図書館の騎士 4

投稿者: usericonkanpyoさん

投稿日:2013/03/24 15:19:13 | 文字数:5,168文字 | 閲覧数:50 | カテゴリ:小説

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少し長くなりました。

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凍て付くような恐怖。
来賓客や使用人たちは声も出せずに怯えていた。

骸骨の兵士達は更にホールに歩み寄より
アルやその部下達が剣を構えてその間合いを計る。

アルは目線だけでリンを探すが、その姿は来賓客に隠れて見えない。

腰を抜かし尻を床に落す紳士もいれば
連れ添いの女性を必死にかばう者もいる。

リンは骸骨の兵士を見つめていたが突然視界が黒く覆われた。
先程まで一緒に踊っていた小さな紳士がリンを抱き寄せたのだ。

「わ、わたしが、お、おまもり……します」
震えた声、涙が零れそうな目。
もともと頼りにはしていなかったが、なかなかどうして
勇敢な少年ではないか。

すこしばかり、意地悪な事を考えていたリンだったが
この小さな紳士には御褒美を上げなくてはならないだろう。

小さな紳士の頬をリンはゆっくりと優しく包む。
「大丈夫です、小さな騎士様。この場は、私がお守りしますから」
小さな騎士の頬にキスをした。

呆けにとられ、頬を赤く染める小さな紳士の手を外し
リンは前に歩む。

「アル、アル卿!どこだ!」
「こっちです!リン様」

リンはアルの元まですたすたと歩いていくと
身をかがませて小さな声で話を始めた。

「リン様、これは、一体……」
「この骸骨の兵士は、私の”依頼した兵”だ。害は無い」
「……は!?」

「説明すると長くなるのだが、この骸骨達は屋敷には入らない。
だから、来賓客達に危害も加えない」
「つまり、この骸骨共がリン様を護衛していると?」
「……いや、実はルカの事を守っている。
ここ数日、不穏な動きがあって、さる”お方”がルカの身を心配して
この物騒な骸骨兵を貸してくれているのだ。
お前達に内緒にしていたのは、まあ、その……」

「相手は只者ではないという事ですね」
「うむ。すまない。貴様を信用してないわけじゃないのだが」

リンがこういう行動を取った場合、尋常では無い事が起きている
というのが理解できた。それというのもアルは幾度も
リンに連れられて人間以外の敵と戦う事もあったからだ。

「それで、この事態はどう片つけましょうか?」

「この場は私が納めよう。お前は、この屋敷の周りを見回ってきてくれ。
おそらく……」

アルは言葉の先を悟った。
骸骨兵の持つ剣には、鮮血が滴っている。
これは、既に何かと戦って、血祭りにされたのであろう
その骸はおそらく、屋敷の外に転がっている筈。

「わかりました。手下を向かわせます」
アルは部下に、事を簡単に説明して数人を見回りに走らせた。

コホンと咳払いをして
静々と骸骨の方へ歩き、リンは手を三度叩いた。
とても響く音で、来賓客の視線は彼女に注がれた。

「いや、失礼。余興のつもりで魔法を披露させて貰おうかと
思ったのですが、ちと……やりすぎましたね。申し訳ないです」

どっと、来賓客の安堵の声が聞こえた。

「段取りでは、この王国の自慢の騎士、アル様にこの骸骨兵と
チャンバラでもと思ったのですが、この骸骨ども、どうもせっかちで」

来賓客がまばらに笑う。

「ネタもばれてしまったので、チャンバラはまたの機会に。
一応、我、ミラー家もまだ、この程度の魔法は使えるという
事を、皆様に披露したかったのですが、私もまだ若輩者ゆえ
今度はもっと皆さんを驚かせる魔法を勉強してまいります。
どうも、失礼いたしました」

