欠陥品の手で触れ合って・第二楽章 24 『Cavaliere&Giardiniere』

投稿日:2010/11/24 00:41:32 | 文字数:3,385文字 | 閲覧数:160 | カテゴリ:小説

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約一年ぶりにお目にかかります、アリス・ブラウです(びくびく)。
ブランカが出てきた後あたりでスランプに陥った上、仕事が忙しくなってすっかり投稿をサボっておりました(びくびく)。
そろそろ読んでくださる方々が愛想を尽かしてるんじゃないかと正直ビビリまくっております(びくびく)。
いままでゴメンナサイでした(スライディング土下座)。
欠陥品の手で触れ合って・第二楽章24話『Cavaliere&Giardiniere(カヴァリエーレ&ジャルディニエーレ)』をお送りいたしました。
副題の意味は『騎士と庭師』でそのままですが、発音のテンポがよかったので採用しております。
できればコメントいただけると、アリスのびくびくがちょびっと取れます。
それでは、次回もお付き合いいただけると幸いです。

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TEXT
 

悲鳴のように飛び交う剣戟。
打ち鳴らされる、剣と戦斧と仕込み杖。
決して崩れぬ世界の一部となったかに見えたそれは、徐々に乱れを見せ始めていた。
マーチが、押され始めたのだ。
ダイナの的確な援護にも拘らず、その身には無数の傷が刻み込まれ、インディオ風の衣装のあちらこちらに緋色を滲ませていた。
ダイナ、ブランカは互いに無傷。
ダイナは幾度となくマーチに庇われ、ブランカは攻勢であるがゆえに負傷を免れている。
そう、元々戦闘向きではないのであろうダイナが介入していることで、戦局は微妙な均衡を保っていた。
ブランカは宿敵ともいえるダイナに気をとられ、また、ダイナがマーチに的確な援護をすることで攻めあぐねていた。
また、マーチは戦闘向きではないダイナを庇うことによって負傷せざるをえなくなっていた。
ダイナはダイナで、戦闘を終結に導く決定打を持っていないが、彼女が抜ければ確実に悪い方向で戦闘に決着がついてしまっただろう。
三つ巴・・・とも少し違うが、似たようなものではある。
それが、崩れ始めた。
時折、花のようにぱっと散る小さな血飛沫を前に、水を得た魚のように攻める、ブランカ・・・・・・『殺意』。
とろんとした熱っぽい視線を鮮血に注ぎ、陶酔した笑みを口元に刻む。
耀く剣先が、予定調和のように・・・マーチの胸がまるで己の鞘であるとでも言うように、するりとその場所に飲み込まれた。

「が・・・っふ・・・。」

一拍遅れて、マーチが呻く。

「ちく・・・しょうがっ・・・!」

ごぼり、とおびただしい量の血を吐いて、崩れ落ちた。
そのまま身体の末端から結合を解かれて、さらさらと砂のように崩れて消える。
じりじりと下がるダイナ。

「ねぇ。」

声につられて隣を見ると、いつの間にか僕の隣にはノエルが寄り添っていた。

「あの子はー・・・『殺意』、なんでしょう?」

ただの問いかけではなく、何かを確認するような呟き。
ノエルに向かって頷くと、彼女は僕を見上げてほんの少し微笑んだ。

「だったらー・・・あたしが止めてあげないと・・・ダメ、だねぇー・・・あたしの、役割、だからー・・・。」

見上げていた顔が、ブランカに向けられる。

「あの子にはー・・・また恨まれちゃうだろうけどー。・・・ねぇ、帯人?」

彼女は、前を向いたまま、聞こえるか聞こえないかの小さな声で言った。

「もうこれから、絶対会うことはないだろうけどー・・・逢えて楽しかったよー?あたしねぇ、『忘却』だから、帯人のこと、こうやって逢えたこと、きっと忘れちゃうけどー・・・。」

ちらり、ともう一度見上げた眼と視線が合う。

「忘れないでいてくれると、嬉しいな。」

それだけ言って、ノエルは駆け出した。
まっすぐ、ブランカに向かって。
一瞬の出来事だった。
ブランカが向かってきたノエルの胸に剣を突き立て。
ノエルが剣を握るその手を逆に握り返し。
微かな光と共に、2人の姿は消滅した。
『忘却』。
ノエルは、自らを『忘却』と言った。
考えられることはひとつだ。
ノエルは、自分自身を使って『殺意』を『忘却』させたのだ。
解毒ではなく、解熱。
悲劇の先送り。
殺意の大元を断つのではなく、一時的に忘却させる。
傷は塞がっていないし、棘は依然として存在し、鮮血は流れ続ける。
間違っているとわかっていても、月隠 凛歌にはそれしかなかったのだ。
殺意の大元を断つということは、殺意を成就させることか、自分自身を殺害することに他ならないから。
『理性』が『殺意』を押さえ、『忘却』が一時的に熱を冷まして『殺意』を風化させる。
『殺意』はどこにも吐き出されずに、ただただ彼女自身の中に堆積してゆくしかなかったのだ。
彼女はいつか言った。

