語り部の紙飛行機
投稿日:2009/11/10 18:54:43 | 文字数:1,496文字 | 閲覧数:354 | カテゴリ:小説 | 全3バージョン
語り部シリーズ18作目です。
語り部の紙飛行機
ようこそいらっしゃいました。このたびお聞かせするのは囚人に恋をした少女のお話です。
その少女はいつも、病院を抜け出しては父親の仕事場で一人の囚人と会うことがただ1つの楽しみだったそうです。2人はいつしか手紙を書いて紙飛行機を折り、お互いの元へと飛ばして、文通をしていたそうです。
囚人からの手紙は少女にとって何よりも大切なものでしたが、
少女の父親がそれを快く思わず、ある時手紙を取り上げてしまったそうです。しかし、少女は物事をあまり知らず、父親の思いを理解できなかったそうです。
想いを理解できなくとも、少女は父親に従うべきだということだけは分かっていたそうです。
しかし、毎日様子を見に来ては同じ言葉を告げて去ってゆく父親の嘘よりも、手紙で伝えられる囚人の思いこそが、光の指さない部屋で過ごす少女にとっての生きる意味を、未来の光を与えていたそうです。
しかし、幸せな日々を過ごす中で少女の病状は日に日に悪化して行き、
病室にいる少女に繋がれた管は増えて行き、耳は少しずつ
聞こえなくなっていったそうです。
歩くことすらも辛くなり、少女の心には「もうここから生きて出られない」
という確信がいつしか芽生えていたそうです。それならば、
心配だけは掛けなくて済むようにと思った少女は囚人の元へと走ったそうです。
「遠くに行くのよ。だから、バイバイ。」
たったそれだけの言葉を乗せて、囚人の元へと壁を越えて行く
紙飛行機を見ながら少女は、涙はもう見せられない。
そう思い作り笑いをしたそうです。
そんな少女に囚人は
「待つよ、いつまでも待ってるよ。君が来るその日まで。手紙を大事になくさずにいたら、また逢えますよね…」
涙を流しそう話しかけたのですが、少女は何も答えずに、そのまま囚人の元を去ったそうです。
そして、少女の病状はその日を境によけいに悪化し、その原因が囚人にあると考えた父親は、囚人を処刑してしまったそうです。
少女は囚人に別れを告げて以来、一度も病院から出ることは無く、囚人の哀れな最後を知ることも無く、体の端から消えていくかのように感覚を失って、動かなくなってしまったそうです。
延命装置に繋がれた少女は、次第に霞んでゆく意識の中で、お迎えがもうすぐ来るのだと感じ、囚人との別れ際、強がらずに全てを話せばよかった。
けれどそれに気づくにはあまりに遅すぎたことに気付き、最後に、囚人に逢いたいと強く願ったそうです。
光の当たらない花はただ、枯れてゆくのを待つだけの運命。しかし、その華が枯れないように、少女に光を与えていたのは囚人からの手紙だったそうです。
しかし、その手紙も、もう霞んで読めなくなり、部屋に無機質な音が響く中で少女は亡くなったそうです。
それと同時に、少女の手から握られていた紙飛行機が滑り落ち、
それに気付いた父親が拾い上げたそうです。その手紙に綴られていたのは、
幼い頃から病院で過ごし、一人の友人も居なかった少女と、
迫害を受けていたために友人などできるはずも無かった囚人がお互いにとって初めての友人であり、何よりも大切だということだったそうです。
そして、娘を守ろうとしていた自分の思いこそが、少女を傷つけていたことを悔やんだ父親は、囚人の墓の隣に少女の亡骸を葬ったそうです。
いかがでしたか?私のお聞かせした物語は。さて、次に来られたときは何の物語をお聞かせしましょうか。今日のところはここでお開きにしましょう。帰り道にはどうぞお気をつけて。よければまた、私の物語を聞きにいらして下さい。それではさようなら。
作品へのコメント2
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揺れる涙もその髪も
この手には何一つ触れなくて
なし
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Jutenija
Jutenija
作詞・作曲: DATEKEN
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lel twa jomenti
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Jutenija
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Introduction
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Introduction
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楽曲募集、タイトル未定
「タイトル未定」
[イントロ]
始めまして 僕の青春
少し遅めな恋の話
[1番Aパート]
楽曲募集、タイトル未定
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【リンレン小説】俺の彼女だから。。【ですが、なにか?】
「…はぁ………ん…ぁん、いやぁ……ぁうっ」
暗くて狭い。密閉された空間。逃げられない私は目に涙をためた。
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あー…蒸し暑い…
空は生憎の曇りだというのに今日はなんだか蒸し暑かった。ったく。楽歩の奴…バスの冷房くらいつけろよな( ̄∩ ̄#
【リンレン小説】俺の彼女だから。。【ですが、なにか?】
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メロン/歌詞
亡霊 抜け殻晒すアールジービー
ヒヨって飲み込んだアイロニー
またフワって消えちゃって
待った待った待った
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メロン/歌詞
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ブラックペッパーナイト/短編
夜を胸いっぱいに吸い込む。季節は冬が近く、空気は冴え渡っている。
明日には地下へ向かわなければならない。この星ほどの夜景を後にして。
ギラギラした夜景と天空の月光が、星を食うように光っている。
高層ビルの上から見る夜景って言うのは、「沈み込みたくなるような衝動」を起こさせるものだ。
「何かお願いしてみたら?」と、彼女は言う。「最期の願いくらい、叶うかも知れない」
ブラックペッパーナイト/短編
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ポッピンキャンディ☆フィーバー! 歌詞
ポッピンキャンディ☆フィーバー!
作詞・作曲 キノシタ
あの日忘れた夢色も 昨日謳った涙色も
有り体に言えないね だからとっておきの魔法をかけよう
キャラメル・キャンディ・チョコレート
ポッピンキャンディ☆フィーバー! 歌詞
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小説版 South North Story ①
小説版 South North Story
プロローグ
それは、表現しがたい感覚だった。
あの時、重く、そして深海よりも凍りついた金属が首筋に触れた記憶を最後に、僕はその記憶を失った。だが、暫くの後に、天空から魂の片割れの姿を見つめている自身の姿に気が付いたのである。彼女は信頼すべき魔術師と共にただひたすら西へと走り続けた。やがて、北風が強くなり、それは雲を呼び、そして初雪が深く暗い雲から零れ始めた。彼女の苦難を象徴するようにそれはいつしか吹雪となり、彼女の弱り切った心を容赦なく痛めつけた。体調を崩している。そう判断して彼女の元に駆けつけても、僕は彼女に触れることすら叶わない。桃色の髪を持つ魔術師は騎乗に夢中でまだ気付く様子も見えない。この吹雪の中、焦りを感じているのは誰もが同じか、と考えながら僕は無駄だと分かっていながら彼女の背中に触れようとした。触れても、僕の体温を彼女に伝えることは叶わないけれど。そう考えながら彼女の背中に僕の手を載せた時、彼女が一つ、咳をした。
『どうしたの?』
小説版 South North Story ①
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インビジブル_歌詞
インビジブル BPM=192
とんでもない現象 どうやら透明人間になりました
万々歳は飲み込んで
ああでもないこうでもない原因推測をぶちまけて
一つ覚えで悪かったね
インビジブル_歌詞
語り部シリーズぜひぜひコメントを!
うろたんだーと幻想狂気曲をこよなく愛すことをここに誓う!
★!現在語り部シリーズ製作中!★