KAosの楽園 序奏-002
投稿日:2010/08/30 21:06:04 | 文字数:2,848文字 | 閲覧数:273 | カテゴリ:小説
・ヤンデレ思考なKAITO×オリジナルマスター(♀)
・アンドロイド設定(『ロボット、機械』的な扱い・描写あり)
・ストーリー連載、ややシリアス寄り?
↓後書きっぽいもの
↓
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2話目です。前回も思ってたんですが、傍点打ちたい…! あとルビ振りたい。
強調したい部分とか、表現に制限があると難しい; とりあえず各種カッコと文字空け、行空けで対応してますが…加減しないとウザいなこれ。
そういえば今回の連載では、台詞の前後に空行を入れてみてます。あと、割と地の文もこまめに。少しは見やすくなってますかね? スクロール長くなって却って邪魔かな;
話のイメージ的に『KAITOful~』の時より漢字を多めに使ってるのですが、これもどうなんだろう。変換してみて「いやこれは読みにくいだろう」っていうのは開いてるんですが、自分が結構 難読漢字とか好きなもので、一般的な基準がよくわかりません。
もしも、あんまり読み辛いようならコメントください。差し替えも考慮しますので;
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2010/08/05 UP
2010/08/30 編集(冒頭から注意文を削除)
歌唱システム搭載アンドロイド、≪VOCALOID≫。
ネットを賑わす『オリジナル』と同じく、それらには数種のバリエーションがある。
その内の一種、≪KAITO≫のプロトタイプとして開発された、『KA-P-01』。
しかしプロジェクトは頓挫し、商品化には至らなかった。
何の異常もないはずなのに、ほんの数日で強制終了に陥ってしまうからだ。
メーカー関係者、そして様々な分野の教授達――多くの研究者によって原因が探られたが、ついに明らかになる事はなかった。
プロジェクトの廃止――それは『KA-P-01』の廃棄処分を意味していた。
それをどうしても看過出来ず、僕は恩師の助力を受けて、彼を引き取らせてもらった。
* * * * *
【 KAosの楽園 序奏-002 】
* * * * *
「おはよう、KAITO。気分はどうかな?」
数週間振りに帰ってきた自宅の研究室で、『KA-P-01』――KAITO、を起動した。
ゆっくりと開かれた瞼の向こう、綺麗なブルーの瞳が焦点を合わせて僕を映す。
「……『博士』」
「いやいや、僕は『博士』なんて呼ばれる身じゃないよ」
彼の呟きに苦笑混じりに手を振って、あぁ、と思い当たる。
僕は教授の助手として同行していたようなもので、あの場でしていた事と言えば数値チェックばかりだった。多分KAITOは、僕の顔も覚えてはいないだろう。
「まだ名乗った事は無かったね。僕は隼瀬邦人(ハヤセ・クニヒト)。今日から君のマスターだ」
「マス、ター」
短く繰り返すその声が奇妙に平坦な事に、僕は気付かなかった。アンドロイドを招くのは初めてで、マニュアルを繰るのに忙しかったのだ。
顔を上げ、再び彼に目を向けた時には、彼の方が僕を見てはいなかった。
「あーそうか、マスターコード再登録になるん――KAITO?」
「ますた、ぁ、トウ……ロク……ない……しない」
「え?」
「しない、いない……マスターなんていない……!」
「な――」
何だって?
『 マ ス タ ー な ん て い な い 』?
あまりの台詞に、言葉を失くして立ち竦む。
アンドロイドにマスター登録は絶対的な義務だ。それはマスターとなる人間側だけではなく、彼等にとっても。ましてKAITOは≪VOCALOID≫、一般的なアンドロイド以上にマスターの重要性は高いはず――。
僕が混乱する間にも、KAITOはうわごとのように言葉を漏らし続ける。
「……がう、マスターじゃない」
「『博士』、ただの『博士』、」
「たくさんいる『博士』の中の誰か」
「あ、ぁぁあぁ」
頭を抱え、青い髪を掻き乱して、KAITOが膝をついた。
いけない、また――?
