Home Planet/第四話

投稿者: usericonルナリーさん

投稿日:2020/05/29 21:31:46 | 文字数:3,785文字 | 閲覧数:143 | カテゴリ:小説

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レン君良い奴だなぁ。

リンちゃんが大変な第四話。

この物語はフィクションです。

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TEXT
 

 めったに怒らない養父母は、20時ギリギリに帰ってきた俺達に、喝を入れた。
 それから、何処に行っていたのかを聞かれ、正直に答えると、何故地理も分からない遠方まで出かけたのかを聞かれた。
「ちょっとした旅気分を味わいたくて」と答えたら、養父は「そのために父さんの財布から金を抜いたのか?」と聞いてきた。
「それについては、言い訳はいたしません」と答えると、養父はしばらく考え込んでから、「レン。男の子の冒険心に、リンを巻き込むんじゃない」と言った。
「大変申し訳ございませんでした」
 俺はリンに謝らせる隙を与えず、とつとつと述べた。
「俺…いや、わたくしの招いた不祥事でございます。姉も無事に日常に帰ってきましたので、この度のことはお許しくださいませ」
 何処の商人だ。何処の記者会見だ。と、俺自身も思う喋り方で言い、俺は頭を下げた。
 養父母は、呆れた顔をしていたが、養母がリンを家の中に連れて行き、俺は養父からこう言われた。
「お前も知っている通り、私達はお前達と血のつながった親子じゃない。だが、悩むことがあるなら、きっとお前達の力になる。少しは、私達にも気を許してくれ」
 俺は、父さんもリンの「完璧ニンゲン」っぷりに気づいていたんだと知った。
 12年間、起こさなくても毎日自分達より早く起きて、身支度を完璧にしてから「親」の前に姿を現す娘に、「違和感」を持っていたんだ。
 そして、俺が不良にこそならないものの、あまり「望ましいニンゲン」になることを遠ざけていたことも知っていた。
 誰かの親になるって言うのは、そう言う所に気づくようになるのかも知れない。

 俺も、選ばれないことは、自由であることだと思ってた。誰かに命令されるわけでも、何かを期待されるわけでもない。
 何でも自分で決めて良い。劣等生として扱われるのが、「自由税」なら、安いもんだと思ってた。
 だけど、いつかは「選ばれなきゃならない時」が来る。それが、高校への進学だったり、就職だったり、もしかしたら、自分の理想を叶えるって事だったりするのかも知れない。
 俺はリンの心配ばっかりしてたけど、俺も自分の人生をリンに助けてもらい続けることは出来ない。いつかは、別々の道を歩き始めることだってあるんだ。
 その時、お荷物な弟のために、リンが自分の「自由」を代償にするのは、あまりにも不公平だ。
 俺は「旅」から帰って来た日から、受験勉強を始めた。

 俺に勉強を教える時間が必要なくなったリンは、宣言通り家事の手伝いを以前より頻繁にするようになった。
 洗濯機を回している間に、家を掃除し、食事の準備を手伝う。料理の間に洗濯機が出来上がりを教えて来たら、すぐに洗濯物をベランダに干す。
 食事が終わったら食器を洗い、その手伝いが終わったら、部屋に籠って勉強をする。
 養母は、「そんなに無理しなくて良いのよ?」と言うが、リンは笑って、「無理なんてしてないよ。それより、お母さんはパート頑張って」と答えるのだ。

 俺とモモの「学会」は、主に学校から帰る時、歩きながら行われることが多くなった。お互い受験生だし、モモは理科学系の大学まで行くことを目標にしていたからだ。
 高校も、それなりの偏差値の場所に通う必要がある。モモは機転と応用の利く奴なので、勉強に関して困ることもないらしいが。
 でも、話が白熱した時なんかは、帰る途中にある公園で、夫々のポケットマネーから飲み物代を捻出し、ベンチに座って徹底対談していた。
 その様子を見ていた近所の兄さんが、声をかけてきてくれた事があった。
 犬の散歩の途中らしく、ハの字眉の柴犬を連れて、「レン君。こんにちは」と言ってきた。
「こんにちは」と俺が挨拶を返すと、兄さんは「もしかして、デート中だった?」と冷やかしてきた。
「いいえ。宇宙の神秘についての弁論大会です」と、俺は答えた。「カイトさんも一緒にどうですか?」とふざけて聞くと、近所の兄さんは「宇宙の神秘って何?」と興味を示してきた。
 俺が、ざっくり「テラ」についての説明をすると、意外とカイトさんは馬鹿にもせずに耳を傾けてくれた。
「へー。そんな不思議な星があったら、是非行ってみたいもんだね」
 カイトさんはもっと話を聞きたそうだったが、連れていた犬が散歩を急ぎたがったので、「じゃぁ、また今度」と言って、犬と一緒に公園から撤退して行った。

