【カイメイ】お菓子がないなら・2【レンリン】
投稿日:2011/10/27 00:36:11 | 文字数:2,818文字 | 閲覧数:1,249 | カテゴリ:小説
まだ引っ張る兄の指は甘いに違いない編。
一応前作がらみではございますが単品でもそれなりにお召し上がりいただけます。
こんなんにカップリングタグ付けていいもんなのか…!
うちのレンくんはツンデレン成分含むイケレンです。
その実態は男前度で兄さんを遥かに凌駕する。
でも2人とも相方には地球が逆さになったとしても勝てません。
勝てません。
「カイト、それ6個目」
「う…」
オレ専用のクーラーボックスからモナカアイスを手に取ったら、シンクで洗い物中のメイコがこちらに背を向けたままそう言ったので、かなわん、と思いながらモナカを戻し、扉を閉めた。
アイスは1日10個まで、と定められているオレにとって、まだ午後3時の時点で6個目となるとあとがつらい。風呂上がりに3つは行くから。
「あーでも口寂しい」
「自分の指でも舐めてればいいじゃない」
「だからそれは」
諦めきれないオレをクスクス笑うメイコに苦言を呈していると。
「あっ、カイ兄だけずるい!めー姉リンもおやつ!!」
「お前さっきも食べてただろ」
「3時♪3時♪おやつの時間だわー!」
「聞けよ」
楽譜を放り出してメイコに突進してきたリンの後ろを、レンがため息をつきながら追ってくる。
「あら。じゃあいつもの棚に入ってるやつ、どれか1つだけね」
「はーい。…って、アレ。なんにもないよ」
「うそ」
「空っぽだよーほら」
リンに促され、オレもお菓子専用ひきだしの中を覗きこみ、頷く。
「空だね。めーちゃん買い忘れた?」
「えっ、ホントに?やだごめん。そんなに消費してると思わなくて」
「え?ええええええぇぇええ!!じゃあリンのおやつは!?」
「ごめんごめん。えっと、カイト、その1番上の棚開けて。平べったい缶があるから」
「え?でもそれって今朝ミクに持たせたやつじゃ」
「あっ」
メイコの時が止まる。
つまりこういうことだ。まさしくこんな時のために、日持ちのするお菓子をいつも棚の1番高い場所、すなわちオレしか届かない場所にこっそりと常備させてあった、さすがのメイコさん。
しかしそこにあったクッキー詰めの缶は、今朝久々にグミちゃんとミキちゃん女子高生組でレコーディングだとはしゃぐミクに、じゃあ休憩中にみんなで食べなさいとメイコが渡したのだった。
そんなわけで、メイコは顔面に「しまった」と書いたまま固まっている。
「えっ、ないの?なんにもないの?リンのおやつは!?」
「ご、ごめんねリン」
「いいじゃんたまには我慢しろよ」
「やだぁー!」
ぴゃああぁと泣き始めたリンをこんな事態には慣れているレンが「あーもー」と言いながらあやす傍らで、オレとメイコは目を合わせて苦笑するしかない。
「泣くなよ。お菓子がないなら買いに行けばいいだけだろ。めー姉、リンと買い物行ってくるから、ついでに夕飯の買い出しもしてくるよ。…って、こらリン!」
しっかり者のレンがそんな見上げたことを言うそばからリンはごろん!と床の上に丸まり、
「……リンはただいま燃料切れでうごけません」
涙目で頬をふくらませて、そんな駄々をこねた。
「お前なぁ…。じゃあもういいよ、俺1人で行ってくるから…ってうわ!」
呆れたため息をついたレンが立ちあがろうとすると、いきなりリンがレンの腕を勢いよく引っ張ったために、レンはバランスを崩して床に転がった。そのままリンに抱きつか…いや、巻きつかれている。
「ダメです。レンはここにいないといけません」
「なんでだよ」
「リンがさびしいからですー!!」
「こらぁ!」
またぴゃあぴゃあと泣き始め、そんなリンにしっかり絡まれて起き上がれないレンは、怒鳴りながらも頬が赤い。そりゃこんな生き物に縋りつかれたら色々とたまらんだろう。
しかしおやつが切れるとリンはこんなに情緒不安定になってしまうのか。知らなかった。
オレはクーラーボックスの中からとっておきの一品を取り出しリンに差し出す。
「ほらリン。オレのアイスあげるから」
「アイスは溶けちゃうもん!リンは溶けないのがいいんだもん!」
「ご、ごめん…」
…アイスの存在意義を全否定された。
「ごめんねリン。ほら、みかんあるじゃない。みかん食べて待ってて」
「みかんはみかんだもん!おやつじゃないもん!」
「す、すみません…」
床の上でレンを羽交い締めにしながら、非常に理不尽にプンプン怒るリンに、メイコがこうべを垂れて謝っている。なんだろうこの光景。
メイコは困ったように笑いながらよしよしとリンの頭を撫で、立ち上がってエプロンを外した。
「じゃあ、私が今すぐ買ってくるからね」