「分かった、登録しない! 僕は単なる『博士』だ、何処にでもいる『博士』の一人だ!」
咄嗟に叫んだ。それが耳に入ってから、言葉の意味に眉を顰める。
『 何 処 に で も い る 『博 士』 の 一 人 』。
だがそれは、この場合正しい選択だったようだ。KAITOのパニックが幾分治まったのが見て取れた。
「何処にでも、いる」
「そうだ、落ち着いて。好きに呼べばいいし呼ばなくてもいい。落ち着いて……動けるかい? 再起動した方がいいかな」
「……Yes, Prof.」
答えて、KAITOは目を閉じた。
《VOCALOID-KAITO/KA-P-01 を 終了 します》
抑揚のない、いかにも機械的なメッセージを残して、システムがシャットダウンする。
開発室で聞き慣れたメッセージ、見慣れた光景だ。それに、KAITOの返した言葉も。だけど――
「“prof.”?」
『Prof.』……『Professor』。『教授』を意味する言葉だ。『博士』と呼んだのと矛盾している。
「どうなってるんだ……?」
微かな音を立てて再起動を始めたKAITOを見つめて、僕は無意識に呟きを漏らす。
背に張り付いた薄ら寒いような感覚は、恐れにも似ていた。
* * * * *
再起動を果たして顔を上げると、僕は改めて目の前の人を見た。
男の人が、一人。いつも僕にあれこれ指示をする『博士』達よりも随分と若い。――あぁ、
怖 い。
一人だなんて。いつもの人達と『違う』なんて。
こ れ じ ゃ あ こ の 人 を 識 別 で き て し ま う。
「『博士』、此処は何処ですか? 僕は別の研究室に来たんですか?」
恐怖心から目を逸らす為に、質問が口をついて出た。
あぁ、これも、怖いんだけど。できる限り、関わりを持ちたくはないんだけれど。
「あー、いや。その……申し訳ない。僕等の力が及ばず、時間切れになってしまってね。君――『KA-P-01』を基にした商品化は断念する事になったんだ」
申し訳ない、と。本当にそう思っているのが伝わる、痛みに耐えるような目で、『博士』が言う。
……善いひと、だ。
「そう、ですか。じゃあ、僕は廃棄に」
「しないよ。……いや、そうなるところだったけど、引き取らせてもらった。君は此処で自由にしていい。良かったら色々と手伝ってくれると嬉しいけどね」
言いかけた僕を『博士』が遮る。
廃棄されるはずだったのに、引き取ったっていう。此処で自由にしていいんだっていう。
本当に、善いひとだ。――やっぱり関わったら駄目だった。
善いひとは、優しいひとは、怖い。
「此処、に。貴方以外の、人は?」
「え? あぁ、僕だけだよ。だから気兼ねは――」
『博士』の言葉が、途中で消えていった。
きっと僕は酷い顔をしていたんだろう。胸に湧き出た『絶望』、そのままの顔を。
ごめんなさい。
だけど怖いんです。困るんです。
『貴方』という『個人』を認識したくないんです。
善いひと。優しいひと。『貴方』を認識してしまったら、貴方は『マスター』になってしまう。
駄目なんです。僕は誰も、『マスター』なんて思っちゃいけない。『マスター』にしてしまったら、そうしたら、僕は。
いつか貴方を害してしまう。
嫌なのに。こんなに怖いのに。それでも僕はそうするでしょう。
だって『そう』造られているんです。
《ヤンデレ》って、そういう事でしょう?