パチパチと拍手。
来賓客はすでに笑顔で応えてくれた。
リンの言った失敗ではあるが、20体以上の骸骨を
見事に動かしたのだ。普通の魔法では中々できる事ではない。

リンは、スカートの両をつまみ、小さく頭を下げる。
すこし強引だったが、何とか場はやり過ごせそうであった。



ひと気の無い長い廊下を、ルカを先頭にリンとカイトが
ついて歩いていた。三人の向かう先は、ループ家が魔法の術式を行う
為の”瞑想室”である。

「重ね重ねだが……」
リンが振り向き、カイトに言った。

「無礼な態度は厳禁だ。国賓級の相手故、失礼な事は言うな。
司祭、王族でも100年に一度、会談できるかどうかの相手だ」

「おばあちゃま……。あの事も……」
ルカが心配そうに言う。

「ああ、そうだな、忘れとったわ。よいか?魔力が無い者が
その姿を見ると……少しばかり―――命が削られるかも」

「……え?」

「エナジードレインという力があって、生命力を吸い上げる」

「……。わ、私、死んじゃうんですか……」

「気を保て。あとは私が何とか結界を張るが……。無理して会う
必要もないのだけどね」

「い、いえ。私はその方と会わねばならないでしょう。
私の仕事は……」

「そうだな。お前は私の”見張り役”だものな」

「どうしても、リン様の魔法を報告せねばならないものでして……」

ミラー家の魔法力は絶大で
それ故、王国からその魔法力の行使に制限を与える事を
協会が進言したのである。
ミラー家の魔法は基本的に”魔法の本”を使う事で
魔法の行使が可能なのであった。

魔法の本は現在、教会が王国図書館の名で裁判を行っている最中で
ミラー家がその書を必要とする場合、王国に申請せねばならない。

そしてその申請を簡易的に行う事ができるように
王国図書館から派遣された”司書騎士”の認可を貰う事で
一部の魔法は使用可能となる。

「さて、この扉の向こう……、いるな。気配を感じる」

「で、では、ここで魔法使用認可の儀を……」
「はよせい、まったく」

「は、はい!では……」
リンはカイトの方に向かい、ひざまずき、瞼を閉じ頭を下げた。
カイトはリンの頭上に小脇に抱えていた古ぼけた皮表紙の本を
かざし口を開いた。

「ミラー家の魔法制限解除につき以下、リン・トオン・ミラーを
甲とし、王国立図書館を乙とする。
甲は乙に対し一時的に魔法使用の許可をするが
その条件として、ループ家家屋、またその敷地内で
この砂時計の砂が全て落ちる時までおおよそ一時間と限定し、それを
厳守できぬ場合、ミラー家現当主、レン・ハオン・ミラーを……」

「よい、続けろ」

「……、レン・ハオン・ミラーを、四肢切断の後、斬首刑とする」

ルカは手で顔を覆った。

「続けて」

「は、はい。無論、甲も相当の刑に処され、ミラー家の家督、財産を
全て没収とする。……異論無ければ、この書にサインを」

「文面が抜けている。
”使用する魔法の名、それを使う理由を延べよ”それと
税金の件も抜けておる」

「す、すみません!そうでした。
甲の使用する魔法の名、それを使う理由を延べよ」

「行使したい魔法は二つ。
”結界”の行使を。随伴する二名の生命維持の為に。もうひとつは
”電撃爆破”。ループ家に潜り込んだ輩を排除する為」

「承知した。その二つの魔法の行使を認可する。
尚、その魔法を行使する事により、王国に”魔法税”の支払い義務が
甲に発生する。今回の魔法を行使する事で発生する税は
ミラー家魔導図書館の書物、二冊に相当する也」

