、先住民達も少しずつ意識が変わってきたらしい。
 ウータの話では、今、先住民達は、「地上人」と「海中人」のバリアフリーを考えた施設を多く作っているのだと言う。
「この星を共に豊かにしよう」と、あの日言っていた代表者の言葉は、嘘偽りなかったのだ。
 海の中だったから分からなかっただけで、「海中人」達は、「地上人」の存在を受け入れ、いずれは共生が出来る環境を早くに取り入れてくれていた。
 一度も息を止める必要が無いまま地上に出た。この星は寒暖差が少ないが、極地と言うだけあり、かなり寒い。
「春だから、そんなに寒くないんだよ」と、ウータが言う。
 冬に来ることにならなくてよかった、と私は心の中で思った。

 海の中に浮かんでいる宇宙船は、探さなくても目立った。近くに住んでいるらしい海中人の一団が、「あの変な銀色の船をどかしてくれ」と、私達に訴えてくる。
「船に乗っている者達と、連絡を取ります。少し…いえ、数ヶ月待って下さい」と、私は念のため多めの時間を見積もって申し出た。
 近所の人達はまだ何か言いたそうだったが、ウータが
「地上人は、まだそんなに高い技術があるわけじゃないんだ。数ヶ月待つくらい短いもんだろ?」と言ってくれたので、集団は、困り果てたと言う様子で解散した。
 私達が、手近でボートのようなものを用意できないかと、すったもんだしていたら、宇宙船のほうから救命ボートが進んできた。
 2体の男性型アンドロイド達が、私達の前にボートを停める。
「第一期移住民の方ですね。体温と脈拍数の測定から、女性2名と判断します」と、アンドロイドの一人が言う。「私はE-360。そして、彼はF-207です」
 恐らく、自分達の名前を名乗ったのだろう。「私は麟・加賀見。それと、彼女はメイ・カシス。それと、こちらの女性は、ウータ」
 アンドロイド達は、不思議そうな顔をした。「もう一人いらっしゃるのですか? 私達のセンサーでは感知できませんが」
「先住民なので、恐らく体温や脈拍数が、地球人とは異なるのだと思われます」と、メイさんが言った。
「承知しました。では、3名ですね。ボートにお乗り下さい」と、アンドロイド達は言う。
 私達は、ウータが取り残されないように、メイさん、ウータ、私の順番で救命ボートに乗った。

 乗客たちが目覚める前の宇宙船に案内されると、其処には他にも数体のアンドロイドが居た。そして、「第二期移住計画」についての話をアンドロイド達から聞いた。
 第二期移住民は、だいぶ進んだ地球文明をこの星にもたらそうとしていた。それだけ多くの「貨物」を持っていたと言うことだ。
 第一期移住計画が発令されてから、地球人達は「宇宙に行く備え」をするようになった。宇宙船の開発にも力が注がれ、数万年の旅を維持できる技術が磨かれていた。
「入植から適応までの期間の備蓄は十分あります」と、E-360が教えてくれた。「第一期は数百人単位でしたが、今回は一万人規模の乗客が眠っています」
「成長の有無や、死亡者は?」と、メイさんが聞くと、「入眠装置は改良されました。仮死に近く、なおかつ、生命維持に長けるように。私達も、24時間ごとに各ポッドの様子を見回ります。現在、死亡者は0です」と、返事が返ってきた。
 私は、倉庫の中を見せてもらって、この「第二期移住民」の登場を、喜べなくなった。
 私達が「迷子の移住者」であるなら、彼等は「土地を求めてきた侵略者」だった。
 貨物の中には、大量の銃器があったのだ。

作り続ける事を目的としているコラボになります故、月一でアイデアの元としてテーマを掲げております。
テーマから投稿された作品が色々な方々の目に留まり、そこから最終目標のコラボへと通づることが出来れば尚良しです!

楽曲でもよし、動画でもよし、小説、作詞でもよし、イラストでもよし。何でもよし!
とにかく作り続ける事!
身体に無理のないように!

完全思いつきなんで、上手くいくかわからないですが楽しく、そして素敵なオリジナル作品がどんどん増えていければいいなあと思います。

ルールは追々追加していくと思われます。

もっと見る

作品へのコメント0

ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!

新規登録|ログイン

オススメ作品10/25

もっと見る

▲TOP