『僕』をかたち作る、長く長く続いた項目の最後のひとつ。抗えないプログラム。
マスターを僕のものにする為に、僕だけのものにする為に、僕以外の何かを見る事も聞く事も感じる事もできないように、
誰にも邪魔されない永遠をふたり手に入れる為に――
「っ嫌だ厭だ止めろ、考えるな!」
僕ひとりにしてもらえた研究室で、小さく叫んで頭を振った。この身に(心に?)組み込まれた、僕が『僕<KAITO>』である限り逃れられない恐怖を、それでも少しでも振り払いたくて。
<intro-002:Closed / Next:intro-003>
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≪VOCALOID≫的 季節の事情【カイマス小ネタSS】
※アンドロイド設定注意※
『KAosの楽園』の≪VOCALOID≫(アンドロイド)設定ネタSSです。
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1. ≪VOCALOID≫的 夏事情
「暑いねー……ってカイト、その格好で暑くないの? マフラーとか」
≪VOCALOID≫的 季節の事情【カイマス小ネタSS】
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KAosの楽園 第2楽章-001
“『KAITO』の全要素を盛り込んで”人格プログラムを組まれた僕、≪VOCALOID-KAITO/KA-P-01≫。
矛盾する設定に困惑し、いつか主を害する事に恐怖して、特定のマスターを持つ事を拒んできた。
だけどマスターは、僕の根幹に関わる不可欠な存在で。それを拒絶する事はあまりに過酷で、恐ろしかった。
拒んで、拒んで、狂うのが先が、動かなくなるのが先か。
そう思っていた僕に、ぬくもりを与えてくれる人が現れた。
KAosの楽園 第2楽章-001
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KAosの楽園 第1楽章-001
※『序奏』(序章)がありますので、未読の方は先にそちらをご覧ください
→ http://piapro.jp/content/v6ksfv2oeaf4e8ua
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『KAITO』のイメージは無数に在る。例えば優しいお兄さんだったり、真面目な歌い手だったり、はたまたお調子者のネタキャラだったり。その『無数振り』をネタに幾つもの曲が作られてしまうほど、彼の持つ顔は多種多様だ。
そのすべてを、ひとりの人格に詰め込んだという。失礼は承知だが言わせて欲しい、
KAosの楽園 第1楽章-001
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KAosの楽園 第2楽章-005
作ってもらった貸し出しカードは、僕の目には どんなものより価値あるものに映った。1mmの厚みもないような薄いカードだけれど、これは僕が此処へ来ても良いっていう――マスターに会いに来ても良いんだ、っていう、確かな『許可証』なんだから。
來果さんは館内の案内もしてくれて、僕は図書館にあるのが閲覧室だけじゃないんだって事を初めて知った。学習室や、読み聞かせ用の部屋。食堂まで併設されているのには吃驚した。基本的にはお客さん用だけど、職員の人達も利用するそうだ。
……來果さんも、此処で食べるのかな。
思うと胸の奥が重苦しくなるようで、慌てて思考を切り替えた。
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KAosの楽園 第2楽章-005
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KAosの楽園 第3楽章-003
間違った方へ変わりそうな自分を、どうやったら止められるだろう。
例えば図書館で、短い会話を交わす時。図書館だから静かにしないといけないのと、仕事中だからか落ち着いた様子で話すので、來果さんは家にいる時とは別の顔を見せる。品の良い微笑を絶やさず、『穏やかなお姉さん』って感じだ。
だけど、短い会話の中で時折、『いつもの顔』が覗く事がある。興味深げに目を見開く愛嬌のある顔や、小さく笑う気安い雰囲気。シンとした閲覧室で閃いて、一瞬後には仕事用のすまし顔に隠されてしまうそんな表情に、僕の心はくすぐられる。
僕にだけ見せてくれる表情。僕にだから零れてしまう表情。――ですよね、マスター?
