親子の姿が見えなくなるまで見送っていた女性の後ろから、声が掛かりました。
「メイコ」
女性は親子を名残り惜しそうに見つめた後に、振り返り、男の名前を呼びます。
「カイト」
振り返った先にはメイコより背の高い、髪の色は藍色、瞳の色は髪の色を少し明るくした藍色。その青年を見ながらメイコは問い掛ける。
「タイミングが良いわね、カイト。何時から見ていたのかしら?」
カイトは少し慌てた感じで、考えるふりをしながら目を逸らし答える。
「え〜。メイコが泣いている少女の側にしゃがみ込む所からかな」
「もう‼︎ 最初からじゃない。それなら私が困っていたの見てたでしょう、助けてくれても良かったんじゃ無い?」
とカイトに拗ねた感じで聞いて来る。カイトがメイコに瞳を戻し、拗ねたメイコの耳元に唇を寄せ囁きます。
「君の子供をあやす優しい姿に見とれていて、声を掛けるのを忘れていたんだ」
カイトの声を耳元に感じ、言われた言葉に、拗ねていたメイコの頬が一気にピンク色に色付き、耳の先まで真っ赤に染まる。そんな姿をカイトに見られない様に慌てて背を向け照れた自分を誤魔化す様にカイトにおざなりに返事を返す。
「はい、はい」
そんな照れた様子のメイコをカイトが優しく見つめいる。しかし不意に声のトーンを落として聞く。
「あの歌を唄っていたのかい?」
カイトの声が自分を気遣う様な響きを持つ声音に変わったのを感じたメイコ。カイトの問いに一瞬地面に視線を落とすが、振り返らず、青い空に視線を移し、今は見えない月を探す様に青空を見渡しながら答える。
「ええ。あの子達の物語を」
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