「……かしこまりました。
我、図書館より二冊、王国に納税させていただきます」

「では、書にサインを」

カイトはかざしていた書を開き水鳥の羽のペンと一緒に
リンの方に差し出した。
書物にサインをすると、カイトは息を吹きかけ、インクを乾かして
その書を手渡した。

「まったく、歴史的貴重な本にサインをさせるなんて司書官として
どう思うんだ?」

「いや、私も同意ですが……何せ”上”が決めた事なので」

「しかも、お前達の命を守る為に私が納税する事になるんだか
不条理きわまるわな」

「……」
「ごめんね、おばあちゃま……」

「まあ、よいわ。かわいいルカの為。
この扉の向こうの恩大にも借りもがあるしな。
カイトは本当に、オマケだ」

「うう……、面目ないです……」

「さて、ルカや。この瞑想室の鍵を開けておくれ」
「はい」

ルカは手にしていた大きな古い鍵を鍵穴に差し込んだ。
扉は大きく両開きでとても重たい。カイトは腰を入れて
扉を押した。

真っ暗な室内は香料の匂いがしていた。
そしてその奥に、青い炎が二つ、ゆらりと揺れた。

「私から離れるな」
リンがカイトとルカの手を握る。

その瞬間、誰が触れたわけでもないのに、扉が軋みながら閉じた。

「痛い!カイト、手に力を入れすぎだ」
「は、はい!すみません……」

普通の人間でも分かる。
この濃度の高い闇、暗黒の気配。
カイトは体から体温が抜けて凍えそうである。

「気を保て、カイト!結界はもう張ってある」

その時、室内全体から低い声が響く。
なんとも形容しがたい何処までも深く、枯れた声であった。

《この闇を裂くのは何者じゃ……。皆殺しにしてくれるわ》

青い二つの炎が強く揺れ、その姿を浮き彫りにした。
分厚いボロボロのローブ。大きな木の根の杖。
いくつも重ねられた大きな珠を連ねる数珠。
それを掴むのは白い骨。そして鈍い光を灯す眼光は骸骨からだった。

「不死の王リッチ、久しぶりだな」

カイトは恐怖の余り、膝を付いた。
「リ、リンしゃまぁ~~……」

「あたたっ!痛い!カイト!」
カイトはリンの手を必死に強く握っていた。

《人肉の匂いがするわい……。頭から食ってやろうか》

「リッチおじ様、あまりカイト様を驚かせないで……」

《むむっ!すまんすまん……、久しぶりに普通の人間を見たもので
ついつい、イタズラ心が芽生えたわい……》

「リッチのじじ様よ。相変わらずだな」

《おお、リンか。お主も相変わらずだな》

「ふぇえ……」
カイトは完全に腰が抜け、床に身を落としている。
暗闇だから分からないが、きっと涙と鼻水で顔は酷い事になってるだろう。
とりあえず騎士の面子は闇で守られている。

「まあ、無理も無いな。大男でも見ただけで失神してしまうほどの
ビジュアルだからな。リッチのじじ様はちょっとイタズラ好きで
お茶目な性格なのだ。安心するが良い。本当に殺したり頭から食ったりしない」

《うむ、すまぬな人間の男よ。ちと……イタズラが過ぎたわい》
骨の手で頭蓋骨の頭を撫でながら不死の王リッチは言った。

「リッチのおじ様、側に行ってもいい?」

《う……、いや、それは……》
リッチはリンの方を見た。

「大丈夫だ、この室内くらいなら、私の結界は有効だ。ルカ、行っておいで」
リンの手を離し、ルカはリッチの側に駆け寄った。

「おじ様、来てくれて……ありがとう……」

《お前の顔をもう一度見たくてね……。元気かい》
ルカに触れようとしたがリッチは手を空に止めた。
その手を引き寄せルカは自分の頬に触れさせるとリッチは
優しく頬を撫でた。

《お前は小さな時から、私を怖がらなかったね》

「だって、おじ様は、優しかったから……」

ルカは幼い時、その魔法力の強さから魔界の入り口を見つけ
肉体を現世に残し、意識だけ魔界で迷子になっていた。
ループ家の魔法力を持ってしてもルカを見つける事が出来ず
苦渋の決断で、縁を切っていたミラー家のリンに頭を下げ
リンはルカを探しに魔界に向かった。

「さすがの私も、魔界でリッチのじじ様を見た時は死を覚悟したな。
しかもルカと手を繋いで歩いてるではないか。目が飛び出たわ」

《この子を泣き止ませるのは、苦労したわい……》

「ま、そういう訳でな、このじじ様は見栄えと違って
びっくりするくらいの好々じじいだ。迷宮の深層階で
ひたすら魔術を研究する魔法オタクでもある」

《酷い言い様じゃ》

「さあ、もういいかな?そろそろ私の魔法の残り時間も終わりそうだ」

《結婚するんだってね。花嫁衣裳を一目見たかったが……わしが
式に出るのはとんだ場違い、それはまたの機会にしよう。
結婚相手がルカを裏切るような事をしたら……わしが王族も
教会も、この国も全部、破壊してやるからね》

「もう、物騒な事言わないで!」

「あはは、王族や教会に聞かせてやりたいな」
リンは軽く笑うが、カイトは身震いした。

《リン……おいで》

リッチはリンを手招きした。
舌打ちしながらリッチの元に行くといきなり抱き寄せた。

「っ!くるしい」

《まあまあ……、たまにはいいじゃないか》

「ローブ、カビくさいぞ」

《わしは……お前も心配なんだよ……》

リンはリッチのローブに顔をうずめた。
骨の手はリンの頭を優しくさするのを見ていたカイトには
もう先程の恐怖心は微塵も無かったのであった。















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