[小説]Clear The Decks[カイ(メイ)+レン(リン)]
投稿日:2010/09/03 22:41:42 | 文字数:2,836文字 | 閲覧数:2,301 | カテゴリ:小説
「まっくろ●ろすけ出ておいで~」
真っ黒兄さん、一丁上がり!
………。……どうして私は兄さんをこんな風にしか書けないのでしょうか。
いつか世で主流となっている可愛い兄さんを書いてみたいです。私的な願望で申し訳ございません。
しかしですね。実は奈月家の兄さんはめーちゃんと付き合ったら、こういう腹に一物抱えた性格は鳴りをひそめます。代わりに甘えたな兄さんが顔を出します。そんな設定です。
書く機会あったら書いてみたいですねぇ。
あ、ちなみにタイトルの「clear the decks」は"外堀を埋める"という意です。
付き合うための既成事実を作るために両名これから着々と相手の外堀を埋めていくという意味で用いました。
「カイ兄ってちょー情けないヘタレだよな」
台所でアイスを頬張っていたカイトに向かって、そう宣ったのは双子の片割れレンだった。
自分より年下のその少年(メイコがいうところの弟)はカイトに冷たい一瞥だけくれた後、斜め前の椅子にドカリと腰掛けた。レンからそんな言葉を貰ったカイトはというと、スプーンをくわえたまま小首を傾げて不機嫌顔のレンを見やる。
"情けないヘタレ"とカイトにとって不名誉窮まりないだろう形容をされても、彼は取り留めて気にした様子もなかった。それどころか、ほけほけと緩く笑って、「んー? 具体的にどこが?」などとレンに聞き返す始末。正しく情けない自身の兄(不本意ながら兄だ)に、レンは盛大な舌打ちをしてみせ、
「めー姉好きなくせに何も行動しないところ」
と低い声で告げた。
ギロリと鋭い眼光を乗せ、レンがカイトを睨みやる。その鋭い針のような視線を受けてもカイトはレンに相変わらずの微笑みを向けていた。
(………このタヌキめ)
この兄は、その実、誰よりも腹が据わっていたりする。だが、メイコを筆頭にそのことを知る者は少ない。つまりカイトは誰よりも相手を欺くのも上手かったりするのだ。レンもここ最近になって、ようやっとそれを悟ったところだ。
唐突に水を向けられたカイトはぱちぱちと目を瞬いて、「ふぅん? 行動ねぇ…」と漏らして、あらぬ方へ視線を巡らす。ややあってレンに視線を戻したカイトはコトリと首を傾げてまたも笑った。
「レンがリンにするみたいな? いかにも"好きだー"って自白するような、行動?」
こんな言葉をレンに投げ付けて。
「あ゛ぁ?」
「あれ、違うの?」
てっきりそういうことだと思ったぁ。
そう言うカイトは緩い顔で笑い続けている。そんな奴に説教じみたことを言うことに馬鹿馬鹿しくなってきたのはレンの方だった。リンとのことを軽はずみに口にされたのも気に食わなかったが、なによりメイコと進展する気が目の前の馬鹿にまるっきりないのが、もう論外だった。わざわざ忠告してやるために割いた時間さえ惜しいというもの。
そっぽを向いてケッと口を尖らせたレンは「もーいい。…こっのクソ兄貴っ!」と年頃のレンらしい暴言を吐き捨てる。そしてカイトから興味が失せたのか、戸棚にあるバナナを取るために席を立った。
(うっわ、機嫌わるー)
あれから、バナナを戸棚から取ったレンは台所から去るかと思いきや、そうせずに元の定位置に居座った。
明らかにぶすくれた顔で好物のバナナをぱくついているレンを眺めていると、どこからか可笑しさが込み上げてきて、カイトは慌ててアイスを口の中に掻き込んだ。そうしてアイスと一緒にその笑いを飲み込み、ちらりと再びレンに目をやる。彼はカイトから故意に目をそらしているらしく、あの可愛らしいような小憎らしいようなレモン色の瞳と視線は交わらない。
まさに反抗期真っ盛り。まだまだ成熟には程遠い(青いという意味で)だろう。が、カイトは敢えてレンの細く無防備な首筋に鋭い刃を押し当てるのだった。
「レンさぁ、俺がめーちゃんと両想いになる行動してないっていうけど、してるから」
「……はぁ?」
お前何いってんの、とでも言いたげにレンが眉を寄せた。
「…全然してるようにみえねぇ」
「そりゃそうだよ。だって」
行動を"起こしてる"のはリンとレンだもん。
カイトがそう告げるとレンはさらに訝しそうに顔をしかめた。
「は?なんだそりゃ。俺とリンの行動がどうしてお前の行動になんだよ?」
意味がわからんとレンがカイトを鼻で嗤った。それを咎めるでもなく、カイトはふふふと含み笑いを漏らした。
そうして、レンはまだまだ子どもだなぁとカイトは一言する。その言葉がレンの癇に障るだろうことももちろん承知の上だった。
考え足らずで愚直でそれでいて純粋な目の前の少年は年相応で大変可愛らしい。自分との差に思わず笑いさえ込み上げてくる程だ。
「何笑ってんだよ!」と自身に噛みつく純真無垢で、だからこそ無知で率直な少年。カイトは凪いだ瞳でそんな可愛らしい"弟"を見つめて、「だってさ」とレンの問いに歪曲した自身の答えを彼の目前に晒す。
「俺が行動を起こせば、めーちゃんは絶対俺に堕ちてこないもの。だから、俺以外の誰かにめーちゃんの大事な大事な家族っていう絆を壊してもらっているんだよ。レン」