僕にだけ、僕にだから。僕が他の誰とも違うから、貴女にとって『特別』だから。
KAosの楽園 第3楽章-003
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KAosの楽園 第3楽章-002
來果さんがマスターになってくれて、僕に許してくれた沢山の事。
食事を作らせてくれる、家の事をやらせてくれる、……職場に、傍に、行かせてくれる。
普通じゃない、って自分で思う。いくら≪VOCALOID≫がマスターを慕うものだと言ったって、僕のこれは病的だ。だけど來果さんはちっとも気にしないで、笑って赦してくれた。受け入れて、くれた。
來果さんが受け入れてくれるから、僕も少しずつ、受け入れられるようになってきた。
マスターを戴き、マスターを好きだと思うこと。それは≪VOCALOID≫の必然であり、誇り――にも関わらず、僕がずっと自らに禁じてきたことだった。焦がれるほどに切望しながら、絶対に赦せなかったことだった。
KAosの楽園 第3楽章-002
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KAosの楽園 第2楽章-003
「そういえばカイト、歌うのは平気?」
アイスカップが空になる頃、そんな問いを投げかけられた。
「歌、ですか?」
「うん。『マスター』意識しちゃって、まだ抵抗あるかな」
重ねられた言葉で、あぁ、と思い出した。
KAosの楽園 第2楽章-003
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Gift for you, from you【続カイマスXmas】
晩餐は、素晴らしい御馳走だった。籠に盛られたパンに、ベーコンとほうれん草のキッシュ。帆立と蕪のサラダはトマトの赤が華やかで、マッシュルームと海老を炒めた小鉢は仄かなガーリックの香りが食欲をそそる。それに私の大好きなクリームシチューと、海老も入ったほうれん草のグラタン、メインは温野菜をたっぷり添えた、クリスマスらしいローストチキン。これを全部、一人で作ってくれたんだから凄い。シェフになれるよ、カイト。
「カイト……どうしよう、幸せすぎる」
「俺はそれを聞いて幸せすぎです、マスター」
嬉しくて、美味しくて、幸せだ。溶けて蕩けて、バターになりそう。……それは木の周りをぐるぐるしないとだっけ。
カイトはワインまで用意してくれたものだから、少し酔ってきたのかもしれない。あんまり呑んだ事って無いんだけど、わざわざ店員さんに訊いて選んでくれたらしいフルーツワインは飲み易くて、ついするするとグラスを空けてしまう。
Gift for you, from you【続カイマスXmas】
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KAosの楽園 第4楽章-005(完結)
最初に与えられたデータは、この身体を動かす術。
手を動かす。足を動かす。立つ、歩く、走る。
それから話し方。そして、歌い方。
話す事、歌う事。それはただ音を発するだけとは違う事。
新たなデータが与えられる。『知識』と呼ばれるもの。
KAosの楽園 第4楽章-005(完結)
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KAosの楽園 第2楽章-002
來果さんが物凄く喜んでくれて、突然の熱と動悸に翻弄されて。すっかり舞い上がってしまった僕は、自分の甘さにも不安定さにも、まったく気付いていなかった。ただひたすらに嬉しくて、甘く痺れる躰が不可解で、どきどきして。
けれど、すぐさま思い知る事になる。『マスターがいない』不安は拭われても、《ヤンデレ》という設定がキャンセルされたわけではないのだという事を。
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【 KAosの楽園 第2楽章-002 】
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KAosの楽園 第2楽章-002
【お知らせ】テキスト投稿が非常に使い辛いため、こちらでは歌詞や音源のUPとコラボ関係のみに縮小、以後の小説投稿はすぴばる&ピクシブへ移行します。
■小説メイン時々歌詞な字書き……だった筈が、動画編集やボカロ調声、作曲にまで手を出してます。どうしてこうなった。
□ブクマやコメント、有難うございます! 転げ回るほど嬉しいですヽ(*´∀`)ノ
□オールキャラ書くけど9割KAITO。
□使えるものがあればお気軽にどうぞ。使用報告だけお願いします^^ 歌詞については、良識の範囲内であればアレンジや部分使用など改変していただいて構いません。多忙な時期でなければ、ある程度の調整も承ります。
■シェアワールドコラボ主催してます。参加者様募集☆ http://piapro.jp/collabo/?id=15073
■ブログなど
・『藍色書棚 -アオイロショダナ-』http://ioliteshelf.blog.so-net.ne.jp/ (投下テキストのシリーズ別リンク)
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