「え、でも姉ちゃんも兄貴も夕方から仕事だろ」
「大丈夫よ。リン、何がいいの?」
「…ぶりおっしゅ」
「わかった。じゃあそれまでカイトの指でもくわえて待っててね」
むずがる駄々っ子を優しくいなし、お姉ちゃん然とした笑顔でそう言うメイコ。
だがその最後の言葉に、一瞬の間を置いて、オレを含めた3人がえ、と振り向いた。
「なんでカイ兄の指?」
「あ、そうそう。いいこと教えてあげる」
人差し指を立てて得意げに微笑んだメイコに、嫌な予感がしたオレは。
「カイトの指って舐めると甘いのよ」
「メイコオオォォォ!!!!!!!!!」
咄嗟に叫びながら飛び出し彼女の口を塞いだが、全然間に合わなかった。
しかも燃料切れのはずのリンが即座に喰いつき、ガバッと起き上がる。
「えっ!なんで?なんでカイ兄の指甘いの?わかった!アイスばっか食べてるからだ!」
「それならリンだっていつも甘いもんばっか喰ってるじゃん」
「リンはカイ兄みたいな変態っぽい食べ方じゃないもん」
一方メイコはオレに抑えつけられた口の手をどけようと、もがきながら睨んでくる。
……頭痛い。
「ちょっと何どいてよカイト」
「あのなぁ…そういうこと人前で言わない!」
「は?なんで?」
「なんでも何も!」
「あー恥ずかしいのー?自分の指が甘いってことー?」
「なにニヤニヤしてんの!?別に恥ずかしくないし!そういうことじゃなくて!」
「ねぇねぇカイ兄、ためさせてー?」
「えっ」
壁際でメイコと言い争っていると、いつの間にかリンが目をキラキラさせてオレを見上げていた。
逃げる間もなく、指をパクリ。
「…………………………。……おいしくない」
そしてペッと吐き捨てられるオレの指。哀しい。
「ぜんぜん甘くなんかないよーめー姉!」
「えーホントに?おかしいなぁ」
「ちょっ、メイ…!」
そしてまた逃げる間もなく、今度はメイコに指をパクリ。
もぐもぐもぐ。…頼むから味わうな。
視界の片隅でレンが額に手を当ててうつむいている。
あぁホントごめん。君は空気の読める子だよね。オレのメイコがホントごめんね。この人素なんだよ…
永遠のように長く感じられた数秒の拷問ののち、メイコが指から口を離し、
「私には甘いわよ?なんでかなぁ?」
そう言うと、リンと共に眉をひそめて首を傾げたので。
「めーちゃんもういいから!買い物行くよ!!」
「リン、こっちおいで。…一緒に待ってような」
オレ達は、それぞれの相方を責任もって自分の元へ引き寄せ、その場から逃げ出した。
帰ってきたら、リンがレンの指をくわえて満足げにしていたことは言うまでもない。
作品へのコメント1
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【カイメイ】2355
私の弟兼恋人は、どうやら羞恥心がないらしい。
TPOを無視して好きだとか愛してるとか囁くし、妹たちの前でも平気で抱きつくし、おまけに甘えたで泣き虫で。
恥ずかしいからやめなさいと何度言っても治らないので、もうこれは病気だと思うことにして早数年。
…病状は、悪化の一途をたどっているような気がしなくもない。
「……」
【カイメイ】2355
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【レンリン】 100分の1の「好き」
「レーンッ」
仕事を終えて帰宅し、ねーちゃんが作ってくれた遅い夕飯を食べ、風呂に入ってようやく自室に戻ってきた俺は、その行動に最初から最後までピッタリと付いて回ってきた相方に、ベッドに座った途端タックルをかまされ布団の上にひっくり返った。
「…リン。頭ぶつけるからタックル禁止」
「はーい」
元気なお返事だが、明日にはまた同じことをするに違いない。今日はなんとか免れたが、そうやって何度でも壁に頭をぶつけるのがある意味俺の大切な日課である。
【レンリン】 100分の1の「好き」
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【カイメイ】ゆきのひ
「はい、めーちゃん」
「ありがと」
彼から手渡された赤いマグカップからは甘い香りが漂っていた。
息を吹きかけ、一口啜ると舌先にほのかな暖かさが広がる。彼が淹れてくれるココアは甘さも温度も丁度良くて、申し訳ないとは思いつつも作業中はついついリクエストをしてしまうことが常だった。
「終わりそう?それ」
【カイメイ】ゆきのひ
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【カイメイ】 お兄ちゃん、お願い! 【KAITO生誕祭】
女所帯である。必然的に女性陣が強い。