「……それが俺とリンだと?」
レンの言にカイトはこっくりと首肯する。
カイトやミク、リンレンと違って、独りの期間が長かったメイコにとって、家族というものは何物にも代えがたいものだ。それをカイトも重々理解している。だが、生憎カイトはメイコの弟で終わる気はなかった。
一目惚れ、一種のインプリンティングに近い、その感情はカイトがメイコと初めて出逢った時から芽生えていたもので。しかしカイト自身がメイコを得るために家族という枠組みを壊せば、メイコとカイトの関係は"家族"よりも遠ざかってしまうことも理解していた。
ならば自分以外の、メイコを"そういう"感情で好いていない者達を使って、家族という枠組みを壊せばいいと思いついたのは、レンのリンに対する言動を見てからだ。彼は都合のいい事に双子の姉であるリンを恋愛感情で好いていた。
そしてリンも恐らくレンを"そういう"感情で好いている。それを悟ったからこそ、カイトは敢えて何の行動も起こさずに傍観を続けてきたのだ。もしリンがレンに対して"そういう"感情を抱いていなかったのならば、恐らく自身はリンに何らかの働きかけをしていた。
全てはメイコを手に入れるために。
思ってもみなかったカイトのしたたかさにレンが絶句すると、カイトは剣呑な場の空気と不釣合いなくらいニッコリと微笑んだ。
「あ、言っとくけど、利用したように見えて、ちゃんと二人の応援もしてたよ? リンもレンも可愛い妹弟だからね」
「……家族の絆を壊そうとしてる張本人が妹弟言うな。まったく説得力ない」
「ひどいなぁ」
どっちが、とは口に出さないでいた。カイトがレンにこの話をしたのは、自分を共犯者にするためだろうと容易に推測できた。カイトの思惑を知っても、リンを好きなレンは今の行動(つまるところリンへのアピール)を制限できない。というか、したくない。
そうすると結果的にカイトの計画の片棒を担ぐことになるのだ。ならば、メイコに告げ口をすることはリンの幻滅にも繋がることは必至。要するにカイトのあくどい計画的犯行を黙認するしかないのである。
あまりにも鮮やかで陰険なカイトのやり方。それに敬意を表して(ただし嫌みも含まれている)、レンは自身の兄にとっての最高の褒め言葉を送ってやるのだった。
「カイ兄ってちょー情けないヘタレを演じる、ちょー悪趣味で計算高いヘタレなんだな。恐れ入った」
「んー? そう? ありがとー」
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【亞北ネル】悪ノメイド 前半【鏡音リン・レン】
悪のメイド 前半
Ⅰ.
黄の国の革命において王女リンは処刑された。これは歴史的事実として知られているところであるが、巷説や演劇などでは広く王女生存説が語られている。王女の双子の弟レンが行方不明であることから、彼が替え玉となって処刑されたとするのが王女生存説の一般的なスタイルである。
公文書の記録によれば、王女の首は切断された後しばらく塩漬けにして保管されたが、体は市民の投石によって無残な肉塊となってしまった。処分したとされている。これは少なくとも彼女の死後において、王女の性別は確認されていないことを意味する。
また、王女は捕らえられてから自分の体に他人が触れるのを極度に嫌がったらしい。そのため、革命軍は凶器所持のボディチェック以外はとくに身体調査をせず、着替えなども自分でさせていたという記録もある。つまり、服の上からの見た目だけで、革命軍は王女を本物だと認定したことになる。
【亞北ネル】悪ノメイド 前半【鏡音リン・レン】
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もしもし、あなたはなんですか
「ふたりでひとつ」なんて言葉を信じられなくなったのはいつだっただろう。
「ねえ」
「うん?」
「そこってどんな感じ?」
「…入ってみればわかるけど」
もしもし、あなたはなんですか
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【小説化してみた…のか?】 Gravity=Reality
この作品は、SAM(samfree)氏のかわいいルカうた「Gravity=Reality」へのリスペクト小説です。
みんなの優しいお姉さん、ルカさんが恋をしたものだから、さあ大変……というお話です。
素晴らしき作品に、敬意を表して。
【小説化してみた…のか?】 Gravity=Reality
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なまえのない そのうたは
「リンー」
「なに、めーちゃん?」
頭だけキッチンから出した格好でめーちゃんが声をかけてくる。私は読み掛けの雑誌から顔を上げて返事を返した。
「あのね、もう夕飯なんだけど、まだレンが買い物から帰ってないのよ」
「え?」
なまえのない そのうたは
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あの子はだあれ?