『ずっとずっと、誰かに殺して欲しかった。辛いんだよ、これ以上私の全方位型殺意を押し込めて生きていくのは。』

ブランカの鏡の欠片・・・『殺意』の欠片を手に取る。
どん、と腹に響く衝撃。
今までのような言葉は一切聞こえなかった。
伝わってきたのは、ちりちりとした苛立ちのような衝動。
自分の周囲を殻のように覆う厭わしい人間という存在と、それに向けられる破壊衝動。
自分もまた、人間でしかないと言う事実と、人間でしかない自分に対する破滅衝動。
時折、うっすらと誰かの顔が見えるときもある。
それは、まったく知らない誰かであったり、出逢ったときに現れた黒服の顔であったり、小樽で不快な思いをさせられた二人連れだったり、アカイトであったりした。
殺意を向けた対象、なのだろう。
寄るな、来るな、近づくな。
これ以上私に関わるな。
これ以上私を苛立たせるな。
それ以上近づくと・・・
私 が 殺 し て し ま う か ら 。
そう訳するしかないちりちりとした殺気が掌を焦がすようだった。

「あ、あああ、ああああああ!何してるっスか!?そんなとこで!!」

素っ頓狂な声が、沈黙を破る。
丸首のシャツに、ジーンズ。
トランプマークをあしらった作業エプロンのポケットには大きな園芸鋏。

「血まみれだし!騎士いないし!!ってか死んでるし!!?どうしようどうしよう陛下に怒られるっスよ!?」

突然現れた『庭師』は、可哀想なくらいに青ざめて、ひとりで騒いでいる。
じゃきり、と音がして傍らを見ると、パールが二丁拳銃のうちの片方を向けていた。

「煩い。黙れ。落ち着け。そしてキミは敵か味方かはっきりしろ。こっちは気が立ってるんだ。」

「ああああああああ!!銃っスか!?拳銃っスか!?それでウチのこと撃つつもりっスか!!?あああああああああああああ!ウチの人生終わったっス!女王陛下に首を落とされる終わりかと思ったけど予定外っスよ!!首が無くなるのも穴ぼこ開きまくるのもイヤっスよ!!」

可哀想なくらいに青ざめていたのが、これ以上ないくらいに青ざめている。
それがパールの神経を逆撫でしたのか、ひきりと米神がひきつった。

「・・・・・・帯人、コイツ撃っちゃったらダメか?」

「ダメだと思うなぁ・・・。」

「いいじゃないか。減るもんじゃなし。ちょびっと心臓撃つだけだから。」

「いや、減るから!色々減るからそれは!!」

ちっ、とパールの唇から舌打ちが漏れる。

「じゃあ妥協案。3秒以内にそのでっかい鋏を捨てればよし。捨てなければ射殺する。ハイ、1、2、3・・・。」

「うあうあうあうあうあ捨てるっス!ぽいっちょするっスから撃たないで!!」

エプロンのポケットから取り出されたそれが、ぽいっと捨てられて地面にざっくり刺さる。
確かに、武器として振り回されればそこそこ危ないシロモノだが、それ以上にパールの二丁拳銃のほうがよっぽど凶悪だ。
別にそれほど警戒する必要はないと思うけど・・・。

「そうやって無警戒でホイホイ『騎士』に近づいて死にかけたのを忘れたのか?」

半眼で軽くこちらを睨んでくる。
正論であるだけに反論できない。

「仕方ないわよ。『白兎』は・・・・・・だもの。寂しいと死んじゃう、・・・を・・・める『白兎』。」

アマルが謡うように小さく呟く。
が、その声はパールと『庭師』のやり取りに気をとられていてよく聞こえなかったし、アマル自身も誰に聞かせるわけでもなく呟いた独白のようであった。

「アンタ、『猫』っスか?」

鋏を捨て、軽く両腕を上げた姿勢のまま、『庭師』が問う。

「アンタが猫なら渡すものがあるっス。手を下ろすけど撃たないで欲しいっス。渡さないと陛下に怒られちゃうっスよ。」

ちらり、と視線でパールにお伺いを立ててみる。
スン、と鼻を鳴らして、パールは不承不承頷いた。

「出せ。ゆっくりと。なにかおかしな真似をしようとしたら、撃つ。」

びくびくとパールの拳銃を注視しながら、『庭師』が右手をエプロンのポケットに突っ込む。
再び出てきたその手は、白い封筒を摘んでいた。

「女王陛下から、『猫』に・・・っス。」

受け取り、裏返す。
ハートをデザイン化した赤い封蝋(シーリングスタンプ)が押してある。
それをぺりぺりとはがして、中身を取り出す。

「これは・・・・・・。」

黄色い、ハートのエースが封筒の中からのぞいていた。

日々妄想を文章にしています。

妄想・・・いえ、想像たくましいです。

甘やかされるよりは甘やかしたい人(だと自分では思っている)



(追記)
約一年ぶりに活動再会という名の復活を果たしました。
以前のような更新ペースは守れないかもしれませんが、見捨てないで下さると嬉しいです。
無言で消えて、申し訳ありませんでした。

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