 俺は無事に入試をクリアし、高校に通えるようになった。就職希望のクラスに入り、普通の授業の他に、パソコンの扱い方を教わった。
 実益のある事を学び始めてから、俺は「使える知識は面白い」と言うことに目覚めた。バイトをして貯金を貯め、自分のパソコンを買うと、養父がウェブ環境を整えてくれた。
「少し遅いが、進学祝だ」と養父は言っていた。
 モモとメールでやりとりをし、「ホームプラネット」についての新しい学説を、常に吸収していた。
 宇宙空間にある天体望遠鏡で、「テラ」を撮影できたと言う情報がモモから送られてきた時は、俺は思わず両の拳を空に掲げた。
 情報漏洩につながるので、写真は添付されてなかった。俺は約束を取り付け、約2年ぶりにモモの家を訪れた。
 モモの家で見せてもらった「テラ」の写真は、不思議な色をしていた。真っ暗な空間に、青く鈍い光がある。
「『テラ』自体は光を発さない星だから、たぶん近くの恒星の光を反射してるの」と、モモは言う。「この星からの距離は、光の速さで5.7億年。この写真は、5.7億年前の『テラ』なの」
「壮大な時間だな」と俺は言って、ちょっと頭を働かせてみた。「それだけ離れてるとなると、この星みたいな『移住地』が他にもあるって事か?」
「そうだと思う。私、大学に行ったら、その事、調べてみる」と、モモは約束してくれた。

 社会人になって、数年が経過した。俺は収入を得るようになってから、養父母の下を去り、一人暮らしをはじめた。
 ある日、リンが失踪したと連絡を受けた。3日前、会社に行ってから、家に帰っていない。
 養父母は警察に連絡し、リンは行方不明者として登録された。
 俺は、まさかと思いながら、14の頃、リンを連れて行った湖に向かった。
 其処に、リンは居た。正確には、倒れていた。俺がそっと近いて傍らに膝をつくと、リンは閉じていた眼をうっすらと開けた。
「レン…。来てくれたんだね」と、リンはカサカサの声で呟いた。何日も飲まず食わずだったらしく、唇は薄皮が裂け、頬は痩せて、手首は今にも折れそうな細さだった。
「リン。何があったんだ?」と、俺は姉を抱き起して聞いた。
「私ね、ご飯が食べれないの」リンは今にも途切れそうな声で言う。「水を飲もうとしても、吐いちゃうの。何日か前は、涙がダラダラ出てきて、止まらなかったの。だから、『家』に帰れなかったの」
「馬鹿女。だから言っただろ」と、俺も泣き出しそうになりながら、歯を食いしばった。
「うん。レンの言ってた通りだった」リンはそう言って、うっすらとほほ笑んだ。「私の知ってた『自然』って、全然『自然』じゃなかったんだね」
「『家』に帰れないなら、俺の所に来ればよかっただろ?」と俺が言うと、リンは笑ったまま言う。「やだよ。泣き腫らした顔で、会いたくないじゃん」
「だからお前は馬鹿だって言うんだ!」俺はリンを抱え上げた。「リン。良いか、絶対に死ぬなよ」
 そう声をかけて、目印になる建物のある場所までリンを運ぶと、電話で救急車を呼んだ。

 病院に搬送されたリンは、極度の栄養失調と脱水症状を起こしており、点滴で栄養剤を投与され、眠ったきり起きなかった。
 時々、閉じたままのリンの目から、涙が流れた。医者の話では、栄養を補給しても、健康な状態に戻るには数ヶ月かかると言われた。
 養父母に連絡を入れると、タクシーを走らせてリンの入院先に駆け付けてくれた。二人は、自分達の存在が、リンに圧力をかけていたんだと言って、ひどく落ち込んでいた。
「私は言ったことがあるんだ…。娘が茶を煎れてくれる生活に憧れてたんだって」と、些細なことを養父は気にしていた。
 だけど、その言葉は、リンには無条件な枷だったんだろう。「亡くなった娘さんの代わりに、自分が理想の娘であってあげなきゃならない」と言う、暗示のような。
 俺も、リンから離れることは、弟と言う重荷を無くすことだと思ってた。でも、それは違った。いずれ年老いる両親を、リンに任せきり、リンを一人ぼっちにしただけだった。
 孤独の中で、耐えて、耐えて、リンは自分が壊れるまで「理想の娘」であろうとした。俺に対しても、「理想の姉」であろうとした。
 決して弱みを見せず、完璧であろうと。
 俺は、リンを、自分の自由の代償にしていたことに気づいた。
 涙が出そうになって、俺は片手に拳を握ると、自分のこめかみを殴った。今一番苦しんでるのは、リンだ。俺が泣いててどうする。
 聞こえてるかは分からないが、俺は眠ったままのリンに声をかけた。
「リン。お前、俺のねーちゃんだよな?」そう言って、点滴を受けているリンの冷えた手を握った。「生まれる前から一緒だったんだ。これからだって、俺はいつも、お前と一緒にいる」

作り続ける事を目的としているコラボになります故、月一でアイデアの元としてテーマを掲げております。
テーマから投稿された作品が色々な方々の目に留まり、そこから最終目標のコラボへと通づることが出来れば尚良しです!

楽曲でもよし、動画でもよし、小説、作詞でもよし、イラストでもよし。何でもよし!
とにかく作り続ける事!
身体に無理のないように!

完全思いつきなんで、上手くいくかわからないですが楽しく、そして素敵なオリジナル作品がどんどん増えていければいいなあと思います。

ルールは追々追加していくと思われます。

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