はっきりとその姿が見えるワケじゃなかった。
ただ、時々。
人ごみの中でショーウィンドウに自分の姿が映ったのを見た時、とか。
洗面所で顔を洗っていて、顔を上げた一瞬、とか。
ガラガラの電車の中で居眠りしてて、起きた瞬間の夕焼けに染まった向かいの窓、とか。
あの子はだあれ?
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むかえにきたよ
駅の改札から出ると、辺りは真っ暗になっている。
家路へ急ぐ会社帰りのおじさん達を横目に見ながら、さて私も早く帰らなくちゃと肩からずり落ち気味の鞄を背負い直した。
肺に溜まった嫌な空気を深呼吸で新鮮なものに入れ替えて、足を踏み出す。ここから家までは歩いて二十分ほどで、決して近くはないけれど、留守番をしている皆の事を思い浮かべていればあっという間だ。
そんな事を考えていた時だった。
「マスターっ」
むかえにきたよ
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リンが風邪をひいた日
昨日から、変だなって思ってた。
歌ってる時になんとなく、空咳をくりかえしたり、喉の辺りを触って首をかしげたりしてたし。そういえば声の伸びもあんまり良くなかった気がするし。
今朝になってそれは明白になった。
顔を真っ赤にして、苦しそうに咳き込みながら寝込んでいるリン。真夜中に発熱して、今日はてんやわんやだった。
「レン? 支度できたならさっさと学校行きなさい」
リンが風邪をひいた日
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思春期の歌声【リンとレン】
「…レン?」
双子の弟の名前を呼びながら目を覚ます。あるはずの亜麻色が見当たらない。隣で寝ているはずのレンがいない。
「レン…?」
真夜中。外には半月。布団には私の温もりしか残っていない。
「レン…っ」
思春期の歌声【リンとレン】
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メイコの日【カイメイ】
「メイコさんっ」
五月五日の昼食後。居間で食事を終え、部屋に戻ろうと廊下を歩いていたところ、唐突に背後から呼び止められた。
「カイト?」
駆け寄ってくる足音に振り返る。声で分かった。呼びかけてきたのは青い髪の「弟」だ。私の間近で足を止めて、じっと私を見つめてくる。
頭ひとつ高い「弟」のカイトを見上げると、カイトが柔らかく微笑んだ。
メイコの日【カイメイ】
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レンリン(学パロ双子設定)
【胸がきゅっとなる】(レンリン)
「ずっと一緒にいられたらいいのにね」
夕焼けがまぶしい、学校の屋上。体育座りで膝を抱えたリンが、枯れたような声で呟く。
一緒にいられたらって、誰が?……俺が?
レンリン(学パロ双子設定)
どうも、底辺物書きです。
最近ボカロにはまり、作詞したいあまり勢いでやってしまいました(^^;) ふふふ、勢いって必要だよね←
歌詞の作風は一風変わったものが多いです。ほぼそれしかない感じ(汗)
前はfilyという名前で活動してました。言う必要性もなさそうですが、一応ね…。
《アイコンについて》
プロフィールアイコンはアイコン・ショップでomotiさんに作っていただきました。
→http://piapro.jp/collabo/?id=11219
filyのときもアイコン・ショップで依頼し、チギク様にアイコンを描いていただいていました。メロメロ(!)に可愛いレンでした^^
《今後の予定》
・基本、頭にふっと浮かんだネタをつらつらと書き留めていきます。
・あと歌詞募集中の素敵曲様に歌詞を書かさせていただく予定です。が、予定で終わりそうだ…。良詞制作への隔たりは大きいです。
・多分小説メインで時々更新する感じになる気がします。
何はともあれ、よろしくお願いします^^
実はひそかに小説サイトも運営中。ボカロコンテンツありです。
よろしければどうぞヽ(・∀・)ノ
→http://justbefriends23.blog69.fc2.com/
更新が全くない時は覗いてみてください。なにかしら呟いてるかも。
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