小説『白蝶―White Butterfly―』

投稿日:2010/03/23 00:21:55 | 文字数:2,387文字 | 閲覧数:681 | カテゴリ:小説

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紫の髪の男性ボーカロイドと、ピンクの髪の女性ボーカリストのお話。
キスシーンがあります。

大人な恋愛が好きな方。不思議な雰囲気が好きに方へ。

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TEXT
 

どうして…彼はずっと黙ったままなのか。
握り返してくれてはいる。でも、その体温は冷たく感じて。

ずっと傍にいれれば良いと思っていたのに。
こうして、一緒に座っていられれば、それで十分だって…。

でも、実際それが叶うと。
もっと先を求めたくなってしまって。
歌声を聴いていたくて、独占したくて。
自分のためだけに、歌ってくれていれば良いのに…なんて、醜いことも考えたりしてしまって。

この手を、引き寄せたくて、たまらない。



********白蝶********



「……」

見上げる空には小さな星が精一杯光っている。
都会だったら、これだけあれば良い方なのだろう。
時より吹く風に、女性は薄桜色の髪を押さえる。

待ち合わせより、大分早く着いてしまったらしく、
携帯を握ったまま、空を見上げていた。
耳にはヘッドフォン。あえて少し音量をあげている。

そこから流れる歌声は、いつでも女性の心を癒してくれるものだ。


まだ決して暖かくない3月の夜。
女性はただ、1人の待ち人を待っていた。

忙しくて、中々会えない待ち人。
恋人じゃない。でも、友達じゃない。
そんな中途半端な関係。
それが心地いいのか、逃げているだけなのか。


…この空の下に、彼はいるのか…たまに不安になったりして。
捕まえてしまえば良いのに。
自由に舞っている彼が好きだから。
つい、その手をいつも離してしまう。

勇気のない自分に、いつも嫌悪感を抱いてしまう。
同時にアプローチを待っている部分も確かにある。
そんな葛藤を、待ち人は知らない。

知っているわけがない。


…と、後ろから肩を叩かる。
女性はヘッドフォンはつけたままで、視線だけをそっと向けた。
そしてすぐにヘッドフォンをとった。もちろん携帯もしまう。
…待ち人だった。

少々困惑気味の顔。
優しいから、待たせた事を心配しているのだろう。
そう察して、女性は先に微笑んだ。

「…そんなに待ってないから…心配しないで」

待ち人はほっとしたように、安堵の表情を浮かべると、すっと手を差し伸べてきた。
女性も、恥ずかしそうにその手を握り返す。


他愛もない話をしながら、喧騒に塗れた都会を歩く。
今日は待ち人がどうしても見せたいものがあると誘って来た。
待ち人からの初めての誘い。

期待なんて、していない。
しても、待ち人は返してくれないだろうと、なんとなく思っているからだ。


****


都会からすっかり道を外し、夜の静寂を一層濃く感じる小道を歩いていた。
あれから、既に30分くらいは歩いている。

どれだけ聞いても、待ち人は微笑むだけ。

『一緒にいられれば良い』

女性も聞くのを諦め、ただ待ち人の風に靡くポニーテールを見つめていた。




やがて。
待ち人が足をとめた。
丘の上のような場所。
目の前には、大樹と、その手前に手作りのような二人掛けの椅子。
月の光を受けて、その在り来たりな風景は美しく輝いてみえる。

待ち人は疲れていないかと女性を心配する。
女性が平気と返すと、待ち人はにっこりと笑った。

そしてそのまま、女性の手を握り大樹へと歩を進める。

大樹の前まで来ると、待ち人は握っていた女性の手を
ぐっと自分の方へ引き寄せた。
女性の身体が傾く。

「…っ! …んっ…」

驚くのもつかの間、女性の唇は待ち人のそれに塞がれる。
貪る様な、求められているという快楽を嫌という程分かるキス。
魂まで持っていかれてしまいそうな感覚に、女性は目を瞑った。
待ち人は、女性の腰に左手で引き寄せ、右手で女性の甘い香りのする髪を触る。

長い口づけ。
ようやく解放された女性は、待ち人を見上げた。
待ち人の表情はよく、見えない。

「…白い、蝶…」
「…えっ…?」

見えるかと聞かれて、女性は視線を待ち人の背に向けた。

そこに…白いものが、ひらひらと飛んでいた。

「飛んでいる白いのが…そうなの?」

待ち人は頷く。
そして、女性をきつく抱き締めた。
同時に耳元で囁く。

『最近…黒い感情が湧き出てくる…』と。

「…きっと…私と一緒だと思うわ」

女性が囁き返した。

待ち人は、再び女性に軽いキスをすると、先ほどの白い蝶について語りだした。

永遠に続くだろう想いにだけ、祝福をするものだと。
伝説だから、本当がどうか分からなかった。

「けど…」
「けど…?」

待ち人はそこで一拍置くと、意を決したように呟いた。

「…我慢、出来なかったで…――」

あまりに小さすぎて、後半は全く聞こえないものだったが、女性にはしっかりとその意味は伝わっていた。

「それはつまり…口実だったってこと?」
「……如何にも」

待ち人の顔は、どんなものなのだろう。

「……ふふっ」
「あ、そ…その、い…いやだったのな「待ってた…」

「……えっ?」
「ずっと…待ってたわ」

待ち人の胸に顔を埋める。
温かい…温もり。

「貴方の中にある黒いものも、全て、私だけに注いて欲しい。貴方の歌も、紫の髪も、全て…全て愛しているの。」

女性は両腕で、待ち人をしっかりと抱き返す。

「お墨付きなら、もう逃げたりなんかしないわ」

待ち人の首筋をそっとなぞる。
そこから鎖骨へと向かって、口づけを落とす。
…愛してやまない、待ち人の全てを感じながら、女性はその首筋に囁いた。

「…もう、離さない」


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ここまでありがとうございます。
一切名前出してませんが…カップリング分かりましたか?

とにかく雰囲気だけを大切にしました。
私は大人の恋愛が大好きですっ!!

…「女性」の方…ちょっとエロいですかね?
…「待ち人」の方…絶対タジタジだろうなぁ(笑

ヴォーカロイド(特にレン)が大好きです☆

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