まるで歌っているような
精緻なつくりの置き人形
村一番の職人の
死んだ娘の生き写し
想いを込めた人形は
星に願いをかけずとも
娘の愛した童謡を
教わらずとも歌い出す
ひとり残った職人に
やさしい歌を繰り返す
歌う娘の人形の
祟りにおびえた村人は
無理矢理小屋から運びだし
村の広場で火にかけた
歌しか歌えぬ人形は
それでも歌を歌うのみ
娘の愛した童謡を
何度も何度も繰り返す
悪夢のような火が消えて
いつしか歌も消えていた
村一番の職人は
失意の中で嘆きつつ
忘れられない想いから
ただ人形をつくるだけ
歌う姿に作られて
歌う力を手に入れた
罪なき娘の人形の
よくある悲しい物語
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