それは単純に数の差と、やはりそれぞれの性格の問題だろう。
カイトもレンもそれほど自己を主張するタイプではないので、基本的にこの家の主導権は女性側にあった。
まず、台所と家計と一家の平和を預かるメイコには男性陣どころか誰も勝てない。
【カイメイ】 お兄ちゃん、お願い! 【KAITO生誕祭】
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【カイメイ】その背を追って
『生まれて初めて見たものは何ですか?』
つい最近雑誌のインタビューでそんなことを聞かれた時、リンは即座にメイコ姉だと答えた。
『インストールされて目が覚めたら目の前にめぇ姉がいて、ぎゅって抱きしめてもらったの』
嬉しそうに思い出を語るリンを横目に、おれはしばし考え込む。
こんにちは、レン。俺のはじめての弟。
【カイメイ】その背を追って
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【カイメイ】モーニングコール
――今日もまた、腕の中は空っぽだった。
薄暗い部屋の中、ぼんやりと目を開く。壁時計は起床時間の10分前を示していた。
空しく宙を切った右腕を自分自身に誤魔化しながら、俺は寝返りを打つ。
夢の中では確かに彼女を捕まえたはずなのに。柔らかさも甘い匂いも、俺の手には何も残っていない。
もう何度目だろう。次いつ会えるか決まっていない時に限って、こんな夢ばかり見る。
【カイメイ】モーニングコール
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【カイメイ】 大人の仲直り
カイトはすれ違う人が驚いて振り向くようなスピードで駅の階段を駆け降りた。
仕事帰りのメイコが自分を待っている。
久々に大ケンカをして、一日連絡がつかなくて、思わずプレゼントなんか買ってしまって、やっと繋がった電話の向こうで、怒っていたはずのメイコからかよわい声音で謝罪なんか聞かされたら、のんびりしていられるわけがない。途中で「前方の電車が遅れているため間隔調整に5分ほど停車します」というアナウンスが流れた時、(死ねばいいのに…!)と歯ぎしりしたことは彼女には秘密だ。
「カイト!」
駅を飛び出し彼女が待っているカフェに向かおうとしたら、後ろから他でもないメイコの声に呼ばれ、びっくりして振り返った。
【カイメイ】 大人の仲直り
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【カイメイ】 カイトが叫ぶ『めーちゃんなう!』
自分の仕事も一切手を抜かず、忙しい日々の中でもちゃんと料理を作り、洗濯をし、掃除もし、下の子たちの面倒も見て、ついでにオレの面倒も見てくれる。
色々と困った所がないわけじゃないけど、それを差し引いたってメイコはものすごく頑張り屋さんで、でも彼女には頑張ってるという意識も多分なくて。
本当にメイコはよく出来た――……
「…いい嫁さんだよなぁ」
キッチンにあるテーブルに肘を突いて彼女の料理中の後ろ姿を見ていたら、おっと心の声が出てしまった。
【カイメイ】 カイトが叫ぶ『めーちゃんなう!』
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【ぽルカ】 ひどいあなたに捕まった
薄暗いスタジオの片隅。今日の撮影の主役である2人の美男美女が、見つめあい小さな声を交わし合っている。
スタッフたちは一様に気を利かせ、決して傍には近寄らないようにしていた。
ただはたから見ればどこかぎくしゃくしたその様子は、仲睦まじいご両人の邪魔をしないための心配りというより、触らぬ神に祟りなし、という形容がふさわしかったかもしれない。
「寸止めです」
「承知」
【ぽルカ】 ひどいあなたに捕まった
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【カイメイ】カイトさんの男の余裕
「もうっ!おにいちゃんとはお買い物行かないっっ!!」
帰って早々リビングに買い物袋をぶちまけ、ミクは頬を膨らませて叫んだ。
大小色とりどりの紙袋、中身は洋服だったり鞄だったり雑貨だったり。
今日は久々のオフにミクが買い物に行きたいというので、丁度同じオフだったカイトが荷物持ちとして同行したのだが。
「どしたの、カイ兄なにしたの?」
【カイメイ】カイトさんの男の余裕
MEIKOさんを筆頭に、年長組、大人組、ボーカロイドが大好きです。
液晶の向こうに行くことは諦めたので悔しいけどめーちゃんはカイトさんに任せることにしました。幸せになれ。幸せになれ。